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最も信用できる心の通わぬ物
しおりを挟む 疑われているのは自分達だけではないということを、シン達はここで初めて実感する事になる。それは身近な者達にも疑いを向けられる中で、僅かながら安心感を生み出しており、心を壊さずにいられる要素の一つにもなっていた。
言葉にするとあまりいいものではないが、不幸の最中にいる時の他人の不幸というものは、どこか心に安心感を生む。辛いのは自分だけではない。不幸なのは自分だけではないと思えることは、心の安寧を保つ為に重要な要素である。
「オイゲンさん、貴方も大変そうですね。今回の一件は貴方の経歴にも傷がつくのでは?」
「寧ろ皆、身近に感じてくれるようになるかもな。教団の盾でも守れぬものがあるのだと」
「ふふ、なるほど。どんな状況も自身の力に変えるとは、実に貴方らしい考え方ですね。私も見習わせて頂きます。それではそろそろよろしいでしょうか?」
「あぁ、引き止めてしまってすまなかった。君達も嫌な思いをさせてしまってすまなかった」
オイゲンの紳士的な態度に、先程のバルトロメオの失言を帳消しにすると口にするミア。それを聞いて不満そうに顔を背けているバルトロメオ。同じ護衛の者達は彼を小突き、少しは反省するよう促すが彼の態度からはそんな様子は全く感じられなかった。
すれ違い様に、バルトロメオの刺すような視線を受けながら、一行はそのまま厨房の方へと足を運ぶ。
「ったく!何なんだよアイツら!自分達は無罪みたいな態度しやがって・・・」
「みんな同じってことさ。自身の身の潔白は自身にしか分からない。それを他人に証明するのは難しいことなんだ。それが身内や友人でないのなら尚更ね」
「ホント、めんどくせぇ事になったよなぁ。何か映像とか音声に残ってねぇのかよ?」
皮肉なことに、心のない機械の記録が何よりも状況証拠として信用できる。そこには誰の感情もなく、ただ真実だけを映し出しているからだ。
しかしケヴィン曰く、この宮殿は入り口や広間といった誰でも利用できるスペースこそカメラはあれど、特に重要な物が置かれていない個室などには設置されていない。
それでも、通路や広間のカメラを確認すればある程度のアリバイは証明できそうなものだが、シンにとってはかえって自身をの首を絞める結果になりかねない。
無論、ジークベルトの遺体が発見された後、宮殿内のカメラは全て調べられ、十分なアリバイが証明された者達はその証拠から宮殿の外へ解放されている。
「カメラは当てにならないでしょうね。真っ先に確認されているでしょうし、その上で私達は宮殿内に閉じ込められていると言うことは、私達のアリバイになるようなものはなかったという訳ですから・・・」
「だが逆に、それ以上は疑われないっていう事にもならねぇか?」
「確かにブルース氏らはカメラにも部屋を離れ、出歩いてる様子が写っていることからも、その行動が疑われていますが、それが無実であったと証明されれば、身の潔白を証明する確たる証拠へと変わります。我々の中ではマティアス司祭くらいでしょうか?カメラにその姿を映しているのは・・・」
マティアス司祭も宮殿内のカメラにその姿が映ってはいたが、その行動の裏は別の人物らの証言とも重なり、幾つかは証明されている。だが、映っているからこそ怪しまれていることもある為、マティアスもまだ宮殿内から出ることは許されていないのだ。
「ですが、証明しきれていない行動もあります。故にこのような状況になっている訳ですが・・・」
「それでも私達よりかは信用度は高いはずですよ?誰も信用できない状況において、最も感情や忖度の無い機械が信用できるとは皮肉なものですね」
「あまり盲信的になり過ぎるのも危険だけどな。機械も機械で、その手のものに詳しい奴がいたら弄られちまうからな」
機械に詳しいツバキだからこそ、カメラやボイスレコーダーなどの記録は偽造されるという危険性について、すぐに考えが至る。ケヴィンもその点については警戒しているようで、映像を全て鵜呑みにする一部の者達に注意を促していると語る。
「まぁそれが裏目に出てしまっているようで、ツバキさんとツクヨさんは宮殿内のライブの裏で、機材トラブルを解決しましたよね?その事からお二人なら映像を偽造することも可能なのではという疑いの声もありますから」
「全くふざけた話だよなぁ!?親切心で助けてやったのに、こんな言われ方すんのかよ」
「みんな疑心暗鬼になってるからだよ。あの行いは決して悪いことではなかったと私は思うよ」
「私もツクヨさんの意見に賛成ですね。自らにそれを解決する力を持っていながら見過ごす人間の方が、私はよっぽど信用出来ませんよ」
一行は彼らの意見に同意だった。正直な行動から出るものは、その人間の本質が表れるとケヴィンは語る。故にツバキとツクヨの行いは正に正しき行いであり、それを疑う者達こそ、心にやましい気持ちを抱えていることが多いのだそうだ。
「さぁ、着きましたよ。ここが厨房です・・・おや?」
宮殿のパーティーで出されていた多くの料理を作っていた広々とした大きな厨房。今は見る影もないほど閑散としており、代わりに厨房には相応しくない者達が先客として訪れていたようだ。
言葉にするとあまりいいものではないが、不幸の最中にいる時の他人の不幸というものは、どこか心に安心感を生む。辛いのは自分だけではない。不幸なのは自分だけではないと思えることは、心の安寧を保つ為に重要な要素である。
「オイゲンさん、貴方も大変そうですね。今回の一件は貴方の経歴にも傷がつくのでは?」
「寧ろ皆、身近に感じてくれるようになるかもな。教団の盾でも守れぬものがあるのだと」
「ふふ、なるほど。どんな状況も自身の力に変えるとは、実に貴方らしい考え方ですね。私も見習わせて頂きます。それではそろそろよろしいでしょうか?」
「あぁ、引き止めてしまってすまなかった。君達も嫌な思いをさせてしまってすまなかった」
オイゲンの紳士的な態度に、先程のバルトロメオの失言を帳消しにすると口にするミア。それを聞いて不満そうに顔を背けているバルトロメオ。同じ護衛の者達は彼を小突き、少しは反省するよう促すが彼の態度からはそんな様子は全く感じられなかった。
すれ違い様に、バルトロメオの刺すような視線を受けながら、一行はそのまま厨房の方へと足を運ぶ。
「ったく!何なんだよアイツら!自分達は無罪みたいな態度しやがって・・・」
「みんな同じってことさ。自身の身の潔白は自身にしか分からない。それを他人に証明するのは難しいことなんだ。それが身内や友人でないのなら尚更ね」
「ホント、めんどくせぇ事になったよなぁ。何か映像とか音声に残ってねぇのかよ?」
皮肉なことに、心のない機械の記録が何よりも状況証拠として信用できる。そこには誰の感情もなく、ただ真実だけを映し出しているからだ。
しかしケヴィン曰く、この宮殿は入り口や広間といった誰でも利用できるスペースこそカメラはあれど、特に重要な物が置かれていない個室などには設置されていない。
それでも、通路や広間のカメラを確認すればある程度のアリバイは証明できそうなものだが、シンにとってはかえって自身をの首を絞める結果になりかねない。
無論、ジークベルトの遺体が発見された後、宮殿内のカメラは全て調べられ、十分なアリバイが証明された者達はその証拠から宮殿の外へ解放されている。
「カメラは当てにならないでしょうね。真っ先に確認されているでしょうし、その上で私達は宮殿内に閉じ込められていると言うことは、私達のアリバイになるようなものはなかったという訳ですから・・・」
「だが逆に、それ以上は疑われないっていう事にもならねぇか?」
「確かにブルース氏らはカメラにも部屋を離れ、出歩いてる様子が写っていることからも、その行動が疑われていますが、それが無実であったと証明されれば、身の潔白を証明する確たる証拠へと変わります。我々の中ではマティアス司祭くらいでしょうか?カメラにその姿を映しているのは・・・」
マティアス司祭も宮殿内のカメラにその姿が映ってはいたが、その行動の裏は別の人物らの証言とも重なり、幾つかは証明されている。だが、映っているからこそ怪しまれていることもある為、マティアスもまだ宮殿内から出ることは許されていないのだ。
「ですが、証明しきれていない行動もあります。故にこのような状況になっている訳ですが・・・」
「それでも私達よりかは信用度は高いはずですよ?誰も信用できない状況において、最も感情や忖度の無い機械が信用できるとは皮肉なものですね」
「あまり盲信的になり過ぎるのも危険だけどな。機械も機械で、その手のものに詳しい奴がいたら弄られちまうからな」
機械に詳しいツバキだからこそ、カメラやボイスレコーダーなどの記録は偽造されるという危険性について、すぐに考えが至る。ケヴィンもその点については警戒しているようで、映像を全て鵜呑みにする一部の者達に注意を促していると語る。
「まぁそれが裏目に出てしまっているようで、ツバキさんとツクヨさんは宮殿内のライブの裏で、機材トラブルを解決しましたよね?その事からお二人なら映像を偽造することも可能なのではという疑いの声もありますから」
「全くふざけた話だよなぁ!?親切心で助けてやったのに、こんな言われ方すんのかよ」
「みんな疑心暗鬼になってるからだよ。あの行いは決して悪いことではなかったと私は思うよ」
「私もツクヨさんの意見に賛成ですね。自らにそれを解決する力を持っていながら見過ごす人間の方が、私はよっぽど信用出来ませんよ」
一行は彼らの意見に同意だった。正直な行動から出るものは、その人間の本質が表れるとケヴィンは語る。故にツバキとツクヨの行いは正に正しき行いであり、それを疑う者達こそ、心にやましい気持ちを抱えていることが多いのだそうだ。
「さぁ、着きましたよ。ここが厨房です・・・おや?」
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