1,264 / 1,646
疑いの目
しおりを挟む
詳しい状況についてはまだわかっていない様子だが、どうやら亡くなったのは昨夜から明け方にかけてだと思われる。早朝、ジークベルトの護衛の者が彼を起しに部屋を訪れるが返事は無かったそうだ。
誰も部屋に入れずロックを掛けていたので、部屋にはジークベルト本人ただ一人だったと思われる。つまり密室だったことになる。最後に部屋を確認したのは護衛隊長であるオイゲンだったという。
翌日の仕事の話をした後、就寝につくと言いどんな要件であれ、翌朝の起床よ時刻まで誰も部屋に入れるなと言い渡されたそうだ。現に彼の部屋の前では、教団の護衛が交代で警備に当たっており、それ以来誰も部屋には入っていないとの事。
そしてジークベルトの起床時刻となった早朝。オイゲン自ら彼の部屋を訪れ扉をノックするも、何度確認してもジークベルトからの返事はなかったと語る。別の護衛の者に確認させるも、彼の部屋は常にカーテンが閉められており、外から様子を見ることはできなかったようだ。
無論、外から彼の部屋へ忍び込もうとする輩など発見されず、そんな形跡もない。仕方がなく、オイゲンは護衛隊長としての権限で自ら判断し、宮殿の受付でマスターキーを借りると、複数の護衛と宮殿の警備の者数名と共に彼の部屋の施錠を解除し、中の様子を確認することにした。
そこで、床に倒れるジークベルトが発見された。
外部に大きな損傷はなく、倒れた時にぶつけたのであろうという痣が僅かにあった程度だった。薬物検査の反応については現在調査中とのこと。すぐにわかる範囲の猛毒に関しては反応は出ていない。
何者かが直接手を下したのなら、護衛の者達が気づかないはずはない。ジークベルトはアルバに来てから何者かに狙われ、遅延性の何かで殺されたのか、或いは護衛の警戒を掻い潜る何らかのスキルによって殺された可能性が高いと思われ、当日宮殿にいた者達の殆どを事件の犯人が分かるまで帰さないようにとの判断が下されたそうだ。
「おいおい・・・マジかよ・・・。俺ら事件が解決するまでここから出られねぇってことかぁ!?」
「何だってそんな面倒事に・・・。ジークベルト・・・大司教の調査といやぁシン、アイツはどうしてんだ?」
ミアの言うアイツとは、当然前日のパーティーで彼を調べていた探偵のケヴィンの事だ。シン本人も、ジークベルトの死亡を聞いた時に彼の顔が真っ先に浮かんだという。
ツクヨと共に宮殿内の状況確認と、犯行現場付近に立ち寄った際にケヴィンが捜査に加わっているのを知ったが、直接彼とコンタクトを取ることはできなかったと言う。
「司祭の依頼とはいえ、色々妙な動きをしていた私達は疑われないでしょうか?」
「どうだろうね・・・。私達は完全に部外者だったんだ。誰かの依頼で送り込まれた刺客と思われても不思議じゃないよね?」
「実際別件ではあるが、ケヴィンは俺達を疑っていたしな・・・」
「そならない為に、アイツの調査に協力してたんだろ?何にアタシらまで宮殿に拘束されんのかよ」
「仕方がないさ。まさか彼だってこんな事が起きるなんて思ってなかったんだろう」
不安そうになるアカリの肩を優しく叩き、安心させようとするツクヨ。
「大丈夫。恐らくこの後色々と事情聴取とかもあるだろうけど、こうなった以上正直に全てを話せば、身の潔白は証明されるさ」
「ルーカス司祭も・・・ここに?」
「あぁ、現場検証の場にいたよ。教団の関係者だからね。立ち会いにも許されたんだろう。事件が起きてしまった以上、彼も私達に依頼していた事について口を割るんじゃないかな?」
ルーカス司祭からの依頼はあくまでジークベルトの近辺調査のみで、危険なら手を引いていいと言われるほど条件の厳しいものではなかった。何なら彼は、シン達が何の情報も掴んでこなかったとしても構わないといった様子だった。
彼やケヴィンの証言があれば、シン達に犯行の動悸がそもそも無いことは明白なはず。犯人の候補として疑われる心配もないと思っていたが、シンはそこでとあることを思い出す。
そもそもシンだけは、二度目に宮殿へ来た際にケヴィンから指示を受け、三階のジークベルトの部屋がある階層にやって来ている。しかも変装し警備の目を欺きながら犯行現場付近へと訪れている。
そして最もシンの心配を跳ね上がらせる要因として、彼はジークベルト直属の護衛隊長であるオイゲンに顔を見られてしまっている事だった。
誰も部屋に入れずロックを掛けていたので、部屋にはジークベルト本人ただ一人だったと思われる。つまり密室だったことになる。最後に部屋を確認したのは護衛隊長であるオイゲンだったという。
翌日の仕事の話をした後、就寝につくと言いどんな要件であれ、翌朝の起床よ時刻まで誰も部屋に入れるなと言い渡されたそうだ。現に彼の部屋の前では、教団の護衛が交代で警備に当たっており、それ以来誰も部屋には入っていないとの事。
そしてジークベルトの起床時刻となった早朝。オイゲン自ら彼の部屋を訪れ扉をノックするも、何度確認してもジークベルトからの返事はなかったと語る。別の護衛の者に確認させるも、彼の部屋は常にカーテンが閉められており、外から様子を見ることはできなかったようだ。
無論、外から彼の部屋へ忍び込もうとする輩など発見されず、そんな形跡もない。仕方がなく、オイゲンは護衛隊長としての権限で自ら判断し、宮殿の受付でマスターキーを借りると、複数の護衛と宮殿の警備の者数名と共に彼の部屋の施錠を解除し、中の様子を確認することにした。
そこで、床に倒れるジークベルトが発見された。
外部に大きな損傷はなく、倒れた時にぶつけたのであろうという痣が僅かにあった程度だった。薬物検査の反応については現在調査中とのこと。すぐにわかる範囲の猛毒に関しては反応は出ていない。
何者かが直接手を下したのなら、護衛の者達が気づかないはずはない。ジークベルトはアルバに来てから何者かに狙われ、遅延性の何かで殺されたのか、或いは護衛の警戒を掻い潜る何らかのスキルによって殺された可能性が高いと思われ、当日宮殿にいた者達の殆どを事件の犯人が分かるまで帰さないようにとの判断が下されたそうだ。
「おいおい・・・マジかよ・・・。俺ら事件が解決するまでここから出られねぇってことかぁ!?」
「何だってそんな面倒事に・・・。ジークベルト・・・大司教の調査といやぁシン、アイツはどうしてんだ?」
ミアの言うアイツとは、当然前日のパーティーで彼を調べていた探偵のケヴィンの事だ。シン本人も、ジークベルトの死亡を聞いた時に彼の顔が真っ先に浮かんだという。
ツクヨと共に宮殿内の状況確認と、犯行現場付近に立ち寄った際にケヴィンが捜査に加わっているのを知ったが、直接彼とコンタクトを取ることはできなかったと言う。
「司祭の依頼とはいえ、色々妙な動きをしていた私達は疑われないでしょうか?」
「どうだろうね・・・。私達は完全に部外者だったんだ。誰かの依頼で送り込まれた刺客と思われても不思議じゃないよね?」
「実際別件ではあるが、ケヴィンは俺達を疑っていたしな・・・」
「そならない為に、アイツの調査に協力してたんだろ?何にアタシらまで宮殿に拘束されんのかよ」
「仕方がないさ。まさか彼だってこんな事が起きるなんて思ってなかったんだろう」
不安そうになるアカリの肩を優しく叩き、安心させようとするツクヨ。
「大丈夫。恐らくこの後色々と事情聴取とかもあるだろうけど、こうなった以上正直に全てを話せば、身の潔白は証明されるさ」
「ルーカス司祭も・・・ここに?」
「あぁ、現場検証の場にいたよ。教団の関係者だからね。立ち会いにも許されたんだろう。事件が起きてしまった以上、彼も私達に依頼していた事について口を割るんじゃないかな?」
ルーカス司祭からの依頼はあくまでジークベルトの近辺調査のみで、危険なら手を引いていいと言われるほど条件の厳しいものではなかった。何なら彼は、シン達が何の情報も掴んでこなかったとしても構わないといった様子だった。
彼やケヴィンの証言があれば、シン達に犯行の動悸がそもそも無いことは明白なはず。犯人の候補として疑われる心配もないと思っていたが、シンはそこでとあることを思い出す。
そもそもシンだけは、二度目に宮殿へ来た際にケヴィンから指示を受け、三階のジークベルトの部屋がある階層にやって来ている。しかも変装し警備の目を欺きながら犯行現場付近へと訪れている。
そして最もシンの心配を跳ね上がらせる要因として、彼はジークベルト直属の護衛隊長であるオイゲンに顔を見られてしまっている事だった。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
150年後の敵国に転生した大将軍
mio
ファンタジー
「大将軍は150年後の世界に再び生まれる」から少しタイトルを変更しました。
ツーラルク皇国大将軍『ラルヘ』。
彼は隣国アルフェスラン王国との戦いにおいて、その圧倒的な強さで多くの功績を残した。仲間を失い、部下を失い、家族を失っていくなか、それでも彼は主であり親友である皇帝のために戦い続けた。しかし、最後は皇帝の元を去ったのち、自宅にてその命を落とす。
それから約150年後。彼は何者かの意思により『アラミレーテ』として、自分が攻め入った国の辺境伯次男として新たに生まれ変わった。
『アラミレーテ』として生きていくこととなった彼には『ラルヘ』にあった剣の才は皆無だった。しかし、その代わりに与えられていたのはまた別の才能で……。
他サイトでも公開しています。
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』
ふつうのにーちゃん
ファンタジー
転生者グレイボーンは、前世でシュールな死に方をしてしまったがあまりに神に気に入られ、【重弩使い】のギフトを与えられた。
しかしその神は実のところ、人の運命を弄ぶ邪神だった。
確かに重弩使いとして破格の才能を持って生まれたが、彼は『10cm先までしかまともに見えない』という、台無しのハンデを抱えていた。
それから時が流れ、彼が15歳を迎えると、父が死病を患い、男と蒸発した母が帰ってきた。
異父兄妹のリチェルと共に。
彼はリチェルを嫌うが、結局は母の代わりに面倒を見ることになった。
ところがしばらくしたある日、リチェルが失踪してしまう。
妹に愛情を懐き始めていたグレイボーンは深い衝撃を受けた。
だが皮肉にもその衝撃がきっかけとなり、彼は前世の記憶を取り戻すことになる。
決意したグレイボーンは、父から規格外の重弩《アーバレスト》を受け継いだ。
彼はそれを抱えて、リチェルが入り込んだという魔物の領域に踏み込む。
リチェルを救い、これからは良い兄となるために。
「たぶん人じゃないヨシッッ!!」
当たれば一撃必殺。
ただし、彼の目には、それが魔物か人かはわからない。
勘で必殺の弩を放つ超危険人物にして、空気の読めないシスコン兄の誕生だった。
毎日2~3話投稿。なろうとカクヨムでも公開しています。
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
護国の鳥
凪子
ファンタジー
異世界×士官学校×サスペンス!!
サイクロイド士官学校はエスペラント帝国北西にある、国内最高峰の名門校である。
周囲を海に囲われた孤島を学び舎とするのは、十五歳の選りすぐりの少年達だった。
首席の問題児と呼ばれる美貌の少年ルート、天真爛漫で無邪気な子供フィン、軽薄で余裕綽々のレッド、大貴族の令息ユリシス。
同じ班に編成された彼らは、教官のルベリエや医務官のラグランジュ達と共に、士官候補生としての苛酷な訓練生活を送っていた。
外の世界から厳重に隔離され、治外法権下に置かれているサイクロイドでは、生徒の死すら明るみに出ることはない。
ある日同級生の突然死を目の当たりにし、ユリシスは不審を抱く。
校内に潜む闇と秘められた事実に近づいた四人は、否応なしに事件に巻き込まれていく……!
練習船で異世界に来ちゃったんだが?! ~異世界海洋探訪記~
さみぃぐらぁど
ファンタジー
航海訓練所の練習船「海鵜丸」はハワイへ向けた長期練習航海中、突然嵐に巻き込まれ、落雷を受ける。
衝撃に気を失った主人公たち当直実習生。彼らが目を覚まして目撃したものは、自分たち以外教官も実習生も居ない船、無線も電子海図も繋がらない海、そして大洋を往く見たこともない戦列艦の艦隊だった。
そして実習生たちは、自分たちがどこか地球とは違う星_異世界とでも呼ぶべき空間にやって来たことを悟る。
燃料も食料も補給の目途が立たない異世界。
果たして彼らは、自分たちの力で、船とともに現代日本の海へ帰れるのか⁈
※この作品は「カクヨム」においても投稿しています。https://kakuyomu.jp/works/16818023213965695770
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる