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持ち物検査
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「お・・・おい、話よりも多くいるように見えるが・・・?」
「そりゃぁ護衛ですもの。守るべき対象を守るためについていらっしゃいますよ」
VIPルームを訪れた際には、それほど多くの警備は見当たらず、扉の前に常時二人の護衛がいる程度で、後は通路を巡回する者が一人か二人くらいのものだった。
だが、今シンの前にはそれぞれの扉の前に別々の格好をした護衛が一人から二人程度配置されており、巡回もジークベルトが呼んだという教団の護衛が直々に行っていた。
パーティーの時にいたスーツ姿の者達とは違い、軽装だが武装が許されており、それぞれ目につくような武器から一見武器には見えないものを手にしている者など、ただ通路を通るだけにしても異様なプレッシャーが掛かる雰囲気だった。
「いいですか?ブルース・ワルターさんの部屋は、今の貴方の位置から三つ目です。通路を進む覚悟ができましたら、通信を切って下さいね」
「なッ!通信を切れだって!?」
「そりゃそうですよ。もし怪しまれて持ち物の検査や精密機器の探知などされたら、そこから足がついてしまいますから」
何とこの土壇場になってケヴィンは、通信機を切り単独でブルースの部屋まで辿り着くようにと指示してきたのだ。
「話が違うぞ!アンタが全面的にバックアップするって話じゃ・・・」
「こうでもしなきゃ動いてくれないかと思いましてね。申し訳ありませんが、ここからは部屋に入るまでお一人でお願いします」
「クソッ・・・そういうのはもっと早くに・・・」
いつまでも通路を覗いていては怪しまれる。それに、いつ別の巡回が後ろから回ってくるか分からない。まんまとケヴィンに嵌められたシンは、意を決した様子で通信を切り、耳に装着していたデバイスを預かったカメラと一括りにした。
作業員の格好で歩き始めたシンは通路に差し掛かると、一つ目の扉を挟むように立っている護衛達からの視線を浴びる。全く視線を向けないシンに、護衛の者達は無言の圧力をかけるかのように、鋭い視線で真の格好を見定める。
時間にしてほんの一秒か二秒ほど、全身を通して確認すると武具を所持していないのが分かったのか、すぐにその視線からシンは解放された。
内心ホッとしながら次の扉の前へと歩みを進める。次に見えてきた護衛は一人で扉の横の壁に寄りかかり、腕を組んで目を瞑っている。先程の二人に比べれば大分プレッシャーは感じないが、妙な雰囲気を感じる。
シンがその男の前を通りかかると、男は僅かに鼻を動かしその場の空気と匂いの変化を嗅ぎ分けていた。するとその男は、シンが通り過ぎた後片目だけ開けてシンの姿を確認し始めたのだ。
視線を感じたシンだったが、声も掛けられなかった為、そのまま歩みを止める事なく目的の三つ目の扉へと向かう。
しかしここでアクシデントが起こった。シンが通路を進んでいると、反対側からジークベルトの連れてきた教団の護衛隊長であるオイゲンが現れたのだ。オイゲンはもう一人の護衛と話しながら、こちらへ向かって歩いてくる。
そして対面にシンが歩いて来るのに気がつくと、まるで矛先を向けられたかのような鋭い視線がシンを襲う。冷や汗が頬を伝う中、オイゲンとの距離が縮まっていくと、彼は明らかにシンの事を凝視しながら向かってくる。
吐きそうになるプレッシャーの中、遂にオイゲンか声を掛けられてしまう。
「おい、そこのお前」
「?」
「資料にはない顔だな。このフロアは今制限が掛けられている。何用で来た?」
ケヴィンとの打ち合わせの中でも、想定していなかった事態が起きた。そもそも巡回の護衛に隊長であるオイゲンがいるなどという話はなかった。それにシンは、ケヴィンがどうやってブルース・ワルターを部屋から出し、護衛を遠ざけたのかについて聞かされていなかった。
つまり、シンはオイゲンの質問に対しての答えを用意していなかった事になる。アドリブ力が試されるこの土壇場で、シンは何とかして動揺を見せないようにと毅然とした態度で彼の質問に答えた。
「機材のトラブルがあったと聞きまして。しかし到着してみたところ、既にライブの方が終わっておりまして・・・。どうしたものかと、何方かに伺えないかと思いまして」
「そうか、既にあの時業者を手配してしまっていたのか・・・。すまんな、トラブルの方はこちらで解決した。話は上の者につけておくから、もう帰ってくれて構わない」
「そう・・・でしたか。分かりました」
何とかオイゲンの疑いから解放されたシンはホッと胸を撫で下ろし、オイゲンらとすれ違い先へ進もうとした。
だがその時、オイゲンはシン達が危惧していた持ち物検査を申し出てきたのだ。突然引き止められた事により、シンは安心し切っていた事もあり僅かに足元がもつれバランスを崩してしまう。
「すまない、あくまで形式的なものでな。なに、すぐに終わるから壁際に立って両手を上げてくれ」
特別な機材などは必要としない、彼らの判断で検査する簡単なものだと説明された。オイゲンは連れていたもう一人の護衛に、検査中のスキルを検知する
能力を使わせた後、自らは物理的な検査を始める。
武器や毒物などを所持していないか、有能できそうなところを簡単に調べられた後、金属探知機による検査が行われた。用意した作業着に入っていた工具などを出していくシンだったが、このままではケヴィンから預かっているカメラが検知されてしまう。
そんなものが持ち物検査で発見されれば、怪しさは隠しようもない。絶体絶命の中、シンは緊張を必死で隠しながら、されるがまま身体検査を受けていく。
「・・・・・」
沈黙の中行われた持ち物検査。そしてオイゲンの手が止まると、彼はシンに予想外の言葉を送ったのだ。
「・・・・・ご協力、感謝する。検査に異常は見られなかった。引き止めてしまって済まなかったな」
何と、シンに対して行われた持ち物検査から、ケヴィンのカメラは発見されなかったのだ。スキルの使用を検知する能力が掛けられる中での検査。決して隠し通せるものではなかったはず。
シンは一体、ケヴィンのカメラをどうしてしまったのか。
「そりゃぁ護衛ですもの。守るべき対象を守るためについていらっしゃいますよ」
VIPルームを訪れた際には、それほど多くの警備は見当たらず、扉の前に常時二人の護衛がいる程度で、後は通路を巡回する者が一人か二人くらいのものだった。
だが、今シンの前にはそれぞれの扉の前に別々の格好をした護衛が一人から二人程度配置されており、巡回もジークベルトが呼んだという教団の護衛が直々に行っていた。
パーティーの時にいたスーツ姿の者達とは違い、軽装だが武装が許されており、それぞれ目につくような武器から一見武器には見えないものを手にしている者など、ただ通路を通るだけにしても異様なプレッシャーが掛かる雰囲気だった。
「いいですか?ブルース・ワルターさんの部屋は、今の貴方の位置から三つ目です。通路を進む覚悟ができましたら、通信を切って下さいね」
「なッ!通信を切れだって!?」
「そりゃそうですよ。もし怪しまれて持ち物の検査や精密機器の探知などされたら、そこから足がついてしまいますから」
何とこの土壇場になってケヴィンは、通信機を切り単独でブルースの部屋まで辿り着くようにと指示してきたのだ。
「話が違うぞ!アンタが全面的にバックアップするって話じゃ・・・」
「こうでもしなきゃ動いてくれないかと思いましてね。申し訳ありませんが、ここからは部屋に入るまでお一人でお願いします」
「クソッ・・・そういうのはもっと早くに・・・」
いつまでも通路を覗いていては怪しまれる。それに、いつ別の巡回が後ろから回ってくるか分からない。まんまとケヴィンに嵌められたシンは、意を決した様子で通信を切り、耳に装着していたデバイスを預かったカメラと一括りにした。
作業員の格好で歩き始めたシンは通路に差し掛かると、一つ目の扉を挟むように立っている護衛達からの視線を浴びる。全く視線を向けないシンに、護衛の者達は無言の圧力をかけるかのように、鋭い視線で真の格好を見定める。
時間にしてほんの一秒か二秒ほど、全身を通して確認すると武具を所持していないのが分かったのか、すぐにその視線からシンは解放された。
内心ホッとしながら次の扉の前へと歩みを進める。次に見えてきた護衛は一人で扉の横の壁に寄りかかり、腕を組んで目を瞑っている。先程の二人に比べれば大分プレッシャーは感じないが、妙な雰囲気を感じる。
シンがその男の前を通りかかると、男は僅かに鼻を動かしその場の空気と匂いの変化を嗅ぎ分けていた。するとその男は、シンが通り過ぎた後片目だけ開けてシンの姿を確認し始めたのだ。
視線を感じたシンだったが、声も掛けられなかった為、そのまま歩みを止める事なく目的の三つ目の扉へと向かう。
しかしここでアクシデントが起こった。シンが通路を進んでいると、反対側からジークベルトの連れてきた教団の護衛隊長であるオイゲンが現れたのだ。オイゲンはもう一人の護衛と話しながら、こちらへ向かって歩いてくる。
そして対面にシンが歩いて来るのに気がつくと、まるで矛先を向けられたかのような鋭い視線がシンを襲う。冷や汗が頬を伝う中、オイゲンとの距離が縮まっていくと、彼は明らかにシンの事を凝視しながら向かってくる。
吐きそうになるプレッシャーの中、遂にオイゲンか声を掛けられてしまう。
「おい、そこのお前」
「?」
「資料にはない顔だな。このフロアは今制限が掛けられている。何用で来た?」
ケヴィンとの打ち合わせの中でも、想定していなかった事態が起きた。そもそも巡回の護衛に隊長であるオイゲンがいるなどという話はなかった。それにシンは、ケヴィンがどうやってブルース・ワルターを部屋から出し、護衛を遠ざけたのかについて聞かされていなかった。
つまり、シンはオイゲンの質問に対しての答えを用意していなかった事になる。アドリブ力が試されるこの土壇場で、シンは何とかして動揺を見せないようにと毅然とした態度で彼の質問に答えた。
「機材のトラブルがあったと聞きまして。しかし到着してみたところ、既にライブの方が終わっておりまして・・・。どうしたものかと、何方かに伺えないかと思いまして」
「そうか、既にあの時業者を手配してしまっていたのか・・・。すまんな、トラブルの方はこちらで解決した。話は上の者につけておくから、もう帰ってくれて構わない」
「そう・・・でしたか。分かりました」
何とかオイゲンの疑いから解放されたシンはホッと胸を撫で下ろし、オイゲンらとすれ違い先へ進もうとした。
だがその時、オイゲンはシン達が危惧していた持ち物検査を申し出てきたのだ。突然引き止められた事により、シンは安心し切っていた事もあり僅かに足元がもつれバランスを崩してしまう。
「すまない、あくまで形式的なものでな。なに、すぐに終わるから壁際に立って両手を上げてくれ」
特別な機材などは必要としない、彼らの判断で検査する簡単なものだと説明された。オイゲンは連れていたもう一人の護衛に、検査中のスキルを検知する
能力を使わせた後、自らは物理的な検査を始める。
武器や毒物などを所持していないか、有能できそうなところを簡単に調べられた後、金属探知機による検査が行われた。用意した作業着に入っていた工具などを出していくシンだったが、このままではケヴィンから預かっているカメラが検知されてしまう。
そんなものが持ち物検査で発見されれば、怪しさは隠しようもない。絶体絶命の中、シンは緊張を必死で隠しながら、されるがまま身体検査を受けていく。
「・・・・・」
沈黙の中行われた持ち物検査。そしてオイゲンの手が止まると、彼はシンに予想外の言葉を送ったのだ。
「・・・・・ご協力、感謝する。検査に異常は見られなかった。引き止めてしまって済まなかったな」
何と、シンに対して行われた持ち物検査から、ケヴィンのカメラは発見されなかったのだ。スキルの使用を検知する能力が掛けられる中での検査。決して隠し通せるものではなかったはず。
シンは一体、ケヴィンのカメラをどうしてしまったのか。
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