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スニーキングミッション
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目的地のある宮殿の三階まで、無事にバレずに上がってきたシンは、一旦近くにあったトイレに駆け込む。
「三階まで来たぞ」
「ありがとうございます。ここからが本番になりますので、より一層気を引き締めて下さい」
「よく言う・・・」
「先ずはそちらへカメラを送りますので受け取って下さい」
ケヴィンはシンに、自身の持っているベルヘルムの部屋に仕掛ける為のカメラへアクセスするよう指示する。カメラの映像を切り替えると、そこにはケヴィンが写っておりこちらに手を振っている。
見えたことを確認すると、ケヴィンはカメラを蜘蛛型に変形させ、宮殿の壁を駆け上らせる。シンはケヴィンが何処にいるのかと尋ねると、どうやら彼は宮殿の敷地内の茂みに身を潜めているらしい。
シンが三階のどのトイレに身を潜めているのか把握しているケヴィンは、カメラをそちらの方へ向かわせ、窓から侵入するとシンの手元へとやって来る。
「カメラは無事に受け取れたようですね?」
「あぁ、こっちは問題ない。それで?ここからどうやってそのベルヘルムという人物の部屋に近づけば良い?」
「VIPルームへ行き、ジークベルト氏にカメラを仕掛けた時のことを覚えていますか?ベルヘルム氏の部屋は、その時通った長い廊下の反対側に位置しています。丁度今シンさんがいるトイレから出て向こう側の廊下です」
ベルヘルムの部屋までのルートは、直進するだけなら簡単なものだった。トイレを出て真っ直ぐ進み、突き当たりを右に進み五個目の扉が目的の場所となる。厳密にはそこまで進まずともシンのスキルで部屋にカメラを送り込む
事は可能だが、当然他の部屋には別の要人達が宿泊している。
それに廊下にはそれぞれの護衛に加え、教団の護衛隊まで巡回している。今いるトイレだって、巡回ルートには含まれていないようだが、だからこそ不規則に誰かがやって来ることになる為、いつまでも安全とはいかない。
「それは分かった。次に移動する場所は何処になる?」
「ここからはタイミングを見計らったスピード勝負になります。手引きは私がしますので、後は状況に応じたシンさんの対応次第になるかも知れません・・・」
「初めからそのつもりで準備してたんだろ?」
「・・・精一杯のバックアップはします。それでもカバーしきれないところは・・・」
「分かった、自力で何とかする」
「助かります」
目的地であるベルヘルムの部屋までは、安全に待機できる場所はもうない。何処かで身を隠しながらというのは難しくなる。そこでケヴィンが準備していた物の一つとして、シンの隠れているトイレの入り口付近に何かの入った紙袋が置かれていた。
すぐにそれを回収するよう指示を受けたシンは、周りに警戒しながら素早くそれを手に取ると、トイレの中で中身を確認する。中には宮殿内で働く従業員の制服が入っていた。
「こんなもの、どうやって今の僅かな間に!?」
「言ったでしょ?内部に協力者がいるって。その彼に丁度持ってきてもらいました。非番の方のものを拝借しているようです。それを着ていれば、僅かな間は気づかれる事もないでしょう。ですが、近づき過ぎには注意して下さい」
「ともあれ、これで少しは動きやすくなるな」
「次の動きまでは、そこでバレぬよう待機していて下さい。私の合図で今、内部の協力者にう動いてもらっています。そこからは一気に次のポイントへの移動とカメラの設置を済ませ、すぐにその場から撤退していただく事になります」
「内部の協力者って・・・確かクリスだったよな?彼に何か事を起こせるような力は・・・」
一介の学生に過ぎないクリスに、要人達を動かせるような力があるようには思えない。だがケヴィンが自信満々に作戦を企てているので、きっと何かしらのトリックがあるのだろうが。
そして暫くすると、ケヴィンの方からいよいよ最後の合図が来る。
「準備ができたようです!先ずはさっき言った通り、そこから出て真っ直ぐ行った突き当たりを右に曲がって下さい。そして三つ目の部屋、ブルース・ワルター氏の部屋へ向かって下さい」
「部屋に?そのブルースなんとかってのは、部屋にいないのか?」
「事情は後で。今は時間がありませんのですぐに向かって下さい!」
僅かに焦った様子を見せるケヴィンに、時が迫られていることが伝わってくる。どういう訳か、彼の言うブルース・ワルターという人物が宿泊している部屋へ向かうことになったシンは、トイレから出て廊下へと出る。
そして突き当たりを右に曲がり、VIPルームへ向かった時とは反対の長い廊下へと出る。そこには思っていた以上に困難な道のりが待ち受けていた。
「三階まで来たぞ」
「ありがとうございます。ここからが本番になりますので、より一層気を引き締めて下さい」
「よく言う・・・」
「先ずはそちらへカメラを送りますので受け取って下さい」
ケヴィンはシンに、自身の持っているベルヘルムの部屋に仕掛ける為のカメラへアクセスするよう指示する。カメラの映像を切り替えると、そこにはケヴィンが写っておりこちらに手を振っている。
見えたことを確認すると、ケヴィンはカメラを蜘蛛型に変形させ、宮殿の壁を駆け上らせる。シンはケヴィンが何処にいるのかと尋ねると、どうやら彼は宮殿の敷地内の茂みに身を潜めているらしい。
シンが三階のどのトイレに身を潜めているのか把握しているケヴィンは、カメラをそちらの方へ向かわせ、窓から侵入するとシンの手元へとやって来る。
「カメラは無事に受け取れたようですね?」
「あぁ、こっちは問題ない。それで?ここからどうやってそのベルヘルムという人物の部屋に近づけば良い?」
「VIPルームへ行き、ジークベルト氏にカメラを仕掛けた時のことを覚えていますか?ベルヘルム氏の部屋は、その時通った長い廊下の反対側に位置しています。丁度今シンさんがいるトイレから出て向こう側の廊下です」
ベルヘルムの部屋までのルートは、直進するだけなら簡単なものだった。トイレを出て真っ直ぐ進み、突き当たりを右に進み五個目の扉が目的の場所となる。厳密にはそこまで進まずともシンのスキルで部屋にカメラを送り込む
事は可能だが、当然他の部屋には別の要人達が宿泊している。
それに廊下にはそれぞれの護衛に加え、教団の護衛隊まで巡回している。今いるトイレだって、巡回ルートには含まれていないようだが、だからこそ不規則に誰かがやって来ることになる為、いつまでも安全とはいかない。
「それは分かった。次に移動する場所は何処になる?」
「ここからはタイミングを見計らったスピード勝負になります。手引きは私がしますので、後は状況に応じたシンさんの対応次第になるかも知れません・・・」
「初めからそのつもりで準備してたんだろ?」
「・・・精一杯のバックアップはします。それでもカバーしきれないところは・・・」
「分かった、自力で何とかする」
「助かります」
目的地であるベルヘルムの部屋までは、安全に待機できる場所はもうない。何処かで身を隠しながらというのは難しくなる。そこでケヴィンが準備していた物の一つとして、シンの隠れているトイレの入り口付近に何かの入った紙袋が置かれていた。
すぐにそれを回収するよう指示を受けたシンは、周りに警戒しながら素早くそれを手に取ると、トイレの中で中身を確認する。中には宮殿内で働く従業員の制服が入っていた。
「こんなもの、どうやって今の僅かな間に!?」
「言ったでしょ?内部に協力者がいるって。その彼に丁度持ってきてもらいました。非番の方のものを拝借しているようです。それを着ていれば、僅かな間は気づかれる事もないでしょう。ですが、近づき過ぎには注意して下さい」
「ともあれ、これで少しは動きやすくなるな」
「次の動きまでは、そこでバレぬよう待機していて下さい。私の合図で今、内部の協力者にう動いてもらっています。そこからは一気に次のポイントへの移動とカメラの設置を済ませ、すぐにその場から撤退していただく事になります」
「内部の協力者って・・・確かクリスだったよな?彼に何か事を起こせるような力は・・・」
一介の学生に過ぎないクリスに、要人達を動かせるような力があるようには思えない。だがケヴィンが自信満々に作戦を企てているので、きっと何かしらのトリックがあるのだろうが。
そして暫くすると、ケヴィンの方からいよいよ最後の合図が来る。
「準備ができたようです!先ずはさっき言った通り、そこから出て真っ直ぐ行った突き当たりを右に曲がって下さい。そして三つ目の部屋、ブルース・ワルター氏の部屋へ向かって下さい」
「部屋に?そのブルースなんとかってのは、部屋にいないのか?」
「事情は後で。今は時間がありませんのですぐに向かって下さい!」
僅かに焦った様子を見せるケヴィンに、時が迫られていることが伝わってくる。どういう訳か、彼の言うブルース・ワルターという人物が宿泊している部屋へ向かうことになったシンは、トイレから出て廊下へと出る。
そして突き当たりを右に曲がり、VIPルームへ向かった時とは反対の長い廊下へと出る。そこには思っていた以上に困難な道のりが待ち受けていた。
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