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新たなアクセスポイント
しおりを挟む シンは宮殿内では見ることのなかったカメラに、恐る恐るアクセスする。そこに映し出されたのは、どうやら建物の外の光景だった。夜ということもあり、側に街灯もないのか見えてくる映像は真っ暗だった。
「何だコレ・・・」
思わず漏れてしまった声にツバキが反応し、何かあったのかと尋ねてくる。カメラの存在について知られてしまっているので、今更その機能や操作の方法を隠しておく必要もないかと思ったシンは、ミアの荷物の中にシンが耳につけている物と同じものはないかとツバキに聞いた。
すると彼はミアの荷物の中からそれと同じものを見つける。
「なるほど。カメラと操作するデバイスとやらは別々になってんのな。しかも触れるだけで操作できるのかよ。一体どうなってんだ?」
シン達の暮らす現実世界では、スマホのように画面をタップしたり、振動や温度、指紋認証や音声認識といったものは日常的に電子機器に取り込まれている。
だがこちらの世界では、そういったものはあまり普及していないようだった。現にケヴィンから渡された機器を手にした時、シンやミアはその機械に既視感を抱いていた。
もしかしたらアークシティには、彼らのいた世界と同じような文明が築かれているのかもしれない。そう思うと少し恐ろしくもあった。自分達の暮らしていた世界より少しだけ先にいった文明の世界。
それはまるで、これから人類が辿るであろう問題や展開を予想して物語が紡がれているのではないかと、心のどこかで思っているからなのかもしれない。
シンはケヴィンから教わったデバイスの操作をツバキにも教えると、どこかへ通じるカメラの映像にアクセスしてみるように促す。だが、ツバキはシンの言葉の通りに操作していくも、彼の言うカメラへのアクセスポイントを見つけることが出来なかった。
「あぁ?そんなカメラ見つからないぞ?」
「いや、そんなことは・・・。ちょっと貸してくれ」
「おう」
ツバキからミアのデバイスを借りて操作を試みるシン。そこで初めてツバキが冗談を言っているわけではなかったことを知る。確かに近くにあるカメラへアクセスしようとしてみるも、シンのデバイスにはあったカメラへのアクセスが見当たらない。
「え?本当だ・・・」
「な?嘘なんかつかねぇって。それでそれで?シンの方のデバイスには何が映ってんだよ?」
興味津々のツバキに、シンは自分のデバイスを渡す。そしてツバキもまた、シンが嘘をついていなかったことを知り、その真っ暗な映像を眺めていた。
「どこの映像だ?真っ暗で何も見えねぇな・・・。外見てぇだが、声も聞こえてこねぇ」
変わり映えのしない映像に興味を失ったのか、ツバキはシンに彼のデバイスを返した。そしてシンもミアのデバイスをツバキに返すと、彼は自分の荷物の元へ行って工具を取り出すと、そのデバイスを分解しようとし始めたのだ。
「おっおい、そんな事して・・・本当にミアに怒られるぞ?」
「大丈夫だって。ちょっと蓋を開けて中を覗くだけなんだから。下手にいじったりしねぇさ!」
何かを企むような悪そうな表情を浮かべながら、ツバキは器用に手先を動かしデバイスを分解していく。ここまで旅を共にしてきた彼のことだ、仲間の信頼を裏切るようなことはしないだろうと、シンはそれ以上口を挟む事なく再び自身のデバイスから、先程の謎の映像を確かめる。
すると突然、シンにだけ聞こえる小さな声で、カメラの向こう側から声が聞こえ始めたのだ。
「良かった、繋がりましたね」
「!?」
「おっと!お静かに・・・。周りの方々に気付かれてしまいますよ?」
向こうから聞こえてくる聞き覚えのある声に、シンは静かにツバキやアカリ、そしてキッチンにいるツクヨの方を確かめ、自分のさっきの反応に気付かれていないことを確認する。
「アンタまさか・・・ケヴィンか?」
「ご名答です!覚えていてくれたようで嬉しいです」
「そうじゃなくて。この映像がアンタの言っていた準備って奴なのか?」
宮殿の会場でケヴィンと別れる際、彼はジークベルトに通じているであろうベルヘルムの周辺に、何か細工を施すようなことを匂わせていた。シンは映像の正体がケヴィンによるものだと知り、この映像がその細工なのかと思っていた。
「正確にはまだ準備段階といったところですがね・・・」
「準備段階?まさかっ・・・!」
シンはケヴィンの思わせぶりな言い方から、彼の思惑を悟る。
「察しが良くて助かります。そうです、シンさんにはもう少しだけ協力を仰ぎたいと思いまして・・・」
「アンタまだ俺達の事を・・・」
「シンさんだって、あそこまで聞いていたら知りたい筈です。アークシティの事や教団の事・・・。大丈夫です、危険な目には遭わせませんから。ただ少しだけ貴方の“影のスキル“の力をお借りしたいのです」
どうやらケヴィンの話では、シンの見ている映像は彼がベルヘルムの部屋に忍び込ませようとしていたカメラのようだ。だが、シン達と別れた後、カメラを仕掛けようと要人達の泊まる部屋の辺りへ歩みを進めているところを、教団の護衛によって止められてしまったようだ。
ジークベルトはケヴィンがアルバへ来ている事を知り、彼らが想像していた以上に警戒心を持っていたようだ。ジークベルトはケヴィンが宮殿の三階へ立ち入ること禁止するよう護衛達に言い渡しており、見つけ次第宮殿から出すよう指示していたようだ。
案の定、見つかってしまったケヴィンは宮殿から追い出され、立ち入りできなくなってしまったのだという。ケヴィンが教団にどんな関わりがあろうと、ジークベルは今回の一件に彼を関わらせたくない事が伺える。
「そこでシンさんには、このカメラをベルヘルム氏の部屋に仕掛けてきてもらいたいのです」
「何だコレ・・・」
思わず漏れてしまった声にツバキが反応し、何かあったのかと尋ねてくる。カメラの存在について知られてしまっているので、今更その機能や操作の方法を隠しておく必要もないかと思ったシンは、ミアの荷物の中にシンが耳につけている物と同じものはないかとツバキに聞いた。
すると彼はミアの荷物の中からそれと同じものを見つける。
「なるほど。カメラと操作するデバイスとやらは別々になってんのな。しかも触れるだけで操作できるのかよ。一体どうなってんだ?」
シン達の暮らす現実世界では、スマホのように画面をタップしたり、振動や温度、指紋認証や音声認識といったものは日常的に電子機器に取り込まれている。
だがこちらの世界では、そういったものはあまり普及していないようだった。現にケヴィンから渡された機器を手にした時、シンやミアはその機械に既視感を抱いていた。
もしかしたらアークシティには、彼らのいた世界と同じような文明が築かれているのかもしれない。そう思うと少し恐ろしくもあった。自分達の暮らしていた世界より少しだけ先にいった文明の世界。
それはまるで、これから人類が辿るであろう問題や展開を予想して物語が紡がれているのではないかと、心のどこかで思っているからなのかもしれない。
シンはケヴィンから教わったデバイスの操作をツバキにも教えると、どこかへ通じるカメラの映像にアクセスしてみるように促す。だが、ツバキはシンの言葉の通りに操作していくも、彼の言うカメラへのアクセスポイントを見つけることが出来なかった。
「あぁ?そんなカメラ見つからないぞ?」
「いや、そんなことは・・・。ちょっと貸してくれ」
「おう」
ツバキからミアのデバイスを借りて操作を試みるシン。そこで初めてツバキが冗談を言っているわけではなかったことを知る。確かに近くにあるカメラへアクセスしようとしてみるも、シンのデバイスにはあったカメラへのアクセスが見当たらない。
「え?本当だ・・・」
「な?嘘なんかつかねぇって。それでそれで?シンの方のデバイスには何が映ってんだよ?」
興味津々のツバキに、シンは自分のデバイスを渡す。そしてツバキもまた、シンが嘘をついていなかったことを知り、その真っ暗な映像を眺めていた。
「どこの映像だ?真っ暗で何も見えねぇな・・・。外見てぇだが、声も聞こえてこねぇ」
変わり映えのしない映像に興味を失ったのか、ツバキはシンに彼のデバイスを返した。そしてシンもミアのデバイスをツバキに返すと、彼は自分の荷物の元へ行って工具を取り出すと、そのデバイスを分解しようとし始めたのだ。
「おっおい、そんな事して・・・本当にミアに怒られるぞ?」
「大丈夫だって。ちょっと蓋を開けて中を覗くだけなんだから。下手にいじったりしねぇさ!」
何かを企むような悪そうな表情を浮かべながら、ツバキは器用に手先を動かしデバイスを分解していく。ここまで旅を共にしてきた彼のことだ、仲間の信頼を裏切るようなことはしないだろうと、シンはそれ以上口を挟む事なく再び自身のデバイスから、先程の謎の映像を確かめる。
すると突然、シンにだけ聞こえる小さな声で、カメラの向こう側から声が聞こえ始めたのだ。
「良かった、繋がりましたね」
「!?」
「おっと!お静かに・・・。周りの方々に気付かれてしまいますよ?」
向こうから聞こえてくる聞き覚えのある声に、シンは静かにツバキやアカリ、そしてキッチンにいるツクヨの方を確かめ、自分のさっきの反応に気付かれていないことを確認する。
「アンタまさか・・・ケヴィンか?」
「ご名答です!覚えていてくれたようで嬉しいです」
「そうじゃなくて。この映像がアンタの言っていた準備って奴なのか?」
宮殿の会場でケヴィンと別れる際、彼はジークベルトに通じているであろうベルヘルムの周辺に、何か細工を施すようなことを匂わせていた。シンは映像の正体がケヴィンによるものだと知り、この映像がその細工なのかと思っていた。
「正確にはまだ準備段階といったところですがね・・・」
「準備段階?まさかっ・・・!」
シンはケヴィンの思わせぶりな言い方から、彼の思惑を悟る。
「察しが良くて助かります。そうです、シンさんにはもう少しだけ協力を仰ぎたいと思いまして・・・」
「アンタまだ俺達の事を・・・」
「シンさんだって、あそこまで聞いていたら知りたい筈です。アークシティの事や教団の事・・・。大丈夫です、危険な目には遭わせませんから。ただ少しだけ貴方の“影のスキル“の力をお借りしたいのです」
どうやらケヴィンの話では、シンの見ている映像は彼がベルヘルムの部屋に忍び込ませようとしていたカメラのようだ。だが、シン達と別れた後、カメラを仕掛けようと要人達の泊まる部屋の辺りへ歩みを進めているところを、教団の護衛によって止められてしまったようだ。
ジークベルトはケヴィンがアルバへ来ている事を知り、彼らが想像していた以上に警戒心を持っていたようだ。ジークベルトはケヴィンが宮殿の三階へ立ち入ること禁止するよう護衛達に言い渡しており、見つけ次第宮殿から出すよう指示していたようだ。
案の定、見つかってしまったケヴィンは宮殿から追い出され、立ち入りできなくなってしまったのだという。ケヴィンが教団にどんな関わりがあろうと、ジークベルは今回の一件に彼を関わらせたくない事が伺える。
「そこでシンさんには、このカメラをベルヘルム氏の部屋に仕掛けてきてもらいたいのです」
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