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隠していた過去
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そのヴァイオリンが持つであろう最大のパフォーマンスを発揮出来ない事に一行がモヤモヤしていると、レオンが上がって来たエレベーターから音楽学校の学生であろう者達が、彼の元へとやって来る。
「あっ!レオン、もう戻ってたのか」
「ステージ裏を探してもいないんだもんなぁ。探したよ」
「ん?こちらの方々は?」
急に賑やかになる中で、レオンは素早くツバキの直したヴァイオリンをケースにしまい込み、友人達に見られないように隠した。どうやら父親との一件に関しては友人達にも話していなかったようだ。
そんな学校の友人達の中には、レオンの音楽の才能や彼を評価する音楽関係者らに目をかけてもらう為近づいて来る者も少なくない。果たしてそれを友人と呼ぶのかは疑問だが、学校生活での様子も有名な楽団やより良い就職活動には重要なものになる。
不本意であれど、こうして近づいて来る者達を逆に利用して、自分の評価へと変えているのが、ツバキとの様子と比べれば伺える。
「あぁ、彼らは別の大陸から偶然いらした修理士らしくて、演奏の前に昔使ってたヴァイオリンの修理を頼んでいたんだ」
「え?何だよそれ。いつの間にそんな方々と知り合いになってたんだよ」
「知ってたら俺も頼んでたのにぃ~!」
「もう俺達の出番は終わっただろ?それに調整はいつものところに任せる方が、演奏にも影響はでない。それにあくまで本職は機材の方だ。ですよね?」
上手いこと話をツクヨ達に振り、先程までの関係性を見せないようにカモフラージュしている。彼の視線からは話を合わせてくれという意思が、ヒシヒシと伝わってくる。
「え・・・えぇ、急な機材トラブルとお聞きしたので、何かお力になれるかと馳せ参じたのですが、楽器の方はからっきしで・・・」
ツバキが話を合わせていると、ツバキの様子が気になり思わず視線を送るツクヨ。彼はそんなレオンの意図を汲み取れているのだろうかと心配になっていた。
「あぁ・・・あ、えぇそうですね。楽器の修理は初めてで苦労しました・・・」
何とか素性をバラさぬようにと、必死に話を合わせながら周りの反応を伺うように慎重に口を開くツバキ。レオンの意図はちゃんと伝わっていたようだ。余計なことは口にしないように、できるだけ言葉を選び手短に話を終わらせる方向へと持っていく。
「アルバが依頼している修復士の方々も、間も無く到着するそうだ。ライブには間に合わなかったが、楽器の調整は彼らに任せよう。さぁ俺達も戻るぞ。ヴァイオリンを見ていただきありがとうございました」
レオンはツクヨとツバキに一礼して、足早に階段の方へと向かっていく。その場を立ち去ってしまうレオンに困惑しながらも、学生らもツクヨ達に会釈をして彼の後を追って去っていった。
「ふぅ・・・レオンのおかげで何とかなったね」
大きく息を吐き、安堵した様子のツバキを見つめるツクヨ。彼も頭が真っ白になっていて、会話を求められたらどうしたものかとヒヤヒヤしていたようだった。
「さぁ、私達もシン達のところへ戻ろうか。ライブも終わったみたいだし、ミアとアカリも戻ってるかもしれない」
二人は一旦、従業員達の帰りを待ち、パーティーへ戻ることを伝える。彼らは予定通りライブを続行できた事に感謝しつつ、今回の一件は主催の教団側に伝えれば何かしらの謝礼や特別な待遇も受けられるのではないかと言っていたが、ツクヨ達はそれよりも早く仲間達の元へ戻りたかったが為、これを断り三階のパーティー会場へと戻っていった。
ミアとアカリを一階のライブ会場へと送り出し、ツクヨとツバキから二階へ探索へ行ってくると言うメッセージを受け取っていたシンは、引き続き大司教であるジークベルトとアルバの音楽監督を降板し、新たな場所で音楽家としての活動をしていく為に挨拶回りをするフェリックスの様子を、ケヴィンのカメラで伺っていた。
暫く彼らの様子を観察していると、VIPルームにアナウンスが流れ、部屋に設けられた大型のスクリーンに一階で行われるライブの映像が映し出された。室内は薄暗くなり、よりライブの臨場感を演出するためか、部屋のあちこちに立体のスピーカーが設置される。
ライブが始まる少し前。スーツを着た主催側の関係者がジークベルトの元へ歩み寄り、何やら耳元で話をしている。VIPルームに仕掛けていたカメラからでは話の内容は聞き取れないが、事前にシン達によってジークベルト本人の衣服に忍ばせたカメラからは、その話の内容が筒抜けになっていた。
どうやら機材にトラブルがあり、ライブは最後まで行うことが出来なくなってしまったとの報告だった。すぐに修理を行える者を手配するように指示するジークベルトだったが、到着は早くてもライブ後になってしまうと告げられる。
どうしたものかと悩んでいると、それを目にしていたフェリクスが何かあったのかと尋ねる。ジークベルトは大したことではないと軽くあしらうも、アルバへ招待した要人達にはなんと説明したものかと、顎に手を当て悩んでいる様子が伺えた。
「何やらトラブルのようですね」
「ライブが行えないと何か不都合でもあるのか?」
「依頼していた楽団というのが有名なところのものなのでしょう。それを楽しみにしていた方々もいるので、どうやって穏便にそれを伝え、代わりになるものを用意するのだとか、納得してもらえるのだとか・・・。まぁ要するに、要人達へのケアをどうするのか考えているのでしょう」
ライブが中断されたり、大幅に予定が変更されることで、ジークベルトの思惑が大きく動かされることはないだろうが、要人達の機嫌を取るのは今後の活動を円滑に進める為の戦略に繋がる。
その為に予定を組んで設けたライブだったのだが、それが使えないとなると、後日別の方法で彼らの機嫌を取らねばならない事になる。例え機材の修理がライブ中に完了しても、トラブルがあった事実は隠せない。
ジークベルトの表情から余裕が無くなるも、フェリクスと共に表面上では何事もなかったかのように振る舞うジークベルトの元に、暫くして吉報が届く事になる。
それは、会場にいた修理士によって急遽機材の修理が可能となり、時間さえ稼げれば何とか予定通りライブを続けることができるかもしれないというものだった。
「あっ!レオン、もう戻ってたのか」
「ステージ裏を探してもいないんだもんなぁ。探したよ」
「ん?こちらの方々は?」
急に賑やかになる中で、レオンは素早くツバキの直したヴァイオリンをケースにしまい込み、友人達に見られないように隠した。どうやら父親との一件に関しては友人達にも話していなかったようだ。
そんな学校の友人達の中には、レオンの音楽の才能や彼を評価する音楽関係者らに目をかけてもらう為近づいて来る者も少なくない。果たしてそれを友人と呼ぶのかは疑問だが、学校生活での様子も有名な楽団やより良い就職活動には重要なものになる。
不本意であれど、こうして近づいて来る者達を逆に利用して、自分の評価へと変えているのが、ツバキとの様子と比べれば伺える。
「あぁ、彼らは別の大陸から偶然いらした修理士らしくて、演奏の前に昔使ってたヴァイオリンの修理を頼んでいたんだ」
「え?何だよそれ。いつの間にそんな方々と知り合いになってたんだよ」
「知ってたら俺も頼んでたのにぃ~!」
「もう俺達の出番は終わっただろ?それに調整はいつものところに任せる方が、演奏にも影響はでない。それにあくまで本職は機材の方だ。ですよね?」
上手いこと話をツクヨ達に振り、先程までの関係性を見せないようにカモフラージュしている。彼の視線からは話を合わせてくれという意思が、ヒシヒシと伝わってくる。
「え・・・えぇ、急な機材トラブルとお聞きしたので、何かお力になれるかと馳せ参じたのですが、楽器の方はからっきしで・・・」
ツバキが話を合わせていると、ツバキの様子が気になり思わず視線を送るツクヨ。彼はそんなレオンの意図を汲み取れているのだろうかと心配になっていた。
「あぁ・・・あ、えぇそうですね。楽器の修理は初めてで苦労しました・・・」
何とか素性をバラさぬようにと、必死に話を合わせながら周りの反応を伺うように慎重に口を開くツバキ。レオンの意図はちゃんと伝わっていたようだ。余計なことは口にしないように、できるだけ言葉を選び手短に話を終わらせる方向へと持っていく。
「アルバが依頼している修復士の方々も、間も無く到着するそうだ。ライブには間に合わなかったが、楽器の調整は彼らに任せよう。さぁ俺達も戻るぞ。ヴァイオリンを見ていただきありがとうございました」
レオンはツクヨとツバキに一礼して、足早に階段の方へと向かっていく。その場を立ち去ってしまうレオンに困惑しながらも、学生らもツクヨ達に会釈をして彼の後を追って去っていった。
「ふぅ・・・レオンのおかげで何とかなったね」
大きく息を吐き、安堵した様子のツバキを見つめるツクヨ。彼も頭が真っ白になっていて、会話を求められたらどうしたものかとヒヤヒヤしていたようだった。
「さぁ、私達もシン達のところへ戻ろうか。ライブも終わったみたいだし、ミアとアカリも戻ってるかもしれない」
二人は一旦、従業員達の帰りを待ち、パーティーへ戻ることを伝える。彼らは予定通りライブを続行できた事に感謝しつつ、今回の一件は主催の教団側に伝えれば何かしらの謝礼や特別な待遇も受けられるのではないかと言っていたが、ツクヨ達はそれよりも早く仲間達の元へ戻りたかったが為、これを断り三階のパーティー会場へと戻っていった。
ミアとアカリを一階のライブ会場へと送り出し、ツクヨとツバキから二階へ探索へ行ってくると言うメッセージを受け取っていたシンは、引き続き大司教であるジークベルトとアルバの音楽監督を降板し、新たな場所で音楽家としての活動をしていく為に挨拶回りをするフェリックスの様子を、ケヴィンのカメラで伺っていた。
暫く彼らの様子を観察していると、VIPルームにアナウンスが流れ、部屋に設けられた大型のスクリーンに一階で行われるライブの映像が映し出された。室内は薄暗くなり、よりライブの臨場感を演出するためか、部屋のあちこちに立体のスピーカーが設置される。
ライブが始まる少し前。スーツを着た主催側の関係者がジークベルトの元へ歩み寄り、何やら耳元で話をしている。VIPルームに仕掛けていたカメラからでは話の内容は聞き取れないが、事前にシン達によってジークベルト本人の衣服に忍ばせたカメラからは、その話の内容が筒抜けになっていた。
どうやら機材にトラブルがあり、ライブは最後まで行うことが出来なくなってしまったとの報告だった。すぐに修理を行える者を手配するように指示するジークベルトだったが、到着は早くてもライブ後になってしまうと告げられる。
どうしたものかと悩んでいると、それを目にしていたフェリクスが何かあったのかと尋ねる。ジークベルトは大したことではないと軽くあしらうも、アルバへ招待した要人達にはなんと説明したものかと、顎に手を当て悩んでいる様子が伺えた。
「何やらトラブルのようですね」
「ライブが行えないと何か不都合でもあるのか?」
「依頼していた楽団というのが有名なところのものなのでしょう。それを楽しみにしていた方々もいるので、どうやって穏便にそれを伝え、代わりになるものを用意するのだとか、納得してもらえるのだとか・・・。まぁ要するに、要人達へのケアをどうするのか考えているのでしょう」
ライブが中断されたり、大幅に予定が変更されることで、ジークベルトの思惑が大きく動かされることはないだろうが、要人達の機嫌を取るのは今後の活動を円滑に進める為の戦略に繋がる。
その為に予定を組んで設けたライブだったのだが、それが使えないとなると、後日別の方法で彼らの機嫌を取らねばならない事になる。例え機材の修理がライブ中に完了しても、トラブルがあった事実は隠せない。
ジークベルトの表情から余裕が無くなるも、フェリクスと共に表面上では何事もなかったかのように振る舞うジークベルトの元に、暫くして吉報が届く事になる。
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