1,238 / 1,646
合流と情報収集
しおりを挟む
レオンはクリスを見つけると、彼に歩み寄って行きマティアスとフェリクスが何処へ向かったのか、何をしに向かったのかを尋ねる。
「なぁ、クリス」
「レっレオン・・・どうしたんだい?」
「お前、マティアス司祭達が何処に何しに行ったのか知らないか?」
「どうしてそんな事を?」
なかなか質問に答えようとしないクリスに苛立ってきたのか、レオンは一歩クリスの方へ歩み寄ると、高圧的に睨みを利かせて同じ質問を繰り返した。
「いいから答えろよ。何処に、何しに行ったんだ?」
「しっ知らないよ!僕も聞かされてない!ただ・・・あっちに行ったってことはVIPルームに行ったんじゃない・・・かな?それ以外、目ぼしいところはないと思うけど・・・」
「VIPルームって・・・。俺達でも簡単に入れないところじゃないか。フェリクス先生の様子がおかしかった。お前、何か知らないか?」
やはりマティアスとフェリクスが向かったのは、カール医師が予想した通りVIPルームとみて間違いなさそうだ。後はそこで彼らが何を話そうとしているかだが、それについてはクリスもマティアス司祭から何も聞かされていないようだった。
「分からないよ。司祭様はこのところ式典の準備で忙しそうにしていたし、僕も色々と手伝わされて大変だった・・・」
「何を手伝わされた?その中でフェリクス先生に関する事はなかったか?」
「どうかな・・・。直接フェリクス先生のところに何かを届けたり渡しに行くって事はなかったけど・・・」
どうやらこれ以上彼を問い詰めたところで、新しい情報は出てきそうになかった。大した情報は得られなかったが、二人はVIPルームへ向かった事はほぼ確定的と言ってもいいだろう。
「そうか。分かった、もう行っていいぞ」
「うっうん・・・」
急に引き止められ、訳のわからない質問を受けたクリスはやっと解放されたと言わんばかりに、そそくさとその場を離れていった。顎に手を当て、クリスの話を整理しながら一行の元へ戻ってきたレオン。そんな彼に、成果は得られたのかと問うカール。
「どうだったレオン。君の望む情報は得られたかい?」
「いえ全く・・・。どうやらVIPルームへ向かったのは確かなようですが、先生に関する情報は得られませんでした・・・」
「気にし過ぎだったのかもしれないね。なに、その内分かることさ。今は宴を楽しみなさいという神様の思し召しなのでしょう。私も知り合いに会ったら聞いてみましょう」
「ありがとうございます」
「それでは私もそろそろ・・・。まだ他に挨拶に伺っていない方々がいますので」
「引き止めてしまってすみませんでした。色々教えていただき感謝致します」
一行はカールに御礼を伝えると、彼とはそこで別れた。同時にレオンともそこで別れ、ツクヨ達は教団に関する情報を得たことで、ここでの目的を果たす。別行動となっていたシンとミアを探しながら会場を歩いていると、端の方にあるテーブルに二人の影と見知らぬ男の姿を見つける。
「おい、シン達だぜ!」
「でも、どなたかといらっしゃるようですが・・・」
「取り敢えず私達の目的は果たせたとだけ伝えにいこう。あの様子だと、向こうもルーカス司祭の依頼は果たせたのかな?」
三人が近づいていくと、彼らに気づいたミアがこちらに手を振ってきた。仕掛けたカメラからの音声に集中していたシンとケヴィンは、そんな彼女の行動で漸くツクヨ達の接近に気がつく。
「こんな端っこにいたんだね、探したよぉ・・・」
「カールさんとの“用事“は済ませてきたぜ!」
「あの・・・こちらの方は?」
見知らぬ第三者がいるところで、自分達の目的を明かさないようツバキが機転を効かせる。そしてアカリの質問へは、本人であるケヴィンが自己紹介を兼ねて答える。
自身が探偵である事と、ある事件の事に関してシン達と協力関係を結んだこととその経緯を。
「なに?俺達疑われてんのか?」
「あなた達というよりは、主にシンさんですけどね。彼のスキルは隠密に長けているようなので、失踪事件を実行するにはもってこいの能力だというだけです」
しかし、アルバで起きていたという失踪事件は、シン達のアルバ到着からとでは時系列が合わない。その事についてケヴィンに尋ねると、事前に協力者がいた可能性や、街での怪しい行動について突っ込まれてしまい、疑いを完全に晴らすことは出来なかった。
そこで事件の解決に協力してもらうことで、一行の身の潔白をケヴィン自身が証明することが出来ると、取引を持ちかけてきたのだ。シンとミアと協力する中で、情報を持っているであろうVIPルームにいるジークベルトにカメラを仕掛ける事に成功したケヴィン達は、教団の上層部や一部の者しか知らない事を耳にする。
「何だ、結局シン達も教団についての話は聞いてたって事かよ」
「別行動する意味、ありませんでしたね」
「ですが、あまり大人数で固まっていても身動きが取りづらくなってしまいますので、このままこちらの行動を見張れる位置でパーティーを楽しむお客を演じてもらえると助かります」
シンとミアも、ケヴィンのその案には賛成だった。必要とあらば協力し、それ以外では無関係を装うことで護衛や警備に目をつけられないようにするのが最善だろう。
また、盗聴や内部の様子を伺うのに集中しなければならないシン達は、他のことに関する情報を集められない。VIPルームで盗み聞いた重要な単語や言葉を調べる別働隊がいた方が効率もいい。
「分かった。私達は引き続き、会場で情報を集めてくるから、力が必要なら呼んで」
「まぁじっとしてるよりかは良いな」
「なるべく近くで待機しておきますので」
一行は合流を果たしたが、ケヴィンからの新たな依頼を受けたことにより、VIPルームを監視盗聴することで情報を得るチームと、仕入れた情報について会場の関係者に聞き込みを行うチームとに分かれる事となった。
シン達の元から離れたツクヨ達は、別の空いているテーブルに座り、彼らからの指示を待つ事にした。その間、料理や音楽の楽しんでいると、マティアスとフェリクスが消えていった廊下の方から、ツクヨとアカリが知る唯一の音楽家であり歌手である女性が現れた。
「なぁ、クリス」
「レっレオン・・・どうしたんだい?」
「お前、マティアス司祭達が何処に何しに行ったのか知らないか?」
「どうしてそんな事を?」
なかなか質問に答えようとしないクリスに苛立ってきたのか、レオンは一歩クリスの方へ歩み寄ると、高圧的に睨みを利かせて同じ質問を繰り返した。
「いいから答えろよ。何処に、何しに行ったんだ?」
「しっ知らないよ!僕も聞かされてない!ただ・・・あっちに行ったってことはVIPルームに行ったんじゃない・・・かな?それ以外、目ぼしいところはないと思うけど・・・」
「VIPルームって・・・。俺達でも簡単に入れないところじゃないか。フェリクス先生の様子がおかしかった。お前、何か知らないか?」
やはりマティアスとフェリクスが向かったのは、カール医師が予想した通りVIPルームとみて間違いなさそうだ。後はそこで彼らが何を話そうとしているかだが、それについてはクリスもマティアス司祭から何も聞かされていないようだった。
「分からないよ。司祭様はこのところ式典の準備で忙しそうにしていたし、僕も色々と手伝わされて大変だった・・・」
「何を手伝わされた?その中でフェリクス先生に関する事はなかったか?」
「どうかな・・・。直接フェリクス先生のところに何かを届けたり渡しに行くって事はなかったけど・・・」
どうやらこれ以上彼を問い詰めたところで、新しい情報は出てきそうになかった。大した情報は得られなかったが、二人はVIPルームへ向かった事はほぼ確定的と言ってもいいだろう。
「そうか。分かった、もう行っていいぞ」
「うっうん・・・」
急に引き止められ、訳のわからない質問を受けたクリスはやっと解放されたと言わんばかりに、そそくさとその場を離れていった。顎に手を当て、クリスの話を整理しながら一行の元へ戻ってきたレオン。そんな彼に、成果は得られたのかと問うカール。
「どうだったレオン。君の望む情報は得られたかい?」
「いえ全く・・・。どうやらVIPルームへ向かったのは確かなようですが、先生に関する情報は得られませんでした・・・」
「気にし過ぎだったのかもしれないね。なに、その内分かることさ。今は宴を楽しみなさいという神様の思し召しなのでしょう。私も知り合いに会ったら聞いてみましょう」
「ありがとうございます」
「それでは私もそろそろ・・・。まだ他に挨拶に伺っていない方々がいますので」
「引き止めてしまってすみませんでした。色々教えていただき感謝致します」
一行はカールに御礼を伝えると、彼とはそこで別れた。同時にレオンともそこで別れ、ツクヨ達は教団に関する情報を得たことで、ここでの目的を果たす。別行動となっていたシンとミアを探しながら会場を歩いていると、端の方にあるテーブルに二人の影と見知らぬ男の姿を見つける。
「おい、シン達だぜ!」
「でも、どなたかといらっしゃるようですが・・・」
「取り敢えず私達の目的は果たせたとだけ伝えにいこう。あの様子だと、向こうもルーカス司祭の依頼は果たせたのかな?」
三人が近づいていくと、彼らに気づいたミアがこちらに手を振ってきた。仕掛けたカメラからの音声に集中していたシンとケヴィンは、そんな彼女の行動で漸くツクヨ達の接近に気がつく。
「こんな端っこにいたんだね、探したよぉ・・・」
「カールさんとの“用事“は済ませてきたぜ!」
「あの・・・こちらの方は?」
見知らぬ第三者がいるところで、自分達の目的を明かさないようツバキが機転を効かせる。そしてアカリの質問へは、本人であるケヴィンが自己紹介を兼ねて答える。
自身が探偵である事と、ある事件の事に関してシン達と協力関係を結んだこととその経緯を。
「なに?俺達疑われてんのか?」
「あなた達というよりは、主にシンさんですけどね。彼のスキルは隠密に長けているようなので、失踪事件を実行するにはもってこいの能力だというだけです」
しかし、アルバで起きていたという失踪事件は、シン達のアルバ到着からとでは時系列が合わない。その事についてケヴィンに尋ねると、事前に協力者がいた可能性や、街での怪しい行動について突っ込まれてしまい、疑いを完全に晴らすことは出来なかった。
そこで事件の解決に協力してもらうことで、一行の身の潔白をケヴィン自身が証明することが出来ると、取引を持ちかけてきたのだ。シンとミアと協力する中で、情報を持っているであろうVIPルームにいるジークベルトにカメラを仕掛ける事に成功したケヴィン達は、教団の上層部や一部の者しか知らない事を耳にする。
「何だ、結局シン達も教団についての話は聞いてたって事かよ」
「別行動する意味、ありませんでしたね」
「ですが、あまり大人数で固まっていても身動きが取りづらくなってしまいますので、このままこちらの行動を見張れる位置でパーティーを楽しむお客を演じてもらえると助かります」
シンとミアも、ケヴィンのその案には賛成だった。必要とあらば協力し、それ以外では無関係を装うことで護衛や警備に目をつけられないようにするのが最善だろう。
また、盗聴や内部の様子を伺うのに集中しなければならないシン達は、他のことに関する情報を集められない。VIPルームで盗み聞いた重要な単語や言葉を調べる別働隊がいた方が効率もいい。
「分かった。私達は引き続き、会場で情報を集めてくるから、力が必要なら呼んで」
「まぁじっとしてるよりかは良いな」
「なるべく近くで待機しておきますので」
一行は合流を果たしたが、ケヴィンからの新たな依頼を受けたことにより、VIPルームを監視盗聴することで情報を得るチームと、仕入れた情報について会場の関係者に聞き込みを行うチームとに分かれる事となった。
シン達の元から離れたツクヨ達は、別の空いているテーブルに座り、彼らからの指示を待つ事にした。その間、料理や音楽の楽しんでいると、マティアスとフェリクスが消えていった廊下の方から、ツクヨとアカリが知る唯一の音楽家であり歌手である女性が現れた。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる