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意外な依頼の達成
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「それで?アタシらは具体的にどうすりゃいいんだ?こっちもその事件とやらに動いてやる時間はねぇぞ?」
それはあくまで今夜限り。ルーカスの依頼であるジークベルト大司教に関する近年の調査を完了する事が、今彼らが潜入している宮殿へ入る条件だった。その中で教団組織の情報を集める事が、シン達にとっての目的。
だが宮殿内で怪しまれず動く為には、シンとミアを引き止めたケヴィンの要求を飲むしかない。彼が警備の者に一言言うだけで会場から追い出されてしまうからだ。
「あなた方の目的は大司教の近年の行動について調べる事。違いますか?」
「知ってやがったのか・・・」
「えぇ、ルーカス司祭を調べればあなた方がここへやって来た目的はすぐにわかります。それに関しては既に完了したようなものですのでご安心を・・・」
「え?」
ケヴィンは既にシン達の目的を突き止めていた。その上でなんと、彼はマティアス司祭の資料や独自で調べた今夜の祝宴の要人達の情報について調べていたのだという。
その情報の中には勿論、ジークベルトの情報も含まれており、ルーカスが知りたがっていた彼がジークベルトと離れた地へ飛ばされた後の動きについても把握していたようだった。
「何だよ、じゃぁアンタから聞けば万事解決じゃねぇか!こりゃぁ楽な依頼だったな」
「ですが私の持っている情報は、大司教の近年の活躍であり何故アルバへやって来たのか。その本当の理由については分かりません」
「それで十分よ!ルーカスは大司教に近づけねぇ。そして教団を通してジークベルトの事を調べれば本人に気付かれちまう。アルバに来た理由なんざ知らなくても、近年の動きさえ知れれば十分だぜ」
本来の目的以外に出来てしまった依頼を、こんなに簡単に済ませられたと嬉しそうにテーブルの上のグラスに手を伸ばすミア。そのグラスには赤い飲み物が注がれていた。恐らくワインだろうと一気に口に含んだミアは、それを飲み込んだ後に大きく表情を歪めた。
「うえぇぇぇぇッ!!なんだコレぇ!?」
「調査中にアルコールを摂取するのは控えています。それはこの地方特有の野菜で作ったジュースですよ?」
思いもしない物を飲んでしまったと、ミアは近くにいたウェイターを引き止め水を貰うと、喉を洗い流すように一気に飲み干した。緊張から解き放たれたかのように、いつもの調子に戻るミアを尻目に、シンはケヴィンにルーカスの依頼であるジークベルトの事に関して尋ねた。
「それじゃぁ早速で悪いが、その大司教の話とやらを聞かせてくれないか?」
「えぇ、分かりました。ですが・・・恐らくルーカス司祭にとっては望まぬ情報かもしれませんね・・・」
元々同じ国で、司祭として教団に貢献していたルーカスとジークベルトだったが、出世欲の強かったジークベルトはそこで一部の人々を利用し成果を上げることで、教団でもメキメキとその地位と力をつけていった。
同期としてそんなやり方は見過ごせぬと働きかけたルーカスだったが、そんな彼を邪魔だと考えたジークベルトは教団で得た力を使い、彼を別の地へと飛ばしたのだった。
その後のジークベルトは、そのまま大司教まで上り詰めると自国の者を直接利用するのを止めると、裏で活動する組織などと手を組み、自分の欲を満たす為に表向きは立派な大司教として、裏では随分と汚い事をしていたようだ。
それこそ聖職者にあるまじき行為や、価値のない人間の選定など、およそ人の所業とは思えぬ行為にまで手を出していた。そして自分の過去の行いを知る人物を、その重要度に分けて次々に始末しているのだという。
事故死や病死に見せかけたり、モンスターに襲わせたりなどと過去の遺恨を根こそぎ無きものにしようと動き出しており、その魔の手はかつての同胞であるルーカスの元まで伸びてきたというわけだ。
だが妙なのは、その始末に本人が赴いているという事だろう。それだけ裏の組織と癒着していたのなら、別の地にて暗殺を依頼した方が疑いの目が向くこともないだろう。
わざわざ移動の話を受けてまでアルバへやって来た本当の目的とは何なのだろうか。ケヴィンのジークベルトに関する情報は、彼がルーカスの危惧していた通り真っ黒な行いを積み重ねてきたという歴史だったのだ。
「大司教がこの街に何しにやって来たのかはどうでもいい。これでルーカス司祭の依頼は果たした・・・と言えるのかな?」
「大丈夫だろ。後は教団の事だな、ついでにその教団の話も聞かせてもらえませんかねぇ?名探偵様ぁ?」
やっと足枷になっていたものが外れ安堵したのか、ミアはテーブルの料理を少しずつつまみながら、ついでに本来の目的も果たせないかどうか、ケヴィンに教団の規模や目的などについて尋ねた。
「おや?ご存じでないのですか?彼らは神園還教しんおんげんきょうと言って、その数はこの世界に存在する宗教団体の中でも、最も大規模な教団となっています」
「あぁ?聞いたことねぇなぁ。シンは?」
「いや、俺もない・・・」
二人が言う聞いた事がないと言うのは、文字通り現実世界でのゲームとしてのWoFやこのWoFによく似た世界での日々での意味だった。これはつまり、現実世界のWoFユーザーであるシンとミアの知る世界では存在しなかった宗教団体となる。
だがそれだけ大規模な教団であるのなら、どうして今までの街でそのような名前を聞かなかったのか。単純に尋ねなかったからなのか、それともシン達がこちらの世界へ入って来てから、何らかの変化が訪れたのだろうか。
それはあくまで今夜限り。ルーカスの依頼であるジークベルト大司教に関する近年の調査を完了する事が、今彼らが潜入している宮殿へ入る条件だった。その中で教団組織の情報を集める事が、シン達にとっての目的。
だが宮殿内で怪しまれず動く為には、シンとミアを引き止めたケヴィンの要求を飲むしかない。彼が警備の者に一言言うだけで会場から追い出されてしまうからだ。
「あなた方の目的は大司教の近年の行動について調べる事。違いますか?」
「知ってやがったのか・・・」
「えぇ、ルーカス司祭を調べればあなた方がここへやって来た目的はすぐにわかります。それに関しては既に完了したようなものですのでご安心を・・・」
「え?」
ケヴィンは既にシン達の目的を突き止めていた。その上でなんと、彼はマティアス司祭の資料や独自で調べた今夜の祝宴の要人達の情報について調べていたのだという。
その情報の中には勿論、ジークベルトの情報も含まれており、ルーカスが知りたがっていた彼がジークベルトと離れた地へ飛ばされた後の動きについても把握していたようだった。
「何だよ、じゃぁアンタから聞けば万事解決じゃねぇか!こりゃぁ楽な依頼だったな」
「ですが私の持っている情報は、大司教の近年の活躍であり何故アルバへやって来たのか。その本当の理由については分かりません」
「それで十分よ!ルーカスは大司教に近づけねぇ。そして教団を通してジークベルトの事を調べれば本人に気付かれちまう。アルバに来た理由なんざ知らなくても、近年の動きさえ知れれば十分だぜ」
本来の目的以外に出来てしまった依頼を、こんなに簡単に済ませられたと嬉しそうにテーブルの上のグラスに手を伸ばすミア。そのグラスには赤い飲み物が注がれていた。恐らくワインだろうと一気に口に含んだミアは、それを飲み込んだ後に大きく表情を歪めた。
「うえぇぇぇぇッ!!なんだコレぇ!?」
「調査中にアルコールを摂取するのは控えています。それはこの地方特有の野菜で作ったジュースですよ?」
思いもしない物を飲んでしまったと、ミアは近くにいたウェイターを引き止め水を貰うと、喉を洗い流すように一気に飲み干した。緊張から解き放たれたかのように、いつもの調子に戻るミアを尻目に、シンはケヴィンにルーカスの依頼であるジークベルトの事に関して尋ねた。
「それじゃぁ早速で悪いが、その大司教の話とやらを聞かせてくれないか?」
「えぇ、分かりました。ですが・・・恐らくルーカス司祭にとっては望まぬ情報かもしれませんね・・・」
元々同じ国で、司祭として教団に貢献していたルーカスとジークベルトだったが、出世欲の強かったジークベルトはそこで一部の人々を利用し成果を上げることで、教団でもメキメキとその地位と力をつけていった。
同期としてそんなやり方は見過ごせぬと働きかけたルーカスだったが、そんな彼を邪魔だと考えたジークベルトは教団で得た力を使い、彼を別の地へと飛ばしたのだった。
その後のジークベルトは、そのまま大司教まで上り詰めると自国の者を直接利用するのを止めると、裏で活動する組織などと手を組み、自分の欲を満たす為に表向きは立派な大司教として、裏では随分と汚い事をしていたようだ。
それこそ聖職者にあるまじき行為や、価値のない人間の選定など、およそ人の所業とは思えぬ行為にまで手を出していた。そして自分の過去の行いを知る人物を、その重要度に分けて次々に始末しているのだという。
事故死や病死に見せかけたり、モンスターに襲わせたりなどと過去の遺恨を根こそぎ無きものにしようと動き出しており、その魔の手はかつての同胞であるルーカスの元まで伸びてきたというわけだ。
だが妙なのは、その始末に本人が赴いているという事だろう。それだけ裏の組織と癒着していたのなら、別の地にて暗殺を依頼した方が疑いの目が向くこともないだろう。
わざわざ移動の話を受けてまでアルバへやって来た本当の目的とは何なのだろうか。ケヴィンのジークベルトに関する情報は、彼がルーカスの危惧していた通り真っ黒な行いを積み重ねてきたという歴史だったのだ。
「大司教がこの街に何しにやって来たのかはどうでもいい。これでルーカス司祭の依頼は果たした・・・と言えるのかな?」
「大丈夫だろ。後は教団の事だな、ついでにその教団の話も聞かせてもらえませんかねぇ?名探偵様ぁ?」
やっと足枷になっていたものが外れ安堵したのか、ミアはテーブルの料理を少しずつつまみながら、ついでに本来の目的も果たせないかどうか、ケヴィンに教団の規模や目的などについて尋ねた。
「おや?ご存じでないのですか?彼らは神園還教しんおんげんきょうと言って、その数はこの世界に存在する宗教団体の中でも、最も大規模な教団となっています」
「あぁ?聞いたことねぇなぁ。シンは?」
「いや、俺もない・・・」
二人が言う聞いた事がないと言うのは、文字通り現実世界でのゲームとしてのWoFやこのWoFによく似た世界での日々での意味だった。これはつまり、現実世界のWoFユーザーであるシンとミアの知る世界では存在しなかった宗教団体となる。
だがそれだけ大規模な教団であるのなら、どうして今までの街でそのような名前を聞かなかったのか。単純に尋ねなかったからなのか、それともシン達がこちらの世界へ入って来てから、何らかの変化が訪れたのだろうか。
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