1,210 / 1,646
店主マルコ・ハーラー
しおりを挟む
一行の前に現れたのは、仕立て屋“フォルコメン“の店主であるマルコ・ハーラー。ニクラス教会の司祭であるルーカスから、式典へ出席する客人の服を仕立てて置いて欲しいと頼まれていたマルコは、人数と年齢層、そして性別とそれぞれの大体の身長を聞くと、条件に合う服を幾つか用意していた。
後は信頼する店員達に任せ、実際に訪れたシン達の体格に見合う服を見ただけで選別し、ほとんどピッタリの採寸をしてみせた。
「すごく立派な物を用意して頂いていたようで。サイズもピッタリでした」
「それは良かった。ウチの店員の目に狂いはなかったようですね。話はルーカスから伺っております。どうやら大司教の式典へ出席なされるようで」
「ルーカス司祭からはなんと?」
シンはルーカスが自分達の事をなんと紹介したのか気になった。一行が式典へ出席するのは、教団の事を調べる為であり、ルーカスから依頼されたジークベルトの事を調べて欲しいという目的がある。
しかし、教会の奥で他人に聞かれないように話をされたことから、ルーカスの依頼は秘密裏に行われるものであることが窺える。マルコの話によると、彼はルーカスとは仲が良いようだ。
彼はそんなルーカスの思惑を知っているのだろうか。どこまでの内容を話して良いのか分からない以上、ルーカスから聞いた話を漏らすことはできない。それが例え友人のマルコであっても。
そして案の定、マルコはシン達が式典へ出席する目的を知らないようだった。ルーカスはシン達の事を遠方からやって来た友人達であると彼に紹介したようで、丁度大司教が来るということで式典への出席を勧めたのだという話を聞かされる。
「大司教様が遥々いらっしゃるのは珍しい事ですからなぁ。あなた方は運がいい。丁度いい時期にアルバへいらっしゃいましたな」
「えぇ、我々も大司教様がお目にかかれると思ってもいませんでした」
マルコがどれだけ教団に入れ込んでいるのか分からない以上、シンは彼の発言に注意しながら話を合わせる。
「そうでしょうとも、そうでしょうとも。今回いらっしゃるジークベルト大司教様は、異例の大出世をなされた偉大な方と聞いております。私も仕事がなければ、一度でいいから御目見したかったのですがねぇ・・・」
マルコはシン達の他にも、多くの出席者の衣装を用意しなければならないようだった。その中には式典に参加するアルバの要人や、外部から式典の為にやってくる著名人などもいるのだという。
それほどマルコの仕立て屋フォルコメンは、アルバの中でも有数の店であることが窺える。
「そして何より、式典で披露する音楽を指揮するのは、あの有名な作曲家であり指揮者でもある“フェリクス・メルテンス“氏だ。きっとご満足いただけるはずです」
彼の話から上がったフェリクスという名を聞いて、シンはグーデル教会へ忍び込んだ際に聞いた話の事を思い出す。ルーカスに出された課題を達成する為、護衛隊長がいるであろうシークベルトの近くへ迫ったシンは、グーデル教会にて、ジークベルトと教会の司祭であるマティアス、そしてマルコの口からも出た指揮者であるフェリクスもいた。
だが、教会で話されていた内容は穏やかなものではなかった。それというのも、ジークベルトの口から語られたのは、フェリクスをアルバの音楽監督から下ろさせるという内容だったのだ。
これにはフェリクス本人も納得がいかず、声を荒立てて猛抗議していた。そして彼をアルバへ連れてきたといマティアスもまた、何故そのような事になったのかとジークベルトを問い詰めていた。
そんな彼らの訴えを教団の決定だと一蹴したジークベルトは、今回の式典がアルバの音楽監督であるフェリクスの最後の指揮だと言い、その後は彼に代わるアルバの音楽監督として別の人物を連れてきていたのだった。
マルコの口ぶりから、彼はそのことを知らないようだった。そもそも、この事を知っている人物はいるのだろうか。もしかしたらルーカスでさえこの事を知らないのかもしれない。
「音楽家フェリクス・・・」
「おぉ!貴方もご存じですかな?彼はこのアルバの誇りです。マティアス司祭も彼を連れてくるのに大変苦労されたようです」
マルコは音楽家フェリクスが如何に偉大な人物であるかを語り始めていたようだが、シンはあまりその内容が頭に入ってこなかった。
すると、店の店員がマルコの元へやって来ると、彼の語りを止める。
「店長、そろそろ・・・」
「あぁ、もうそんな時間か。すみません、私はこれから挨拶を兼ねて衣装を届けるのに同行しなければなりませんので。どうぞ式典を楽しんでいって下さい」
「ありがとうございます」
「皆さんの衣装の調整も完了しましたので、お着替えになられる際はいつでもお声がけ下さい」
どうやらマルコと話している間に、一行の衣装の調整も終わったようだ。これで後は式典へ向かうだけとなった。外部の出席者や一般の出席は夜に行われるグーデル教会での演奏と合唱からとなる。
その後はアルバの中でも最も大きく広大な敷地を有する宮殿にて、全ての者を集めたパーティーが開催される。色んな国や街からやってくる要人達の話を聞けるのはその場でしかない。
しかし、恐らくジークベルトや要人達が出席する場には、外部の者であるシン達は近づくことすら出来ないだろう。そこで役に立つのが、ルーカスに試された諜報能力だ。
それらをふんだんに駆使して、ジークベルトの事を調べ、教団の活動や規模を調べるのがシン達のミッションとなる。
後は信頼する店員達に任せ、実際に訪れたシン達の体格に見合う服を見ただけで選別し、ほとんどピッタリの採寸をしてみせた。
「すごく立派な物を用意して頂いていたようで。サイズもピッタリでした」
「それは良かった。ウチの店員の目に狂いはなかったようですね。話はルーカスから伺っております。どうやら大司教の式典へ出席なされるようで」
「ルーカス司祭からはなんと?」
シンはルーカスが自分達の事をなんと紹介したのか気になった。一行が式典へ出席するのは、教団の事を調べる為であり、ルーカスから依頼されたジークベルトの事を調べて欲しいという目的がある。
しかし、教会の奥で他人に聞かれないように話をされたことから、ルーカスの依頼は秘密裏に行われるものであることが窺える。マルコの話によると、彼はルーカスとは仲が良いようだ。
彼はそんなルーカスの思惑を知っているのだろうか。どこまでの内容を話して良いのか分からない以上、ルーカスから聞いた話を漏らすことはできない。それが例え友人のマルコであっても。
そして案の定、マルコはシン達が式典へ出席する目的を知らないようだった。ルーカスはシン達の事を遠方からやって来た友人達であると彼に紹介したようで、丁度大司教が来るということで式典への出席を勧めたのだという話を聞かされる。
「大司教様が遥々いらっしゃるのは珍しい事ですからなぁ。あなた方は運がいい。丁度いい時期にアルバへいらっしゃいましたな」
「えぇ、我々も大司教様がお目にかかれると思ってもいませんでした」
マルコがどれだけ教団に入れ込んでいるのか分からない以上、シンは彼の発言に注意しながら話を合わせる。
「そうでしょうとも、そうでしょうとも。今回いらっしゃるジークベルト大司教様は、異例の大出世をなされた偉大な方と聞いております。私も仕事がなければ、一度でいいから御目見したかったのですがねぇ・・・」
マルコはシン達の他にも、多くの出席者の衣装を用意しなければならないようだった。その中には式典に参加するアルバの要人や、外部から式典の為にやってくる著名人などもいるのだという。
それほどマルコの仕立て屋フォルコメンは、アルバの中でも有数の店であることが窺える。
「そして何より、式典で披露する音楽を指揮するのは、あの有名な作曲家であり指揮者でもある“フェリクス・メルテンス“氏だ。きっとご満足いただけるはずです」
彼の話から上がったフェリクスという名を聞いて、シンはグーデル教会へ忍び込んだ際に聞いた話の事を思い出す。ルーカスに出された課題を達成する為、護衛隊長がいるであろうシークベルトの近くへ迫ったシンは、グーデル教会にて、ジークベルトと教会の司祭であるマティアス、そしてマルコの口からも出た指揮者であるフェリクスもいた。
だが、教会で話されていた内容は穏やかなものではなかった。それというのも、ジークベルトの口から語られたのは、フェリクスをアルバの音楽監督から下ろさせるという内容だったのだ。
これにはフェリクス本人も納得がいかず、声を荒立てて猛抗議していた。そして彼をアルバへ連れてきたといマティアスもまた、何故そのような事になったのかとジークベルトを問い詰めていた。
そんな彼らの訴えを教団の決定だと一蹴したジークベルトは、今回の式典がアルバの音楽監督であるフェリクスの最後の指揮だと言い、その後は彼に代わるアルバの音楽監督として別の人物を連れてきていたのだった。
マルコの口ぶりから、彼はそのことを知らないようだった。そもそも、この事を知っている人物はいるのだろうか。もしかしたらルーカスでさえこの事を知らないのかもしれない。
「音楽家フェリクス・・・」
「おぉ!貴方もご存じですかな?彼はこのアルバの誇りです。マティアス司祭も彼を連れてくるのに大変苦労されたようです」
マルコは音楽家フェリクスが如何に偉大な人物であるかを語り始めていたようだが、シンはあまりその内容が頭に入ってこなかった。
すると、店の店員がマルコの元へやって来ると、彼の語りを止める。
「店長、そろそろ・・・」
「あぁ、もうそんな時間か。すみません、私はこれから挨拶を兼ねて衣装を届けるのに同行しなければなりませんので。どうぞ式典を楽しんでいって下さい」
「ありがとうございます」
「皆さんの衣装の調整も完了しましたので、お着替えになられる際はいつでもお声がけ下さい」
どうやらマルコと話している間に、一行の衣装の調整も終わったようだ。これで後は式典へ向かうだけとなった。外部の出席者や一般の出席は夜に行われるグーデル教会での演奏と合唱からとなる。
その後はアルバの中でも最も大きく広大な敷地を有する宮殿にて、全ての者を集めたパーティーが開催される。色んな国や街からやってくる要人達の話を聞けるのはその場でしかない。
しかし、恐らくジークベルトや要人達が出席する場には、外部の者であるシン達は近づくことすら出来ないだろう。そこで役に立つのが、ルーカスに試された諜報能力だ。
それらをふんだんに駆使して、ジークベルトの事を調べ、教団の活動や規模を調べるのがシン達のミッションとなる。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
練習船で異世界に来ちゃったんだが?! ~異世界海洋探訪記~
さみぃぐらぁど
ファンタジー
航海訓練所の練習船「海鵜丸」はハワイへ向けた長期練習航海中、突然嵐に巻き込まれ、落雷を受ける。
衝撃に気を失った主人公たち当直実習生。彼らが目を覚まして目撃したものは、自分たち以外教官も実習生も居ない船、無線も電子海図も繋がらない海、そして大洋を往く見たこともない戦列艦の艦隊だった。
そして実習生たちは、自分たちがどこか地球とは違う星_異世界とでも呼ぶべき空間にやって来たことを悟る。
燃料も食料も補給の目途が立たない異世界。
果たして彼らは、自分たちの力で、船とともに現代日本の海へ帰れるのか⁈
※この作品は「カクヨム」においても投稿しています。https://kakuyomu.jp/works/16818023213965695770
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる