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諜報活動開始
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だが、護衛隊の隊長を調べる伝がなくとも、彼に繋がるであろう情報をアカリが提示する。それはツクヨと共にとある博物館を訪れた時の話だ。そこで二人は警備隊と大司教の護衛隊の見た目の違いを確認している。
「ツクヨさん、あの博物館は如何でしょう。街医者のカールさんが教えて下さった大司教という方とその護衛の方々。守るべき最重要人物の周りなら、護衛隊の隊長自ら付いていてもおかしくないのではありませんか?」
「そうか、二人は大司教を見たと言っていたな。まずはそこへ行って様子を見よう」
一行は二人が足を運んだという博物館へ向かう。その道中、街で見かけた警備隊の姿と、アカリ達が見たという護衛隊の者達の格好の違いについて説明を受ける。
実際に街中には二人以上のチームを組んで、護衛隊の者達が紛れていた。街の人々はそれが護衛隊なのだと気づいているのか、或いは知らないのか。特にこれといって騒ぎや噂となる様子も見受けられない。
大司教やその護衛はちょくちょくこの街に来ているのだろうか。観光客が自然にアルバの街の一部として溶け込んでいるように、誰も気にしている様子がないのだ。
「見慣れない格好・・・という訳でもなさそうだな」
「アルバの人々にとっては珍しいことでもないのか・・・。確かにそれほど目立つ格好でもないといえばないが・・・」
所謂、騎士といった重装備の鎧というよりも、ある程度動きやすさを追求した軽装をしたアルバの警備隊。それよりも少しだけ鎧の面積が増え、教会のシンボルが小さく刻まれているのが、護衛隊の装備の違いだった。
確かに一見してすぐに別の部隊であると見抜くのは難しいかもしれない。階級の違いや役職の違いくらいにしか思わない可能性も十分にある。全く知らない者からしたら、教団の警備隊くらいにしか見えない。
だが、明確に違いが分かるのはシン達にとっては好都合だった。その護衛隊の隊長がどんな人物なのかは分からないが、少なくとも同じような格好をしているであろうことは想像がつく。
要するに護衛隊と同じ格好をした者の中に、隊長が紛れているということになるに違いない。注意すべき対象は絞られた。
一行は、ツクヨとアカリに案内され二人が訪れたという博物館が見えるところまで足を運ぶと、遠巻きに建物の様子を伺う。だが、二人が博物館にやってきた時とは違い、今は警備の者が入り口の前から離れ、客が出入りしていたのだ。
「あれ?お客さんが普通に入って行ってますね」
「もう貸切は終わっちゃったみたいだね・・・。まだ近くにいるかな?」
残念ながら、大司教と護衛の者達は既に博物館を離れてしまったようだ。それでも、博物館の周りには少数だが護衛隊の格好をした者達がちらほら見受けられる。
「ここで手掛かりが途絶えるのはマズイな・・・。分担して護衛隊の奴らの会話を盗み聞くぞ。そこから更に情報を絞れるかもしれない」
ミアの提案通り、一行は博物館とその周辺に見える護衛隊へ近づき、隊長の名前に繋がる情報を集めることにした。彼らはそれぞれツクヨとツバキ、ミアとアカリ、そしてシンといった三部隊に別れた。
シンが一人だけ単独行動になったのは、彼の能力であれば一人の方が動きやすいといった理由だった。一行の中でも特に潜伏や諜報活動に向いているのはシンのアサシンとしての能力であることは、ミアが一番よく知っている。
手際のいいミアの指示で別れた一行は、シンを建物とその入り口周辺といった一番難しい場所へ。他の者達はその周辺へと分担して諜報活動を行う。
姉妹のフリをして雑踏に紛れ込んでいたミアとアカリは、親しげに街の様子について適当な会話を繰り広げながら、側の護衛隊の会話を盗み聞く。
「どうだ?久々に来たんだろ、アルバには。例の彼女にはもう会ったのか?」
「いや、まだ会えてないんだ。今回はそんなに長く居れねぇってのによぉ・・・」
「式の後はどうだ?予定じゃ一日くらいは猶予がありそうだっったけど」
「抜け出すのは難しいだろうなぁ。“アルベルト“のせいで最近息苦しくてよぉ」
「あぁ、アイツはクソがつく程真面目な野郎だからなぁ。お気の毒に・・・」
「人事だと思いやがって・・・。お前こそ“ライナー“の部隊はどうなんだ?“デニス“と一緒なんだろ?」
護衛隊の会話はありふれた日常の会話であった。内容については全く仕事や任務に関係のない愚痴や冗談といったものばかりだったが、幾つか人物の名前が聞こえてきた。
その中でも仕事や教団の話の中で上がった名前に注意して聞いていくが、確信を持って隊長の名前と言えるようなものは、中々聞くことが出来なかった・
「どうですかね?隊長さんの名前らしきものはありますか?」
「さぁな・・・。誰にも聞けない以上、候補を絞るって意味でも可能性のありそうな名前はかたっぱしから記憶しておかないと・・・」
兄弟のフリをして売店で買った食べ物を分け合うツクヨとツバキもまた、護衛隊の側で休憩しながら、その会話を盗み聞く。
しかしこちらも、ミア達の方と同じく他愛のない会話ばかりで、中々お目当ての人物名については聞くことが出来ずにいた。
「んだよ。しょうもない話ばかりしやがってッ・・・」」
「こんなもんだよ。仕事の合間の休憩なんて、大体は愚痴や誰かの悪口って相場は決まってるんだから」
「なんだそれ?経験談?」
「まぁね・・・」
こちらの世界でも、ツクヨは現実と変わらぬ人々の会話を聞いて、嘗ての会社員としての生活を思い出していた。そんな中、護衛隊の者達が気になる会話を始めた。
「いいよなぁ、大司教様はよぉ。式典で美味いモンとか待遇のいい接待とか受けるんだろ?やっぱ女とかもあんのかな?」
「馬鹿、そんな訳ないだろ?でも、俺達もちょっとくらいは良い思いしてぇよな。せめてゆっくり音楽聴くとかよ」
「そういや“フェリクス“さんも気の毒だよな。何つったっけあの人・・・」
「あぁ、“アルミン・ニキシュ“だろ?大司教様のお墨付きだってな。あれじゃぁカントルも交代になんのかねぇ」
人物名が彼らの口から出る度に、ツバキの目がまんまると見開く。バレるからやめろとジェスチャーで伝えながらも、ツクヨのその会話に思わず身を寄せて食い入るように耳を傾ける。
どうやら教会に関する会話のようだ。幾つか人名が彼らの口から語られたが、二人はそれがどこの誰なのか全く検討もつかない。それでも会話の内容とその人物名をメモし、少しでも手掛かりになりそうな事を探す。
「ツクヨさん、あの博物館は如何でしょう。街医者のカールさんが教えて下さった大司教という方とその護衛の方々。守るべき最重要人物の周りなら、護衛隊の隊長自ら付いていてもおかしくないのではありませんか?」
「そうか、二人は大司教を見たと言っていたな。まずはそこへ行って様子を見よう」
一行は二人が足を運んだという博物館へ向かう。その道中、街で見かけた警備隊の姿と、アカリ達が見たという護衛隊の者達の格好の違いについて説明を受ける。
実際に街中には二人以上のチームを組んで、護衛隊の者達が紛れていた。街の人々はそれが護衛隊なのだと気づいているのか、或いは知らないのか。特にこれといって騒ぎや噂となる様子も見受けられない。
大司教やその護衛はちょくちょくこの街に来ているのだろうか。観光客が自然にアルバの街の一部として溶け込んでいるように、誰も気にしている様子がないのだ。
「見慣れない格好・・・という訳でもなさそうだな」
「アルバの人々にとっては珍しいことでもないのか・・・。確かにそれほど目立つ格好でもないといえばないが・・・」
所謂、騎士といった重装備の鎧というよりも、ある程度動きやすさを追求した軽装をしたアルバの警備隊。それよりも少しだけ鎧の面積が増え、教会のシンボルが小さく刻まれているのが、護衛隊の装備の違いだった。
確かに一見してすぐに別の部隊であると見抜くのは難しいかもしれない。階級の違いや役職の違いくらいにしか思わない可能性も十分にある。全く知らない者からしたら、教団の警備隊くらいにしか見えない。
だが、明確に違いが分かるのはシン達にとっては好都合だった。その護衛隊の隊長がどんな人物なのかは分からないが、少なくとも同じような格好をしているであろうことは想像がつく。
要するに護衛隊と同じ格好をした者の中に、隊長が紛れているということになるに違いない。注意すべき対象は絞られた。
一行は、ツクヨとアカリに案内され二人が訪れたという博物館が見えるところまで足を運ぶと、遠巻きに建物の様子を伺う。だが、二人が博物館にやってきた時とは違い、今は警備の者が入り口の前から離れ、客が出入りしていたのだ。
「あれ?お客さんが普通に入って行ってますね」
「もう貸切は終わっちゃったみたいだね・・・。まだ近くにいるかな?」
残念ながら、大司教と護衛の者達は既に博物館を離れてしまったようだ。それでも、博物館の周りには少数だが護衛隊の格好をした者達がちらほら見受けられる。
「ここで手掛かりが途絶えるのはマズイな・・・。分担して護衛隊の奴らの会話を盗み聞くぞ。そこから更に情報を絞れるかもしれない」
ミアの提案通り、一行は博物館とその周辺に見える護衛隊へ近づき、隊長の名前に繋がる情報を集めることにした。彼らはそれぞれツクヨとツバキ、ミアとアカリ、そしてシンといった三部隊に別れた。
シンが一人だけ単独行動になったのは、彼の能力であれば一人の方が動きやすいといった理由だった。一行の中でも特に潜伏や諜報活動に向いているのはシンのアサシンとしての能力であることは、ミアが一番よく知っている。
手際のいいミアの指示で別れた一行は、シンを建物とその入り口周辺といった一番難しい場所へ。他の者達はその周辺へと分担して諜報活動を行う。
姉妹のフリをして雑踏に紛れ込んでいたミアとアカリは、親しげに街の様子について適当な会話を繰り広げながら、側の護衛隊の会話を盗み聞く。
「どうだ?久々に来たんだろ、アルバには。例の彼女にはもう会ったのか?」
「いや、まだ会えてないんだ。今回はそんなに長く居れねぇってのによぉ・・・」
「式の後はどうだ?予定じゃ一日くらいは猶予がありそうだっったけど」
「抜け出すのは難しいだろうなぁ。“アルベルト“のせいで最近息苦しくてよぉ」
「あぁ、アイツはクソがつく程真面目な野郎だからなぁ。お気の毒に・・・」
「人事だと思いやがって・・・。お前こそ“ライナー“の部隊はどうなんだ?“デニス“と一緒なんだろ?」
護衛隊の会話はありふれた日常の会話であった。内容については全く仕事や任務に関係のない愚痴や冗談といったものばかりだったが、幾つか人物の名前が聞こえてきた。
その中でも仕事や教団の話の中で上がった名前に注意して聞いていくが、確信を持って隊長の名前と言えるようなものは、中々聞くことが出来なかった・
「どうですかね?隊長さんの名前らしきものはありますか?」
「さぁな・・・。誰にも聞けない以上、候補を絞るって意味でも可能性のありそうな名前はかたっぱしから記憶しておかないと・・・」
兄弟のフリをして売店で買った食べ物を分け合うツクヨとツバキもまた、護衛隊の側で休憩しながら、その会話を盗み聞く。
しかしこちらも、ミア達の方と同じく他愛のない会話ばかりで、中々お目当ての人物名については聞くことが出来ずにいた。
「んだよ。しょうもない話ばかりしやがってッ・・・」」
「こんなもんだよ。仕事の合間の休憩なんて、大体は愚痴や誰かの悪口って相場は決まってるんだから」
「なんだそれ?経験談?」
「まぁね・・・」
こちらの世界でも、ツクヨは現実と変わらぬ人々の会話を聞いて、嘗ての会社員としての生活を思い出していた。そんな中、護衛隊の者達が気になる会話を始めた。
「いいよなぁ、大司教様はよぉ。式典で美味いモンとか待遇のいい接待とか受けるんだろ?やっぱ女とかもあんのかな?」
「馬鹿、そんな訳ないだろ?でも、俺達もちょっとくらいは良い思いしてぇよな。せめてゆっくり音楽聴くとかよ」
「そういや“フェリクス“さんも気の毒だよな。何つったっけあの人・・・」
「あぁ、“アルミン・ニキシュ“だろ?大司教様のお墨付きだってな。あれじゃぁカントルも交代になんのかねぇ」
人物名が彼らの口から出る度に、ツバキの目がまんまると見開く。バレるからやめろとジェスチャーで伝えながらも、ツクヨのその会話に思わず身を寄せて食い入るように耳を傾ける。
どうやら教会に関する会話のようだ。幾つか人名が彼らの口から語られたが、二人はそれがどこの誰なのか全く検討もつかない。それでも会話の内容とその人物名をメモし、少しでも手掛かりになりそうな事を探す。
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