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ルーカス・マイヤーの思惑
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理由の分からない調べ物と条件に、ツバキが我慢の限界だと言わんばかり食って罹ろうとするが、それをミアは静止するとそれ以上何も言わずにルーカスの条件を承諾した。
「分かった。誰にも聞かずに大司教の護衛隊隊長の名前を調べてくればいいんだな?」
「そうです。内容としてはシンプルではありませんか?」
「あぁ、そうだな・・・その通りだ。約束は守ってくれよ?」
「勿論“神“に誓って。それと時間制限を設けさせて貰いますよ。式典は夕刻、それよりも前に私のところへ来なかったら、推薦状はお渡し出来ません。式典への提出も間に合いませんので・・・」
話を終えると、一行は部屋を後にし教会へと戻っていく。式典へ参加するには有権者達の推薦状が必要となるらしい。その有権者という人物であればdれでもいいのだろうが、シン達にはニクラス教会のルーカス司祭の他に候補者がいない。
仕方がなく彼の言う通り、条件に沿って依頼をこなすしか無いだろう。シンプルだが理由や思惑といったものが全く理解できない依頼内容に、一行は各々考えを巡らせ沈黙していた。
「さぁ、私からは以上です。依頼内容についてはまだお答えできませんが、街のことやオススメの料理なんかでしたら、何でも聞いて下さい。これでもアルバは長いので。」
「ご親切にどうも」
あくまで他の者達の目があるところでは、教会の司祭としての顔でいるつもりの様子を見せるルーカス。一行は彼に見送られながら教会を後にすると、外に出た途端緊張から解き放たれたかのように喋り出す。
「何だよあれ!?俺達に何をさせようってんだぁ!?」
「でも依頼さえこなせれば、式典ってやつにも参加できるんだ。今は彼の言う通りにするしか無いんじゃない?」
ツクヨの言う通り、式典へ参加するにはルーカスの依頼をこなすしか方法はない。幸いなことにツバキやアカリを危険に晒すような、危ない依頼じゃない上にシン達にとっても特段デメリットになり得る要素もない。
つまり挑戦するだけならタダで出来、失敗しても別の有権者を探すという道もある。やれるだけのことはやってみようと促すツクヨに、シンとミアはルーカスの依頼の裏に隠された彼の思惑について、自身の考えを述べる。
「それに依頼自体には大した理由は無いだろうし・・・」
「どういうことですか?」
「要するにアタシらは試されてるんだよ。誰かに頼ることなく人物を特定し、情報を入手する能力を・・・」
「どうしてそんな事をする必要が?彼が街でも顔の利く人物で、教会の関係者ならほとんど手に入らない情報はないんじゃない?」
「“顔が利く“から・・・なんだろうな」
「ん?」
ルーカスが最後に言っていたように、彼が本当にこのアルバの街に長く住んでいるのなら、司祭という事もありその顔は地元の人間はおろか、何度か来ているような観光客にまで知れ渡っている事だろう。
それに教会の関係者なら様々なところに居るであろう信徒達とも繋がっているはず。他所の情報が欲しければ、それらの繋がりを使い情報を集める事もできる。
しかし、そんな彼だからこそ出来ないことがある。表立って調べられないこと。誰かに頼ることが出来ない調べもの。それは今まさに、シンとミアが口にしようとしている事だろう。
「誰もが奴の事を知り、多くの者が慕っていることだろう。だからこそ今の奴の立場がある。そんな奴が表立って調べられないこと。知り合いや関係者を使って情報や様子を伺うことが出来ないこと。それは“内部の者“についてだ」
「内部の?・・・それってまさかっ」
「教会関係者のことだろう。自身や周りの者を使って調べれば、何故そんな事をするのかと疑われる。そんな事をすれば、今の奴の立場も危うくなるだろうな・・・」
「つまり、私達を使って何かを調べたいってことかい?」
「正確なことは分からないが、奴の依頼をこなした者に式典で誰かのことを調査させる、或いは様子を見て欲しいんだろう」
ミアの推測では、式典には大司教やアルバの有識者、それに様々なところからやって来る教会関係者など多くの人物が出席する。ルーカスはその中の誰かについて、外部の者を使って調べてもらいたいのではと考えていた。
「確かに、それなら依頼内容にも納得いくかもな」
「でも推薦状からルーカスさんが怪しまれるという事もありませんか?」
「依頼を突破した奴らがヘマをしたら・・・な。そこは奴の人選次第だろうけど、恐らくカモフラージュのために他にも何人か“推薦状“を出してるかもな。或いは他の有権者にも、布教の為に外部の者を誘わせてるとか・・・」
「私達の他にも・・・かぁ。タイムリミットもある事だし、あんまりのんびりもしていられないね!まずは何から始めようか。何か心当たりがある人、いる?」
夕刻までにルーカスから推薦状を貰わなければならない。早速調査に乗り出そうとする一行だったが、当然のことながらアルバや教会とは無関係な外部の者であるシン達に、心当たりなどあろう筈もなかった。
「分かった。誰にも聞かずに大司教の護衛隊隊長の名前を調べてくればいいんだな?」
「そうです。内容としてはシンプルではありませんか?」
「あぁ、そうだな・・・その通りだ。約束は守ってくれよ?」
「勿論“神“に誓って。それと時間制限を設けさせて貰いますよ。式典は夕刻、それよりも前に私のところへ来なかったら、推薦状はお渡し出来ません。式典への提出も間に合いませんので・・・」
話を終えると、一行は部屋を後にし教会へと戻っていく。式典へ参加するには有権者達の推薦状が必要となるらしい。その有権者という人物であればdれでもいいのだろうが、シン達にはニクラス教会のルーカス司祭の他に候補者がいない。
仕方がなく彼の言う通り、条件に沿って依頼をこなすしか無いだろう。シンプルだが理由や思惑といったものが全く理解できない依頼内容に、一行は各々考えを巡らせ沈黙していた。
「さぁ、私からは以上です。依頼内容についてはまだお答えできませんが、街のことやオススメの料理なんかでしたら、何でも聞いて下さい。これでもアルバは長いので。」
「ご親切にどうも」
あくまで他の者達の目があるところでは、教会の司祭としての顔でいるつもりの様子を見せるルーカス。一行は彼に見送られながら教会を後にすると、外に出た途端緊張から解き放たれたかのように喋り出す。
「何だよあれ!?俺達に何をさせようってんだぁ!?」
「でも依頼さえこなせれば、式典ってやつにも参加できるんだ。今は彼の言う通りにするしか無いんじゃない?」
ツクヨの言う通り、式典へ参加するにはルーカスの依頼をこなすしか方法はない。幸いなことにツバキやアカリを危険に晒すような、危ない依頼じゃない上にシン達にとっても特段デメリットになり得る要素もない。
つまり挑戦するだけならタダで出来、失敗しても別の有権者を探すという道もある。やれるだけのことはやってみようと促すツクヨに、シンとミアはルーカスの依頼の裏に隠された彼の思惑について、自身の考えを述べる。
「それに依頼自体には大した理由は無いだろうし・・・」
「どういうことですか?」
「要するにアタシらは試されてるんだよ。誰かに頼ることなく人物を特定し、情報を入手する能力を・・・」
「どうしてそんな事をする必要が?彼が街でも顔の利く人物で、教会の関係者ならほとんど手に入らない情報はないんじゃない?」
「“顔が利く“から・・・なんだろうな」
「ん?」
ルーカスが最後に言っていたように、彼が本当にこのアルバの街に長く住んでいるのなら、司祭という事もありその顔は地元の人間はおろか、何度か来ているような観光客にまで知れ渡っている事だろう。
それに教会の関係者なら様々なところに居るであろう信徒達とも繋がっているはず。他所の情報が欲しければ、それらの繋がりを使い情報を集める事もできる。
しかし、そんな彼だからこそ出来ないことがある。表立って調べられないこと。誰かに頼ることが出来ない調べもの。それは今まさに、シンとミアが口にしようとしている事だろう。
「誰もが奴の事を知り、多くの者が慕っていることだろう。だからこそ今の奴の立場がある。そんな奴が表立って調べられないこと。知り合いや関係者を使って情報や様子を伺うことが出来ないこと。それは“内部の者“についてだ」
「内部の?・・・それってまさかっ」
「教会関係者のことだろう。自身や周りの者を使って調べれば、何故そんな事をするのかと疑われる。そんな事をすれば、今の奴の立場も危うくなるだろうな・・・」
「つまり、私達を使って何かを調べたいってことかい?」
「正確なことは分からないが、奴の依頼をこなした者に式典で誰かのことを調査させる、或いは様子を見て欲しいんだろう」
ミアの推測では、式典には大司教やアルバの有識者、それに様々なところからやって来る教会関係者など多くの人物が出席する。ルーカスはその中の誰かについて、外部の者を使って調べてもらいたいのではと考えていた。
「確かに、それなら依頼内容にも納得いくかもな」
「でも推薦状からルーカスさんが怪しまれるという事もありませんか?」
「依頼を突破した奴らがヘマをしたら・・・な。そこは奴の人選次第だろうけど、恐らくカモフラージュのために他にも何人か“推薦状“を出してるかもな。或いは他の有権者にも、布教の為に外部の者を誘わせてるとか・・・」
「私達の他にも・・・かぁ。タイムリミットもある事だし、あんまりのんびりもしていられないね!まずは何から始めようか。何か心当たりがある人、いる?」
夕刻までにルーカスから推薦状を貰わなければならない。早速調査に乗り出そうとする一行だったが、当然のことながらアルバや教会とは無関係な外部の者であるシン達に、心当たりなどあろう筈もなかった。
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