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エレジアでの最後の一時
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手を止めて二人のいる部屋を除くシンとミア。ツバキとアカリはそれぞれ中央にあるテーブルと、部屋の端にある机に分かれ黙々と作業をしている。
「ホントだ、ツバキは何となく分かるがアカリも・・・?」
「二人が思っている以上に、彼らも本気なんだよ。私達の為とは言っているけど、この経験と学びは必ず彼ら自身の力にもなると思うんだ」
補足するようにそっとシン達の背後にやって来たツクヨが、親が子を見守るような目線で語る。だが実際、彼の言う通りきっかけは何であれ、知識や経験は文字通りその人にとっての経験値となる筈。
例えその結果が身を結ばなくとも、その過程は決してゼロにはならない。ツバキとアカリが自分達の為に真剣に何かに取り組んでいる姿は、素直に嬉しかった。
シンは今までの現実の世界で、人からそのように思われる経験をしたことがなかったが故に、その思いに応えなければという気持ちがより強くなった。
「さぁさぁ!二人の邪魔をしない内に、こっちも作業を終わらせちゃおう」
「それをするのはアタシらだけどな」
「ツクヨは何か持っておきたいアイテムとかなかったのか?」
三人はツバキ達のいる部屋の扉を、音を立てないようにそっと閉め、再びアイテムの配分作業へと戻る。
そもそもゲームのアイテムというものに知識がなかったツクヨには、何が必要で何が便利なのか分からなかった。それならこれだけの数と種類をどうやって買い揃えたとミアにつっ込まれるツクヨ。
選んだのはツバキだと伝えると、シンとミアは意外な表情を浮かべる。今まで旅をしてきた経験があるなど、ツバキからは聞いたことがなかったが、そのアイテム選びは正しく経験者の選定と同じだった。
何なら、シン達の戦い方を考えて選んだのか、物によって数と種類の偏りがある。思っていた以上にツバキは彼らの戦闘を見ていたようだ。これも造船技師としてウィリアムの仕事ぶりを見て技術力を学んでいた名残なのだろうか。
アルバへ向かう商人の馬車は、話では翌日という予定になっている。移動には恐らくまた何日か掛かるだろう。睡眠は馬車でも出来ると、シン達はツバキとアカリが真剣に自分のやりたい事に打ち込んでいるのを邪魔しないように、アイテムの配分を終えるとそのまま各々の時間を過ごし就寝した。
翌朝、シンが目を覚まして見るとミアはいつの間に持ち込んでいたのか、酒の入った一升瓶を抱えて眠っていた。ツクヨは既にソファーにはおらず、部屋にはいなかった。
「・・・?」
辺りを見渡しツクヨの姿を探した後、ツバキ達はどうしているのかと隣の部屋をそっと覗く。ツバキは遅くまで作業をしていたのだろう。そのまま作業机の上で突っ伏して寝てしまっていた。アカリは途中で作業を中断し、しっかりベッドの中で行儀良く眠っていた。
目を覚ます為に洗面所へと向かったシンは、水で顔を洗い眠気を払うと丁度ツクヨが部屋へと帰って来た。
「おや?シン、起きていたんだね」
「どこへ行ってたんだ?」
「ロビーで世間話をしてきたよ。みんな朝が強いんだね、街はこんな朝っぱらから賑わってる」
商人達の組合の方にも行ったというツクヨは、アルバ行きの馬車の様子を伺い予定通りに行けば昼前には出発できそうであるという情報を持ってきていた。
「色々とありがとう、ツクヨ。しっかり者がいると助かるよ」
「全然構わないよ。それに確認しないと気が済まないのは、私の性分なんだろうね。すっかり会社での癖が身についちゃってるっていうか・・・ははは」
ツクヨは笑って答えたが、その表情は言葉とは裏腹に曇っていた。彼も現実世界での経験が自身の不幸に繋がったことに悔いているようだった。身に付けなければ生活ができない。だが身に付けたが故に大事なものを失った彼は、選択するべきものを見誤ったのだと後悔し続けている。
シン達に頼りにされるのは嬉しい事なのだが、それが自分を苦しめていたものである事に、ツクヨは複雑な思いがあった。
「みんなを起こして準備した方がいいかな?」
「いや、ゆっくり休ませてあげよう。ただミアだけは別だけどね・・・。昨日も飲んでたんだろう?それに加えてまた・・・。馬車で吐かれても困るから、早く酔いを覚まさせないと」
呆れた様子でミアを起こすツクヨ。彼女は案の定二日酔いのようで険しい表情をしながら頭を抑えている。シンは汲んできた水をミアに差し出して飲ませると、落ち着くまでソファーで休ませた。
ツクヨが聞いて来た馬車の出発の時間が近づく。流石にこれ以上は余裕を持った行動が出来なくなると、起きてこないツバキとアカリを起こし出発の準備をさせる。
一行が一通り出発の準備を完了させると、宿屋を後にし商業組合へと赴き現状と予定をツクヨが聞きに行く。予定には変わりないようで、昼食は済ませておくか買っておくようにと言われたようだった。
シンとツクヨ以外は起きてから何も食べていなかったので、出発前にエレジアで済ませておく事にした。
「ホントだ、ツバキは何となく分かるがアカリも・・・?」
「二人が思っている以上に、彼らも本気なんだよ。私達の為とは言っているけど、この経験と学びは必ず彼ら自身の力にもなると思うんだ」
補足するようにそっとシン達の背後にやって来たツクヨが、親が子を見守るような目線で語る。だが実際、彼の言う通りきっかけは何であれ、知識や経験は文字通りその人にとっての経験値となる筈。
例えその結果が身を結ばなくとも、その過程は決してゼロにはならない。ツバキとアカリが自分達の為に真剣に何かに取り組んでいる姿は、素直に嬉しかった。
シンは今までの現実の世界で、人からそのように思われる経験をしたことがなかったが故に、その思いに応えなければという気持ちがより強くなった。
「さぁさぁ!二人の邪魔をしない内に、こっちも作業を終わらせちゃおう」
「それをするのはアタシらだけどな」
「ツクヨは何か持っておきたいアイテムとかなかったのか?」
三人はツバキ達のいる部屋の扉を、音を立てないようにそっと閉め、再びアイテムの配分作業へと戻る。
そもそもゲームのアイテムというものに知識がなかったツクヨには、何が必要で何が便利なのか分からなかった。それならこれだけの数と種類をどうやって買い揃えたとミアにつっ込まれるツクヨ。
選んだのはツバキだと伝えると、シンとミアは意外な表情を浮かべる。今まで旅をしてきた経験があるなど、ツバキからは聞いたことがなかったが、そのアイテム選びは正しく経験者の選定と同じだった。
何なら、シン達の戦い方を考えて選んだのか、物によって数と種類の偏りがある。思っていた以上にツバキは彼らの戦闘を見ていたようだ。これも造船技師としてウィリアムの仕事ぶりを見て技術力を学んでいた名残なのだろうか。
アルバへ向かう商人の馬車は、話では翌日という予定になっている。移動には恐らくまた何日か掛かるだろう。睡眠は馬車でも出来ると、シン達はツバキとアカリが真剣に自分のやりたい事に打ち込んでいるのを邪魔しないように、アイテムの配分を終えるとそのまま各々の時間を過ごし就寝した。
翌朝、シンが目を覚まして見るとミアはいつの間に持ち込んでいたのか、酒の入った一升瓶を抱えて眠っていた。ツクヨは既にソファーにはおらず、部屋にはいなかった。
「・・・?」
辺りを見渡しツクヨの姿を探した後、ツバキ達はどうしているのかと隣の部屋をそっと覗く。ツバキは遅くまで作業をしていたのだろう。そのまま作業机の上で突っ伏して寝てしまっていた。アカリは途中で作業を中断し、しっかりベッドの中で行儀良く眠っていた。
目を覚ます為に洗面所へと向かったシンは、水で顔を洗い眠気を払うと丁度ツクヨが部屋へと帰って来た。
「おや?シン、起きていたんだね」
「どこへ行ってたんだ?」
「ロビーで世間話をしてきたよ。みんな朝が強いんだね、街はこんな朝っぱらから賑わってる」
商人達の組合の方にも行ったというツクヨは、アルバ行きの馬車の様子を伺い予定通りに行けば昼前には出発できそうであるという情報を持ってきていた。
「色々とありがとう、ツクヨ。しっかり者がいると助かるよ」
「全然構わないよ。それに確認しないと気が済まないのは、私の性分なんだろうね。すっかり会社での癖が身についちゃってるっていうか・・・ははは」
ツクヨは笑って答えたが、その表情は言葉とは裏腹に曇っていた。彼も現実世界での経験が自身の不幸に繋がったことに悔いているようだった。身に付けなければ生活ができない。だが身に付けたが故に大事なものを失った彼は、選択するべきものを見誤ったのだと後悔し続けている。
シン達に頼りにされるのは嬉しい事なのだが、それが自分を苦しめていたものである事に、ツクヨは複雑な思いがあった。
「みんなを起こして準備した方がいいかな?」
「いや、ゆっくり休ませてあげよう。ただミアだけは別だけどね・・・。昨日も飲んでたんだろう?それに加えてまた・・・。馬車で吐かれても困るから、早く酔いを覚まさせないと」
呆れた様子でミアを起こすツクヨ。彼女は案の定二日酔いのようで険しい表情をしながら頭を抑えている。シンは汲んできた水をミアに差し出して飲ませると、落ち着くまでソファーで休ませた。
ツクヨが聞いて来た馬車の出発の時間が近づく。流石にこれ以上は余裕を持った行動が出来なくなると、起きてこないツバキとアカリを起こし出発の準備をさせる。
一行が一通り出発の準備を完了させると、宿屋を後にし商業組合へと赴き現状と予定をツクヨが聞きに行く。予定には変わりないようで、昼食は済ませておくか買っておくようにと言われたようだった。
シンとツクヨ以外は起きてから何も食べていなかったので、出発前にエレジアで済ませておく事にした。
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