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望まれた姿
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アカリの決心は固く、自分を追い詰めているというよりは、新たな目標をえたかのように真っ直ぐな目をしている。
「別にアタシは、アンタに戦ってほしいなんて思ったことはないけどね」
「でもいい事じゃないか。何か目的があるということは、どんな道を歩むにしろ動き出す原動力になるからね」
「うわっ、凄いセリフっぽい」
「茶化さないでくれよ、ミア」
堅い空気を和らげるように、ミアとツクヨの会話が繰り広げられる。しかし実際に、ツクヨの言葉はシンやミアの心にも響いていた。
ツクヨほど強い思いや目的を持って旅をしていなかった二人は、改めて自分達の目的について考えさせられた。そんな彼らの様子を見て、否定されることもなく変に構えられることもなく、すんなりと受け入れられたことに、アカリは一瞬キョトンとした表情を浮かべた後、いつもの一行の雰囲気に笑顔になる。
「ふふっ、みなさんに話せてよかったです。もう幾つかスキルも使えるようになったんですよ?」
「本当か?そんなにすぐに身につくものなのか?」
「回復や支援系統のスキルに適性があったのかもしれないな。アタシはじゃそうはいかないからな」
「そういうものなのかい?じゃぁ私達が研究所の資料を熟読しても、その回復や支援ってやつは使えない・・・?」
実際、ミアの言葉は正しかった。子の世界の住人ではない彼らは、クラスという制約に縛られ、あれやこれやと無数のスキルを身に付けることは出来ない。自分の就いているクラスに準ずるもの。
シンであればアサシンクラスが習得可能なスキルや、ミアであればガンナーや錬金術関連のスキル。ツクヨはもっとシンプルで、より戦闘向きの剣術などがあげられる。
無論、この世界の住人が無数のスキルを習得できるという訳でもない。ミアの話にもあった通り、アカリには回復や支援系のスキルに対する適性があったということになる。
適性がなければ、知識として頭の中に入れておくことは可能だが、スキルとして発動させることはできない。現実世界でいうところの才能が、この世界での適性であるといえるだろう。
「そっか、才能か・・・。じゃぁ私のコレは妻がくれた・・・」
小さく呟きながら剣を握りしめるツクヨ。現実世界の彼に剣術の心得など微塵もなかった。剣道というものは知っているし、映画やドラマなどで戦うシーンなども見たことはある。
そういったものを目にして、幼き日に木の枝や学校の箒などを手にチャンバラや想像の中で剣術を、自分で考えた技名と共に口にしながら振り回した思い出もある。
だがそれは、才能と呼ぶには程遠いものであり、実践においてもとてもではないが通用するようなものではない。
しかしこの世界において彼は剣士というクラスに就いている。彼のその姿は、妻である十六夜が彼に内緒で作り上げていたキャラクターであり、彼女が心の内に秘めていたツクヨに対する“こうあってほしい“という理想の姿だったのかもしれない。
どこにでもあるありきたりな設定。剣を持った美しい容姿の青年に命を救われる。そんな妄想の中の憧れが、ツクヨのキャラクターを作り出したのかもしれない。
そして不幸にも、その憧れは果たされることはなかった・・・。
だからこそツクヨは、その話を聞いて十六夜の思い描いていた理想の姿が今の自分の姿なのではないかと推測し、現実世界のあの夜。悲劇が起きた我が家でこの姿のツクヨが助けに来てくれることを願っていたのではないかと思い、果たせなかった彼女の望みを、今度こそ迎えに行くことによって果たしてみせると決心した。
「ツクヨ・・・?」
神妙な顔つきになる彼を見て、シンが声をかける。とてもさっきまでミアとワイワイ話していた者の表情には思えなかった。何か彼の中で異変があったのではないかと心配するシンだったが、ツクヨは心配の種を仲間達に与えまいといつものようにおちゃらけて誤魔化していた。
「え・・・?あぁ、ごめんごめん。何の話だっけ?」
心配をかけまいと誤魔化しているのを悟ったミアは、誰にそれを言うでもなく彼のその様子に話を合わせる。意外な行動をとったミアに、ツクヨは唖然とした表情で彼女に視線を向けるが、ミアは何も知らないといった様子で彼のその視線を受け流した。
「んで?アカリ、もういいのか?次はツバキのところへ向かわなきゃならないんだが・・・」
「ごめんなさい!そうでしたよね。大丈夫です、出発の前に作業を仕上げて準備してきますから少々お待ちください!」
慌てて施設の机に戻ったアカリは、散らかった道具を片付けながら出発の準備を整えている。その様子を施設のベンチに座り待っていた一行は、ツバキが向かったという機械の製造をおこなっているというリナムルの施設の話をしていた。
「別にアタシは、アンタに戦ってほしいなんて思ったことはないけどね」
「でもいい事じゃないか。何か目的があるということは、どんな道を歩むにしろ動き出す原動力になるからね」
「うわっ、凄いセリフっぽい」
「茶化さないでくれよ、ミア」
堅い空気を和らげるように、ミアとツクヨの会話が繰り広げられる。しかし実際に、ツクヨの言葉はシンやミアの心にも響いていた。
ツクヨほど強い思いや目的を持って旅をしていなかった二人は、改めて自分達の目的について考えさせられた。そんな彼らの様子を見て、否定されることもなく変に構えられることもなく、すんなりと受け入れられたことに、アカリは一瞬キョトンとした表情を浮かべた後、いつもの一行の雰囲気に笑顔になる。
「ふふっ、みなさんに話せてよかったです。もう幾つかスキルも使えるようになったんですよ?」
「本当か?そんなにすぐに身につくものなのか?」
「回復や支援系統のスキルに適性があったのかもしれないな。アタシはじゃそうはいかないからな」
「そういうものなのかい?じゃぁ私達が研究所の資料を熟読しても、その回復や支援ってやつは使えない・・・?」
実際、ミアの言葉は正しかった。子の世界の住人ではない彼らは、クラスという制約に縛られ、あれやこれやと無数のスキルを身に付けることは出来ない。自分の就いているクラスに準ずるもの。
シンであればアサシンクラスが習得可能なスキルや、ミアであればガンナーや錬金術関連のスキル。ツクヨはもっとシンプルで、より戦闘向きの剣術などがあげられる。
無論、この世界の住人が無数のスキルを習得できるという訳でもない。ミアの話にもあった通り、アカリには回復や支援系のスキルに対する適性があったということになる。
適性がなければ、知識として頭の中に入れておくことは可能だが、スキルとして発動させることはできない。現実世界でいうところの才能が、この世界での適性であるといえるだろう。
「そっか、才能か・・・。じゃぁ私のコレは妻がくれた・・・」
小さく呟きながら剣を握りしめるツクヨ。現実世界の彼に剣術の心得など微塵もなかった。剣道というものは知っているし、映画やドラマなどで戦うシーンなども見たことはある。
そういったものを目にして、幼き日に木の枝や学校の箒などを手にチャンバラや想像の中で剣術を、自分で考えた技名と共に口にしながら振り回した思い出もある。
だがそれは、才能と呼ぶには程遠いものであり、実践においてもとてもではないが通用するようなものではない。
しかしこの世界において彼は剣士というクラスに就いている。彼のその姿は、妻である十六夜が彼に内緒で作り上げていたキャラクターであり、彼女が心の内に秘めていたツクヨに対する“こうあってほしい“という理想の姿だったのかもしれない。
どこにでもあるありきたりな設定。剣を持った美しい容姿の青年に命を救われる。そんな妄想の中の憧れが、ツクヨのキャラクターを作り出したのかもしれない。
そして不幸にも、その憧れは果たされることはなかった・・・。
だからこそツクヨは、その話を聞いて十六夜の思い描いていた理想の姿が今の自分の姿なのではないかと推測し、現実世界のあの夜。悲劇が起きた我が家でこの姿のツクヨが助けに来てくれることを願っていたのではないかと思い、果たせなかった彼女の望みを、今度こそ迎えに行くことによって果たしてみせると決心した。
「ツクヨ・・・?」
神妙な顔つきになる彼を見て、シンが声をかける。とてもさっきまでミアとワイワイ話していた者の表情には思えなかった。何か彼の中で異変があったのではないかと心配するシンだったが、ツクヨは心配の種を仲間達に与えまいといつものようにおちゃらけて誤魔化していた。
「え・・・?あぁ、ごめんごめん。何の話だっけ?」
心配をかけまいと誤魔化しているのを悟ったミアは、誰にそれを言うでもなく彼のその様子に話を合わせる。意外な行動をとったミアに、ツクヨは唖然とした表情で彼女に視線を向けるが、ミアは何も知らないといった様子で彼のその視線を受け流した。
「んで?アカリ、もういいのか?次はツバキのところへ向かわなきゃならないんだが・・・」
「ごめんなさい!そうでしたよね。大丈夫です、出発の前に作業を仕上げて準備してきますから少々お待ちください!」
慌てて施設の机に戻ったアカリは、散らかった道具を片付けながら出発の準備を整えている。その様子を施設のベンチに座り待っていた一行は、ツバキが向かったという機械の製造をおこなっているというリナムルの施設の話をしていた。
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