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もう一つの“戦う姿“
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アカリはどうやら回復や支援といった方向性に興味があるようだった。自分では戦うことがで出来ないことを理解し、どうしたらシン達の為になる事が出来るのかと、彼女なりに考えた結果がシン達のように前線で戦う味方を回復したり支援することだった。
丁度一行のパーティーには、そういったクラスの者はいなかった。ちょっとした支援やアイテムを使った回復などは出来るが、それらは本家のものと比べると効果が大きく異なり、消耗品だったりもする。
それをスキルや専門的な道具で行うことが出来るとなれば、戦う者達もより安心して戦うことが出来る。
「アカリは何を学んでいるんだ?」
「聞いた話だと、街があの獣に襲われた時、やられた獣人族の一人の魂を紅葉が炎に変えて戦ったらしい」
当然、アカリにも紅葉にそのような事が出来るのだなんて知るはずもなく、ただ紅葉に任せ祈ることしか出来なかった。その時彼女の中に芽生えたのは、自分にも何かできる力が欲しいという気持ちだった。
襲われた場所が丁度薬品などを扱っていた為、彼女はそれらを使って前線で戦った獣人達の回復などに貢献した。その時その場にいた全ての者を助けることは出来なかったが、それでも無力な自分にでも出来る事があるのだと知った。
不思議な力で戦った紅葉もまた、戦闘終了後には消耗が激しく動けなくなってしまっていた。どうやらあの力にも何か代償があるのかもしれない。記憶を失ったアカリと共にずっと一緒にいた紅葉に、あんな危険な真似をこれ以上させたくないと思ったのもまた、彼女がサポートの道を歩み出した要因の一つでもある。
「紅葉にそんな力が・・・?」
「それは、この世界ではよくある能力なのかい?」
「いや・・・どうだろうな・・・。少なくとも俺はプレイヤーのクラスでしか、そういった能力を聞いた事がない。似たようなもので言えば、死んだ者の肉体を操るネクロマンサーや死霊術ってのがあるけど・・・」
「あぁ、アタシも一緒に戦うようなNPCに、ましてやあんな小さな雛鳥がそんなスキルを使えるなんて聞いた事がない。言うてそこまでこの世界を遊び尽くしてた訳でもないしな」
元々のWoFプレイヤーであったシンとミアでも、死者の意志を残したままその魂を具現化し戦うなど聞いたことがなかったようだ。無論、一般のプレイヤーレベルでWoFを遊んでいた彼らが知らなかっただけとも捉えられるが、後にシンが左目の代わりとして擬態させているテュルプ・オーブを使い、現実世界にいるアサシンギルドの仲間、白獅に調べてもらった結果、そのようなNPCがいたという記録は残っていなかったという。
つまりそれも、黒いコートの人物が言うところの、何らかのエラーによって生まれた能力なのか、それとも単純にAIのクエストを自動生成するシステムの中で生まれた新たな追加能力なのか。
どちらにせよ、彼らがその紅葉の能力について知るのはもっと先の事となる。
一行が施設の中に入り中の様子を見て回っていると、彼らに気づいたアカリが嬉しそうに手を振り、作業を中断し歩み寄ってくる。
「みなさん、おはようございます」
「もうそんな時間じゃないけどな」
「ふふ。みなさん気持ちよさそうに寝ていらっしゃいましたものね。ツバキさんは叩き起こしてやるって言ってましたけど、みなさんの活躍のおかげで、こうして街に平穏が戻ったんですものね」
「街を救ったのは、この森に住む獣人族やエルフ族、そして色んな人達が一つの目的に向かって一丸となったからだよ。ね?シン」
まるで街を救った英雄のように褒めるアカリに、ツクヨはあくまで自分達は彼らに助力したに過ぎないと謙遜をする。だが実際はそうだ。シンやツクヨだけで、あの研究所での戦いやそこまでの道中を抜けることは出来なかった。
彼らに協力的だったケツァルや、獣人族を何よりも大事に思っていたガレウスらの犠牲がなければ、到底成し得なかった事だろう。いや、まだ犠牲になったと決まったわけではない。
しかし、最後に待ち受けていた黒いコートの人物の話を聞く限り、行方をくらました彼らは恐らく・・・。
「そうだな・・・。俺達の力じゃない。アズールやエイリル、多種族の者達が力を合わせた結果だ」
二人の話を聞き、アカリは嬉しそうでもあったが、どこか決意に満ちたような熱い目をしていた。
「そうですわよね。みんなが力を合わせて守ったのがこの街。だから私も、何か力になれるような何かがしたいと思ったんです」
「アカリだって十分戦ったそうじゃないか。獣人族の人達が感謝してたよ?」
「アレはあの子の力ですわ。私は何も・・・」
アカリが見つめる先に、美味しそうに果物を摘んでいる紅葉がいた。もう雛鳥という程のものではなくなったその姿は、愛らしくもあるが少しだけ逞しくもなった気がするシン達だった。
「みなさんが戦う姿を見て、私決心しました」
「決心?」
「私にはみなさんのように戦う力はないけれど、知識を身に付けることで役に立てることがあると思ったんです。それを教えてくれたのは、アズールさんに助けられたという研究所からやって来た人達のおかげなんです」
研究員達もまた、アカリのように戦う術は持たない。だが、身につけた知識で今もこうして街の復興の為、獣人族やエルフ族らと協力し、大いに役に立っている。その姿がアカリの目には、一つの戦う姿にも見えていたようだった。
丁度一行のパーティーには、そういったクラスの者はいなかった。ちょっとした支援やアイテムを使った回復などは出来るが、それらは本家のものと比べると効果が大きく異なり、消耗品だったりもする。
それをスキルや専門的な道具で行うことが出来るとなれば、戦う者達もより安心して戦うことが出来る。
「アカリは何を学んでいるんだ?」
「聞いた話だと、街があの獣に襲われた時、やられた獣人族の一人の魂を紅葉が炎に変えて戦ったらしい」
当然、アカリにも紅葉にそのような事が出来るのだなんて知るはずもなく、ただ紅葉に任せ祈ることしか出来なかった。その時彼女の中に芽生えたのは、自分にも何かできる力が欲しいという気持ちだった。
襲われた場所が丁度薬品などを扱っていた為、彼女はそれらを使って前線で戦った獣人達の回復などに貢献した。その時その場にいた全ての者を助けることは出来なかったが、それでも無力な自分にでも出来る事があるのだと知った。
不思議な力で戦った紅葉もまた、戦闘終了後には消耗が激しく動けなくなってしまっていた。どうやらあの力にも何か代償があるのかもしれない。記憶を失ったアカリと共にずっと一緒にいた紅葉に、あんな危険な真似をこれ以上させたくないと思ったのもまた、彼女がサポートの道を歩み出した要因の一つでもある。
「紅葉にそんな力が・・・?」
「それは、この世界ではよくある能力なのかい?」
「いや・・・どうだろうな・・・。少なくとも俺はプレイヤーのクラスでしか、そういった能力を聞いた事がない。似たようなもので言えば、死んだ者の肉体を操るネクロマンサーや死霊術ってのがあるけど・・・」
「あぁ、アタシも一緒に戦うようなNPCに、ましてやあんな小さな雛鳥がそんなスキルを使えるなんて聞いた事がない。言うてそこまでこの世界を遊び尽くしてた訳でもないしな」
元々のWoFプレイヤーであったシンとミアでも、死者の意志を残したままその魂を具現化し戦うなど聞いたことがなかったようだ。無論、一般のプレイヤーレベルでWoFを遊んでいた彼らが知らなかっただけとも捉えられるが、後にシンが左目の代わりとして擬態させているテュルプ・オーブを使い、現実世界にいるアサシンギルドの仲間、白獅に調べてもらった結果、そのようなNPCがいたという記録は残っていなかったという。
つまりそれも、黒いコートの人物が言うところの、何らかのエラーによって生まれた能力なのか、それとも単純にAIのクエストを自動生成するシステムの中で生まれた新たな追加能力なのか。
どちらにせよ、彼らがその紅葉の能力について知るのはもっと先の事となる。
一行が施設の中に入り中の様子を見て回っていると、彼らに気づいたアカリが嬉しそうに手を振り、作業を中断し歩み寄ってくる。
「みなさん、おはようございます」
「もうそんな時間じゃないけどな」
「ふふ。みなさん気持ちよさそうに寝ていらっしゃいましたものね。ツバキさんは叩き起こしてやるって言ってましたけど、みなさんの活躍のおかげで、こうして街に平穏が戻ったんですものね」
「街を救ったのは、この森に住む獣人族やエルフ族、そして色んな人達が一つの目的に向かって一丸となったからだよ。ね?シン」
まるで街を救った英雄のように褒めるアカリに、ツクヨはあくまで自分達は彼らに助力したに過ぎないと謙遜をする。だが実際はそうだ。シンやツクヨだけで、あの研究所での戦いやそこまでの道中を抜けることは出来なかった。
彼らに協力的だったケツァルや、獣人族を何よりも大事に思っていたガレウスらの犠牲がなければ、到底成し得なかった事だろう。いや、まだ犠牲になったと決まったわけではない。
しかし、最後に待ち受けていた黒いコートの人物の話を聞く限り、行方をくらました彼らは恐らく・・・。
「そうだな・・・。俺達の力じゃない。アズールやエイリル、多種族の者達が力を合わせた結果だ」
二人の話を聞き、アカリは嬉しそうでもあったが、どこか決意に満ちたような熱い目をしていた。
「そうですわよね。みんなが力を合わせて守ったのがこの街。だから私も、何か力になれるような何かがしたいと思ったんです」
「アカリだって十分戦ったそうじゃないか。獣人族の人達が感謝してたよ?」
「アレはあの子の力ですわ。私は何も・・・」
アカリが見つめる先に、美味しそうに果物を摘んでいる紅葉がいた。もう雛鳥という程のものではなくなったその姿は、愛らしくもあるが少しだけ逞しくもなった気がするシン達だった。
「みなさんが戦う姿を見て、私決心しました」
「決心?」
「私にはみなさんのように戦う力はないけれど、知識を身に付けることで役に立てることがあると思ったんです。それを教えてくれたのは、アズールさんに助けられたという研究所からやって来た人達のおかげなんです」
研究員達もまた、アカリのように戦う術は持たない。だが、身につけた知識で今もこうして街の復興の為、獣人族やエルフ族らと協力し、大いに役に立っている。その姿がアカリの目には、一つの戦う姿にも見えていたようだった。
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