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取り押さえられた獣
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ツクヨの様子を伺いながら怯える様に姿を表した獣。後ろに控えた獣人の二人の顔が強張る。意外な動きと様子で登場した獣に、動揺を隠せないようだった。
驚いていたのは二人だけではない。そんな不気味とも取れる獣の動きに、これまで出会った獣達とは全く異質のものを感じていたツクヨ。その不気味さは、研究所にいた別の生物同士を混ぜ合わせて作られたエンプサーらと同じ雰囲気さえ感じられた。
「・・・・・」
息を飲み思わず身体が硬直してしまうツクヨ。これまでの自然な動きから一変したその姿を見て、獣は何か良からぬ企みを感じ取ったのか、向こうも動きを止め回り込む様に横へと移動し始める。
警戒はしつつも、着実に距離を詰めて来る獣。獣人に後のことは任せると心に誓ったものの、二人がどう動くのか気になったツクヨは、チラリと自分が湖へやって来た道の方に視線を送る。
しかし、二人の獣人族既に移動を開始しており、道の方にはいなかった。獣の気配消しとは違い、やはり本場の者達が使うと格段にその差がわかる。まるでリナムルへやって来る時に、彼らの襲撃を受けた光景が目に浮かぶ様だった。あの時も目の前に現れるまで、誰も気がつかなかった程だ。
湖を縦に見た時、手前にツクヨがおり湖の向こう側に獣が奥にいる。そしてツクヨの来た道から別れた獣人の二人は、それぞれ二手に分かれ湖の左右へと獣を挟むように茂みの中を移動していた。
獣に気付かれた様子は未だない。先程の構図から、獣はやや右側に寄りながら湖の方へと歩み寄っていき、遂に水のあるところまでやって来ると、そのままツクヨと同じように湖の水を飲み始めたのだ。
その姿はまさに野生動物のそれと同じだった。漸く警戒心を解いた獣の姿を見て、近くにいる側の獣人がもう片方の相方へ、攻め時である合図を送る。獣人族同士の合図の仕方に、気配を使ったものがあり、前の方へ乗り出すような気配を出すことで攻める時の合図を送っている。
声や音を発せられない時にこういった手段を取る。水を飲むことに意識が回っていた獣は、獣人達のそういったやり取りに気が付かず、そのまま変わらずに水を飲んでいた。
自分が先に動くからその様子を見て続いてくれ。そういった様子で合図を送り終えると、右側に移動していた獣人が静かに肉体強化を図り、油断する獣から目を背けることなく刃の様に鋭い殺気を研ぎ澄ませる。
狩りの時間が始まった。十分に強化を果たした獣人の二人。そして消していた気配を殺気と共に解放し、一気に湖にいる獣の元へと駆け抜けて行く。大砲の弾と見紛う程の速度で突き抜けてきた獣人は、一瞬にして獣の身体を地面へと押さえ付ける。
急な出来事に、獣も必死に抗おうとするも戦闘準備の段階で既に格差は生まれていた。獣人族から抽出されたであろう肉体強化も、上から押さえ付けられた状態では思うように発動できない。
追い討ちを掛けようと飛び出した相方も、一人で十分拘束できている様子から側に近づき、足を止める。しかしその肉体は、獣を押さえつけている獣人と同様に肉体強化が済んでいる。
肉体強化すら出来ていない獣が一人で暴れ回ったところで、到底逃げられるものではないだろう。それにこの場にはツクヨもいる。三人で掛かれば倒せないことはない。
この状況を獣も分かっているのか、暫く抵抗したところで暴れることを止め大人しくなる。
「さて・・・コイツの処遇だが・・・」
「獣の残党は全て、見つけ次第始末するでいいんだろ?いつ暴れるか分からねぇ奴を街に連れ帰る訳にもいかねぇし・・・」
うつ伏せになる獣にのしかかる様にして取り押さえる獣人ともう一人の仲間が、捕まえた獣をどうするべきかと話し合う。囮になって横になっていたツクヨも、そんな二人の様子を見ながら急ぎ湖を迂回し、彼らの元へ走って来た。
「なっなんか妙な奴だったねぇ!これまで見た獣達とは、だいぶ様子が違ったように見えたけど・・・」
「挙動や所作は個体によって違うのかもな」
「いろいろ実験でいじくり回されたんで、混ぜられた動物の習慣でも目覚めちまったんじゃねぇか?それよりどうするか、だろ?」
一行が集まったところで取り押さえられた獣に視線を向ける。すっかり静かになった獣は抵抗する様子もなく、荒い息を整えている。
すると、そんな彼らの元に聞いたことのない声が聞こえて来る。
「タ・・・タスケテ・・・クレ・・・」
「ッ!?」
声は取り押さえている獣の方から聞こえてきた。明らかにツクヨ達にも分かる言葉を発していた。辿々しくはあるが、言葉の意味を理解して発している様にも思える。
獣人の二人は喋る獣に出会うのは初めてだった。だがツクヨは、先程も感じた研究所のラミア達のような、意志を持っているかのような反応に僅かに心が揺さぶられた。このまま殺してしまってもいいのかと。
驚いていたのは二人だけではない。そんな不気味とも取れる獣の動きに、これまで出会った獣達とは全く異質のものを感じていたツクヨ。その不気味さは、研究所にいた別の生物同士を混ぜ合わせて作られたエンプサーらと同じ雰囲気さえ感じられた。
「・・・・・」
息を飲み思わず身体が硬直してしまうツクヨ。これまでの自然な動きから一変したその姿を見て、獣は何か良からぬ企みを感じ取ったのか、向こうも動きを止め回り込む様に横へと移動し始める。
警戒はしつつも、着実に距離を詰めて来る獣。獣人に後のことは任せると心に誓ったものの、二人がどう動くのか気になったツクヨは、チラリと自分が湖へやって来た道の方に視線を送る。
しかし、二人の獣人族既に移動を開始しており、道の方にはいなかった。獣の気配消しとは違い、やはり本場の者達が使うと格段にその差がわかる。まるでリナムルへやって来る時に、彼らの襲撃を受けた光景が目に浮かぶ様だった。あの時も目の前に現れるまで、誰も気がつかなかった程だ。
湖を縦に見た時、手前にツクヨがおり湖の向こう側に獣が奥にいる。そしてツクヨの来た道から別れた獣人の二人は、それぞれ二手に分かれ湖の左右へと獣を挟むように茂みの中を移動していた。
獣に気付かれた様子は未だない。先程の構図から、獣はやや右側に寄りながら湖の方へと歩み寄っていき、遂に水のあるところまでやって来ると、そのままツクヨと同じように湖の水を飲み始めたのだ。
その姿はまさに野生動物のそれと同じだった。漸く警戒心を解いた獣の姿を見て、近くにいる側の獣人がもう片方の相方へ、攻め時である合図を送る。獣人族同士の合図の仕方に、気配を使ったものがあり、前の方へ乗り出すような気配を出すことで攻める時の合図を送っている。
声や音を発せられない時にこういった手段を取る。水を飲むことに意識が回っていた獣は、獣人達のそういったやり取りに気が付かず、そのまま変わらずに水を飲んでいた。
自分が先に動くからその様子を見て続いてくれ。そういった様子で合図を送り終えると、右側に移動していた獣人が静かに肉体強化を図り、油断する獣から目を背けることなく刃の様に鋭い殺気を研ぎ澄ませる。
狩りの時間が始まった。十分に強化を果たした獣人の二人。そして消していた気配を殺気と共に解放し、一気に湖にいる獣の元へと駆け抜けて行く。大砲の弾と見紛う程の速度で突き抜けてきた獣人は、一瞬にして獣の身体を地面へと押さえ付ける。
急な出来事に、獣も必死に抗おうとするも戦闘準備の段階で既に格差は生まれていた。獣人族から抽出されたであろう肉体強化も、上から押さえ付けられた状態では思うように発動できない。
追い討ちを掛けようと飛び出した相方も、一人で十分拘束できている様子から側に近づき、足を止める。しかしその肉体は、獣を押さえつけている獣人と同様に肉体強化が済んでいる。
肉体強化すら出来ていない獣が一人で暴れ回ったところで、到底逃げられるものではないだろう。それにこの場にはツクヨもいる。三人で掛かれば倒せないことはない。
この状況を獣も分かっているのか、暫く抵抗したところで暴れることを止め大人しくなる。
「さて・・・コイツの処遇だが・・・」
「獣の残党は全て、見つけ次第始末するでいいんだろ?いつ暴れるか分からねぇ奴を街に連れ帰る訳にもいかねぇし・・・」
うつ伏せになる獣にのしかかる様にして取り押さえる獣人ともう一人の仲間が、捕まえた獣をどうするべきかと話し合う。囮になって横になっていたツクヨも、そんな二人の様子を見ながら急ぎ湖を迂回し、彼らの元へ走って来た。
「なっなんか妙な奴だったねぇ!これまで見た獣達とは、だいぶ様子が違ったように見えたけど・・・」
「挙動や所作は個体によって違うのかもな」
「いろいろ実験でいじくり回されたんで、混ぜられた動物の習慣でも目覚めちまったんじゃねぇか?それよりどうするか、だろ?」
一行が集まったところで取り押さえられた獣に視線を向ける。すっかり静かになった獣は抵抗する様子もなく、荒い息を整えている。
すると、そんな彼らの元に聞いたことのない声が聞こえて来る。
「タ・・・タスケテ・・・クレ・・・」
「ッ!?」
声は取り押さえている獣の方から聞こえてきた。明らかにツクヨ達にも分かる言葉を発していた。辿々しくはあるが、言葉の意味を理解して発している様にも思える。
獣人の二人は喋る獣に出会うのは初めてだった。だがツクヨは、先程も感じた研究所のラミア達のような、意志を持っているかのような反応に僅かに心が揺さぶられた。このまま殺してしまってもいいのかと。
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