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帰還の実感
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二人が資料に目を通していると、通路の方から何やら騒々しい足音が彼らのいる部屋に向かって近づいて来る。何事かと扉の方を見て身構えるシンとツクヨ。
そして扉を勢いよく開き飛び込んで来たのは、リナムルでツバキやアカリと共に彼らの帰りを待ちながら、街の防衛と警戒に努めていたミアだった。
「二人共!無事だったのか!?」
「ミア!?」
「びっくりしたぁ・・・。そうだ、帰って来たのに顔を見せるの忘れてたね」
研究所での戦いやその中であった出来事、出会った人物のことなど様々な事が一辺に押し寄せるようにやって来た二人は、帰ってきた街の様子からもこれといって変わりなかった為、勝手に無事であるものだと思い込んでいた。
実際に彼女の様子を見て、記憶の端に追いやられていた仲間達の無事を彼らも確認する形となった。
「ツバキとアカリは?」
「すっかり元気になったよ。今は街中を出歩いて好き勝手やってる」
「大丈夫なのか?そんなに自由に歩き回って」
「街の外に獣人族がいる。交代で見張りをやってくれてるんだ。気配の感知能力で奴らの横に出る者はそうはいないからな」
ミアやツバキ達も、ケツァルの計らいにより獣の気配感知能力を身につけてはいるものの、本家本元の彼らには及ばない。それに今、リナムルを掌握している種族は獣人族であり、その数も多い。
奪い取った拠点とはいえ、共通の敵を得て協力関係を結んだ彼らは、最も数の多い獣人族が中心となり、街の防衛にあたっていた。
アズール達が研究所を目指した後も、何体かの獣が襲撃に来ていたらしい。森に放たれた残党だろう。初見の時は不意を打たれた彼らだったが、防衛につき準備を整えた状況であれば苦戦することもなく対処に当たれていた。
自分も何体か仕留めたんだと誇らしげに語るミアに、二人は漸く安全な場所へ戻って来たんだと表情を緩めて安堵する。
だがそこでシンは、地下研究所で出会った人物達のことを思い出し、同じWoFユーザーである彼女に彼らがどうやって脱出できたのかを話した。そしてその人物が言っていた、この世界に広がるエラーという現象についても。
「なるほど・・・。これまで妙な難易度の難題をふっかけられて来たのは、そのエラーが原因だったと」
「そいつは蒼言ってた。クエストのシステムを回す環が乱れて、イレギュラーな事態を起こしている・・・。それが俺達の戦ったメアやシュトラールだったらしい」
そして、そんな重要な何かを知っている様子の人物に襲われた二人を助けたのは、もう一人の黒いコートの人物だった。後から現れた黒コートの人物は、フォリーキャナルレース内にてシンとの面識があり、その時はデイヴィスとシンを襲う敵として立ちはだかったが、今回は味方として現れた。
理由は語られなかったものの、シンと面識のあるその黒コートの男は、もう一人の黒いコートの人物を抑えつつ、シンとよく似たスキルでその場から姿を消していったのだ。
今にして思えば、キングの船で出会った二人組の黒コートの男達。その二人ともがシンと同じ影のスキルを用いていた。彼らがシンと似たスキルを使っていたのか、或いはシンが彼らと似たスキルを使っているのか。
詳細は分からないが、彼らがシンと全くの無関係とも思えなくなってきた。そしてもう一つ分かった重要な事。それは黒いコートの人物達の中には、シン達をエラーと定めて襲い掛かる者達と、協力する姿勢を見せる者達がいるということだ。
ミアやツクヨが黒いコートの人物を見たのは、フォリーキャナルレースの開会式での映像が初めてだった。その者が参加者の為に贈呈した代物というのが、この世界では内別の世界へと転移できるというポータルだった。
結局事実関係は分からないまま、そのアイテムはリヴァイアサンの身体に作られた真っ黒な歪みの中へと消えていってしまった。
「アタシらが知ってる、その黒いコートの連中は海のレースの開会式で見た奴だけだ。他には話に聞くくらいで直接会った事はない・・・」
「私もだ。そもそも私はその人達が言っていた話が、あまりよく理解できないんだが・・・?」
「要するに危険な奴らだよ・・・アタシらにとってな。それとシンとの関係性も気になる・・・。本当に思い当たることはないのか?」
ミアに記憶の中から探し出すよう催促を受けるシンだったが、いくら記憶を遡ろうとも、声や体格、能力を思い返してみても、そのような者達と出会った記憶もなければ戦った記憶もない。
「駄目だ・・・俺の記憶の中に、あんな奴らの記憶はない・・・。だが、白獅達だったら何か調べられるかもッ・・・!すぐに彼らに連絡を取ってみる」
「現実世界にアサシンギルドがあるってのも何か関係があるのかもな・・・。他のギルドとかはないのか?」
「俺が戻った時には見当たらなかった。でも他のWoFユーザーはいた。何人かは俺達と同じようにWoFのキャラクターデータを自身の身体に投影できる覚醒者になっていた」
覚醒者とは、現実世界に侵食してきたWoFのモンスターや、異世界からやって来た時代の放浪者達と戦う術を身につけた、WoFのユーザーでゲームキャラクターを自身の身体に投影し、現実世界でWoFの世界のように戦闘を行えるようになった者達のことだ。
そして扉を勢いよく開き飛び込んで来たのは、リナムルでツバキやアカリと共に彼らの帰りを待ちながら、街の防衛と警戒に努めていたミアだった。
「二人共!無事だったのか!?」
「ミア!?」
「びっくりしたぁ・・・。そうだ、帰って来たのに顔を見せるの忘れてたね」
研究所での戦いやその中であった出来事、出会った人物のことなど様々な事が一辺に押し寄せるようにやって来た二人は、帰ってきた街の様子からもこれといって変わりなかった為、勝手に無事であるものだと思い込んでいた。
実際に彼女の様子を見て、記憶の端に追いやられていた仲間達の無事を彼らも確認する形となった。
「ツバキとアカリは?」
「すっかり元気になったよ。今は街中を出歩いて好き勝手やってる」
「大丈夫なのか?そんなに自由に歩き回って」
「街の外に獣人族がいる。交代で見張りをやってくれてるんだ。気配の感知能力で奴らの横に出る者はそうはいないからな」
ミアやツバキ達も、ケツァルの計らいにより獣の気配感知能力を身につけてはいるものの、本家本元の彼らには及ばない。それに今、リナムルを掌握している種族は獣人族であり、その数も多い。
奪い取った拠点とはいえ、共通の敵を得て協力関係を結んだ彼らは、最も数の多い獣人族が中心となり、街の防衛にあたっていた。
アズール達が研究所を目指した後も、何体かの獣が襲撃に来ていたらしい。森に放たれた残党だろう。初見の時は不意を打たれた彼らだったが、防衛につき準備を整えた状況であれば苦戦することもなく対処に当たれていた。
自分も何体か仕留めたんだと誇らしげに語るミアに、二人は漸く安全な場所へ戻って来たんだと表情を緩めて安堵する。
だがそこでシンは、地下研究所で出会った人物達のことを思い出し、同じWoFユーザーである彼女に彼らがどうやって脱出できたのかを話した。そしてその人物が言っていた、この世界に広がるエラーという現象についても。
「なるほど・・・。これまで妙な難易度の難題をふっかけられて来たのは、そのエラーが原因だったと」
「そいつは蒼言ってた。クエストのシステムを回す環が乱れて、イレギュラーな事態を起こしている・・・。それが俺達の戦ったメアやシュトラールだったらしい」
そして、そんな重要な何かを知っている様子の人物に襲われた二人を助けたのは、もう一人の黒いコートの人物だった。後から現れた黒コートの人物は、フォリーキャナルレース内にてシンとの面識があり、その時はデイヴィスとシンを襲う敵として立ちはだかったが、今回は味方として現れた。
理由は語られなかったものの、シンと面識のあるその黒コートの男は、もう一人の黒いコートの人物を抑えつつ、シンとよく似たスキルでその場から姿を消していったのだ。
今にして思えば、キングの船で出会った二人組の黒コートの男達。その二人ともがシンと同じ影のスキルを用いていた。彼らがシンと似たスキルを使っていたのか、或いはシンが彼らと似たスキルを使っているのか。
詳細は分からないが、彼らがシンと全くの無関係とも思えなくなってきた。そしてもう一つ分かった重要な事。それは黒いコートの人物達の中には、シン達をエラーと定めて襲い掛かる者達と、協力する姿勢を見せる者達がいるということだ。
ミアやツクヨが黒いコートの人物を見たのは、フォリーキャナルレースの開会式での映像が初めてだった。その者が参加者の為に贈呈した代物というのが、この世界では内別の世界へと転移できるというポータルだった。
結局事実関係は分からないまま、そのアイテムはリヴァイアサンの身体に作られた真っ黒な歪みの中へと消えていってしまった。
「アタシらが知ってる、その黒いコートの連中は海のレースの開会式で見た奴だけだ。他には話に聞くくらいで直接会った事はない・・・」
「私もだ。そもそも私はその人達が言っていた話が、あまりよく理解できないんだが・・・?」
「要するに危険な奴らだよ・・・アタシらにとってな。それとシンとの関係性も気になる・・・。本当に思い当たることはないのか?」
ミアに記憶の中から探し出すよう催促を受けるシンだったが、いくら記憶を遡ろうとも、声や体格、能力を思い返してみても、そのような者達と出会った記憶もなければ戦った記憶もない。
「駄目だ・・・俺の記憶の中に、あんな奴らの記憶はない・・・。だが、白獅達だったら何か調べられるかもッ・・・!すぐに彼らに連絡を取ってみる」
「現実世界にアサシンギルドがあるってのも何か関係があるのかもな・・・。他のギルドとかはないのか?」
「俺が戻った時には見当たらなかった。でも他のWoFユーザーはいた。何人かは俺達と同じようにWoFのキャラクターデータを自身の身体に投影できる覚醒者になっていた」
覚醒者とは、現実世界に侵食してきたWoFのモンスターや、異世界からやって来た時代の放浪者達と戦う術を身につけた、WoFのユーザーでゲームキャラクターを自身の身体に投影し、現実世界でWoFの世界のように戦闘を行えるようになった者達のことだ。
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