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静かに蝕む
しおりを挟む だが同時に、彼らは一つの結論にも至っていた。このリフトが地下を目指し続けているのなら、到着し次第リフトを離れ、そのまま無視して研究所の破壊を試みるというものだった。
「本体の謎が分からないのなら、このまま地下に行ってしまうのも一つの手じゃないか・・・?」
「隠密とは程遠くなってしまったな」
「元から気付かれていた節はあった。こっちも抑える必要が無いのなら、大暴れしてやろうじゃないか」
「悪くない提案だな・・・。寧ろそうしたいと思っていたところだ。やはり俺に大人しく潜入するなど、性に合っていなかったようだ」
施設への隠しポータルで受けた獣達による襲撃。あれはシン達が施設を目指している事を知っているからこそ差し向けられた刺客。
そして待ち伏せしていたかのように現れた百足男。シン達は騒ぎを起こす事なく潜入し、爆弾を仕掛け施設を破壊するつもりだったが、実際は彼らの潜入を察知した施設側の者達によって招き入れられたのかもしれない。
転移ポータルでは襲ってきたのに、施設に到着してから妙なほど警戒が薄いのも、そういった意図があったとするならば納得がいく。
ましてや、今度は攫ってくるというリスクを犯す必要もなく、実験体が自らやってくるとなれば突然小隊程の人数が一辺に姿を消しても、寧ろこれまで以上に施設を探そうという者が現れなくなる噂が広まるかもしれない。
「百足達を切断しなくなったか・・・。まぁこれだけ増えれば馬鹿でも気がつくか。だがこれで終わるほど、つまらない男ではないぞ?俺は・・・」
戦闘手段を変え始めたシン達の動きを察したのか、百足男は何やら不穏な笑みを浮かべながら、百足達へ新たな指令を送る。
「打撃に耐性はあるが、決して通用しない訳ではない。要するに千切れなければいいんだ。殴り甲斐がある。コイツらには今まで溜まった鬱憤を晴らさせてもらうッ!」
流石の獣人族といったところか。アズールの拳は次々に差し向けられる百足を悉く吹き飛ばし、文字通り虫の息へと追い込んでいく。
「力こそ全てと言わんばかりの戦いだな。・・・俺は俺に出来には事を・・・」
シンは勇ましいアズールの姿が少し羨ましく感じた。自分にも耐性などお構いなしにダメージを与えられる力があればと。他者の能力に魅力を感じ、羨ましく思うことは少なくなかった。
アサシンのクラスを後悔している訳ではない。しかし、どうしても影の立役者となるクラスであるが故に、その力は目立つことなく称賛されることもない。
元々目立つこと自体に抵抗はあるが、誰にも称賛されず認められない努力に果たして価値はあるのだろうかと思うことが時々あった。
ゲームとしてWoFを遊んでいた時も、前線で戦うクラスや後方から大技を放つクラスに比べ、目に見える活躍が少ないクラスというものは評価されずらかった。
故に以前に所属していたこともあるギルドやクランでも、同じように脇役となるクラスに就いていた人達が、メインのクラスを変更したり、以前のクラスから間反対の戦闘タイプに変わっていたという事も何度も経験していたシン。
《シンさんも、クラスを変えてみては?それかダブルクラスで気になるクラスに就いてみるとか》
《いやぁ~アサシンのクラスに慣れるのに精一杯で》
実際、発動タイミングの難しいスキルや他のスキルと組み合わせなければ有効に発動しないものなどもある。シンがそれらに慣れるまで、他のクラスに手を出さなかったのも事実だが、表立って活躍するクラスよりも、目立たなくとも確実に役割を全うする影の立役者に憧れを抱いていたのが大きい。
嘗ての記憶を思い出したシンは、目の前のやるべき事に集中するため、目を閉じて首を大きく左右に振った。そして迫る百足を分からな早い身のこなしで躱すと、壁に張り付き投擲用の槍を取り出す。
飛び掛かる百足を避けると同時に飛び立つと、宙で身体を回転させながら手にした槍を勢いよく投げ放つ。槍は百足の身体を突き抜け、杭のようにその場に百足の身体を固定させた。
「なるほど、中々器用な事をする。そうやって俺のサンドバックを増やしていってくれ!」
「言われなくてもッ・・・!」
持ち得るアイテムをふんだんに使い、シンは百足を倒すのではなくその場に固定していく。固定された百足にアズールが打撃を与え、虫の息にする。
「数が多いッ・・・!人間!お前のそれは弾数は足りるのか?」
「足りないのなら作り出す!」
数で押し寄せる百足に、シンの手持ちの槍だけでは数が足りない。そこでシンがとった行動は、アズールによって弱らされ動くかなくなった百足を固定する槍を短剣で切断し、先端を鋭利に削り擬似的な槍を作り出し、更に百足を貫いていく。
不穏なのは、百足を差し向ける以外に表立った行動を起こさない百足男だった。新たな策でシン達の妨害をしてこないのは幸いだが、動かないのがかえって何かを企んでいそうで安心できない。
そんなシン達の不安は現実のものとなる。飛び回っていたシンとアズールの足が突然重くなったかのように鈍りだしたのだ。足の様子を見ても怪我をしている訳でもなく、ただの疲労くらいに考えていたが、それほど動いていた訳でもないのに息切れや眩暈のような症状も現れ始めたのだ。
互いに相手に心配をかけまいと口にはしなかった二人だが、不意に視界に入った互いの動きが先程までに比べて鈍っているように見えた。そこでこれは自分だけに引き起っているものではないことを悟ると、何か他に原因があるのではと周囲に視線を送る。
「本体の謎が分からないのなら、このまま地下に行ってしまうのも一つの手じゃないか・・・?」
「隠密とは程遠くなってしまったな」
「元から気付かれていた節はあった。こっちも抑える必要が無いのなら、大暴れしてやろうじゃないか」
「悪くない提案だな・・・。寧ろそうしたいと思っていたところだ。やはり俺に大人しく潜入するなど、性に合っていなかったようだ」
施設への隠しポータルで受けた獣達による襲撃。あれはシン達が施設を目指している事を知っているからこそ差し向けられた刺客。
そして待ち伏せしていたかのように現れた百足男。シン達は騒ぎを起こす事なく潜入し、爆弾を仕掛け施設を破壊するつもりだったが、実際は彼らの潜入を察知した施設側の者達によって招き入れられたのかもしれない。
転移ポータルでは襲ってきたのに、施設に到着してから妙なほど警戒が薄いのも、そういった意図があったとするならば納得がいく。
ましてや、今度は攫ってくるというリスクを犯す必要もなく、実験体が自らやってくるとなれば突然小隊程の人数が一辺に姿を消しても、寧ろこれまで以上に施設を探そうという者が現れなくなる噂が広まるかもしれない。
「百足達を切断しなくなったか・・・。まぁこれだけ増えれば馬鹿でも気がつくか。だがこれで終わるほど、つまらない男ではないぞ?俺は・・・」
戦闘手段を変え始めたシン達の動きを察したのか、百足男は何やら不穏な笑みを浮かべながら、百足達へ新たな指令を送る。
「打撃に耐性はあるが、決して通用しない訳ではない。要するに千切れなければいいんだ。殴り甲斐がある。コイツらには今まで溜まった鬱憤を晴らさせてもらうッ!」
流石の獣人族といったところか。アズールの拳は次々に差し向けられる百足を悉く吹き飛ばし、文字通り虫の息へと追い込んでいく。
「力こそ全てと言わんばかりの戦いだな。・・・俺は俺に出来には事を・・・」
シンは勇ましいアズールの姿が少し羨ましく感じた。自分にも耐性などお構いなしにダメージを与えられる力があればと。他者の能力に魅力を感じ、羨ましく思うことは少なくなかった。
アサシンのクラスを後悔している訳ではない。しかし、どうしても影の立役者となるクラスであるが故に、その力は目立つことなく称賛されることもない。
元々目立つこと自体に抵抗はあるが、誰にも称賛されず認められない努力に果たして価値はあるのだろうかと思うことが時々あった。
ゲームとしてWoFを遊んでいた時も、前線で戦うクラスや後方から大技を放つクラスに比べ、目に見える活躍が少ないクラスというものは評価されずらかった。
故に以前に所属していたこともあるギルドやクランでも、同じように脇役となるクラスに就いていた人達が、メインのクラスを変更したり、以前のクラスから間反対の戦闘タイプに変わっていたという事も何度も経験していたシン。
《シンさんも、クラスを変えてみては?それかダブルクラスで気になるクラスに就いてみるとか》
《いやぁ~アサシンのクラスに慣れるのに精一杯で》
実際、発動タイミングの難しいスキルや他のスキルと組み合わせなければ有効に発動しないものなどもある。シンがそれらに慣れるまで、他のクラスに手を出さなかったのも事実だが、表立って活躍するクラスよりも、目立たなくとも確実に役割を全うする影の立役者に憧れを抱いていたのが大きい。
嘗ての記憶を思い出したシンは、目の前のやるべき事に集中するため、目を閉じて首を大きく左右に振った。そして迫る百足を分からな早い身のこなしで躱すと、壁に張り付き投擲用の槍を取り出す。
飛び掛かる百足を避けると同時に飛び立つと、宙で身体を回転させながら手にした槍を勢いよく投げ放つ。槍は百足の身体を突き抜け、杭のようにその場に百足の身体を固定させた。
「なるほど、中々器用な事をする。そうやって俺のサンドバックを増やしていってくれ!」
「言われなくてもッ・・・!」
持ち得るアイテムをふんだんに使い、シンは百足を倒すのではなくその場に固定していく。固定された百足にアズールが打撃を与え、虫の息にする。
「数が多いッ・・・!人間!お前のそれは弾数は足りるのか?」
「足りないのなら作り出す!」
数で押し寄せる百足に、シンの手持ちの槍だけでは数が足りない。そこでシンがとった行動は、アズールによって弱らされ動くかなくなった百足を固定する槍を短剣で切断し、先端を鋭利に削り擬似的な槍を作り出し、更に百足を貫いていく。
不穏なのは、百足を差し向ける以外に表立った行動を起こさない百足男だった。新たな策でシン達の妨害をしてこないのは幸いだが、動かないのがかえって何かを企んでいそうで安心できない。
そんなシン達の不安は現実のものとなる。飛び回っていたシンとアズールの足が突然重くなったかのように鈍りだしたのだ。足の様子を見ても怪我をしている訳でもなく、ただの疲労くらいに考えていたが、それほど動いていた訳でもないのに息切れや眩暈のような症状も現れ始めたのだ。
互いに相手に心配をかけまいと口にはしなかった二人だが、不意に視界に入った互いの動きが先程までに比べて鈍っているように見えた。そこでこれは自分だけに引き起っているものではないことを悟ると、何か他に原因があるのではと周囲に視線を送る。
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