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出撃支度
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議題に上がってからエルフ族の到着には、それほど時間は掛からなかった。迅速に連絡をとった事、何より今回の件で森に平和を取り戻せるかもしれないとのことで、すぐに対応してくれたことが大きかった。
元より遠方に隠れ住んでいた訳ではなかった妖精よりのエルフ族は、既に獣人族が人間から乗っ取ったというリナムルの近くに、監視の目も含めて潜んでいたのだという。
それ故、あまり時間を置かずして数人の仲間と共に駆けつけてくれたという訳だ。
話にも上がっていたように、彼らは早速ダマスクの条件を成す為に、シンとダマスクを取り囲むように結界を展開し、ダマスクが万が一裏切る事があっても逃げられないようにし、約束通り結界の中でシンはダマスクが封じられている小瓶の蓋を開ける。
すると、瓶の中から黒い煙が僅かに外へと抜け出していく。だが、煙はそのまま瓶から出ていくと下へ下へとゆっくり落ちていってしまった。この煙自体がダマスクの身体と呼べるものと見ていいのか、シンはダマスクに今の現状について問う。
「おっおい、俺の中へ入ってくるんじゃなかったのか?」
「安心しろ、もう目的は果たされた。瓶の蓋を閉じていいぞ」
ダマスクの言葉を聞き、自身の身体に異変がないかどうかを確かめるシンだったが、彼が意識の中へ入り込んだという感覚自体、シンにはわかる筈もなく、今は彼のいう通り外へ逃さない為に再び手にした小瓶の蓋を閉める。
煙というもの自体に視覚的な意味しかないのなら、この時点で結界内にダマスクが逃げ出している可能性もある。シンはエルフ族に結界を解く前に、中にシン以外の妙な魔力の反応がないかを問う。
シンに言われ、結界内の反応について調べるも、彼以外の反応は見当たらないという。感じたとすれば、彼が結界内で瓶の蓋を開けた時に、僅かに別の者の魔力を感じた程度だった。
しかしそれも、シンが瓶を閉じた時に収まり、それを機に違和感程度の魔力の変化がシンの中から感じたという程度だったそうだ。
アズールの中からダマスクを引き摺り出したように、自分自身の中に影を送り込めば、ダマスクが自分の意識の中に入ったかどうかは確かめられる。だが、周りの者達からすれば、小瓶の中に閉じ込めたダマスクが外に逃げ出してなければそれでいいといった様子で、エルフ族の言うようにシンの中に違和感があったとするならば、それを信じてわざわざ確かめる程でもないかと、この話はここで終わりを迎える。
エルフ族が結界を解除し、ダマスクの目的が果たされた事を伝えると、一行は漸く役者が揃い準備が整った事を告げ、いよいよ因縁の者達がいるであろう施設の場所を突き止める為に動き出す。
作戦の第一段階として、まずは部隊を分散する事なく、シンとダラーヒムの証言から施設のおおまかな場所を特定。その後、援軍として訪れた妖精に近いエルフ族の数だけ部隊を分け、施設周辺を囲むように分散させる。
エルフ族の感知を頼りに施設周辺に貼られているであろう結界や幻術の類を突破し、他の全部隊が施設の領域内に入るのを待つ。
その後は施設自体の規模にもよるが、数カ所から中へと突入し一斉に暴れ施設としての機能を完全に奪い、誘拐事件の首謀者と思われる人物を始末することが彼らの目的となる。
会議を終え動き出した一行に、部屋の外で待っていた獣人達や様子を見に来ていたミアが近づく。そこで今後の大まかな話をし、他の者達にはアジトを守るよう号令を発するアズール。
シンはミアにここでツバキやアカリ、紅葉を守る役目を頼む。オルレラにて、直接オスカーらの願いを頼まれたのはツバキだが、彼のような子供が一人で解決できる問題でないことは、オスカー自身も分かっていた事だろう。それでも彼に頼んだのは、彼には彼を支える仲間がいると読んでの事だったに違いない。
オルレラの街全体を覆っていた記憶の改竄という不思議な現象。当の本人達には記憶に異常が現れていることにすら気づかないという恐ろしいものだったが、それは能力を与えられたオスカーによるものだった。
オスカーの記憶に関する能力と、ダマスクの意識の中へ入り込むという能力。どちらも脳に関するものであり、その能力は施設の中で行われたであろう生物実験によって誕生したものとみて間違い無いだろう。
そこからも推測出来る通り、彼らがこれから向かおうとしている施設では、脳に関する能力を持った者達が敵として立ちはだかる事が予想される。対抗する手段としてエルフ族の協力を焚きつけたが、その数には限りがありあまり多くの人員を連れていくことは出来ない。
それに万が一、戦闘の行えない妖精に近いエルフ族が真っ先に倒されてしまった場合、彼らのプランは一気に破綻するかもしれない。そうなれば戦場が敵地である事もあり、襲撃側とはいえ圧倒的に不利な状況に変わる事は避けなれない。
かといって目を覚ましたツバキが、シン達が施設へ向かった事を知れば何故自分を置いていったのかと、後を追いかねない。それを説得できる者はミアしかいないとシンは判断したのだ。
これまでの旅の中でも、ツバキはミアのいう事には従うというイメージのあったシン。彼が仲間に加入して以降、共にいる時間も彼女が一番長い。そして何より、シンやツクヨはまだツバキの事を知らないということも大きく関係していた。
元より遠方に隠れ住んでいた訳ではなかった妖精よりのエルフ族は、既に獣人族が人間から乗っ取ったというリナムルの近くに、監視の目も含めて潜んでいたのだという。
それ故、あまり時間を置かずして数人の仲間と共に駆けつけてくれたという訳だ。
話にも上がっていたように、彼らは早速ダマスクの条件を成す為に、シンとダマスクを取り囲むように結界を展開し、ダマスクが万が一裏切る事があっても逃げられないようにし、約束通り結界の中でシンはダマスクが封じられている小瓶の蓋を開ける。
すると、瓶の中から黒い煙が僅かに外へと抜け出していく。だが、煙はそのまま瓶から出ていくと下へ下へとゆっくり落ちていってしまった。この煙自体がダマスクの身体と呼べるものと見ていいのか、シンはダマスクに今の現状について問う。
「おっおい、俺の中へ入ってくるんじゃなかったのか?」
「安心しろ、もう目的は果たされた。瓶の蓋を閉じていいぞ」
ダマスクの言葉を聞き、自身の身体に異変がないかどうかを確かめるシンだったが、彼が意識の中へ入り込んだという感覚自体、シンにはわかる筈もなく、今は彼のいう通り外へ逃さない為に再び手にした小瓶の蓋を閉める。
煙というもの自体に視覚的な意味しかないのなら、この時点で結界内にダマスクが逃げ出している可能性もある。シンはエルフ族に結界を解く前に、中にシン以外の妙な魔力の反応がないかを問う。
シンに言われ、結界内の反応について調べるも、彼以外の反応は見当たらないという。感じたとすれば、彼が結界内で瓶の蓋を開けた時に、僅かに別の者の魔力を感じた程度だった。
しかしそれも、シンが瓶を閉じた時に収まり、それを機に違和感程度の魔力の変化がシンの中から感じたという程度だったそうだ。
アズールの中からダマスクを引き摺り出したように、自分自身の中に影を送り込めば、ダマスクが自分の意識の中に入ったかどうかは確かめられる。だが、周りの者達からすれば、小瓶の中に閉じ込めたダマスクが外に逃げ出してなければそれでいいといった様子で、エルフ族の言うようにシンの中に違和感があったとするならば、それを信じてわざわざ確かめる程でもないかと、この話はここで終わりを迎える。
エルフ族が結界を解除し、ダマスクの目的が果たされた事を伝えると、一行は漸く役者が揃い準備が整った事を告げ、いよいよ因縁の者達がいるであろう施設の場所を突き止める為に動き出す。
作戦の第一段階として、まずは部隊を分散する事なく、シンとダラーヒムの証言から施設のおおまかな場所を特定。その後、援軍として訪れた妖精に近いエルフ族の数だけ部隊を分け、施設周辺を囲むように分散させる。
エルフ族の感知を頼りに施設周辺に貼られているであろう結界や幻術の類を突破し、他の全部隊が施設の領域内に入るのを待つ。
その後は施設自体の規模にもよるが、数カ所から中へと突入し一斉に暴れ施設としての機能を完全に奪い、誘拐事件の首謀者と思われる人物を始末することが彼らの目的となる。
会議を終え動き出した一行に、部屋の外で待っていた獣人達や様子を見に来ていたミアが近づく。そこで今後の大まかな話をし、他の者達にはアジトを守るよう号令を発するアズール。
シンはミアにここでツバキやアカリ、紅葉を守る役目を頼む。オルレラにて、直接オスカーらの願いを頼まれたのはツバキだが、彼のような子供が一人で解決できる問題でないことは、オスカー自身も分かっていた事だろう。それでも彼に頼んだのは、彼には彼を支える仲間がいると読んでの事だったに違いない。
オルレラの街全体を覆っていた記憶の改竄という不思議な現象。当の本人達には記憶に異常が現れていることにすら気づかないという恐ろしいものだったが、それは能力を与えられたオスカーによるものだった。
オスカーの記憶に関する能力と、ダマスクの意識の中へ入り込むという能力。どちらも脳に関するものであり、その能力は施設の中で行われたであろう生物実験によって誕生したものとみて間違い無いだろう。
そこからも推測出来る通り、彼らがこれから向かおうとしている施設では、脳に関する能力を持った者達が敵として立ちはだかる事が予想される。対抗する手段としてエルフ族の協力を焚きつけたが、その数には限りがありあまり多くの人員を連れていくことは出来ない。
それに万が一、戦闘の行えない妖精に近いエルフ族が真っ先に倒されてしまった場合、彼らのプランは一気に破綻するかもしれない。そうなれば戦場が敵地である事もあり、襲撃側とはいえ圧倒的に不利な状況に変わる事は避けなれない。
かといって目を覚ましたツバキが、シン達が施設へ向かった事を知れば何故自分を置いていったのかと、後を追いかねない。それを説得できる者はミアしかいないとシンは判断したのだ。
これまでの旅の中でも、ツバキはミアのいう事には従うというイメージのあったシン。彼が仲間に加入して以降、共にいる時間も彼女が一番長い。そして何より、シンやツクヨはまだツバキの事を知らないということも大きく関係していた。
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