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中にいたもの
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絵画の中に腕を突っ込み、引き抜いたシンの手には真っ黒なシルエットをした何者かの首を掴んでいた。そのシルエットの記憶と思われる絵画の光景から引き摺り出された。
「ぉぉぉおお・・・おおおあああッ!!」
シンによって引き摺り出された“ソレ“は、叫び声を上げる。やはりアズールの意識の中には別の何者かが潜んでいた。正体を暴くためにも、シンは掴んだその何者かを取り押さえようとするが、振り解かれてしまう。
「このッ・・・!アズールの中で何してやがる!?」
「それはこっちのセリフだぜッ!貴様、どうやって俺を“見つけ“やがった!?」
そのシルエットの何者かも、直接接触してくるような者に出会すのは初めてだったのだろう。シンの姿を見て酷く動揺していたその者は、彼の返答も聞かぬまま額縁の中に映る記憶の映像の中に戻ろうとしている。
「待て!逃すかッ!!」
「逃げる・・・?ここは俺の“居場所“だ。勝手に入ってきたのは貴様だろうがッ・・・!」
額縁に足を掛けて戻ろうとするところに、シンはナイフを取り出しシルエットの何者かに投擲する。すると彼の投げたナイフがその何者かの足に命中し、動きを一瞬だけ鈍らせた。
痛みというものを持ち合わせているのだろうか。動きが鈍ったところへ、シンは立て続けにスキルの影を使ってシルエットの何者かを拘束する。真っ暗な精神世界ということもあり、シンの影のスキルは光のある場所よりも、より強力になっていた。
「なッ・・・!?何故ここでスキルを使える!?」
「・・・?」
当然のようにスキルを放ったシンに、更に驚きの声をあげる。何でも、別人の精神世界において、その当人が認知していない能力は発現しないというのが、そのシルエットの者がいう言い分だった。
だが、ロッシュのパイロットのスキルから着想を得た“操影“と、対象者の精神世界との因果関係について詳しく把握していなかったシンには、それが何のことなのか理解できなかった。
今は目の前の何者かを取り押さえることで精一杯だったシンは、余計な事を考えることはせず、ここへやってきた目的を果たすことを第一に考え行動する。
スキルや侵入者固有の能力を使われると思っていなかったその何者かは、不意を突かれたように身柄を拘束され、絵画から引き離されそのままアズールの精神世界を浮上していく。
徐々に明るくなる光景の中、シンのスキルが途絶えるか、そのままアズールの意識の中から何者かを引き摺り出せるかという、どっちに転ぶか分からないまま、シンはアズールの意識の中から飛び出していく。
外では、気を失うように倒れていたシンが自分の影の中へと戻り、意識を取り戻す。急に起き上がったシンの姿に驚く一行を尻目に、シンはスキルで捉えていた筈の何者かの姿を探す。
「シン!?戻ったのか!一体どうなったんだ?」
「アズールの中で何か見つけたか?おい、何とか言え!」
意識の外では何も起こっていなかったのか。ツクヨやケツァルが彼の身を案じたり、アズールはどうなったのかと質問を投げ掛ける。周囲を見渡したシンは、気を失った時とは別の場所に移されていることに気が付き、彼らが今何処にいるのかと問う。
すると、アズールとそれを抑え込むガレウス達は、リナムルから少し先の森の中へと移動していった事を伝える。どうやらシンがアズールの意識の中に入っている間に、アズールは何度か苦しむような素振りを見せては逃走を図ろうとしていたのだという。
すぐに現在のアズールを確認したいと言い出したシンを連れ、三人は彼らの戦う森の中へと向かう。
「そういえばダラーヒムの奴は?一緒にいるもんだとばかりに思っていたが・・・」
「お前のスキルによって何か変化があるかもしれないと言い出してな。今はダラーヒムらと一緒にアズールを抑えている筈だ」
そしてシン達が森の中で戦うアズールやガレウスらの元へ辿り着くと、ダラーヒムの察しの通り、シンがスキルで引っ張り出した何者かの影響は、アズールの身体にも反映されていたのだ。
「ぅぉぁあああッ・・・!!」
そこにはボロボロになった獣人達と、少なからず怪我を負ったガレウス。そして錬金術によるものか、アズールに蔦を伸ばし拘束するダラーヒムの姿あったのだが、肝心のアズールの身体から黒い煙に覆われた何者かのシルエットの一部が飛び出していたのだ。
「ダラーヒム!!」
「やってくれたようだな、シン。お前がアズールの中から奴を引っ張り出してくれたお陰で、俺のスキルでも感知できる範囲に奴を捉えることが出来たようだぜ?」
アズールの身体からダラーヒムの錬金術によって引っ張り出されたソレは、木漏れ日の光に照らされて、シルエットではない姿を晒したのだが、その正体は煙のように実体のない存在だった。
「これが・・・アズールを乗っ取っている者の正体・・・」
「生物の身体の中・・・いや、意識の中に入るくらいだ。モンスターや、ましてや人間なんかじゃないだろうとは思ったが・・・」
「ぉぉぉおお・・・おおおあああッ!!」
シンによって引き摺り出された“ソレ“は、叫び声を上げる。やはりアズールの意識の中には別の何者かが潜んでいた。正体を暴くためにも、シンは掴んだその何者かを取り押さえようとするが、振り解かれてしまう。
「このッ・・・!アズールの中で何してやがる!?」
「それはこっちのセリフだぜッ!貴様、どうやって俺を“見つけ“やがった!?」
そのシルエットの何者かも、直接接触してくるような者に出会すのは初めてだったのだろう。シンの姿を見て酷く動揺していたその者は、彼の返答も聞かぬまま額縁の中に映る記憶の映像の中に戻ろうとしている。
「待て!逃すかッ!!」
「逃げる・・・?ここは俺の“居場所“だ。勝手に入ってきたのは貴様だろうがッ・・・!」
額縁に足を掛けて戻ろうとするところに、シンはナイフを取り出しシルエットの何者かに投擲する。すると彼の投げたナイフがその何者かの足に命中し、動きを一瞬だけ鈍らせた。
痛みというものを持ち合わせているのだろうか。動きが鈍ったところへ、シンは立て続けにスキルの影を使ってシルエットの何者かを拘束する。真っ暗な精神世界ということもあり、シンの影のスキルは光のある場所よりも、より強力になっていた。
「なッ・・・!?何故ここでスキルを使える!?」
「・・・?」
当然のようにスキルを放ったシンに、更に驚きの声をあげる。何でも、別人の精神世界において、その当人が認知していない能力は発現しないというのが、そのシルエットの者がいう言い分だった。
だが、ロッシュのパイロットのスキルから着想を得た“操影“と、対象者の精神世界との因果関係について詳しく把握していなかったシンには、それが何のことなのか理解できなかった。
今は目の前の何者かを取り押さえることで精一杯だったシンは、余計な事を考えることはせず、ここへやってきた目的を果たすことを第一に考え行動する。
スキルや侵入者固有の能力を使われると思っていなかったその何者かは、不意を突かれたように身柄を拘束され、絵画から引き離されそのままアズールの精神世界を浮上していく。
徐々に明るくなる光景の中、シンのスキルが途絶えるか、そのままアズールの意識の中から何者かを引き摺り出せるかという、どっちに転ぶか分からないまま、シンはアズールの意識の中から飛び出していく。
外では、気を失うように倒れていたシンが自分の影の中へと戻り、意識を取り戻す。急に起き上がったシンの姿に驚く一行を尻目に、シンはスキルで捉えていた筈の何者かの姿を探す。
「シン!?戻ったのか!一体どうなったんだ?」
「アズールの中で何か見つけたか?おい、何とか言え!」
意識の外では何も起こっていなかったのか。ツクヨやケツァルが彼の身を案じたり、アズールはどうなったのかと質問を投げ掛ける。周囲を見渡したシンは、気を失った時とは別の場所に移されていることに気が付き、彼らが今何処にいるのかと問う。
すると、アズールとそれを抑え込むガレウス達は、リナムルから少し先の森の中へと移動していった事を伝える。どうやらシンがアズールの意識の中に入っている間に、アズールは何度か苦しむような素振りを見せては逃走を図ろうとしていたのだという。
すぐに現在のアズールを確認したいと言い出したシンを連れ、三人は彼らの戦う森の中へと向かう。
「そういえばダラーヒムの奴は?一緒にいるもんだとばかりに思っていたが・・・」
「お前のスキルによって何か変化があるかもしれないと言い出してな。今はダラーヒムらと一緒にアズールを抑えている筈だ」
そしてシン達が森の中で戦うアズールやガレウスらの元へ辿り着くと、ダラーヒムの察しの通り、シンがスキルで引っ張り出した何者かの影響は、アズールの身体にも反映されていたのだ。
「ぅぉぁあああッ・・・!!」
そこにはボロボロになった獣人達と、少なからず怪我を負ったガレウス。そして錬金術によるものか、アズールに蔦を伸ばし拘束するダラーヒムの姿あったのだが、肝心のアズールの身体から黒い煙に覆われた何者かのシルエットの一部が飛び出していたのだ。
「ダラーヒム!!」
「やってくれたようだな、シン。お前がアズールの中から奴を引っ張り出してくれたお陰で、俺のスキルでも感知できる範囲に奴を捉えることが出来たようだぜ?」
アズールの身体からダラーヒムの錬金術によって引っ張り出されたソレは、木漏れ日の光に照らされて、シルエットではない姿を晒したのだが、その正体は煙のように実体のない存在だった。
「これが・・・アズールを乗っ取っている者の正体・・・」
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