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魔力を宿す身体作り
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しかし実際に、生まれ持って魔力を持たないケツァルに対し、冒険者はどうやって魔法を習得させるつもりだったのか。彼がその方法をケツァルに披露するのは、狩場を離れ街に到着した後の事となる。
いつもの様に狩りを終えた冒険者とケツァルは、街に帰って来るとモンスターを倒した時に落とす素材やアイテムを売りに行く。
そこで彼は、いつもと違うルートでの帰路を辿る。何処か寄るところでもあるのだろうか。疑問に思いつつも、ケツァルはその答えを問うこともなく彼の足取りについていく。
二人が訪れたのは、街の煌びやかな灯りも届かぬ路地の先。人通りのない舞台の裏方のような場所にひっそりと構える不思議な雰囲気を醸し出す商店だった。
冒険者は店主の者に親しげに挨拶を交わす。どうやら彼はこの店の常連客らしい。冒険者の来店の目的を知っているかのように、店主は会話を交わした後店の奥へと下がっていく。
その間に冒険者はケツァルを店の中でも奥の方の席へ案内する。席に着いた彼に店のカウンターへ勝手に入って行った冒険者は、彼の名前らしきものが掛けられたボトルを手に取ると、二つのグラスを手に取りケツァルの元へと戻って来る。
机の上に置いた二つのグラスにボトルの中身を注いでいく冒険者。その液体はサラサラとした薄っすら緑色をした綺麗なものだった。
「これは・・・?」
「安心しろ、酒じゃない。子供でも飲めるものだ。美味いぞ?」
それまであまりケツァルに対し、好意的に接してこなかった冒険者が何故ここにきてこんな行動に出たのか。彼の中での心境の変化は分からなかったが、ケツァルは彼が注いでくれたグラスを手に取り、恐る恐る注がれた液体を口に含み、その風味と味わいを口の中で転がしながら確かめ、喉を通す。
「おっ美味しい・・・!」
「だろ?よかった、口に合った様だな。よく言われるんだ、お前の味覚は普通とはズレてるって。俺はそんな風に思ったことはないんだがな」
預けられてから冒険者が他の者達と連んでいるところを見たことがなかったケツァルには、彼の言う他の者達と言うのがどんな人物であるのか想像できなかった。
「これは何の飲み物なの・・・?」
「キマイラってモンスターの血を果実で割った物だ」
自分が美味いと思って飲んでいた物が、モンスターの血で出来た物だと知ったケツァルは思わず口に含んでいた分を噴き出してしまう。慌てた様子でおしぼりを手に取り机を拭く冒険者は、モンスターの血肉が料理の一部として使われることは珍しくないと説得するが、実際にそれを耳にしてしまうと今までのように美味しく飲めなくなってしまった。
「なっ何だってそんな物をッ・・・!?!?」
「おいおい!貴重な物なんだからな!?それにただのお祝いって訳じゃないんだ。お前の身体を作るって意味も含まれてるんだよ」
「身体を作る・・・?」
すると、ちょうどいいタイミングで店の奥から戻ってきた店主が、幾つかのかの瓶に入った薬のような物を二人のいる机の上に並べる。中身の色は二人が飲んでいた緑色の物もあれば、赤や青から始まり様々な色が取り揃えられていた。
説明もないままいつもの物だとだけ言い残し、店主はカウンターの方へと帰って行く。物が揃ったことで、いよいよケツァルをこのような辺境の店に連れてきた理由を語り始める冒険者。
先程口にしていた“身体を作る“というのにも訳があったようで、魔力のない彼にどうやって魔法を習得させるかの秘密も、その店主の持ってきた商品に隠されていた。
どうやらその商品は、冒険者の間で使われる貴重な物で、WoFの世界やシン達の暮らす現実世界で遊ばれるゲームの世界でも非常に重宝されるアイテムである、使用したキャラクターの基礎ステータスをアップさせるアイテムだったのだ。
ただ、どうやらそのアイテムを使う為にはその冒険者の言うように、ある程度の身体作りが必要となるようで、魔力を多分に含むモンスターの血肉から得られる成分を取り込むことで、魔力を持たない者の身体に魔力に対する抵抗力を身につけさせていく目的があったのだ。
だが単純に口にするのは容易なことではなく、特に魔力を持たない者にとっては味や臭いが気になってしまい、とても口に出来るものではないのだという。
それを限りなく飲みやすくしたのが、ケツァルの口にした飲み物だった。現に彼はそれを美味しいと口にしていた。効果は薄くなるが、これで子供でも半ば強制的に魔力を蓄積できる身体を作っていく事が出来るのだと、冒険者はケツァルに語る。
戦闘技術は勿論、魔力をも持たないことで家族からも見放されてしまったケツァルは、こんなことで自分を変えられるのなら安いものだと、その場に出された冒険者のボトルを自らのグラスに注ぎ、一気に飲み干した。
「慌てるな。一日に接種して効果のある量には限りがある。それに過剰な接種は暴走の原因ともなる」
「暴走?そんな魔力、僕には・・・」
「そうじゃない。身につける為の魔力が逆に自身を飲み込み、中にはモンスターとなってしまう者もいるくらいに危険なものだ。いいか?必ず俺の言われた分の量に留めておけ。さもないと、俺はお前を殺さなければならない事になる」
「・・・分かった、気をつける・・・」
ケツァルは冒険者と約束し、その日は冒険者の持ってきたボトルの分だけで我慢した。店の店主が持ってきた薬品は、彼らが飲んでいた物よりも即効性のある薬で、冒険者の様に身体の出来上がった者が使用すれば基礎ステータスをその場で上げることの出来る物になるのだが、今のケツァルには使用すら出来ない。
まずはその薬を使えるようになるまで、限りなく薄められた美味しく飲める飲み物で、ケツァルの身体を作っていく事から始めていく二人。
人間世界の技術力の発展は凄まじいものがあり、獣人族の世界に留まっていては決して身につけることの出来ない力を、ケツァルは短期間でメキメキとつけていき、直ぐに冒険者の用意した薬を使えるまでに成長し、見事生まれた時点での恵まれない境遇を覆すほどの魔力を身につけた。
ケツァルが魔力を身につけ、いよいよ魔法を習得できる身体を手に入れている頃、彼の出身である獣人族の森では、彼と対になる類稀なる才能を持った獣人の子が、何者かの襲撃を受け連れ拐われる事件が発生していた。
いつもの様に狩りを終えた冒険者とケツァルは、街に帰って来るとモンスターを倒した時に落とす素材やアイテムを売りに行く。
そこで彼は、いつもと違うルートでの帰路を辿る。何処か寄るところでもあるのだろうか。疑問に思いつつも、ケツァルはその答えを問うこともなく彼の足取りについていく。
二人が訪れたのは、街の煌びやかな灯りも届かぬ路地の先。人通りのない舞台の裏方のような場所にひっそりと構える不思議な雰囲気を醸し出す商店だった。
冒険者は店主の者に親しげに挨拶を交わす。どうやら彼はこの店の常連客らしい。冒険者の来店の目的を知っているかのように、店主は会話を交わした後店の奥へと下がっていく。
その間に冒険者はケツァルを店の中でも奥の方の席へ案内する。席に着いた彼に店のカウンターへ勝手に入って行った冒険者は、彼の名前らしきものが掛けられたボトルを手に取ると、二つのグラスを手に取りケツァルの元へと戻って来る。
机の上に置いた二つのグラスにボトルの中身を注いでいく冒険者。その液体はサラサラとした薄っすら緑色をした綺麗なものだった。
「これは・・・?」
「安心しろ、酒じゃない。子供でも飲めるものだ。美味いぞ?」
それまであまりケツァルに対し、好意的に接してこなかった冒険者が何故ここにきてこんな行動に出たのか。彼の中での心境の変化は分からなかったが、ケツァルは彼が注いでくれたグラスを手に取り、恐る恐る注がれた液体を口に含み、その風味と味わいを口の中で転がしながら確かめ、喉を通す。
「おっ美味しい・・・!」
「だろ?よかった、口に合った様だな。よく言われるんだ、お前の味覚は普通とはズレてるって。俺はそんな風に思ったことはないんだがな」
預けられてから冒険者が他の者達と連んでいるところを見たことがなかったケツァルには、彼の言う他の者達と言うのがどんな人物であるのか想像できなかった。
「これは何の飲み物なの・・・?」
「キマイラってモンスターの血を果実で割った物だ」
自分が美味いと思って飲んでいた物が、モンスターの血で出来た物だと知ったケツァルは思わず口に含んでいた分を噴き出してしまう。慌てた様子でおしぼりを手に取り机を拭く冒険者は、モンスターの血肉が料理の一部として使われることは珍しくないと説得するが、実際にそれを耳にしてしまうと今までのように美味しく飲めなくなってしまった。
「なっ何だってそんな物をッ・・・!?!?」
「おいおい!貴重な物なんだからな!?それにただのお祝いって訳じゃないんだ。お前の身体を作るって意味も含まれてるんだよ」
「身体を作る・・・?」
すると、ちょうどいいタイミングで店の奥から戻ってきた店主が、幾つかのかの瓶に入った薬のような物を二人のいる机の上に並べる。中身の色は二人が飲んでいた緑色の物もあれば、赤や青から始まり様々な色が取り揃えられていた。
説明もないままいつもの物だとだけ言い残し、店主はカウンターの方へと帰って行く。物が揃ったことで、いよいよケツァルをこのような辺境の店に連れてきた理由を語り始める冒険者。
先程口にしていた“身体を作る“というのにも訳があったようで、魔力のない彼にどうやって魔法を習得させるかの秘密も、その店主の持ってきた商品に隠されていた。
どうやらその商品は、冒険者の間で使われる貴重な物で、WoFの世界やシン達の暮らす現実世界で遊ばれるゲームの世界でも非常に重宝されるアイテムである、使用したキャラクターの基礎ステータスをアップさせるアイテムだったのだ。
ただ、どうやらそのアイテムを使う為にはその冒険者の言うように、ある程度の身体作りが必要となるようで、魔力を多分に含むモンスターの血肉から得られる成分を取り込むことで、魔力を持たない者の身体に魔力に対する抵抗力を身につけさせていく目的があったのだ。
だが単純に口にするのは容易なことではなく、特に魔力を持たない者にとっては味や臭いが気になってしまい、とても口に出来るものではないのだという。
それを限りなく飲みやすくしたのが、ケツァルの口にした飲み物だった。現に彼はそれを美味しいと口にしていた。効果は薄くなるが、これで子供でも半ば強制的に魔力を蓄積できる身体を作っていく事が出来るのだと、冒険者はケツァルに語る。
戦闘技術は勿論、魔力をも持たないことで家族からも見放されてしまったケツァルは、こんなことで自分を変えられるのなら安いものだと、その場に出された冒険者のボトルを自らのグラスに注ぎ、一気に飲み干した。
「慌てるな。一日に接種して効果のある量には限りがある。それに過剰な接種は暴走の原因ともなる」
「暴走?そんな魔力、僕には・・・」
「そうじゃない。身につける為の魔力が逆に自身を飲み込み、中にはモンスターとなってしまう者もいるくらいに危険なものだ。いいか?必ず俺の言われた分の量に留めておけ。さもないと、俺はお前を殺さなければならない事になる」
「・・・分かった、気をつける・・・」
ケツァルは冒険者と約束し、その日は冒険者の持ってきたボトルの分だけで我慢した。店の店主が持ってきた薬品は、彼らが飲んでいた物よりも即効性のある薬で、冒険者の様に身体の出来上がった者が使用すれば基礎ステータスをその場で上げることの出来る物になるのだが、今のケツァルには使用すら出来ない。
まずはその薬を使えるようになるまで、限りなく薄められた美味しく飲める飲み物で、ケツァルの身体を作っていく事から始めていく二人。
人間世界の技術力の発展は凄まじいものがあり、獣人族の世界に留まっていては決して身につけることの出来ない力を、ケツァルは短期間でメキメキとつけていき、直ぐに冒険者の用意した薬を使えるまでに成長し、見事生まれた時点での恵まれない境遇を覆すほどの魔力を身につけた。
ケツァルが魔力を身につけ、いよいよ魔法を習得できる身体を手に入れている頃、彼の出身である獣人族の森では、彼と対になる類稀なる才能を持った獣人の子が、何者かの襲撃を受け連れ拐われる事件が発生していた。
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