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判断と決断
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残党を狩る獣人族の元へ向かい、戦闘に混ざるダラーヒムとは分かれ、ガレウスに救助されたツバキの元へシンが駆けつける。首を絞められていたようで意識は失っていたが、命に別状はないようだった。
「よかった・・・よかったぁ・・・。よく耐えてくれた」
ツバキの無事を知り安堵するシンの姿を尻目に、ガレウスは心のどこかで自分の行いがこの光景を作り出したのかと、感慨深く思うところがあったのか。獣の見せた幻覚とは違った動揺が生まれていた。
それを見逃さなかったのは、最も彼と対立していたケツァルだった。自分達がいない間にガレウスに起きた心の変化が、どうしても気になっているといったところだろうか。
彼としては寧ろ嬉しい誤算だっただろうが、何がガレウスの心をそこまで変えたのかが全く理解できず、推測も出来なかった。
「ケツァル!最後の一匹まで気を抜くなッ!」
「あ・・・あぁ、すまないアズール」
気が散っている様子のケツァルにアズールが喝を入れる。彼の言う通り、敵対する獣達には未だ未知なる力が眠っているかもしれない。それを考えれば死を確認するまで安心は出来ない。
獣人族がアジトとしているリナムルへ襲撃する獣達を根絶やしにしようと、最後の追い込みをかけるアズール達にダラーヒムがストップをかける。
「獣人族のリーダーさんよぉ。コイツらの遺体を調べたい。何体か綺麗な状態で仕留められねぇか?」
「駄目だ。コイツらはここで完全に消し去る。この獣らの血を調べようと言うのだろう?残念だが我々にその技術はないし、ここリナムルにもそれらしい機材はない」
人間達からリナムルを強奪した彼らは、街にある施設や食料、薬の類まで全て調べ上げ頂戴したのだという。その中で獣人族が扱える機材や道具を利用し、彼らの拠点としていた。
だがそれは、あくまで彼ら獣人族が扱える機材や道具で調べられる範囲の事。錬金術に精通し、肉体的な面で獣人族が勝るなら、使える道具や機材など器用さに勝る人間では話が変わってくる。
「それは“獣人族だけ“での話だろ?」
「・・・どういう意味だ・・・?」
「調査に協力すると言っているんだ。何も見返りを求めている訳じゃない。これは俺自身にも調べる価値のある事だからだ」
仮にも囚われの身となり、拷問まで受けた人間が無条件で協力を申し出て来たことが、アズールにとって気持ち悪く思えて仕方がなかったようだ。中々首を縦に振ろうとしないアズールに、ダラーヒムの協力を受け入れるべきだと考えていたケツァルが後押しをする。
「アズール!我々だけでは、我々の求める仇の情報へは手が届かない。それに彼らが協力的であるのは、他の仲間達が命を救われている事で証明されているのではないか?」
「いいや!アズール、お前の予感は正しいぜ」
ダラーヒムの持ち掛けた提案に反対するのはアズールだけではなかった。だがそれは、その場にいる誰もがある程度予想していた。当然のように口を挟んで来たのはガレウスだった。
「助けたのは油断させる為のフェイクだ!善意に漬け込むのは人間の専売特許だろ!?俺らの未来を他の種族の奴らに委ねちゃならねぇ!後悔することになるぞ!」
「何なんだ!?お前はどっちなんだよ、ガレウス!さっきはその人間を助けてただろ!?お前はそっち側の立場になってどう思ったんだ!?彼らの協力なくして被害はこんなに抑えられなかった筈だ!」
またしても言い争いを始めてしまうケツァルとガレウス。だが、一概にどちらの意見が正しいなどと言うことは、その立場や個人の思想によって異なるもので正解など存在する方がおかしいというもの。
現状、彼らの勢力はその大半を獣人族が占めており、拠点となっているリナムルの街も彼らの手中に収まっている。となると、最終的な判断を下すのは獣人族を束ねる長であるアズールしかいないだろう。
ダラーヒムもその点を理解しているようで、何とか彼を説得できないかどうか言葉を連ねる。
獣達の相手をそっちのけで討論が繰り広げられようとする中で、難しい判断と結論を迫られるアズールは、兎に角現状の確保を最優先にする事を判断し、獣の調査については後回しにする決断を下した。
「ええぃ!黙れ貴様ら!!皆の者、よく聞けッ!先ずは襲撃者の排除だ!可能な限り戦闘不能にして捕らえるように努めろ。それが叶わぬのなら殺して構わん。議論の場はその後に設ける。今は命令に従い、速やかに行動に移せッ!」
捕らえた獣の頭部を鷲掴みにし、地面に叩き付けたアズールは騒がしくなる彼らと周りで獣の残党と戦う獣人やツクヨら人間に、それに従えぬのなら殺すと言わんばかりの剣幕で最優先事項の命令を下す。
「よかった・・・よかったぁ・・・。よく耐えてくれた」
ツバキの無事を知り安堵するシンの姿を尻目に、ガレウスは心のどこかで自分の行いがこの光景を作り出したのかと、感慨深く思うところがあったのか。獣の見せた幻覚とは違った動揺が生まれていた。
それを見逃さなかったのは、最も彼と対立していたケツァルだった。自分達がいない間にガレウスに起きた心の変化が、どうしても気になっているといったところだろうか。
彼としては寧ろ嬉しい誤算だっただろうが、何がガレウスの心をそこまで変えたのかが全く理解できず、推測も出来なかった。
「ケツァル!最後の一匹まで気を抜くなッ!」
「あ・・・あぁ、すまないアズール」
気が散っている様子のケツァルにアズールが喝を入れる。彼の言う通り、敵対する獣達には未だ未知なる力が眠っているかもしれない。それを考えれば死を確認するまで安心は出来ない。
獣人族がアジトとしているリナムルへ襲撃する獣達を根絶やしにしようと、最後の追い込みをかけるアズール達にダラーヒムがストップをかける。
「獣人族のリーダーさんよぉ。コイツらの遺体を調べたい。何体か綺麗な状態で仕留められねぇか?」
「駄目だ。コイツらはここで完全に消し去る。この獣らの血を調べようと言うのだろう?残念だが我々にその技術はないし、ここリナムルにもそれらしい機材はない」
人間達からリナムルを強奪した彼らは、街にある施設や食料、薬の類まで全て調べ上げ頂戴したのだという。その中で獣人族が扱える機材や道具を利用し、彼らの拠点としていた。
だがそれは、あくまで彼ら獣人族が扱える機材や道具で調べられる範囲の事。錬金術に精通し、肉体的な面で獣人族が勝るなら、使える道具や機材など器用さに勝る人間では話が変わってくる。
「それは“獣人族だけ“での話だろ?」
「・・・どういう意味だ・・・?」
「調査に協力すると言っているんだ。何も見返りを求めている訳じゃない。これは俺自身にも調べる価値のある事だからだ」
仮にも囚われの身となり、拷問まで受けた人間が無条件で協力を申し出て来たことが、アズールにとって気持ち悪く思えて仕方がなかったようだ。中々首を縦に振ろうとしないアズールに、ダラーヒムの協力を受け入れるべきだと考えていたケツァルが後押しをする。
「アズール!我々だけでは、我々の求める仇の情報へは手が届かない。それに彼らが協力的であるのは、他の仲間達が命を救われている事で証明されているのではないか?」
「いいや!アズール、お前の予感は正しいぜ」
ダラーヒムの持ち掛けた提案に反対するのはアズールだけではなかった。だがそれは、その場にいる誰もがある程度予想していた。当然のように口を挟んで来たのはガレウスだった。
「助けたのは油断させる為のフェイクだ!善意に漬け込むのは人間の専売特許だろ!?俺らの未来を他の種族の奴らに委ねちゃならねぇ!後悔することになるぞ!」
「何なんだ!?お前はどっちなんだよ、ガレウス!さっきはその人間を助けてただろ!?お前はそっち側の立場になってどう思ったんだ!?彼らの協力なくして被害はこんなに抑えられなかった筈だ!」
またしても言い争いを始めてしまうケツァルとガレウス。だが、一概にどちらの意見が正しいなどと言うことは、その立場や個人の思想によって異なるもので正解など存在する方がおかしいというもの。
現状、彼らの勢力はその大半を獣人族が占めており、拠点となっているリナムルの街も彼らの手中に収まっている。となると、最終的な判断を下すのは獣人族を束ねる長であるアズールしかいないだろう。
ダラーヒムもその点を理解しているようで、何とか彼を説得できないかどうか言葉を連ねる。
獣達の相手をそっちのけで討論が繰り広げられようとする中で、難しい判断と結論を迫られるアズールは、兎に角現状の確保を最優先にする事を判断し、獣の調査については後回しにする決断を下した。
「ええぃ!黙れ貴様ら!!皆の者、よく聞けッ!先ずは襲撃者の排除だ!可能な限り戦闘不能にして捕らえるように努めろ。それが叶わぬのなら殺して構わん。議論の場はその後に設ける。今は命令に従い、速やかに行動に移せッ!」
捕らえた獣の頭部を鷲掴みにし、地面に叩き付けたアズールは騒がしくなる彼らと周りで獣の残党と戦う獣人やツクヨら人間に、それに従えぬのなら殺すと言わんばかりの剣幕で最優先事項の命令を下す。
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