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復活の戦鬼と帰還
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自身の内なる変化に戸惑いつつも、ガレウスは足枷のように絡みついた重荷が取れたようにそれまでの気持ちが晴れ渡り、再び獣達の群れの中へ飛び込んでいくと豪快な戦い方へと戻った。
「あっ・・・あれ?彼、元に戻ってる・・・?」
キレの悪かったガレウスの動きが、様子のおかしくなる前の頼れる姿へと戻っていた。彼の中でどんな変化があったのかは、周りの者達には分からなかったが、重要な戦力が戻ったことで前線を押し返し、獣を次々に討ち払っていく。
「何があったかしらねぇが、元に戻ったようで何よりだぜ!」
「あぁ!これでここはもう大丈夫だろ」
獣人達が話している通り、邪念の消えたガレウスの活躍は目を見張るものがあった。ミアの狙撃による手助けなどいらないほど手早く前衛の獣を処理していくと、その身体をまるで武器のように振り回し道を切り開く。
ガレウスの圧倒的な力に、獣達もツクヨから彼に標的を変えて一斉に襲い掛かる。ガレウスは見事な大立ち回りを演じ、敵の注意を引き受ける囮役をこれでもかと言うほど盛大にこなして見せた。
彼が大暴れをしていると、獣達がやって来た森の奥から幾つかの強い気配が近づいてくるのに気がつく。
「この気配はッ・・・!アイツら、何故戻って来やがった!?」
リナムルで戦う彼らの元へやって来る気配。その複数ある内の幾つかに、ガレウスらと同じ獣人の気配があることに気がつく。そしてそれが見知った気配であることも、ガレウスや側近の獣人達には分かっていた。
「アズール!?それに調査に向かった連中だ・・・」
「襲撃を知って戻ってきてくれたのか!?」
獣の力を手に入れた事により、ミアやツクヨ達でも気配には気付けたが、それが何者かまでは分からなかった。だが、ガレウスの反応や獣人達の言葉から、ダラーヒムの言葉を確かめる為調査へ向かった一行が引き返して来ているのだと悟る。つまり、その中にはシンもいる筈。
「戻って来る?じゃぁシンも・・・!?」
「恐らくな。だがダラーヒムの奴があんな状態だったんだ。途中で置いて行かれてても不思議じゃない・・・」
「そんなッ・・・!こんな獣達が彷徨いてる森で置いて行かれたら・・・」
「間違いなく戦闘になる。足手まといが居ればいくらシンでも、身を隠すのは容易じゃないだろう・・・」
ミアの言う通り、実際森の中には彼らを襲う獣と同じ敵がそこら中におり、戦闘にもなっていた。それにただのモンスターとは違うこの獣達は、獣人族と同じ鋭い嗅覚を持っている。
シンの影によるスキルは視覚的に姿を隠せても、匂いまでは消すことが出来ない。もし獣達に襲われでもしたら逃げ切ることは出来ないだろう。
ミアの危惧する事態に心配するツクヨだったが、そんな彼の不安はすぐに消え去る事となった。
本調子に戻ったガレウスが暴れ、残すは残党を狩るといった状況の中、彼らの元に辿り着いた気配が次々に姿を現し、獣達を倒していった。
「ガレウス!無事だったか!?」
「アズール!それにケツァルまでッ・・・。何だよ、俺だけじゃ任せられなかったってか!?」
「馬鹿を言ってる場合か!被害の様子はどうだ?」
「さぁな・・・。だがコイツらの襲撃はこれで最後だろう。片付け終わったら確認しようと思ってたところだ」
ケツァルの怪しい動きを調査していたガレウスは、リナムル襲撃の際に出遅れてしまい、全体の状況を把握している訳ではなかった。要所要所で側近の者を使い情報の伝達を行っていたが、今は敵の最後の襲撃を迎え撃つので精一杯だった。
援軍に駆けつけたアズールやケツァルは、身体の一部を強化し、敵の獣達を出血させる事なく戦闘不能にしていた。それは獣に隠された何らかの能力である幻覚を再現させない為の対策だった。
だが、獣の血によって幻覚が引き起こされると知っていた彼らは、既に返り血を浴びているガレウスの姿を見て、酷く動揺していた。それもその筈。実際にその能力に苦しめられたからこそ、ガレウスも同じ状況に陥っているのではないかと心配していたからだ。
「ガレウス!その身体ッ・・・」
「ん?あぁ、こりゃぁ返り血だ。俺のじゃねぇよ」
「違う!お前、幻覚が見えたりしてないか?」
返り血に染まる身体をしながら、敵味方をちゃんと見極め難なく攻防を繰り広げている彼の姿を見て、幻覚の症状があるのかないのか、本人以外には確認のしようもなかった。
幻覚を見ながら戦っているのだとすれば、いつ自分にその攻撃が向けられるか分からない。その不安を確かめる為、ケツァルはガレウスに現在の容態を伺う。
「へ!さっきまで妙なモンが見えていたが、今は問題ねぇ!この通りッ・・・!絶好調だぜ!」
そう言いながらガレウスは、目の前の獣の頭を鷲掴みにして地面に叩きつけると、その身体を軽々しく持ち上げてみせた。
「なッ・・・!?どうやって切り抜けたんだ?血の付着が幻覚のトリガーになっていたのではなかったのか・・・」
「さぁな・・・。だが、人間のガキを助けた時に、重荷が取れたように楽になった気がするぜ」
「お前が人間をッ!?どういう風の吹き回しだ!」
ガレウスが人間を助けるなど、彼ら獣人族の間では考えられない事だった。それ故に本当かどうかはさておき、本人からそのような言葉が出て来たことにケツァルは驚愕した。
「あっ・・・あれ?彼、元に戻ってる・・・?」
キレの悪かったガレウスの動きが、様子のおかしくなる前の頼れる姿へと戻っていた。彼の中でどんな変化があったのかは、周りの者達には分からなかったが、重要な戦力が戻ったことで前線を押し返し、獣を次々に討ち払っていく。
「何があったかしらねぇが、元に戻ったようで何よりだぜ!」
「あぁ!これでここはもう大丈夫だろ」
獣人達が話している通り、邪念の消えたガレウスの活躍は目を見張るものがあった。ミアの狙撃による手助けなどいらないほど手早く前衛の獣を処理していくと、その身体をまるで武器のように振り回し道を切り開く。
ガレウスの圧倒的な力に、獣達もツクヨから彼に標的を変えて一斉に襲い掛かる。ガレウスは見事な大立ち回りを演じ、敵の注意を引き受ける囮役をこれでもかと言うほど盛大にこなして見せた。
彼が大暴れをしていると、獣達がやって来た森の奥から幾つかの強い気配が近づいてくるのに気がつく。
「この気配はッ・・・!アイツら、何故戻って来やがった!?」
リナムルで戦う彼らの元へやって来る気配。その複数ある内の幾つかに、ガレウスらと同じ獣人の気配があることに気がつく。そしてそれが見知った気配であることも、ガレウスや側近の獣人達には分かっていた。
「アズール!?それに調査に向かった連中だ・・・」
「襲撃を知って戻ってきてくれたのか!?」
獣の力を手に入れた事により、ミアやツクヨ達でも気配には気付けたが、それが何者かまでは分からなかった。だが、ガレウスの反応や獣人達の言葉から、ダラーヒムの言葉を確かめる為調査へ向かった一行が引き返して来ているのだと悟る。つまり、その中にはシンもいる筈。
「戻って来る?じゃぁシンも・・・!?」
「恐らくな。だがダラーヒムの奴があんな状態だったんだ。途中で置いて行かれてても不思議じゃない・・・」
「そんなッ・・・!こんな獣達が彷徨いてる森で置いて行かれたら・・・」
「間違いなく戦闘になる。足手まといが居ればいくらシンでも、身を隠すのは容易じゃないだろう・・・」
ミアの言う通り、実際森の中には彼らを襲う獣と同じ敵がそこら中におり、戦闘にもなっていた。それにただのモンスターとは違うこの獣達は、獣人族と同じ鋭い嗅覚を持っている。
シンの影によるスキルは視覚的に姿を隠せても、匂いまでは消すことが出来ない。もし獣達に襲われでもしたら逃げ切ることは出来ないだろう。
ミアの危惧する事態に心配するツクヨだったが、そんな彼の不安はすぐに消え去る事となった。
本調子に戻ったガレウスが暴れ、残すは残党を狩るといった状況の中、彼らの元に辿り着いた気配が次々に姿を現し、獣達を倒していった。
「ガレウス!無事だったか!?」
「アズール!それにケツァルまでッ・・・。何だよ、俺だけじゃ任せられなかったってか!?」
「馬鹿を言ってる場合か!被害の様子はどうだ?」
「さぁな・・・。だがコイツらの襲撃はこれで最後だろう。片付け終わったら確認しようと思ってたところだ」
ケツァルの怪しい動きを調査していたガレウスは、リナムル襲撃の際に出遅れてしまい、全体の状況を把握している訳ではなかった。要所要所で側近の者を使い情報の伝達を行っていたが、今は敵の最後の襲撃を迎え撃つので精一杯だった。
援軍に駆けつけたアズールやケツァルは、身体の一部を強化し、敵の獣達を出血させる事なく戦闘不能にしていた。それは獣に隠された何らかの能力である幻覚を再現させない為の対策だった。
だが、獣の血によって幻覚が引き起こされると知っていた彼らは、既に返り血を浴びているガレウスの姿を見て、酷く動揺していた。それもその筈。実際にその能力に苦しめられたからこそ、ガレウスも同じ状況に陥っているのではないかと心配していたからだ。
「ガレウス!その身体ッ・・・」
「ん?あぁ、こりゃぁ返り血だ。俺のじゃねぇよ」
「違う!お前、幻覚が見えたりしてないか?」
返り血に染まる身体をしながら、敵味方をちゃんと見極め難なく攻防を繰り広げている彼の姿を見て、幻覚の症状があるのかないのか、本人以外には確認のしようもなかった。
幻覚を見ながら戦っているのだとすれば、いつ自分にその攻撃が向けられるか分からない。その不安を確かめる為、ケツァルはガレウスに現在の容態を伺う。
「へ!さっきまで妙なモンが見えていたが、今は問題ねぇ!この通りッ・・・!絶好調だぜ!」
そう言いながらガレウスは、目の前の獣の頭を鷲掴みにして地面に叩きつけると、その身体を軽々しく持ち上げてみせた。
「なッ・・・!?どうやって切り抜けたんだ?血の付着が幻覚のトリガーになっていたのではなかったのか・・・」
「さぁな・・・。だが、人間のガキを助けた時に、重荷が取れたように楽になった気がするぜ」
「お前が人間をッ!?どういう風の吹き回しだ!」
ガレウスが人間を助けるなど、彼ら獣人族の間では考えられない事だった。それ故に本当かどうかはさておき、本人からそのような言葉が出て来たことにケツァルは驚愕した。
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