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神代 コウ

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人間と共存する獣人

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 獣人族とは、人間と同様に世界各所に生息しており、それぞれの歴史・宗教、そして多種族とのコミュニティを築いて生活している。中には人間と協力し共存している獣人族や、縄張りに入り込んだ者を手当たり次第に襲う、魔物と相違ない生き方をする者達もいた。

 その中でガレウスが育ってきたのは、人間と共存する至って平穏な日々を過ごす穏やかな獣人族の群れの中だった。

 「ガレウス~!待ってくれよぉ~」

 「遅いな~。俺の知ってる“人間“はもっと早かったぞぉ?」

 草原を駆け回る元気な人間の子供と、同じく子供だと思われる小さな獣人が少年を導くように先を走る。大きな鞄をパンパンに膨らませた少年は、その重さのせいで上手く走れないようだ。

 「なぁ、お前が持ってくれよ」

 「構わないけど・・・いいのか?俺の手柄になっちまうぞ?」

 「元々お前がいなきゃこんなに集められなかったよ。手柄はお前のモンだよ、ガレウス」

 鞄には近くの森で取れる果実や薬に使われる様々な植物が、透明な袋に種類別に分けられて入れられている。

 人間や多種族が協力し整備した街や村とは違い、そこから少し離れれば魔物が生息する危険な場所だった。冒険者や警備隊など、戦える者が一緒でなければとても自由に歩き回れるようなところではなかった。

 故に彼らが持っている食べ物や薬草には、それなりの価値がつけられていた。それを売れば子供が数日暮らしていくには十分な金になる。

 ガレウスと一緒にいるのは、“リタ“という名の人間の子供。彼は孤児で街の中でも厄介者扱いされる少年達の一人だった。平穏とはいえ、見ず知らずの子供を養うほどの余裕はない。

 厳しく当たる者は少なかったが、商売人達からは相場以下で物を売買する鬱陶しい存在であったことは間違いないだろう。

 「これだけあれば暫くは贅沢できそうだな」

 「バカ!金は貯金すんだよ。武具を揃えて、俺達も冒険者になるんだ!そうしたらみんなで世界を旅して回ろう!きっと楽しいぞ!」

 「人間は大変だなぁ」

 「お前の装備も買ってやるからさ。今よりずっと強くなるぜ?きっと。頼りにしてんだからな!」

 「いらねぇよ、そんなの。俺達はこの腕っぷしだけで戦えるんだからな・・・」

 ガレウスは獣人という種族に誇りを持っていた。優れた身体能力に加え、夜でも視界の通る眼。どんな小さな音も拾い上げる聴覚に、違いを嗅ぎ分ける嗅覚。

 人間と暮らす中で他の獣人族はそれを他種族よりも優れたものと胡座をかく者達もいたが、ガレウスは“優れた力とは弱きを助ける為の力“と教え込まれていた。

 実際ガレウスの能力は、リタや街の子供達だけでは成し得ないことを実現させる力を持っていた。子供達が自分で稼ぎ生きて行く為の稼ぎも、彼ら獣人の力があってこそだった。

 街に到着したガレウスとリタは、その一角にある古びた商店に足を運ぶ。そこには一人の老人が暮らしており、彼らの採ってきた物を買い取っていたのだ。

 「ダランさん!また買取お願い!」

 「おぉ、リタにガレウス。いつもすまないねぇ。これはまた沢山採ってきたもんだ」

 「今日は魔物もいなかったんだ。最近少なくなってきたとはいえ、こんなチャンスは滅多にない。ならここで一辺に稼いじまおうって寸法さ!」

 魔物の気配を感知できるのも、ガレウスら獣人族の能力の一つだった。ガレウスによれば、彼らが採取を行う場所の周辺から魔物の気配が少なくなっているのだという。

 それを知ったリタは、今の内に暫く分の稼ぎをまとめて稼いでしまおうと考えたのだ。果物の類は相場通りの金になり、薬に使われる植物はその時の需要によって少し高くなったりもする。

 街で売られているものは、すでに調合された薬であったり、錬金術によって別の物の素材にされるものばかり。素材の状態では一般の人間や種族の者達では使い道がない。

 彼らに“ダラン“と呼ばれる老人は元々調合師のクラスについており、リタやガレウスから買い取った素材で他にはない貴重な薬や、局所的に効果抜群の特効薬を作る変わった店だった。

 「査定に少し時間がかかるから、それまでゆっくりしていきな」

 「ありがとう、ダランさん」

 「お邪魔します」

 孤児のリタとガレウスは、古びた大きな店に一人暮らしのダランの家に居候のような形で世話になっていた。彼のおかげで雨風を凌げる場所で眠りにつけることに感謝しつつ、生きる為には何でも自分でやっていかなければならないことを教えられていた。

 ガレウスの信条も、ダランから教えられたものの内の一つだったのだ。

 いつも以上に働いた二人は、倒れるようにベッドに横になるとすぐに眠りについてしまった。稼ぐのは大変ではあったが、人間と獣人が協力することで互いを補い合い、それなりに満足した日々を過ごしていた。

 だが、そんな彼らの日々に少しずつ暗い影が迫っていた。
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