1,017 / 1,646
人間と共存する獣人
しおりを挟む
獣人族とは、人間と同様に世界各所に生息しており、それぞれの歴史・宗教、そして多種族とのコミュニティを築いて生活している。中には人間と協力し共存している獣人族や、縄張りに入り込んだ者を手当たり次第に襲う、魔物と相違ない生き方をする者達もいた。
その中でガレウスが育ってきたのは、人間と共存する至って平穏な日々を過ごす穏やかな獣人族の群れの中だった。
「ガレウス~!待ってくれよぉ~」
「遅いな~。俺の知ってる“人間“はもっと早かったぞぉ?」
草原を駆け回る元気な人間の子供と、同じく子供だと思われる小さな獣人が少年を導くように先を走る。大きな鞄をパンパンに膨らませた少年は、その重さのせいで上手く走れないようだ。
「なぁ、お前が持ってくれよ」
「構わないけど・・・いいのか?俺の手柄になっちまうぞ?」
「元々お前がいなきゃこんなに集められなかったよ。手柄はお前のモンだよ、ガレウス」
鞄には近くの森で取れる果実や薬に使われる様々な植物が、透明な袋に種類別に分けられて入れられている。
人間や多種族が協力し整備した街や村とは違い、そこから少し離れれば魔物が生息する危険な場所だった。冒険者や警備隊など、戦える者が一緒でなければとても自由に歩き回れるようなところではなかった。
故に彼らが持っている食べ物や薬草には、それなりの価値がつけられていた。それを売れば子供が数日暮らしていくには十分な金になる。
ガレウスと一緒にいるのは、“リタ“という名の人間の子供。彼は孤児で街の中でも厄介者扱いされる少年達の一人だった。平穏とはいえ、見ず知らずの子供を養うほどの余裕はない。
厳しく当たる者は少なかったが、商売人達からは相場以下で物を売買する鬱陶しい存在であったことは間違いないだろう。
「これだけあれば暫くは贅沢できそうだな」
「バカ!金は貯金すんだよ。武具を揃えて、俺達も冒険者になるんだ!そうしたらみんなで世界を旅して回ろう!きっと楽しいぞ!」
「人間は大変だなぁ」
「お前の装備も買ってやるからさ。今よりずっと強くなるぜ?きっと。頼りにしてんだからな!」
「いらねぇよ、そんなの。俺達はこの腕っぷしだけで戦えるんだからな・・・」
ガレウスは獣人という種族に誇りを持っていた。優れた身体能力に加え、夜でも視界の通る眼。どんな小さな音も拾い上げる聴覚に、違いを嗅ぎ分ける嗅覚。
人間と暮らす中で他の獣人族はそれを他種族よりも優れたものと胡座をかく者達もいたが、ガレウスは“優れた力とは弱きを助ける為の力“と教え込まれていた。
実際ガレウスの能力は、リタや街の子供達だけでは成し得ないことを実現させる力を持っていた。子供達が自分で稼ぎ生きて行く為の稼ぎも、彼ら獣人の力があってこそだった。
街に到着したガレウスとリタは、その一角にある古びた商店に足を運ぶ。そこには一人の老人が暮らしており、彼らの採ってきた物を買い取っていたのだ。
「ダランさん!また買取お願い!」
「おぉ、リタにガレウス。いつもすまないねぇ。これはまた沢山採ってきたもんだ」
「今日は魔物もいなかったんだ。最近少なくなってきたとはいえ、こんなチャンスは滅多にない。ならここで一辺に稼いじまおうって寸法さ!」
魔物の気配を感知できるのも、ガレウスら獣人族の能力の一つだった。ガレウスによれば、彼らが採取を行う場所の周辺から魔物の気配が少なくなっているのだという。
それを知ったリタは、今の内に暫く分の稼ぎをまとめて稼いでしまおうと考えたのだ。果物の類は相場通りの金になり、薬に使われる植物はその時の需要によって少し高くなったりもする。
街で売られているものは、すでに調合された薬であったり、錬金術によって別の物の素材にされるものばかり。素材の状態では一般の人間や種族の者達では使い道がない。
彼らに“ダラン“と呼ばれる老人は元々調合師のクラスについており、リタやガレウスから買い取った素材で他にはない貴重な薬や、局所的に効果抜群の特効薬を作る変わった店だった。
「査定に少し時間がかかるから、それまでゆっくりしていきな」
「ありがとう、ダランさん」
「お邪魔します」
孤児のリタとガレウスは、古びた大きな店に一人暮らしのダランの家に居候のような形で世話になっていた。彼のおかげで雨風を凌げる場所で眠りにつけることに感謝しつつ、生きる為には何でも自分でやっていかなければならないことを教えられていた。
ガレウスの信条も、ダランから教えられたものの内の一つだったのだ。
いつも以上に働いた二人は、倒れるようにベッドに横になるとすぐに眠りについてしまった。稼ぐのは大変ではあったが、人間と獣人が協力することで互いを補い合い、それなりに満足した日々を過ごしていた。
だが、そんな彼らの日々に少しずつ暗い影が迫っていた。
その中でガレウスが育ってきたのは、人間と共存する至って平穏な日々を過ごす穏やかな獣人族の群れの中だった。
「ガレウス~!待ってくれよぉ~」
「遅いな~。俺の知ってる“人間“はもっと早かったぞぉ?」
草原を駆け回る元気な人間の子供と、同じく子供だと思われる小さな獣人が少年を導くように先を走る。大きな鞄をパンパンに膨らませた少年は、その重さのせいで上手く走れないようだ。
「なぁ、お前が持ってくれよ」
「構わないけど・・・いいのか?俺の手柄になっちまうぞ?」
「元々お前がいなきゃこんなに集められなかったよ。手柄はお前のモンだよ、ガレウス」
鞄には近くの森で取れる果実や薬に使われる様々な植物が、透明な袋に種類別に分けられて入れられている。
人間や多種族が協力し整備した街や村とは違い、そこから少し離れれば魔物が生息する危険な場所だった。冒険者や警備隊など、戦える者が一緒でなければとても自由に歩き回れるようなところではなかった。
故に彼らが持っている食べ物や薬草には、それなりの価値がつけられていた。それを売れば子供が数日暮らしていくには十分な金になる。
ガレウスと一緒にいるのは、“リタ“という名の人間の子供。彼は孤児で街の中でも厄介者扱いされる少年達の一人だった。平穏とはいえ、見ず知らずの子供を養うほどの余裕はない。
厳しく当たる者は少なかったが、商売人達からは相場以下で物を売買する鬱陶しい存在であったことは間違いないだろう。
「これだけあれば暫くは贅沢できそうだな」
「バカ!金は貯金すんだよ。武具を揃えて、俺達も冒険者になるんだ!そうしたらみんなで世界を旅して回ろう!きっと楽しいぞ!」
「人間は大変だなぁ」
「お前の装備も買ってやるからさ。今よりずっと強くなるぜ?きっと。頼りにしてんだからな!」
「いらねぇよ、そんなの。俺達はこの腕っぷしだけで戦えるんだからな・・・」
ガレウスは獣人という種族に誇りを持っていた。優れた身体能力に加え、夜でも視界の通る眼。どんな小さな音も拾い上げる聴覚に、違いを嗅ぎ分ける嗅覚。
人間と暮らす中で他の獣人族はそれを他種族よりも優れたものと胡座をかく者達もいたが、ガレウスは“優れた力とは弱きを助ける為の力“と教え込まれていた。
実際ガレウスの能力は、リタや街の子供達だけでは成し得ないことを実現させる力を持っていた。子供達が自分で稼ぎ生きて行く為の稼ぎも、彼ら獣人の力があってこそだった。
街に到着したガレウスとリタは、その一角にある古びた商店に足を運ぶ。そこには一人の老人が暮らしており、彼らの採ってきた物を買い取っていたのだ。
「ダランさん!また買取お願い!」
「おぉ、リタにガレウス。いつもすまないねぇ。これはまた沢山採ってきたもんだ」
「今日は魔物もいなかったんだ。最近少なくなってきたとはいえ、こんなチャンスは滅多にない。ならここで一辺に稼いじまおうって寸法さ!」
魔物の気配を感知できるのも、ガレウスら獣人族の能力の一つだった。ガレウスによれば、彼らが採取を行う場所の周辺から魔物の気配が少なくなっているのだという。
それを知ったリタは、今の内に暫く分の稼ぎをまとめて稼いでしまおうと考えたのだ。果物の類は相場通りの金になり、薬に使われる植物はその時の需要によって少し高くなったりもする。
街で売られているものは、すでに調合された薬であったり、錬金術によって別の物の素材にされるものばかり。素材の状態では一般の人間や種族の者達では使い道がない。
彼らに“ダラン“と呼ばれる老人は元々調合師のクラスについており、リタやガレウスから買い取った素材で他にはない貴重な薬や、局所的に効果抜群の特効薬を作る変わった店だった。
「査定に少し時間がかかるから、それまでゆっくりしていきな」
「ありがとう、ダランさん」
「お邪魔します」
孤児のリタとガレウスは、古びた大きな店に一人暮らしのダランの家に居候のような形で世話になっていた。彼のおかげで雨風を凌げる場所で眠りにつけることに感謝しつつ、生きる為には何でも自分でやっていかなければならないことを教えられていた。
ガレウスの信条も、ダランから教えられたものの内の一つだったのだ。
いつも以上に働いた二人は、倒れるようにベッドに横になるとすぐに眠りについてしまった。稼ぐのは大変ではあったが、人間と獣人が協力することで互いを補い合い、それなりに満足した日々を過ごしていた。
だが、そんな彼らの日々に少しずつ暗い影が迫っていた。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる