1,009 / 1,646
種族間の壁
しおりを挟む
まるで自分の身体ではないような軽快な動きと爽快なほどの力に、己の放った技によって吹き飛んだ獣の肉片を見て興奮する獣人達。彼らはツバキの発明したガジェットの力を使い、家屋に入り込んできた獣を瞬く間に撃退してみせた。
「すっ・・・すげぇ!これならいくらでも戦えるぜ!」
「あぁ、今ならあのガレウスにも引けを取らないな!」
ツバキがジャンク品から作り出したのは、オルレラの研究所で彼が発明した、魔石を動力源とした身体能力を補助しブースト機能を搭載したガジェットの改良版であった。
あの時にツバキが身につけて戦ったガジェットには、研究所で見つけた大量の魔石を弾丸のように詰め替えて使用する消耗品であったが、今回は装備した者が持つ魔力を使って起動するタイプのものだった。
当然ながら使用者自身に魔力がなければ発動させることはできないが、改良されたそのガジェットは消費魔力を抑え、移動や跳躍といった多少の身体能力であれば魔力なくしても強化補助を行うことが可能。
先程獣人達が見せて足技は、自身の魔力をガジェットのコアが吸い上げ理想的な形で力を凝縮することにより、攻撃に合わせた無駄のない魔力放出を実現し、戦闘に不慣れであっても洗練されたキレのあるスキルを放つことができるようになる。
「おい!最初にもいったけど、それはアンタ達の魔力を吸い上げて力にsしてんだ。無駄に使えば必要以上の疲れちまうからな!」
「おうよ!しかし、こんなもの作れちまうなんて大したガキだぜ。人間にしておくにはもったいねぇ」
「何だよそれ。人間でも獣人でも関係ねぇだろ」
「確かにな」
「それに俺は“ガキ“じゃねぇ!」
「ははは、悪かったな。それより他にもいろんなところから、アジトへ気配が入り込んで来てやがる。すぐに助けに行かねぇと・・・」
普段、戦闘員ではないと語っていた彼らは、力を身につけたことにより通常よりも強化された状態にある。強気になっている彼らは、その力で同胞達を助けに行こうとそれぞれの場所へ手分けして向かうことにした。
早速出発しようとしていた彼らに、ツバキはアカリと紅葉が向かった施設を優先して見て来てほしいと頼む。ガジェットにより戦う力と窮地を乗り越える力を得た彼らも、そんな恩人の言葉を無碍には出来ぬと快く引き受けてくれた。
散開していった獣人達に続き、ツバキも自身の身体能力を強化するガジェットを装着し、護衛の獣人と共にミア達の元へリナムルが襲撃されていることと、自身が無事であることを伝えに行く。
その頃、同じく襲撃を受けていたアカリ達の元にも、獣の群れが入り込んでいた。しかしこちらは、ツバキのいた施設のようにガジェットによる強化は得られない。そして、彼女らを護衛する獣人も全員が戦闘向きという編成ではなく、数人で数の勝る獣を相手にしていた。
だが、一体でも苦戦するレベルの相手に数の暴力で押し込まれた彼らに、この難局を打開するほどの力はなかった。
「畜生・・・このままじゃ長くは・・・」
「皆も戦っている。助けが来るまで、何としても持ち堪えなければ・・・」
すると、獣人達守られるようにして部屋の奥に隠れていたアカリが姿を現し、薬品の入った注射器を持ってそれを彼らに渡した。
「皆さん、これを!」
「これは?」
「皆さんの肉体強化による身体への負荷を軽減するものです。謂わば、疲労軽減の薬です!調合リストに書かれていた物を真似て作ってみました!お役に立てれば・・・」
どうやらアカリには調合の素養があったようで、元々リナムルに住んでいた人間達により書き残されていた調合リストを読み解き、獣人族に合わせた最も効果的な薬を作り上げたのだ。
「助かる!おい、みんな!これを」
アカリから渡された注射器を受け取った彼らは、何の迷いもなくそれを自身の身体に打ち込み、薬を注入していく。そこには既に人間と獣人という種族の壁などなく、恩人であり彼らと共に行動し助けてくれたガルムを信じ、アカリを信用し切っていた。
薬を注入し終えた彼らは順次肉体強化へと入る。肉体強化は各々でタイプが分かれているようで、暫くの間行動不能になり一気に強化するタイプと、戦闘を行いながらも少しずつ強化していくタイプの二つに分かれているようだ。
前者のタイプは一人ずつ交代で強化に入り、その間他の者達が獣の攻撃を凌ぐという役割分担をしている。負荷がなくなったことにより、徐々に強化するタイプの者達は心置きなく肉体強化をしながら、存分にその力を発揮できている。
おかげで通常なら苦戦を強いられる獣相手でも、十分に抑えることが可能になった。
「すっ・・・すげぇ!これならいくらでも戦えるぜ!」
「あぁ、今ならあのガレウスにも引けを取らないな!」
ツバキがジャンク品から作り出したのは、オルレラの研究所で彼が発明した、魔石を動力源とした身体能力を補助しブースト機能を搭載したガジェットの改良版であった。
あの時にツバキが身につけて戦ったガジェットには、研究所で見つけた大量の魔石を弾丸のように詰め替えて使用する消耗品であったが、今回は装備した者が持つ魔力を使って起動するタイプのものだった。
当然ながら使用者自身に魔力がなければ発動させることはできないが、改良されたそのガジェットは消費魔力を抑え、移動や跳躍といった多少の身体能力であれば魔力なくしても強化補助を行うことが可能。
先程獣人達が見せて足技は、自身の魔力をガジェットのコアが吸い上げ理想的な形で力を凝縮することにより、攻撃に合わせた無駄のない魔力放出を実現し、戦闘に不慣れであっても洗練されたキレのあるスキルを放つことができるようになる。
「おい!最初にもいったけど、それはアンタ達の魔力を吸い上げて力にsしてんだ。無駄に使えば必要以上の疲れちまうからな!」
「おうよ!しかし、こんなもの作れちまうなんて大したガキだぜ。人間にしておくにはもったいねぇ」
「何だよそれ。人間でも獣人でも関係ねぇだろ」
「確かにな」
「それに俺は“ガキ“じゃねぇ!」
「ははは、悪かったな。それより他にもいろんなところから、アジトへ気配が入り込んで来てやがる。すぐに助けに行かねぇと・・・」
普段、戦闘員ではないと語っていた彼らは、力を身につけたことにより通常よりも強化された状態にある。強気になっている彼らは、その力で同胞達を助けに行こうとそれぞれの場所へ手分けして向かうことにした。
早速出発しようとしていた彼らに、ツバキはアカリと紅葉が向かった施設を優先して見て来てほしいと頼む。ガジェットにより戦う力と窮地を乗り越える力を得た彼らも、そんな恩人の言葉を無碍には出来ぬと快く引き受けてくれた。
散開していった獣人達に続き、ツバキも自身の身体能力を強化するガジェットを装着し、護衛の獣人と共にミア達の元へリナムルが襲撃されていることと、自身が無事であることを伝えに行く。
その頃、同じく襲撃を受けていたアカリ達の元にも、獣の群れが入り込んでいた。しかしこちらは、ツバキのいた施設のようにガジェットによる強化は得られない。そして、彼女らを護衛する獣人も全員が戦闘向きという編成ではなく、数人で数の勝る獣を相手にしていた。
だが、一体でも苦戦するレベルの相手に数の暴力で押し込まれた彼らに、この難局を打開するほどの力はなかった。
「畜生・・・このままじゃ長くは・・・」
「皆も戦っている。助けが来るまで、何としても持ち堪えなければ・・・」
すると、獣人達守られるようにして部屋の奥に隠れていたアカリが姿を現し、薬品の入った注射器を持ってそれを彼らに渡した。
「皆さん、これを!」
「これは?」
「皆さんの肉体強化による身体への負荷を軽減するものです。謂わば、疲労軽減の薬です!調合リストに書かれていた物を真似て作ってみました!お役に立てれば・・・」
どうやらアカリには調合の素養があったようで、元々リナムルに住んでいた人間達により書き残されていた調合リストを読み解き、獣人族に合わせた最も効果的な薬を作り上げたのだ。
「助かる!おい、みんな!これを」
アカリから渡された注射器を受け取った彼らは、何の迷いもなくそれを自身の身体に打ち込み、薬を注入していく。そこには既に人間と獣人という種族の壁などなく、恩人であり彼らと共に行動し助けてくれたガルムを信じ、アカリを信用し切っていた。
薬を注入し終えた彼らは順次肉体強化へと入る。肉体強化は各々でタイプが分かれているようで、暫くの間行動不能になり一気に強化するタイプと、戦闘を行いながらも少しずつ強化していくタイプの二つに分かれているようだ。
前者のタイプは一人ずつ交代で強化に入り、その間他の者達が獣の攻撃を凌ぐという役割分担をしている。負荷がなくなったことにより、徐々に強化するタイプの者達は心置きなく肉体強化をしながら、存分にその力を発揮できている。
おかげで通常なら苦戦を強いられる獣相手でも、十分に抑えることが可能になった。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる