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人と精霊
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あちこちで鳴っていた金属音やモンスターの声、冒険者達のスキル名を叫ぶ声が聞こえなくなってくると、それまで殺伐としていた雰囲気が、一気に静かなものとなる。
残り少ないモンスターを狩る冒険者達の中に、先程までシンと話し込んでいたダラーヒムの姿もあった。
彼の実力からして苦戦など考えられないが、どうやらまだモンスターにトドメを刺していないようだった。モンスターの相手をし終えたシンが、彼の行動が気になり探してみると、それまで見たこともない何かが彼の側にピッタリとくっついていた。
「ん・・・?あんなのさっきまでは・・・」
ウェアウルフの相手をしていたダラーヒムは、攻撃をするでもなくひたすらモンスターの攻撃を避け続け、一向に戦いを終わらせるような気配がない。彼は一体何を考えているのだろうか。
「おう相棒。どうだ?コイツから何か感じるか?」
すると、ダラーヒムの側で小さな光を放ち飛んでいた何かが、彼の問いに対し暫く目を閉じた後、その結果を彼に告げる。
「何やらおかしな雰囲気を感じるわい・・・。此奴ら身体に何か盛られとるようじゃ」
「はぁ~ん、なるほど・・・。コイツらも実験に使われでもしたのかねぇ」
ダラーヒムはモンスターを調べるだけ調べ終えたら、瞬く間にモンスターを気絶させる。そして眠るように倒れるモンスターに、彼は彼の側にいる何かをモンスターの近くに向かわせる。
すると、その何かがモンスターに触れると、モンスターの身体はゆっくりとその姿を光に変え消えていった。
「苦しかったのかさえ分からんが、せめて最期くらいは安らかに逝くがよい・・・?」
彼の側にいた何かはモンスターを消滅させると、近づいてくる何者かの気配に気づいた。近づいてきたのは、彼の様子を伺っていたシンだった。
他の冒険者達とは違い、ただモンスターを倒すだけではなかった彼の行動が気になり、何をしていたのかを尋ねる。
「お前も何か探っていたのか?それで何か分かったか?それに・・・」
シンの視線の先には、ダラーヒムの側にいた光を纏う小さなドワーフのような妖精がいた。大海原でのレースの時や、ホルタートの商人達の馬車に乗り込む時にはいなかった筈のそれは、シンの接近に合わせ眉を潜ませた。
「何じゃ?お主は」
「あぁ、大丈夫だ。敵じゃねぇからよ。ご苦労さん、もう戻ってていいぜ」
ダラーヒムの言葉に従い、そのドワーフのような妖精は何も言わずシンを見たまま何処かへと消えていった。
「今のは・・・?」
「知らねぇのか?ありゃぁドワーフっていう精霊だ。これでも俺ぁ錬金術を扱うからな。んで、人間には感知できないようなものを、アイツに探ってもらったんだ」
錬金術は四大元素と呼ばれる属性を扱い、鍛錬を積む事により精霊を宿すようになる。基本的には得意属性に偏るものだが、中には四属性全てを極める者もいるという。
ダラーヒムのそれは、ミアがシンと共に最初に解決した異変に関係するクエストで見せた風の精霊と、先日の海賊達とのレースで覚醒させた水の精霊ウンディーネと同じものである。
「んでよ、どうやらやっぱりただの森のモンスターって訳じゃなさそうだった・・・」
「と、言うとやはり、グリム・クランプって言うところにある研究所が関係してるのか?」
「可能性は十分にある。だが断定は出来ない。これを証拠に調べるってのは出来そうもねぇな・・・。しかしこの様子だと、珍しい木材が取れるようになったってのも、胡散臭くなってきたな・・・」
実際、リナムルで採れるという木材の質や強度は確かなものらしい。だが、昔から採れていたと言う訳でもないようで、何の前触れもなく流通が盛んになったのだという。
考えられる可能性としては、環境や周囲の動物達、生息している魔物の影響を受けた自然現象による突然変異か、或いは人の手によって何らかの変化を齎された結果によるものなのか。
「研究所の影響で森の生態系が変わったとかは考えられるのか?」
「過去にそういった事例もある。ただその時のような大事件に発展している様子もなければ、噂もないからな。森のモンスターが外に出てきたくらいでは立証のしようもないだろう」
「どの道グリム・クランプに行って確かめるか、リナムルで情報を集めるしかないってことか・・・」
ダラーヒムであってもその辺りの変化について、情報を持っていると言う感じではなかった。それ故の調査であり、現地にキングがダラーヒムを寄越したのだろう。
「さぁ、他の奴らも馬車に戻り始めてる。怪しまれる前に戻るとするか」
「あぁ、そうする・・・ん?」
商人の馬車を取り囲んでいたモンスター達を退け、シンとダラーヒムも乗ってきた馬車へ戻ろうとした時、彼らの乗っていた馬車の近くで、ミア達がアカリの側に集まり何かしているようだった。
そこには動きを停止したトレントがおり、アカリの抱えている紅葉の身体が放つ光と同じ淡い光を纏っていた。
残り少ないモンスターを狩る冒険者達の中に、先程までシンと話し込んでいたダラーヒムの姿もあった。
彼の実力からして苦戦など考えられないが、どうやらまだモンスターにトドメを刺していないようだった。モンスターの相手をし終えたシンが、彼の行動が気になり探してみると、それまで見たこともない何かが彼の側にピッタリとくっついていた。
「ん・・・?あんなのさっきまでは・・・」
ウェアウルフの相手をしていたダラーヒムは、攻撃をするでもなくひたすらモンスターの攻撃を避け続け、一向に戦いを終わらせるような気配がない。彼は一体何を考えているのだろうか。
「おう相棒。どうだ?コイツから何か感じるか?」
すると、ダラーヒムの側で小さな光を放ち飛んでいた何かが、彼の問いに対し暫く目を閉じた後、その結果を彼に告げる。
「何やらおかしな雰囲気を感じるわい・・・。此奴ら身体に何か盛られとるようじゃ」
「はぁ~ん、なるほど・・・。コイツらも実験に使われでもしたのかねぇ」
ダラーヒムはモンスターを調べるだけ調べ終えたら、瞬く間にモンスターを気絶させる。そして眠るように倒れるモンスターに、彼は彼の側にいる何かをモンスターの近くに向かわせる。
すると、その何かがモンスターに触れると、モンスターの身体はゆっくりとその姿を光に変え消えていった。
「苦しかったのかさえ分からんが、せめて最期くらいは安らかに逝くがよい・・・?」
彼の側にいた何かはモンスターを消滅させると、近づいてくる何者かの気配に気づいた。近づいてきたのは、彼の様子を伺っていたシンだった。
他の冒険者達とは違い、ただモンスターを倒すだけではなかった彼の行動が気になり、何をしていたのかを尋ねる。
「お前も何か探っていたのか?それで何か分かったか?それに・・・」
シンの視線の先には、ダラーヒムの側にいた光を纏う小さなドワーフのような妖精がいた。大海原でのレースの時や、ホルタートの商人達の馬車に乗り込む時にはいなかった筈のそれは、シンの接近に合わせ眉を潜ませた。
「何じゃ?お主は」
「あぁ、大丈夫だ。敵じゃねぇからよ。ご苦労さん、もう戻ってていいぜ」
ダラーヒムの言葉に従い、そのドワーフのような妖精は何も言わずシンを見たまま何処かへと消えていった。
「今のは・・・?」
「知らねぇのか?ありゃぁドワーフっていう精霊だ。これでも俺ぁ錬金術を扱うからな。んで、人間には感知できないようなものを、アイツに探ってもらったんだ」
錬金術は四大元素と呼ばれる属性を扱い、鍛錬を積む事により精霊を宿すようになる。基本的には得意属性に偏るものだが、中には四属性全てを極める者もいるという。
ダラーヒムのそれは、ミアがシンと共に最初に解決した異変に関係するクエストで見せた風の精霊と、先日の海賊達とのレースで覚醒させた水の精霊ウンディーネと同じものである。
「んでよ、どうやらやっぱりただの森のモンスターって訳じゃなさそうだった・・・」
「と、言うとやはり、グリム・クランプって言うところにある研究所が関係してるのか?」
「可能性は十分にある。だが断定は出来ない。これを証拠に調べるってのは出来そうもねぇな・・・。しかしこの様子だと、珍しい木材が取れるようになったってのも、胡散臭くなってきたな・・・」
実際、リナムルで採れるという木材の質や強度は確かなものらしい。だが、昔から採れていたと言う訳でもないようで、何の前触れもなく流通が盛んになったのだという。
考えられる可能性としては、環境や周囲の動物達、生息している魔物の影響を受けた自然現象による突然変異か、或いは人の手によって何らかの変化を齎された結果によるものなのか。
「研究所の影響で森の生態系が変わったとかは考えられるのか?」
「過去にそういった事例もある。ただその時のような大事件に発展している様子もなければ、噂もないからな。森のモンスターが外に出てきたくらいでは立証のしようもないだろう」
「どの道グリム・クランプに行って確かめるか、リナムルで情報を集めるしかないってことか・・・」
ダラーヒムであってもその辺りの変化について、情報を持っていると言う感じではなかった。それ故の調査であり、現地にキングがダラーヒムを寄越したのだろう。
「さぁ、他の奴らも馬車に戻り始めてる。怪しまれる前に戻るとするか」
「あぁ、そうする・・・ん?」
商人の馬車を取り囲んでいたモンスター達を退け、シンとダラーヒムも乗ってきた馬車へ戻ろうとした時、彼らの乗っていた馬車の近くで、ミア達がアカリの側に集まり何かしているようだった。
そこには動きを停止したトレントがおり、アカリの抱えている紅葉の身体が放つ光と同じ淡い光を纏っていた。
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