958 / 1,646
目的の為に
しおりを挟む
キングの組織を敵に回すのも恐ろしい事だが、そんな彼らが慎重になるほどの相手となれば、到底手放しに挑めるようなものではない。仮に、身に余る報酬が用意されていても、普通なら断るところだ。
誰だって寿命を縮めてまで幸福を求めようとはしないだろう。目先の欲に身を任せていては、命がいくつあっても足りない。命あっての幸福なのだ。
「まぁ、そりゃぁそうなるか・・・。ボスに口を利いてやるっつっても、すぐに連絡が取れる訳じゃねぇしな・・・」
「でも、目的が同じなら場所を教えてくれるだけでもいいんじゃないかな?どの道私達も、その研究所に用がある訳だし」
「勝手に奴らの実験を荒らしてくれんならそれはそれで構わねぇが、正直なところお前らだけで挑んでも、仮にその場は上手くいったとしてもだな・・・」
ダラーヒムが言葉を続けようとしたところで、何を口にしようとしているのか察しのついていたミアが、二人の会話の中に割って入る。
「後の命の補償はない・・・」
「え?」
「・・・・・」
キングの組織は、この世界においてそれなりの規模を持った一大勢力と言ってもいい。しかし、そんな彼らでも抑えきれぬ勢力に狙われれば、ただの数人のパーティなど最も容易くその存在すら残らぬ程に抹消されてしまう。
ツバキが託された、オスカーや実験体となった子供達の願いというのは、それ程危険なものなのだ。故にオスカーはツバキの身を案じ、危ないと感じたら自分の身を第一にしてくれと念を押していてくれた。
その時は敵対する組織の規模が漠然としか見えていなかったが、キングという物差しを得てその大きさが露わとなった。それを目にした今、願いを託された時のように向こうみずに挑めるという気持ちは、だいぶ抑えられてしまっていた。
「だが或いは、キングの組織に根回しをしてもらえるのなら・・・」
「あぁ、誰がやったのかくらいなら有耶無耶に出来るかもしれねぇな」
「ッ!?確かにそれなら、私達も事を成した後姿を眩まし易いな」
「ボスとしても、そんな施設は一刻も早くぶっ潰したいと思ってる筈だ。お前らの手を借りられるなら、こちらも出せるものがある。どうだ?悪い話じゃない筈だ」
彼の言うように、何の後ろ盾も無くアークシティの事業に手を出せば、それこそオスカーの危惧していたように、生きている限り気の休まる暇もない日々を送ることになるかもしれない。
そんな時にキングの組織の幹部と再会できたのは、真っ暗な闇の中で光明を見るようなものだった。
「シン、如何する?正直受けない手はないと思うが・・・」
ミアはシンに彼自身の考えを伺う。だが、シンの考えも彼女と同じだった。それにシンは、ミアほどキングの事を疑っている訳ではなかったし、その実力も人間性も認めている。
「あぁ勿論だ。ダラーヒム、キングへの口利き頼めるか?」
「こいつぁ思わぬ収穫だ。ボスもきっと喜ぶ!」
キングの組織の協力をこぎつけたところで、一行を乗せたリナムルへ向かっている馬車は、突如その足を止めた。
「何だ?リナムルへはまだ時間が掛かる筈だが・・・」
予期せぬ馬車の停止に困惑する一同。そこへ馬車を引いていた者から、彼らへ伝言が届いた。如何やら商人の彼らが、冒険者であるシン達を乗せた目的を果たす時がやってきたようだった。
「冒険者の皆さん、出番のようです!急ぎ表へ」
護衛がてら乗せてもらえると聞いた時から、嫌な予感はしていた。護衛が必要となる事が起きるのだと言う予感を残したまま馬車に身を委ねていた。しかし、ただの護衛にしては些か数が多いのが気になっていた。
兎にも角にも、伝言にあった通り一行はすぐに馬車から降りて外の様子を確認することにした。
陽の光に瞼を狭めながらも周囲を確認すると、そこには多くのモンスターが馬車を取り囲んでいた。
「何だ、ただのモンスターじゃないか。しっかり乗せてもらってる恩を返さなきゃね!」
「大したことはないな、だがぬかるなよ」
「・・・妙だな・・・」
意気揚々と武器を構え、戦闘態勢に入るシン達だったが、一人周囲のモンスターを見て何かおかしなことに気づいた様子のダラーヒム。無防備なまま、何か物思いに耽っているようだった。
「ダラーヒム?どうしたんだ?」
「こいつら、“この辺の“モンスターじゃねぇ。どういう事だ?」
周辺の事を調べてきていると言っていたからか、ダラーヒムは移動中に出現するであろうモンスターの生態や種類についてもだいぶ詳しいようだった。しかし、そんな彼が不自然に思うようなモンスターが、彼らを乗せた馬車を襲っていると言ったところだろう。
「どんなモンスターだろうと、いく手を阻むなら倒す!それだけだ」
ミアの言う通り、今はそんなことを気にしている場合ではない。ダラーヒムの抱える疑問は置いておいて、彼らはまず迫り来る目の前の障壁を打ち破ることにした。
誰だって寿命を縮めてまで幸福を求めようとはしないだろう。目先の欲に身を任せていては、命がいくつあっても足りない。命あっての幸福なのだ。
「まぁ、そりゃぁそうなるか・・・。ボスに口を利いてやるっつっても、すぐに連絡が取れる訳じゃねぇしな・・・」
「でも、目的が同じなら場所を教えてくれるだけでもいいんじゃないかな?どの道私達も、その研究所に用がある訳だし」
「勝手に奴らの実験を荒らしてくれんならそれはそれで構わねぇが、正直なところお前らだけで挑んでも、仮にその場は上手くいったとしてもだな・・・」
ダラーヒムが言葉を続けようとしたところで、何を口にしようとしているのか察しのついていたミアが、二人の会話の中に割って入る。
「後の命の補償はない・・・」
「え?」
「・・・・・」
キングの組織は、この世界においてそれなりの規模を持った一大勢力と言ってもいい。しかし、そんな彼らでも抑えきれぬ勢力に狙われれば、ただの数人のパーティなど最も容易くその存在すら残らぬ程に抹消されてしまう。
ツバキが託された、オスカーや実験体となった子供達の願いというのは、それ程危険なものなのだ。故にオスカーはツバキの身を案じ、危ないと感じたら自分の身を第一にしてくれと念を押していてくれた。
その時は敵対する組織の規模が漠然としか見えていなかったが、キングという物差しを得てその大きさが露わとなった。それを目にした今、願いを託された時のように向こうみずに挑めるという気持ちは、だいぶ抑えられてしまっていた。
「だが或いは、キングの組織に根回しをしてもらえるのなら・・・」
「あぁ、誰がやったのかくらいなら有耶無耶に出来るかもしれねぇな」
「ッ!?確かにそれなら、私達も事を成した後姿を眩まし易いな」
「ボスとしても、そんな施設は一刻も早くぶっ潰したいと思ってる筈だ。お前らの手を借りられるなら、こちらも出せるものがある。どうだ?悪い話じゃない筈だ」
彼の言うように、何の後ろ盾も無くアークシティの事業に手を出せば、それこそオスカーの危惧していたように、生きている限り気の休まる暇もない日々を送ることになるかもしれない。
そんな時にキングの組織の幹部と再会できたのは、真っ暗な闇の中で光明を見るようなものだった。
「シン、如何する?正直受けない手はないと思うが・・・」
ミアはシンに彼自身の考えを伺う。だが、シンの考えも彼女と同じだった。それにシンは、ミアほどキングの事を疑っている訳ではなかったし、その実力も人間性も認めている。
「あぁ勿論だ。ダラーヒム、キングへの口利き頼めるか?」
「こいつぁ思わぬ収穫だ。ボスもきっと喜ぶ!」
キングの組織の協力をこぎつけたところで、一行を乗せたリナムルへ向かっている馬車は、突如その足を止めた。
「何だ?リナムルへはまだ時間が掛かる筈だが・・・」
予期せぬ馬車の停止に困惑する一同。そこへ馬車を引いていた者から、彼らへ伝言が届いた。如何やら商人の彼らが、冒険者であるシン達を乗せた目的を果たす時がやってきたようだった。
「冒険者の皆さん、出番のようです!急ぎ表へ」
護衛がてら乗せてもらえると聞いた時から、嫌な予感はしていた。護衛が必要となる事が起きるのだと言う予感を残したまま馬車に身を委ねていた。しかし、ただの護衛にしては些か数が多いのが気になっていた。
兎にも角にも、伝言にあった通り一行はすぐに馬車から降りて外の様子を確認することにした。
陽の光に瞼を狭めながらも周囲を確認すると、そこには多くのモンスターが馬車を取り囲んでいた。
「何だ、ただのモンスターじゃないか。しっかり乗せてもらってる恩を返さなきゃね!」
「大したことはないな、だがぬかるなよ」
「・・・妙だな・・・」
意気揚々と武器を構え、戦闘態勢に入るシン達だったが、一人周囲のモンスターを見て何かおかしなことに気づいた様子のダラーヒム。無防備なまま、何か物思いに耽っているようだった。
「ダラーヒム?どうしたんだ?」
「こいつら、“この辺の“モンスターじゃねぇ。どういう事だ?」
周辺の事を調べてきていると言っていたからか、ダラーヒムは移動中に出現するであろうモンスターの生態や種類についてもだいぶ詳しいようだった。しかし、そんな彼が不自然に思うようなモンスターが、彼らを乗せた馬車を襲っていると言ったところだろう。
「どんなモンスターだろうと、いく手を阻むなら倒す!それだけだ」
ミアの言う通り、今はそんなことを気にしている場合ではない。ダラーヒムの抱える疑問は置いておいて、彼らはまず迫り来る目の前の障壁を打ち破ることにした。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる