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少年の目覚め
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オルレラにあるガラクタの山。そこでジャンク屋をやっているイクセンという男と共に、ガラクタの山を掘り返していたミアは、嘗てそこにあった研究施設の地下で、隠し部屋へ通じるハッチを発見する。
ミアの錬金術による修復とイクセンの修理の技術により、複雑な仕掛けのハッチを直し、更に地下へと続く階段を見つける。
その先で見つけたのは、とある隠し部屋のようなラボだった。施設の案内板にも記載されていなかったその部屋で、彼らは不気味な研究の跡を見つける。
様々な機材や装置の中に、まるで隠されるように設置された、大人がすっぽりと入ってしまう大きなカプセルがあった。他とは一線を画する雰囲気を漂わせるそのカプセルを開けてみると、中には何と人のミイラが入っていたのだ。
何者かの遺体を見つけた二人だったが、カプセルの開封と共に中から強大な魔力が外へと飛び出していくのを感じる。異様な雰囲気と現象に、思わずたじろぐイクセン。
魔力が飛び出したカプセルの中身を再度確認してみると、そこにはさっきまであった筈のミイラが突如として消え去ってしまっていたのだった。
「ミアッ!ミイラがッ・・・!遺体がなくなってる!!」
「なッ・・・!?それじゃさっきのは・・・」
「ミイラに宿ってた魔力なのか、それとも中に詰め込まれていた魔力なのかは分からねぇ。だが、今の開封で外に飛び出していっちまったらしいな・・・」
何の目的で中に人が入れられていたのか。溢れ出した魔力は何の魔力で、何処へ消えていったのか。彼らは何も分からぬまま、何か他に情報が無いかと隠し部屋の中を探るが、これと言って目新しいものは見つからなかった。
時間を忘れて捜索していたミアとイクセンは、外から聞こえてくる夕刻を告げるオルレラの鐘の音で時刻を知る。二人は捜索を一旦中止し、また翌日に作業を残して各々の帰る場所へと戻っていく。
片付けに手間取り、すっかり陽の落ちてしまったオルレラの街を、小走りでエディ邸へ向かうミア。街を行く人は少なく、外からやって来る者達の気配も、街を出ていく行商人の姿も見受けられなかった。
しかし、そんな中でもやはり子供の姿だけは無い。それを不審がる人もいなければ、気にするようなこともない。当然、ミアやツクヨもそこに意識が向くことはなく、一才怪しいとも思わなかったようだ。
遅くなってしまったせいか、エディ邸の前でいつも出迎えてくれていた使用人の男の姿がなかった。ミアは特に気にすることもなく扉を開けて、玄関へ入り息を整え一息ついた。
「あらミアさん、お帰りなさい。今日は遅かったのね?」
声を掛けたのは、屋敷の主人であるエディの妻、パウラだった。ミアの帰りが遅かった為、先に夕飯は済ませてしまったらしい。
「キッチンに貴方の分を分けて置いたから、食べる時に声を掛けてね。温め直してあげるから」
「ありがとうございます」
暖かく迎えてくれるパウラに、ミアはまるで久々に帰省した際の祖母のような温かみを感じていた。ミア自身、そういった経験はなかったが、周りから聞く祖父母というもののイメージが、これで何となく分かったような気がしていた。
「それより先ずは・・・シャワーかしらね?もしよければ、その間にご飯の方を温めておくけど?」
彼女にそう諭されて自身の身体を確認すると、ガラクタの山をかき分けていたからだろう。衣服に目立つ汚れがいくつもついていた。
「あぁ・・・すいません。じゃぁ先にシャワー浴びてきます」
「洗い物があったら遠慮なく言ってね?」
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ」
そう言うとミアは、夕飯の件だけパウラに頼み、疲れと汚れを洗い流す為、借りている部屋へと向かう。
二階へ上がり廊下を進んでいると、部屋の中からツクヨが出てきた。ギルドの手伝いへ向かっていた彼の方が先に帰っていたのだろう。だが、こんな時間に何処へ行こうというのだろうか。
「あっミア!丁度よかった。ツバキが目を覚ましたんだ」
「ツバキが・・・?」
旅の疲労のせいか、ツバキはオルレラに着くや否や深い眠りに入ってしまい、そこから一向に目を覚ます気配がなかった。だが彼はそのまま一日二日と経っても目を覚ますことがなかった。
本来であれば異常を疑うべきなのだろうが、ミアもツクヨもオルレラ全域に敷かれている記憶操作の影響を受けており、それをおかしいとも思わなかった。
それでも、ツクヨはギルドの手伝いの中で一人の怪しい修復士という“ニコラ“に出会い、その時の記憶を僅かに持ち帰っていた。
ニコラはツクヨ達に訪れる目眩のような現象を知っていたかのような発言をしており、尚且つ彼だけがその現象の影響を受けていなかった。
ツクヨ達は、そのニコラという男が記憶の混濁とするこの現象に関わっているものとばかり思っているようだが、実際の元凶は子供達を救おうとしたオスカーの影響だった。
ミアは早速、目を覚ましたというツバキに話を聞いたのかとツクヨに問う。すると彼は、少し長くなるからといって、先に用事を済ませてから三人でゆっくり話し合う事となった。
ミアの錬金術による修復とイクセンの修理の技術により、複雑な仕掛けのハッチを直し、更に地下へと続く階段を見つける。
その先で見つけたのは、とある隠し部屋のようなラボだった。施設の案内板にも記載されていなかったその部屋で、彼らは不気味な研究の跡を見つける。
様々な機材や装置の中に、まるで隠されるように設置された、大人がすっぽりと入ってしまう大きなカプセルがあった。他とは一線を画する雰囲気を漂わせるそのカプセルを開けてみると、中には何と人のミイラが入っていたのだ。
何者かの遺体を見つけた二人だったが、カプセルの開封と共に中から強大な魔力が外へと飛び出していくのを感じる。異様な雰囲気と現象に、思わずたじろぐイクセン。
魔力が飛び出したカプセルの中身を再度確認してみると、そこにはさっきまであった筈のミイラが突如として消え去ってしまっていたのだった。
「ミアッ!ミイラがッ・・・!遺体がなくなってる!!」
「なッ・・・!?それじゃさっきのは・・・」
「ミイラに宿ってた魔力なのか、それとも中に詰め込まれていた魔力なのかは分からねぇ。だが、今の開封で外に飛び出していっちまったらしいな・・・」
何の目的で中に人が入れられていたのか。溢れ出した魔力は何の魔力で、何処へ消えていったのか。彼らは何も分からぬまま、何か他に情報が無いかと隠し部屋の中を探るが、これと言って目新しいものは見つからなかった。
時間を忘れて捜索していたミアとイクセンは、外から聞こえてくる夕刻を告げるオルレラの鐘の音で時刻を知る。二人は捜索を一旦中止し、また翌日に作業を残して各々の帰る場所へと戻っていく。
片付けに手間取り、すっかり陽の落ちてしまったオルレラの街を、小走りでエディ邸へ向かうミア。街を行く人は少なく、外からやって来る者達の気配も、街を出ていく行商人の姿も見受けられなかった。
しかし、そんな中でもやはり子供の姿だけは無い。それを不審がる人もいなければ、気にするようなこともない。当然、ミアやツクヨもそこに意識が向くことはなく、一才怪しいとも思わなかったようだ。
遅くなってしまったせいか、エディ邸の前でいつも出迎えてくれていた使用人の男の姿がなかった。ミアは特に気にすることもなく扉を開けて、玄関へ入り息を整え一息ついた。
「あらミアさん、お帰りなさい。今日は遅かったのね?」
声を掛けたのは、屋敷の主人であるエディの妻、パウラだった。ミアの帰りが遅かった為、先に夕飯は済ませてしまったらしい。
「キッチンに貴方の分を分けて置いたから、食べる時に声を掛けてね。温め直してあげるから」
「ありがとうございます」
暖かく迎えてくれるパウラに、ミアはまるで久々に帰省した際の祖母のような温かみを感じていた。ミア自身、そういった経験はなかったが、周りから聞く祖父母というもののイメージが、これで何となく分かったような気がしていた。
「それより先ずは・・・シャワーかしらね?もしよければ、その間にご飯の方を温めておくけど?」
彼女にそう諭されて自身の身体を確認すると、ガラクタの山をかき分けていたからだろう。衣服に目立つ汚れがいくつもついていた。
「あぁ・・・すいません。じゃぁ先にシャワー浴びてきます」
「洗い物があったら遠慮なく言ってね?」
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ」
そう言うとミアは、夕飯の件だけパウラに頼み、疲れと汚れを洗い流す為、借りている部屋へと向かう。
二階へ上がり廊下を進んでいると、部屋の中からツクヨが出てきた。ギルドの手伝いへ向かっていた彼の方が先に帰っていたのだろう。だが、こんな時間に何処へ行こうというのだろうか。
「あっミア!丁度よかった。ツバキが目を覚ましたんだ」
「ツバキが・・・?」
旅の疲労のせいか、ツバキはオルレラに着くや否や深い眠りに入ってしまい、そこから一向に目を覚ます気配がなかった。だが彼はそのまま一日二日と経っても目を覚ますことがなかった。
本来であれば異常を疑うべきなのだろうが、ミアもツクヨもオルレラ全域に敷かれている記憶操作の影響を受けており、それをおかしいとも思わなかった。
それでも、ツクヨはギルドの手伝いの中で一人の怪しい修復士という“ニコラ“に出会い、その時の記憶を僅かに持ち帰っていた。
ニコラはツクヨ達に訪れる目眩のような現象を知っていたかのような発言をしており、尚且つ彼だけがその現象の影響を受けていなかった。
ツクヨ達は、そのニコラという男が記憶の混濁とするこの現象に関わっているものとばかり思っているようだが、実際の元凶は子供達を救おうとしたオスカーの影響だった。
ミアは早速、目を覚ましたというツバキに話を聞いたのかとツクヨに問う。すると彼は、少し長くなるからといって、先に用事を済ませてから三人でゆっくり話し合う事となった。
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