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止まっていた時間
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ハッチの全体像が明らかになる。よくよく見てみると、ハッチにしてはやや手の込んだ構造になっている。ただ単に取っ手に手を掛け開けるのでは開かなそうな装いに守られているようだった。
「なぁ、おい。これって・・・普通には開かないよな?」
呆けていたイクセンがハッと我に帰り、ミアが掘り起こしたハッチのところまへ向かう。そしてざっとその全体像を見る限り、かつてこのハッチが利用されていた頃は、入り組んだ仕掛けによって開閉されていた事が窺える。
「あ・・・あぁ、確かにこりゃぁ手の込んだ仕掛けがあったようだ。それも今となっては、動いてねぇようだがな・・・」
長きに渡り放置されてきた装置。しかも建物自体が崩れており、雨や風にも曝されていたことが容易に想像できる。如何に優れた技術であろうと、劣化や錆びなどには勝てないだろう。
「なぁ、すまねぇが・・・」
「あぁ、分かってる。修復はアタシがやるから、修理は任せた」
ミアは錬金術により、ハッチの仕掛けを止めているであろう汚れや錆び、機器の劣化を治していく。同じ錬金術による修復を行なっていたニコラ程ではないが、徐々に当時動いていた頃の姿へと戻っていく。
「ほう、こいつは驚いた。どんだけ古い構造かと心配していたが、今の技術にも用いられる構造をしてやがる。これなら・・・!」
どれくらい古いものかは定かではないが、技術的には彼らの暮らす現代で用いられる構造や技術が使われていた。
このハッチが作られた当時から、既に未来の技術力を持っていたことが窺える。これも技術力の発展した当時のアークシティの機材や技術力といったところなのだろうか。
ミアの修復が終わり、綺麗な見た目に復活したハッチの扉。ここからはイクセンによる修理が施される。構造を見て理解していき、新しい部品に取り替えたり、より機能しやすいように今の技術力に合わせた開閉機能へと、彼なりに改造していく。
「よし!順調だぜ。このままいけば修理できそうだ」
「治れば中に入れそうか?ただの扉にしては、随分と仕掛けが施されているようだが・・・」
「大丈夫だ。当時にすりゃぁ最新鋭の未来の技術だったかもしれねぇが、今となっちゃぁ何にも珍しくない仕掛けよ。そこに俺の技術を付け加えりゃ・・・ホラよ!」
そう言って彼が何かのスイッチを入れると、ハッチの周りに取り付けられた仕掛けが動き出し、徐々にその扉を持ち上げていった。
「おぉ!器用なもんだ、流石ジャンク屋を開いているだけのことはある」
「・・・アンタ、俺を馬鹿にしてる?」
扉が開くと、中には更に下へと続く階段が現れた。中は強固な扉に守られていたおかげか、わりかし綺麗な状態で残っており、魔石による照明が真っ暗な地下への道を照らしていく。
「魔石だ・・・。地下でずっと放置されてたから、十分な魔力を蓄えていたんだろう」
「魔石の照明とは・・・。なかなか洒落た趣味してるな」
「そうか?・・・まぁ、電気や火に比べれば安全だがよぉ。地下の照明にしちゃぁ珍しくないがな」
地下という場所において、火や電気といったものよりも魔力を使った照明が使われるという話は、如何やら珍しいことではないようだった。
勿論、火や電気といったものの方が明るく鮮明に見えるのは確かだが、それを用意する準備や手間、安全性を考慮すれば、地中で魔力を集めることの出来る石を用いた魔石を使うのは、とても理にかなっている。
未知の領域に足を踏み入れる時にするような会話ではない話をしながら、階段を降りていくミアとイクセン。意識せずとも、二人ともその空間に漂う異様さに気持ちを保とうと、無意識に気を逸らしていたのかもしれない。
そして狭い階段を抜けた先に、短めの通路が続く。脇道はなく、一本道の通路を歩いていくと、ハッチの時に使っていた技術とは対照的に、一般的なごく普通の扉が見えてくる。
「おい、あれ・・・」
「他に道や部屋もない。恐らくここが終着地だろうな・・・」
二人は地上で見た、人形に供えられたカメラの映像のことを思い出していた。この先に通じる場所は、その映像に残されていた研究所なのではないか。そういった答え合わせをするような気持ちと、何があるか分からない不気味な雰囲気に胸の鼓動が早まる。
そして、戦闘向きのクラスに就くミアが先に行き、扉のドアノブに手を掛けてゆっくりと開く。すると、階段を降りた時に点いた照明と同じ、魔石の照明が真っ暗な部屋の中で点灯していく。
「ここは・・・」
「あの映像にあった部屋と似てるな。研究に用いていた部屋だろう。内装はやや違っているが、映像で見た装置や機材がある」
そこは大きな研究スペースではなく、こじんまりとした一人用の研究ラボといった印象を受ける部屋だった。
イクセンの言うように、人形で確認したかつての施設にある部屋と似たような装置があるが、何があったのかそれらは壊されたような傷が残されており、既に機能していないようだった。
「随分と大きな装置だな。まるでホルマリン漬けの生き物でも入れてたかのような・・・」
ミアが見つけた装置は、それこそコールドスリープに用いられるように、人が入れるくらいのカプセルがおいてあったが、中身は空っぽで機械の損傷も激しい。
「何かが暴れたのか・・・?劣化したと言うよりも、“壊された“の方がしっくりくる荒れようだな」
二人はじっくり見渡しながら、部屋の様子とそこで行われた研究や、この部屋で何が起きたのかの手掛かりを探す。
するとイクセンが、崩れた棚の奥にまだ壊れていない別の大きなカプセルを見つける。外からでは中の様子が見えず、ガラス張りのところは酷く汚れたいた。
別々で部屋の中を探索していた為、イクセンはミアをすぐに呼ぶことはなく、まずは中身を確認しようと、カプセル容器の入り口と呼ぶべきか、蓋を探す。
雪のように積もった埃を払い、容器の蓋らしき取手に指をかけて引っ張ると、それほど力を込めていないにも関わらず、取手部分が壊れてしまった。
その音を聞いたミアが反応したが、イクセンは何でもないとだけ言い、他に蓋を開ける方法がないかと探る。
調べるうちに分かったのは、如何やらこのカプセルは人力や力づくでは開かないような仕組みになっているようで、それこそハッチの扉を開いた時のような特殊な構造をしているようだった。
イクセンはそこで初めてミアを呼ぶと、再び二人の力による修復と修理が行われる。
「他のに比べて、随分と汚れてるな・・・。中に何が入ってるんだ?」
「分からねぇな・・・。それに、あまり想像もしたくないってのが、正直なところだ。如何するよ?中から実験で生まれた怪物なんかが入ってたら・・・」
「馬鹿言ってないで、早く修理いてくれ。それに、そんな怪物が中に入ってたら、自力で壊して脱出しそうなもんだろ?中に何かが入ってたとして、それはもう今では如何しようもないモノに変わっちまってるだろうな・・・」
似たような見た目をしたカプセルは他にもあり、そちらはミアの言った話のように脱出した何かが暴れたかのように壊されている。
中身が何にせよ、部屋の様子と機材の劣化を考慮すれば、既に使い道のない物や如何しようもない物が入っているだけだろう。
ミアの修復によって治されたカプセルを、イクセンが修理していき、そしていよいよカプセルの蓋が開けられる。
すると、蓋を開けたイクセンが突然声を上げて飛び退き、床に尻餅をついた。
「うッ・・・!!」
「如何したッ!?」
イクセンの見せた異様な反応に、ミアがカプセルの方へ駆け寄りその中を覗くと、中には人間のミイラのようなものと、とてつもない異臭が解き放たれた。
「なッ・・・これは!?」
「人だ・・・!中に人が入れられてる!!やっぱりただの研究施設じゃなかったんだッ!」
しかし、更に二人を驚かせたのはそれだけではなかった。彼らがそのカプセルを起動し開けてしまったことによって、中から異臭だけではなく、何か良くない気配と強力な魔力が外へと飛び出していった。
「なぁ、おい。これって・・・普通には開かないよな?」
呆けていたイクセンがハッと我に帰り、ミアが掘り起こしたハッチのところまへ向かう。そしてざっとその全体像を見る限り、かつてこのハッチが利用されていた頃は、入り組んだ仕掛けによって開閉されていた事が窺える。
「あ・・・あぁ、確かにこりゃぁ手の込んだ仕掛けがあったようだ。それも今となっては、動いてねぇようだがな・・・」
長きに渡り放置されてきた装置。しかも建物自体が崩れており、雨や風にも曝されていたことが容易に想像できる。如何に優れた技術であろうと、劣化や錆びなどには勝てないだろう。
「なぁ、すまねぇが・・・」
「あぁ、分かってる。修復はアタシがやるから、修理は任せた」
ミアは錬金術により、ハッチの仕掛けを止めているであろう汚れや錆び、機器の劣化を治していく。同じ錬金術による修復を行なっていたニコラ程ではないが、徐々に当時動いていた頃の姿へと戻っていく。
「ほう、こいつは驚いた。どんだけ古い構造かと心配していたが、今の技術にも用いられる構造をしてやがる。これなら・・・!」
どれくらい古いものかは定かではないが、技術的には彼らの暮らす現代で用いられる構造や技術が使われていた。
このハッチが作られた当時から、既に未来の技術力を持っていたことが窺える。これも技術力の発展した当時のアークシティの機材や技術力といったところなのだろうか。
ミアの修復が終わり、綺麗な見た目に復活したハッチの扉。ここからはイクセンによる修理が施される。構造を見て理解していき、新しい部品に取り替えたり、より機能しやすいように今の技術力に合わせた開閉機能へと、彼なりに改造していく。
「よし!順調だぜ。このままいけば修理できそうだ」
「治れば中に入れそうか?ただの扉にしては、随分と仕掛けが施されているようだが・・・」
「大丈夫だ。当時にすりゃぁ最新鋭の未来の技術だったかもしれねぇが、今となっちゃぁ何にも珍しくない仕掛けよ。そこに俺の技術を付け加えりゃ・・・ホラよ!」
そう言って彼が何かのスイッチを入れると、ハッチの周りに取り付けられた仕掛けが動き出し、徐々にその扉を持ち上げていった。
「おぉ!器用なもんだ、流石ジャンク屋を開いているだけのことはある」
「・・・アンタ、俺を馬鹿にしてる?」
扉が開くと、中には更に下へと続く階段が現れた。中は強固な扉に守られていたおかげか、わりかし綺麗な状態で残っており、魔石による照明が真っ暗な地下への道を照らしていく。
「魔石だ・・・。地下でずっと放置されてたから、十分な魔力を蓄えていたんだろう」
「魔石の照明とは・・・。なかなか洒落た趣味してるな」
「そうか?・・・まぁ、電気や火に比べれば安全だがよぉ。地下の照明にしちゃぁ珍しくないがな」
地下という場所において、火や電気といったものよりも魔力を使った照明が使われるという話は、如何やら珍しいことではないようだった。
勿論、火や電気といったものの方が明るく鮮明に見えるのは確かだが、それを用意する準備や手間、安全性を考慮すれば、地中で魔力を集めることの出来る石を用いた魔石を使うのは、とても理にかなっている。
未知の領域に足を踏み入れる時にするような会話ではない話をしながら、階段を降りていくミアとイクセン。意識せずとも、二人ともその空間に漂う異様さに気持ちを保とうと、無意識に気を逸らしていたのかもしれない。
そして狭い階段を抜けた先に、短めの通路が続く。脇道はなく、一本道の通路を歩いていくと、ハッチの時に使っていた技術とは対照的に、一般的なごく普通の扉が見えてくる。
「おい、あれ・・・」
「他に道や部屋もない。恐らくここが終着地だろうな・・・」
二人は地上で見た、人形に供えられたカメラの映像のことを思い出していた。この先に通じる場所は、その映像に残されていた研究所なのではないか。そういった答え合わせをするような気持ちと、何があるか分からない不気味な雰囲気に胸の鼓動が早まる。
そして、戦闘向きのクラスに就くミアが先に行き、扉のドアノブに手を掛けてゆっくりと開く。すると、階段を降りた時に点いた照明と同じ、魔石の照明が真っ暗な部屋の中で点灯していく。
「ここは・・・」
「あの映像にあった部屋と似てるな。研究に用いていた部屋だろう。内装はやや違っているが、映像で見た装置や機材がある」
そこは大きな研究スペースではなく、こじんまりとした一人用の研究ラボといった印象を受ける部屋だった。
イクセンの言うように、人形で確認したかつての施設にある部屋と似たような装置があるが、何があったのかそれらは壊されたような傷が残されており、既に機能していないようだった。
「随分と大きな装置だな。まるでホルマリン漬けの生き物でも入れてたかのような・・・」
ミアが見つけた装置は、それこそコールドスリープに用いられるように、人が入れるくらいのカプセルがおいてあったが、中身は空っぽで機械の損傷も激しい。
「何かが暴れたのか・・・?劣化したと言うよりも、“壊された“の方がしっくりくる荒れようだな」
二人はじっくり見渡しながら、部屋の様子とそこで行われた研究や、この部屋で何が起きたのかの手掛かりを探す。
するとイクセンが、崩れた棚の奥にまだ壊れていない別の大きなカプセルを見つける。外からでは中の様子が見えず、ガラス張りのところは酷く汚れたいた。
別々で部屋の中を探索していた為、イクセンはミアをすぐに呼ぶことはなく、まずは中身を確認しようと、カプセル容器の入り口と呼ぶべきか、蓋を探す。
雪のように積もった埃を払い、容器の蓋らしき取手に指をかけて引っ張ると、それほど力を込めていないにも関わらず、取手部分が壊れてしまった。
その音を聞いたミアが反応したが、イクセンは何でもないとだけ言い、他に蓋を開ける方法がないかと探る。
調べるうちに分かったのは、如何やらこのカプセルは人力や力づくでは開かないような仕組みになっているようで、それこそハッチの扉を開いた時のような特殊な構造をしているようだった。
イクセンはそこで初めてミアを呼ぶと、再び二人の力による修復と修理が行われる。
「他のに比べて、随分と汚れてるな・・・。中に何が入ってるんだ?」
「分からねぇな・・・。それに、あまり想像もしたくないってのが、正直なところだ。如何するよ?中から実験で生まれた怪物なんかが入ってたら・・・」
「馬鹿言ってないで、早く修理いてくれ。それに、そんな怪物が中に入ってたら、自力で壊して脱出しそうなもんだろ?中に何かが入ってたとして、それはもう今では如何しようもないモノに変わっちまってるだろうな・・・」
似たような見た目をしたカプセルは他にもあり、そちらはミアの言った話のように脱出した何かが暴れたかのように壊されている。
中身が何にせよ、部屋の様子と機材の劣化を考慮すれば、既に使い道のない物や如何しようもない物が入っているだけだろう。
ミアの修復によって治されたカプセルを、イクセンが修理していき、そしていよいよカプセルの蓋が開けられる。
すると、蓋を開けたイクセンが突然声を上げて飛び退き、床に尻餅をついた。
「うッ・・・!!」
「如何したッ!?」
イクセンの見せた異様な反応に、ミアがカプセルの方へ駆け寄りその中を覗くと、中には人間のミイラのようなものと、とてつもない異臭が解き放たれた。
「なッ・・・これは!?」
「人だ・・・!中に人が入れられてる!!やっぱりただの研究施設じゃなかったんだッ!」
しかし、更に二人を驚かせたのはそれだけではなかった。彼らがそのカプセルを起動し開けてしまったことによって、中から異臭だけではなく、何か良くない気配と強力な魔力が外へと飛び出していった。
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