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神代 コウ

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改竄される記憶

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 四日目の朝を迎えたミアとツクヨ。オルレラの近郊に空いたという大穴の調査や掘り起こし作業を防衛するというクエストに赴いていたツクヨが、その調査に訪れていたアークシティからの修復士、“ニコラ・アズナヴール“という人物。

 彼が突然口にした驚きの発言。オルレラ近郊に空いた大穴は、かつて行われていた宇宙計画の一部であったロケット打ち上げ。その燃料に使われていたのが、何と幼少期の子供であったという衝撃的な内容だった。

 だが、何故彼がそんな事を突然話し始めたのか。それはミア達の身に起きている記憶の混濁に関係していた。

 突如彼らを襲った耳鳴り。それが何故起こったのかは定かではないが、如何やらそのニコラという男は、彼らに起こる耳鳴りを知っていたような口ぶりだった。

 特別な能力を携えていたツクヨの剣、布都御魂剣のおかげで、ツクヨの受けた記憶の混濁はその影響を軽減され、彼のみ僅かに当時の記憶を残したままだった。

 誰にもそれを気取られる事なくエディ邸へ戻って来た彼は、ニコラとの間に起きた一部始終と彼が口にした言葉を、彼女に伝えた。

 如何やらミアの方でも耳鳴りの現象は起きていたようで、直前の記憶や資料館で調べたこと、更には前日に会っていたジャンク屋のイクセンの事さえも忘れてしまっていた。

 そして、一夜眠りについた事により、彼らの知らないところで症状は悪化していたのだ。

 本来彼らはオルレラに着いてから、四日目の朝を迎えているのだが、まるで三日目かのように前日同じ行動を繰り返していたのだ。

 それもただ繰り返しているだけではなく、彼らの記憶は一部内容が改ざんされており、ミアの場合資料館へ調べ物に行くのではなく、前日にそのままにして帰ってしまった書類や本の片付けという程で向かう予定になっていた。

 その後は耳鳴りの後と同じく、エディに聞いたジャンク屋へ向かい、イクセンという人物との初対面を果たす。ガラクタの修理と修復を手分けして行い、そこから見つかった人形から、かつての映像データを発見するという、一日の流れを繰り返す。

 一方のツクヨは、前日に持ち帰った貴重な記憶を全て失っており、何事もなく前日と同じようにオルレラのギルドに集合し、他の冒険者やルーカスらと共に、オルレラ近郊の大穴へと向かう。

 大穴での作業を防衛するというクエスト自体の概要は同じだったが、驚くべきことにその作業内容自体が大きく変わっていた。それは彼らが耳鳴りに襲われ気を失ってからの内容と同じく、大穴を埋めるという作業に変更になっていた。

 大人数での作業にも関わらず、その場にいた誰もが当時の記憶と前日に行なっていた、大穴に埋まっていた機材や鉄骨の撤去の事を覚えておらず、数日前から継続して行われていた作業のように、何食わぬ顔で各々の仕事をしていた。

 記憶がある人間からすればとても奇妙な行動だが、当の本人達はその行動や日常の中に、一切の疑問や疑いを持っていない。なるほどこれでは、オルレラに住む人達には、街に起きている出来事に気づけぬ筈だ。

 それなら、外からオルレラにやって来る人達の記憶はなっているのだろうか。それこそオルレラに泊まる事なく、通過する者や日帰りで出て行く者達にも、この記憶の改ざんは起こりうるのだろうか。

 しかしこれは、必ずしもオルレラの時間が前に進まないという訳ではなかった。それを証明するかのように、ミアが訪れたジャンク屋の方でこれまでにないとある進展があった。

 それは、イクセンと共に再びガラクタの山を修理・修復していた時だった。地面の方から僅かに感じた小さな揺れ。それによって偶然崩れたガラクタの山の隙間から、地下へと通じる不思議な構造のハッチが見つかったのだ。

 「イクセン・・・おい!イクセン!」

 「どうした?またカメラでも見つかったか?」

 「違う、扉だ・・・。地面に扉が付いてる・・・」

 ミアの言葉に眉を潜ませて彼女の元へ向かうイクセン。そして彼女の指差す方を見ると、彼も今まで見たことのないハッチがあったのだ。

 施設自体の構造や建物のマップは見つかっており、一階の下に地下があることは分かっていた。だが、ミアがイクセンを呼んだのは地上よりも少し下に下がったところにある、ガラクタの上だったのだ。

 つまり、ミアがいた位置は既に、マップに記載されている地下に位置していたのだ。しかしそのハッチは、マップには載っていない更に地下へと続く扉だったのだ。

 「何だ・・・これ。更に下へ続いてる・・・のか?」

 「ん?アンタも知らなかったのか?」

 「これだけ大規模なガラクタの山だぞ?俺一人で掘り返せる筈がない。途中で見つけた施設のマップで確認しただけだ。・・・けど、そのハッチは見たことがない・・・」

 唖然としてハッチの方を見つめるイクセン。その様子からも、彼が嘘をついていないのは明らかだった。

 彼が呆けている間に、ミアはそのハッチの位置まで降りていけるよう、ガラクタを別の場所へと放り投げていき、徐々にその全貌が明らかになる。
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