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首無しの魔物
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ツクヨの起死回生の一撃により、戦況は大きく変わった。
一切の攻撃を受け付けず、無傷でツクヨ達の攻撃を受けながら剣を振るっていた四本の腕のある首無しのモンスターだったが、その内の一本の腕の様子に変化が訪れ始める。
強靭なモンスターの腕は、ツクヨの布都御魂剣による能力の影響を受け、攻撃を受けた箇所から徐々にその硬度を失っていったのだ。
「こ・・・攻撃が通った・・・?」
「モンスターが退いたぞ!」
ツクヨの見せた希望の一撃に、周囲の護衛隊がざわつく。そして驚いていたのは、オルレラのギルドマスターであるルーカスも同じだった。
「やはりあの剣は、ただの業物ではなかったのか・・・。一体、どんなカラクリが・・・?」
その後もツクヨは、一人モンスターと戯れるように三本の腕から放たれる斬撃を華麗に避け、直接斬りつけるのとは違った形で刀剣を振るっていた。
モンスターの振るう大剣とは打って変わり、ツクヨは細い刀剣に変わった形状をした布都御魂剣を、モンスターの剛腕の表面を滑らせるように、まるで何かを削り取るように繊細な剣技を見舞う。
その度にモンスターの腕は、斬りつけられてはいない筈なのに弱っていくのが目に見えて分かる。
ツクヨの剣技を多く受けた、一本のモンスターの腕が、遂に手にしていた大剣を支えられなくなるほど衰弱し、その手からこぼれ落とした。
彼はモンスターに直接斬りつける事はない。瞼を閉じたまま、どうやって状況を把握して回避しているのかは分からなかったが、ルーカスは弱体化したモンスターの腕を狙い、再び剣を握って急接近すると、凄まじい勢いの斬り上げでモンスターの腕を両断し、吹き飛ばした。
ルーカスの接近にも気付いていたようで、彼の攻撃が来るのに気が付いたツクヨは、彼の攻撃に合わせた動きへと変わり、邪魔にならないようにモンスターの反対側へと回る。
「どういう理由があるのかは知らんが、直接攻撃は俺に任せろッ!」
ルーカスの頼もしい言葉に、ツクヨは笑みを浮かべて答えた。
「助かります!」
敵対する対象が二人に増えたことにより、モンスターの攻撃が分断されツクヨの負担が大幅に軽減された。依然、ルーカスは剣を地面や岩に突き刺し、モンスターの衝撃を流しながらツクヨによる弱体化のチャンスを伺う。
対するツクヨは、ルーカスへ攻撃が偏るタイミングを見極め、より正確にモンスターの腕を滑らせる剣技を見舞うことが出来るようになった。
手数の増えたツクヨにより、モンスターの弱体化は更に進んでいき、遂にモンスターの二本目の腕もルーカスの斬撃により、切断することに成功する。
二人の活躍により、呆気に取られていたギャラリーは、今度は攻撃を中止し彼らへの支援や回復、そしてモンスターに対する弱体化の効果のある魔法やスキルで支援を始めた。
畳み掛けるような周囲との協力により、形勢は一気にツクヨ達側に傾き、彼らを苦しめたモンスターとの決着を終幕へ向けて加速させた。
モンスターのその大きな肉体に、ルーカスは大剣の技とは思えぬ素早い連撃で深い傷痕を刻み込んでいくと、残された二本の腕をほぼ同時に上空へ吹き飛ばした後に、棒立ちになるモンスターの身体に大剣を突き刺す。
「爆撃剣・塵ッ!!」
ルーカスはモンスターの身体に突き刺さった大剣に、拳で強い衝撃を与える。響き渡る轟音は、宛らモンスターの攻撃を受け止めた時のような衝撃を、その巨体に伝わらせる。
すると、まるで身体の内側から弾け飛ぶように爆散し、消滅した。
そして、二人の活躍により事態が収束した頃、護衛の一人が戻り連れて来た“修復士“が到着した。
「なぁ~、無理だって。俺ぁ戦闘タイプじゃねぇんだからよぉ・・・」
「今は貴方の知識と力が必要なんです!いいから来てください!・・・って、あれ?」
現場を離れていた間、あの絶望的な状況から一体何があったのか知らない二人は、呆気に取られたようにその場を見渡す。だが、護衛が連れて来た修復士の男は、モンスターを倒したか或いは何処かへ消し去ったと思われる現場を見て、何かを考えるような素振りを見せた。
「ほぅ・・・アレを処理できたのか。アレの本質を見抜いたのか・・・それとも単なる馬鹿力なのか。一体誰がアレの相手を?」
修復士の男が、現場でその一部始終を見ていたであろう護衛に話しかける。そして、護衛が指差した方向にはツクヨとルーカスがおり、二人の到着を聞かされたのか、こちらと同じように到着したばかりの修復士達の方を向いていた。
一切の攻撃を受け付けず、無傷でツクヨ達の攻撃を受けながら剣を振るっていた四本の腕のある首無しのモンスターだったが、その内の一本の腕の様子に変化が訪れ始める。
強靭なモンスターの腕は、ツクヨの布都御魂剣による能力の影響を受け、攻撃を受けた箇所から徐々にその硬度を失っていったのだ。
「こ・・・攻撃が通った・・・?」
「モンスターが退いたぞ!」
ツクヨの見せた希望の一撃に、周囲の護衛隊がざわつく。そして驚いていたのは、オルレラのギルドマスターであるルーカスも同じだった。
「やはりあの剣は、ただの業物ではなかったのか・・・。一体、どんなカラクリが・・・?」
その後もツクヨは、一人モンスターと戯れるように三本の腕から放たれる斬撃を華麗に避け、直接斬りつけるのとは違った形で刀剣を振るっていた。
モンスターの振るう大剣とは打って変わり、ツクヨは細い刀剣に変わった形状をした布都御魂剣を、モンスターの剛腕の表面を滑らせるように、まるで何かを削り取るように繊細な剣技を見舞う。
その度にモンスターの腕は、斬りつけられてはいない筈なのに弱っていくのが目に見えて分かる。
ツクヨの剣技を多く受けた、一本のモンスターの腕が、遂に手にしていた大剣を支えられなくなるほど衰弱し、その手からこぼれ落とした。
彼はモンスターに直接斬りつける事はない。瞼を閉じたまま、どうやって状況を把握して回避しているのかは分からなかったが、ルーカスは弱体化したモンスターの腕を狙い、再び剣を握って急接近すると、凄まじい勢いの斬り上げでモンスターの腕を両断し、吹き飛ばした。
ルーカスの接近にも気付いていたようで、彼の攻撃が来るのに気が付いたツクヨは、彼の攻撃に合わせた動きへと変わり、邪魔にならないようにモンスターの反対側へと回る。
「どういう理由があるのかは知らんが、直接攻撃は俺に任せろッ!」
ルーカスの頼もしい言葉に、ツクヨは笑みを浮かべて答えた。
「助かります!」
敵対する対象が二人に増えたことにより、モンスターの攻撃が分断されツクヨの負担が大幅に軽減された。依然、ルーカスは剣を地面や岩に突き刺し、モンスターの衝撃を流しながらツクヨによる弱体化のチャンスを伺う。
対するツクヨは、ルーカスへ攻撃が偏るタイミングを見極め、より正確にモンスターの腕を滑らせる剣技を見舞うことが出来るようになった。
手数の増えたツクヨにより、モンスターの弱体化は更に進んでいき、遂にモンスターの二本目の腕もルーカスの斬撃により、切断することに成功する。
二人の活躍により、呆気に取られていたギャラリーは、今度は攻撃を中止し彼らへの支援や回復、そしてモンスターに対する弱体化の効果のある魔法やスキルで支援を始めた。
畳み掛けるような周囲との協力により、形勢は一気にツクヨ達側に傾き、彼らを苦しめたモンスターとの決着を終幕へ向けて加速させた。
モンスターのその大きな肉体に、ルーカスは大剣の技とは思えぬ素早い連撃で深い傷痕を刻み込んでいくと、残された二本の腕をほぼ同時に上空へ吹き飛ばした後に、棒立ちになるモンスターの身体に大剣を突き刺す。
「爆撃剣・塵ッ!!」
ルーカスはモンスターの身体に突き刺さった大剣に、拳で強い衝撃を与える。響き渡る轟音は、宛らモンスターの攻撃を受け止めた時のような衝撃を、その巨体に伝わらせる。
すると、まるで身体の内側から弾け飛ぶように爆散し、消滅した。
そして、二人の活躍により事態が収束した頃、護衛の一人が戻り連れて来た“修復士“が到着した。
「なぁ~、無理だって。俺ぁ戦闘タイプじゃねぇんだからよぉ・・・」
「今は貴方の知識と力が必要なんです!いいから来てください!・・・って、あれ?」
現場を離れていた間、あの絶望的な状況から一体何があったのか知らない二人は、呆気に取られたようにその場を見渡す。だが、護衛が連れて来た修復士の男は、モンスターを倒したか或いは何処かへ消し去ったと思われる現場を見て、何かを考えるような素振りを見せた。
「ほぅ・・・アレを処理できたのか。アレの本質を見抜いたのか・・・それとも単なる馬鹿力なのか。一体誰がアレの相手を?」
修復士の男が、現場でその一部始終を見ていたであろう護衛に話しかける。そして、護衛が指差した方向にはツクヨとルーカスがおり、二人の到着を聞かされたのか、こちらと同じように到着したばかりの修復士達の方を向いていた。
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