World of Fantasia

神代 コウ

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抜刀、布都御魂剣

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 つまり、大穴に埋まっていた機材や鉄骨には、地中にある魔力がありその修復の際に、外部の魔力と触れ合うことで暴走してしまい、その形を異形の生き物であるモンスターへと変えてしまったということだ。

 「話は分かりました。それで、修復を行なっていた人は今どこに?」

 「他の護衛の者が、別の場所へと避難させている筈だ・・・。無事だといいのだが・・・」

 彼らの言う、“修復士“であればもっと詳しく分かるのではないかと考えたツクヨだったが、こうしている間にも首無しのモンスターは暴れ回っており、ルーカスが何とか食い止めている。

 大きな鎧に大剣を使う割には、身軽な動きでモンスターの斬撃を次々に躱し、避けられぬものと判断した一撃には、地面に突き刺した大剣を盾に衝撃を地面へといなしていたのだ。

 ルーカスがモンスターの攻撃を受け止める際は、必ず地面や近場の岩に剣を突き刺している。戦闘経験の豊富さからか、変化するモンスターの様子に臨機応変に対応できているのは、流石はギルドマスターといったところだろう。

 「修復士の人は、あのモンスターの退治の仕方について詳しくないんですか?初めてではないんですよね?」

 「どうだろうか・・・。彼が直接戦うという事態にまで発展したことはないんだ。さっきも言った通り、こんな強力なモンスターが現れるのは初めてのことなんだ・・・」

 「ここは私達で抑えます。貴方はその修復士の人に現状を伝えて、解決策はないのか聞いてきてくれませんか?」

 「わっ分かった、直ぐに探してこよう!」

 ツクヨと話していた護衛の者は、彼に言われた通り戦場を離れ、修復士を探しに向かう。一人、モンスターの猛攻に耐えながら、他の者達と連携するルーカス。

 護衛の者達には前線を退かせ、自分が囮になることで被害を最小限に留めながら、遠距離攻撃による援護を任せていた。中には支援系の魔法を使える者や、多少なら回復も行える者もおり、よく持ち堪えている。

 「普通の剣じゃダメだ・・・。グレイスから貰った、あの剣ならッ・・・」

 グラン・ヴァーグで行われたレースの前、ツクヨ達はグレイス・オマリーという海賊と、チン・シー海賊団の幹部らと共に行った共同作戦の報酬として受け取った、“布都御魂剣“を取り出した。

 レースの中では、ロロネーの使役していた強力な怪異を打ち破る要として、ツクヨに不思議な力を与え勝利へと導いた伝説上の宝剣。

 ツクヨの心の目で思い描いた空間と、その中で創造した能力や力を現実に反映させることの出来るこの剣なら、或いはあの強靭な鋼の肉体をしたモンスターを斬ることができるかもしれない。

 急ぎモンスターの相手をするルーカスの元へ向かうと、ツクヨは布都御魂剣を手に戦場へと戻る。

 「すみません!お一人に任せてしまって・・・」

 「構わん。だが見ての通り、攻撃を防ぐことは出来ても、有効な一撃を与えることもできん。これではジリ貧だ・・・」

 「それに関してですが、大穴で見つかった物を修復していたという修復士の元へ、人を送らせました。その人物なら、何か突破口を切り拓けるかもと思いまして・・・」

 「なるほど、助かる。それまでの間、我々でこいつを止めておけばいいのだな?」

 「はい。・・・ですがその前に、私に出来る事を試させて欲しいのです」

 ツクヨは手にした布都御魂剣に意識を集中させる。すると、彼の力に呼応するように刀剣が青白い光を帯び始めた。

 そして、レースの中で怪異と戦った時の感覚を思い出し目を閉じると、心の目で瞼の向こう側の景色を想像し、頭の中で世界を創造する。

 モンスターの身体の輪郭が、煙のようなオーラで現れる。景色もそっくりそのまま創造したツクヨの頭の中の世界では、モンスターの実体は見えずとも身体に帯びる魔力や気配で、その動きや行動が分かる。

 「よし・・・!あの時と同じだ。行くぞッ!」

 目を閉じたままのツクヨが、四本の腕にそれぞれ剣を携えた首無しのモンスターに向かっていく。その様子を見ていたルーカスは、正気の行動ではないといった様子で彼を引き止めようとしていた。

 「おい!目を瞑ったままでだと!?」

 駆け寄るツクヨの気配気づいたモンスターは、剣を振るい襲い掛かる。普通なら目を閉じている彼に、モンスターの攻撃を凌ぐことなどできない。だが、周りの者達の不安を払うように、見事な身のこなしで攻撃を次々に回避していく。

 モンスターの懐へ潜り込んだツクヨが、青白く光る布都御魂剣で渾身の一撃を入れる。モンスターの身に纏うオーラを断ち切るように、その刀身がモンスターの肌に触れる。

 しかしここで、ツクヨの想像とは違った事態が発生した。

 布都御魂剣の能力を信じていたツクヨは、その能力であれば相手が如何なる硬度を誇ろうとも断ち切ることが出来ると思っていたのだが、彼の一撃は最初にモンスターへ打ち込んだ、通常の剣による一撃と同じ金属音を響かせたのだ。

 「えっ・・・!?」

 手に伝わる衝撃と、周囲に響き渡った高音に思わず目を開けるツクヨ。布都御魂剣の一撃を受けても、全くもろともしていない様子のモンスターが、驚きのあまり固まる彼に、剛腕から振われる強靭な斬撃を差し向ける。

 「何をしているッ!?早く退けぇッ!!」

 だが、ルーカスの声が彼に届いた頃には時既に遅く、もう避けきれないところまでモンスターの振るう剣が迫っていた。
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