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魔物の出現
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息を合わせるように同時に動き出した二人。先に前に出たのは、比較的細めの刀剣を持つツクヨだった。モンスターの外見から考察するに、身体のどこを見渡しても目のようなものが見当たらない。
故に、視覚による状況把握は出来ていないのではないか。その代わりなのか、モンスターの身体には幾つもの人間の口が存在している。
それらが小さく音を発しているということは、音響によって周囲に何があるのかを把握し、感知しているのか。或いは、その口や舌で風の動きを読んでいるのか。
どちらにせよ、こちらの姿は視認できていない可能性が高い。ならば素早い動きで翻弄し、僅かな動きで必殺の一撃を叩き込むのが効果的だと判断したツクヨ。
彼の前に出る動きと、フェイントを掛けるかのような走りを目にしたルーカスは、その意図を汲み取るとツクヨから提示される自分の役割を理解し、徐々に走る速度を緩めモンスターとツクヨの戦況を一望できる、高い場所へと移動する。
しかし、風や音で物の位置を把握するにしろ、モンスターの周りには護衛隊の者達が何人もいる。これだけの数の人間に動き回れては、全てを把握するのは難しいのではないか。
それを補う為の、身体の硬質化なのだろうか。ルーカスの渾身の一撃が、モンスターに命中した時の場面を思い出すツクヨ。柔らかいものを斬るつもりで剣を振るえば、彼の二の舞になる。
剣に込めた力も速度も、更に重い反動となって自分へ返ってきてしまう。鋼の外殻に覆われたモンスターにダメージを与えるにはどうすればいいのか。
だが、モンスターへ向かう中でその答えは見えず、ツクヨは仕方がなく試していく中で探っていこうと、難しいことを考えるのを止めて、今は目の前の事に集中する。
吹き飛ばされて来た護衛の者を一人二人と華麗に避け、素早い一撃をモンスターの身体に直角ではなく、やや肌の上を滑らせるような角度で斬りつける。
ツクヨの剣がモンスターの腕の下を滑るように移動し、胴体のところで打ち止められる。金属同士で斬りつけ合うような削る音と共に火花が散る。到底生き物を斬っている音には聞こえない。
頭や目、その者の反応を伺えるような部分が欠如しているモンスターに戸惑うツクヨは、そのまま直ぐに後ろへ退こうと重心を後ろへ移す。
だが、ここで誰もが予期せぬ変化がモンスターに訪れる。
ツクヨが剣を打ち込んだモンスターの胴体から、新たな腕が生え始め、退け反ろうとするツクヨの身体を掴もうとした。
捕まったら終わりだと言わんばかりの、物言わぬプレッシャーを感じたツクヨは、限界まで身体を反らせながら、僅かでもモンスターの腕の軌道を変えようと剣で下から打ち上げる。
その甲斐もあり、間一髪のところでモンスターの腕を躱した彼は、そのままバック転のように回転し後ろへ下がると、一旦距離を空けてモンスターの様子を伺う。
冷たい大粒の汗が、ツクヨの額から身体を伝っていく。現に最も肝を冷やしたのは彼自身だろう。周りの者達も、時間の経過と共にどんどん禍々しく変化していくモンスターの姿に、言葉を失っていた。
「何だよ・・・これまでのと、全然違うじゃねえかッ!」
「時間を掛ければ、もっと手に追えなくなるぞ!」
「もう、そんな次元・・・超えてんだよ・・・」
強靭な肉体をした、鋼の身体を持つ首無しのモンスターから、四本の逞しい腕が生えている。身体の表面に浮き出た、幾つもある人間の口は何かをしゃべっているかのように、止まる事なく動き続けていた。
ツクヨの攻撃で新たに生まれた腕が、地面に落ちた剣を拾い上げると、自分の力を誇示せんとばかりに構えを取り、周囲の者達へ絶望を振り撒く。
戦意を失う者もいる中、ツクヨは護衛隊の者達の会話から聞こえた、“これまでの“と言う言葉に可能性を見出し、それを口にしていた者達の方へ向かう。
「すまない、先ほど言っていた“これまでと全然違う“とは、一体どう言う事ですか?もしかして初めてではない・・・?」
「あっあぁ、ここに来てから何度かモンスターは現れたが、アレは他のとは全く違う・・・」
「モンスターはテントの中から現れたように見えましたが・・・」
彼がモンスターの出現に対して追及すると、護衛の一人がテントの中で何が行われていたのかを話し始めた。
「こういう場所に放置された物ってのは、魔力を帯びやすいんだ。地面の下ともなれば尚の事。それを中にいらっしゃる修復士の方が、直しているんだが・・・。その際に使う魔力に反応して、物に宿った魔力が暴走してモンスターへ変わる事があるんだ」
「何故そんな危険なことを・・・。そもそも、破棄された物を何故修復するんです?そのまま分解するなり溶かすなりして処分する訳には・・・」
「初めは上もそのつもりだったらしい。だが、あの大穴で見つかった物を調べる中で、使われた素材や部品が貴重な物であることが分かったんだそうだ。何でも“アーティフィシャル・アーク“特有の物らしくて、それを確認したところ回収するという意向に変更になったらしい」
ここでも耳にすることとなった“アーティフィシャル・アーク“こと、“アークシティ“の名前。ただの文明が発達した、近未来的な街を想像していたツクヨ達は、その影響力の大きさや他国との取り引きを行うほどの経済力が、ただの街ではないのではないかという疑問を膨らませていた。
故に、視覚による状況把握は出来ていないのではないか。その代わりなのか、モンスターの身体には幾つもの人間の口が存在している。
それらが小さく音を発しているということは、音響によって周囲に何があるのかを把握し、感知しているのか。或いは、その口や舌で風の動きを読んでいるのか。
どちらにせよ、こちらの姿は視認できていない可能性が高い。ならば素早い動きで翻弄し、僅かな動きで必殺の一撃を叩き込むのが効果的だと判断したツクヨ。
彼の前に出る動きと、フェイントを掛けるかのような走りを目にしたルーカスは、その意図を汲み取るとツクヨから提示される自分の役割を理解し、徐々に走る速度を緩めモンスターとツクヨの戦況を一望できる、高い場所へと移動する。
しかし、風や音で物の位置を把握するにしろ、モンスターの周りには護衛隊の者達が何人もいる。これだけの数の人間に動き回れては、全てを把握するのは難しいのではないか。
それを補う為の、身体の硬質化なのだろうか。ルーカスの渾身の一撃が、モンスターに命中した時の場面を思い出すツクヨ。柔らかいものを斬るつもりで剣を振るえば、彼の二の舞になる。
剣に込めた力も速度も、更に重い反動となって自分へ返ってきてしまう。鋼の外殻に覆われたモンスターにダメージを与えるにはどうすればいいのか。
だが、モンスターへ向かう中でその答えは見えず、ツクヨは仕方がなく試していく中で探っていこうと、難しいことを考えるのを止めて、今は目の前の事に集中する。
吹き飛ばされて来た護衛の者を一人二人と華麗に避け、素早い一撃をモンスターの身体に直角ではなく、やや肌の上を滑らせるような角度で斬りつける。
ツクヨの剣がモンスターの腕の下を滑るように移動し、胴体のところで打ち止められる。金属同士で斬りつけ合うような削る音と共に火花が散る。到底生き物を斬っている音には聞こえない。
頭や目、その者の反応を伺えるような部分が欠如しているモンスターに戸惑うツクヨは、そのまま直ぐに後ろへ退こうと重心を後ろへ移す。
だが、ここで誰もが予期せぬ変化がモンスターに訪れる。
ツクヨが剣を打ち込んだモンスターの胴体から、新たな腕が生え始め、退け反ろうとするツクヨの身体を掴もうとした。
捕まったら終わりだと言わんばかりの、物言わぬプレッシャーを感じたツクヨは、限界まで身体を反らせながら、僅かでもモンスターの腕の軌道を変えようと剣で下から打ち上げる。
その甲斐もあり、間一髪のところでモンスターの腕を躱した彼は、そのままバック転のように回転し後ろへ下がると、一旦距離を空けてモンスターの様子を伺う。
冷たい大粒の汗が、ツクヨの額から身体を伝っていく。現に最も肝を冷やしたのは彼自身だろう。周りの者達も、時間の経過と共にどんどん禍々しく変化していくモンスターの姿に、言葉を失っていた。
「何だよ・・・これまでのと、全然違うじゃねえかッ!」
「時間を掛ければ、もっと手に追えなくなるぞ!」
「もう、そんな次元・・・超えてんだよ・・・」
強靭な肉体をした、鋼の身体を持つ首無しのモンスターから、四本の逞しい腕が生えている。身体の表面に浮き出た、幾つもある人間の口は何かをしゃべっているかのように、止まる事なく動き続けていた。
ツクヨの攻撃で新たに生まれた腕が、地面に落ちた剣を拾い上げると、自分の力を誇示せんとばかりに構えを取り、周囲の者達へ絶望を振り撒く。
戦意を失う者もいる中、ツクヨは護衛隊の者達の会話から聞こえた、“これまでの“と言う言葉に可能性を見出し、それを口にしていた者達の方へ向かう。
「すまない、先ほど言っていた“これまでと全然違う“とは、一体どう言う事ですか?もしかして初めてではない・・・?」
「あっあぁ、ここに来てから何度かモンスターは現れたが、アレは他のとは全く違う・・・」
「モンスターはテントの中から現れたように見えましたが・・・」
彼がモンスターの出現に対して追及すると、護衛の一人がテントの中で何が行われていたのかを話し始めた。
「こういう場所に放置された物ってのは、魔力を帯びやすいんだ。地面の下ともなれば尚の事。それを中にいらっしゃる修復士の方が、直しているんだが・・・。その際に使う魔力に反応して、物に宿った魔力が暴走してモンスターへ変わる事があるんだ」
「何故そんな危険なことを・・・。そもそも、破棄された物を何故修復するんです?そのまま分解するなり溶かすなりして処分する訳には・・・」
「初めは上もそのつもりだったらしい。だが、あの大穴で見つかった物を調べる中で、使われた素材や部品が貴重な物であることが分かったんだそうだ。何でも“アーティフィシャル・アーク“特有の物らしくて、それを確認したところ回収するという意向に変更になったらしい」
ここでも耳にすることとなった“アーティフィシャル・アーク“こと、“アークシティ“の名前。ただの文明が発達した、近未来的な街を想像していたツクヨ達は、その影響力の大きさや他国との取り引きを行うほどの経済力が、ただの街ではないのではないかという疑問を膨らませていた。
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