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首無しの怪物
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前日と同様にオルレラのギルド本部に集合し、同じクエストに挑む者達と近郊の大穴へ向かうツクヨ。そして防衛の現場となる場所の近くに建てられた仮拠点へ着くと、時間まで集まった協力者達と会話を楽しんでいた。
すると、その会話の中で撤去した機材や鉄骨の修復や調査を行う部隊が派遣されているという話を聞き、ツクヨはこの防衛クエストを自ら指揮し同行している、ギルドマスターのルーカスの元へ向かい、その話の事について尋ねた。
「ルーカスさん、少しいいですか?」
「ツクヨ化、どうしたんだ?改まって」
撤去作業を行う業者を待っていた彼も、拠点のテントの中で時間を持て余していた。これは丁度いい時間潰しになると、ツクヨは先ほど聞いた話をルーカスに尋ねる。
彼はそれをツクヨの口から聞き、まるで思い出したかのような反応をすると、時間があるなら紹介すると言ってくれた。
折角ならばとツクヨは彼にお願いし、派遣された調査隊のいるテントへと向かう。拠点から少し離れた場所に設けられているようで、二人は拠点を離れると徒歩で現地へと向かった。
道中、他の冒険者とも上手くやっているツクヨに、ルーカスは部隊の様子や冒険者同士で上手くやっているかなど、クエストをこなす上で大事になってくるという身内の様子を伺う。
実際、彼の元に集められた冒険者達は、それぞれ癖はあるものの大きな問題やいざこざもなく上手くやっている方なのではないかと、ツクヨは彼らの様子を思い浮かべながら話した。
ギルドの事やクエストのことなどを話している内に、目的のテントのある拠点へと辿り着く。
と、同時に突然テントの中が光だし、外にいた他の研究者らしき人や護衛の者と思われる人物達が慌ただしく動き出す。
その様子を見て、思わず顔を見合わせたツクヨとルーカスは急ぎテントの方へ駆け寄ると、何故かテントの中から突如モンスターが飛び出してきたのだ。
モンスターは入り口の方へ駆け寄ってきていた護衛の者を吹き飛ばし外へ出てくると、雄叫びをあげて暴れ出した。
その容姿は、大穴から生まれるアンデッドモンスターを彷彿とさせる不気味な見た目をしており、首のない人型の全体像に身体のあちこちに人の口のようなものが浮き上がり、それぞれ声にならない言葉を口にしている。
「これは一体、どういう事!?」
「わからん!先ずはあのモンスターを仕留める。いくぞ!ツクヨ」
集まり出す護衛の者達を次々に振り払うモンスターは、落ちていた大剣を拾い上げるとまるで片手剣のように軽々と振り回し、より手を付けられなくなってしまう。
危うく斬られそうになる、逃げ遅れた研究員の前に間一髪間に合ったツクヨ。だが、鍔迫り合いをする中で、そのモンスターの怪力に徐々に押され始めてしまう。
「くッ・・・!大穴のモンスターより、数段強いぞ・・・これ!」
苦戦するツクヨに、少し遅れて参戦したルーカスは大きく飛び上がり、上空からその大きな剣を豪快に振り下ろす。
ルーカスの攻撃は見事、モンスターの身体に命中する。しかし、モンスターを斬りつけたルーカスの剣からは、想像とはまるで違った音が周囲へ鳴り響く。
彼の剣が勢いよくモンスターの身体に命中すると、まるで金属を強く打ちつけたかのような鈍い金属音が響き渡ったのだ。
「うッ・・・!?」
肉を断つつもりで振り下ろした剣を握る手に、思わず握っていた手を離してしまいそうになる痺れが走る。
鍔迫り合いをしていたツクヨを弾き飛ばし、痺れに力の弱まるルーカスへ向けて、モンスターは強烈な回し蹴りを見舞う。
モンスターの攻撃を真面に喰らってしまったルーカスは、そのまま大きくツクヨと同じ方向へ吹き飛ばされてしまう。
「大丈夫ですかッ!?」
「あっ・・・あぁ。鎧がなければ危なかった・・・。しかし、なんだあれは?何故あのようなモンスターが突然・・・」
「分かりません。ただ、大穴にいたモンスター達よりも数倍強いですよ、アレ・・・」
想像以上に強力だったモンスターに、手も足も出ないまま押し返されてしまう二人。その間にも、何人もの護衛の者達が立ち向かっていたが、まるで歯が立たない。
そして、無類の強さを振るうモンスターに、とある変化が訪れる。
ただでさえ手のつけられなかったモンスターが、突然もがき苦しむような様子を見せる。その直後、身体にあった人の口の一つから、新たにもう一本の腕が出現した。
強靭な腕を三本携えたモンスターは更に勢いを増し、それぞれの腕に奪い取った剣を握り締め、一層手のつけられない状態へとなってしまう。
「戻って他の冒険者達に協力を仰ぎますか?」
「いや、恐らく向こうは向こうでそろそろモンスターの相手をする時間だ。ここは我々でなんとかするしかない・・・。彼らと協力し、何とかこの窮地を乗り越えるぞッ!」
ここに来たのはあくまで、ツクヨとルーカスの都合。それに彼らを巻き込む訳にもいかず、そんなことをすれば本来の目的である防衛のクエスト自体を疎かにしてしまう、
ルーカスの言う通り、ここは現場の護衛隊と協力し、この突然現れたモンスターを討伐する他ない。覚悟を決めた二人は、再び剣を握り締める。
すると、その会話の中で撤去した機材や鉄骨の修復や調査を行う部隊が派遣されているという話を聞き、ツクヨはこの防衛クエストを自ら指揮し同行している、ギルドマスターのルーカスの元へ向かい、その話の事について尋ねた。
「ルーカスさん、少しいいですか?」
「ツクヨ化、どうしたんだ?改まって」
撤去作業を行う業者を待っていた彼も、拠点のテントの中で時間を持て余していた。これは丁度いい時間潰しになると、ツクヨは先ほど聞いた話をルーカスに尋ねる。
彼はそれをツクヨの口から聞き、まるで思い出したかのような反応をすると、時間があるなら紹介すると言ってくれた。
折角ならばとツクヨは彼にお願いし、派遣された調査隊のいるテントへと向かう。拠点から少し離れた場所に設けられているようで、二人は拠点を離れると徒歩で現地へと向かった。
道中、他の冒険者とも上手くやっているツクヨに、ルーカスは部隊の様子や冒険者同士で上手くやっているかなど、クエストをこなす上で大事になってくるという身内の様子を伺う。
実際、彼の元に集められた冒険者達は、それぞれ癖はあるものの大きな問題やいざこざもなく上手くやっている方なのではないかと、ツクヨは彼らの様子を思い浮かべながら話した。
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と、同時に突然テントの中が光だし、外にいた他の研究者らしき人や護衛の者と思われる人物達が慌ただしく動き出す。
その様子を見て、思わず顔を見合わせたツクヨとルーカスは急ぎテントの方へ駆け寄ると、何故かテントの中から突如モンスターが飛び出してきたのだ。
モンスターは入り口の方へ駆け寄ってきていた護衛の者を吹き飛ばし外へ出てくると、雄叫びをあげて暴れ出した。
その容姿は、大穴から生まれるアンデッドモンスターを彷彿とさせる不気味な見た目をしており、首のない人型の全体像に身体のあちこちに人の口のようなものが浮き上がり、それぞれ声にならない言葉を口にしている。
「これは一体、どういう事!?」
「わからん!先ずはあのモンスターを仕留める。いくぞ!ツクヨ」
集まり出す護衛の者達を次々に振り払うモンスターは、落ちていた大剣を拾い上げるとまるで片手剣のように軽々と振り回し、より手を付けられなくなってしまう。
危うく斬られそうになる、逃げ遅れた研究員の前に間一髪間に合ったツクヨ。だが、鍔迫り合いをする中で、そのモンスターの怪力に徐々に押され始めてしまう。
「くッ・・・!大穴のモンスターより、数段強いぞ・・・これ!」
苦戦するツクヨに、少し遅れて参戦したルーカスは大きく飛び上がり、上空からその大きな剣を豪快に振り下ろす。
ルーカスの攻撃は見事、モンスターの身体に命中する。しかし、モンスターを斬りつけたルーカスの剣からは、想像とはまるで違った音が周囲へ鳴り響く。
彼の剣が勢いよくモンスターの身体に命中すると、まるで金属を強く打ちつけたかのような鈍い金属音が響き渡ったのだ。
「うッ・・・!?」
肉を断つつもりで振り下ろした剣を握る手に、思わず握っていた手を離してしまいそうになる痺れが走る。
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モンスターの攻撃を真面に喰らってしまったルーカスは、そのまま大きくツクヨと同じ方向へ吹き飛ばされてしまう。
「大丈夫ですかッ!?」
「あっ・・・あぁ。鎧がなければ危なかった・・・。しかし、なんだあれは?何故あのようなモンスターが突然・・・」
「分かりません。ただ、大穴にいたモンスター達よりも数倍強いですよ、アレ・・・」
想像以上に強力だったモンスターに、手も足も出ないまま押し返されてしまう二人。その間にも、何人もの護衛の者達が立ち向かっていたが、まるで歯が立たない。
そして、無類の強さを振るうモンスターに、とある変化が訪れる。
ただでさえ手のつけられなかったモンスターが、突然もがき苦しむような様子を見せる。その直後、身体にあった人の口の一つから、新たにもう一本の腕が出現した。
強靭な腕を三本携えたモンスターは更に勢いを増し、それぞれの腕に奪い取った剣を握り締め、一層手のつけられない状態へとなってしまう。
「戻って他の冒険者達に協力を仰ぎますか?」
「いや、恐らく向こうは向こうでそろそろモンスターの相手をする時間だ。ここは我々でなんとかするしかない・・・。彼らと協力し、何とかこの窮地を乗り越えるぞッ!」
ここに来たのはあくまで、ツクヨとルーカスの都合。それに彼らを巻き込む訳にもいかず、そんなことをすれば本来の目的である防衛のクエスト自体を疎かにしてしまう、
ルーカスの言う通り、ここは現場の護衛隊と協力し、この突然現れたモンスターを討伐する他ない。覚悟を決めた二人は、再び剣を握り締める。
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