908 / 1,646
首無しの怪物
しおりを挟む
前日と同様にオルレラのギルド本部に集合し、同じクエストに挑む者達と近郊の大穴へ向かうツクヨ。そして防衛の現場となる場所の近くに建てられた仮拠点へ着くと、時間まで集まった協力者達と会話を楽しんでいた。
すると、その会話の中で撤去した機材や鉄骨の修復や調査を行う部隊が派遣されているという話を聞き、ツクヨはこの防衛クエストを自ら指揮し同行している、ギルドマスターのルーカスの元へ向かい、その話の事について尋ねた。
「ルーカスさん、少しいいですか?」
「ツクヨ化、どうしたんだ?改まって」
撤去作業を行う業者を待っていた彼も、拠点のテントの中で時間を持て余していた。これは丁度いい時間潰しになると、ツクヨは先ほど聞いた話をルーカスに尋ねる。
彼はそれをツクヨの口から聞き、まるで思い出したかのような反応をすると、時間があるなら紹介すると言ってくれた。
折角ならばとツクヨは彼にお願いし、派遣された調査隊のいるテントへと向かう。拠点から少し離れた場所に設けられているようで、二人は拠点を離れると徒歩で現地へと向かった。
道中、他の冒険者とも上手くやっているツクヨに、ルーカスは部隊の様子や冒険者同士で上手くやっているかなど、クエストをこなす上で大事になってくるという身内の様子を伺う。
実際、彼の元に集められた冒険者達は、それぞれ癖はあるものの大きな問題やいざこざもなく上手くやっている方なのではないかと、ツクヨは彼らの様子を思い浮かべながら話した。
ギルドの事やクエストのことなどを話している内に、目的のテントのある拠点へと辿り着く。
と、同時に突然テントの中が光だし、外にいた他の研究者らしき人や護衛の者と思われる人物達が慌ただしく動き出す。
その様子を見て、思わず顔を見合わせたツクヨとルーカスは急ぎテントの方へ駆け寄ると、何故かテントの中から突如モンスターが飛び出してきたのだ。
モンスターは入り口の方へ駆け寄ってきていた護衛の者を吹き飛ばし外へ出てくると、雄叫びをあげて暴れ出した。
その容姿は、大穴から生まれるアンデッドモンスターを彷彿とさせる不気味な見た目をしており、首のない人型の全体像に身体のあちこちに人の口のようなものが浮き上がり、それぞれ声にならない言葉を口にしている。
「これは一体、どういう事!?」
「わからん!先ずはあのモンスターを仕留める。いくぞ!ツクヨ」
集まり出す護衛の者達を次々に振り払うモンスターは、落ちていた大剣を拾い上げるとまるで片手剣のように軽々と振り回し、より手を付けられなくなってしまう。
危うく斬られそうになる、逃げ遅れた研究員の前に間一髪間に合ったツクヨ。だが、鍔迫り合いをする中で、そのモンスターの怪力に徐々に押され始めてしまう。
「くッ・・・!大穴のモンスターより、数段強いぞ・・・これ!」
苦戦するツクヨに、少し遅れて参戦したルーカスは大きく飛び上がり、上空からその大きな剣を豪快に振り下ろす。
ルーカスの攻撃は見事、モンスターの身体に命中する。しかし、モンスターを斬りつけたルーカスの剣からは、想像とはまるで違った音が周囲へ鳴り響く。
彼の剣が勢いよくモンスターの身体に命中すると、まるで金属を強く打ちつけたかのような鈍い金属音が響き渡ったのだ。
「うッ・・・!?」
肉を断つつもりで振り下ろした剣を握る手に、思わず握っていた手を離してしまいそうになる痺れが走る。
鍔迫り合いをしていたツクヨを弾き飛ばし、痺れに力の弱まるルーカスへ向けて、モンスターは強烈な回し蹴りを見舞う。
モンスターの攻撃を真面に喰らってしまったルーカスは、そのまま大きくツクヨと同じ方向へ吹き飛ばされてしまう。
「大丈夫ですかッ!?」
「あっ・・・あぁ。鎧がなければ危なかった・・・。しかし、なんだあれは?何故あのようなモンスターが突然・・・」
「分かりません。ただ、大穴にいたモンスター達よりも数倍強いですよ、アレ・・・」
想像以上に強力だったモンスターに、手も足も出ないまま押し返されてしまう二人。その間にも、何人もの護衛の者達が立ち向かっていたが、まるで歯が立たない。
そして、無類の強さを振るうモンスターに、とある変化が訪れる。
ただでさえ手のつけられなかったモンスターが、突然もがき苦しむような様子を見せる。その直後、身体にあった人の口の一つから、新たにもう一本の腕が出現した。
強靭な腕を三本携えたモンスターは更に勢いを増し、それぞれの腕に奪い取った剣を握り締め、一層手のつけられない状態へとなってしまう。
「戻って他の冒険者達に協力を仰ぎますか?」
「いや、恐らく向こうは向こうでそろそろモンスターの相手をする時間だ。ここは我々でなんとかするしかない・・・。彼らと協力し、何とかこの窮地を乗り越えるぞッ!」
ここに来たのはあくまで、ツクヨとルーカスの都合。それに彼らを巻き込む訳にもいかず、そんなことをすれば本来の目的である防衛のクエスト自体を疎かにしてしまう、
ルーカスの言う通り、ここは現場の護衛隊と協力し、この突然現れたモンスターを討伐する他ない。覚悟を決めた二人は、再び剣を握り締める。
すると、その会話の中で撤去した機材や鉄骨の修復や調査を行う部隊が派遣されているという話を聞き、ツクヨはこの防衛クエストを自ら指揮し同行している、ギルドマスターのルーカスの元へ向かい、その話の事について尋ねた。
「ルーカスさん、少しいいですか?」
「ツクヨ化、どうしたんだ?改まって」
撤去作業を行う業者を待っていた彼も、拠点のテントの中で時間を持て余していた。これは丁度いい時間潰しになると、ツクヨは先ほど聞いた話をルーカスに尋ねる。
彼はそれをツクヨの口から聞き、まるで思い出したかのような反応をすると、時間があるなら紹介すると言ってくれた。
折角ならばとツクヨは彼にお願いし、派遣された調査隊のいるテントへと向かう。拠点から少し離れた場所に設けられているようで、二人は拠点を離れると徒歩で現地へと向かった。
道中、他の冒険者とも上手くやっているツクヨに、ルーカスは部隊の様子や冒険者同士で上手くやっているかなど、クエストをこなす上で大事になってくるという身内の様子を伺う。
実際、彼の元に集められた冒険者達は、それぞれ癖はあるものの大きな問題やいざこざもなく上手くやっている方なのではないかと、ツクヨは彼らの様子を思い浮かべながら話した。
ギルドの事やクエストのことなどを話している内に、目的のテントのある拠点へと辿り着く。
と、同時に突然テントの中が光だし、外にいた他の研究者らしき人や護衛の者と思われる人物達が慌ただしく動き出す。
その様子を見て、思わず顔を見合わせたツクヨとルーカスは急ぎテントの方へ駆け寄ると、何故かテントの中から突如モンスターが飛び出してきたのだ。
モンスターは入り口の方へ駆け寄ってきていた護衛の者を吹き飛ばし外へ出てくると、雄叫びをあげて暴れ出した。
その容姿は、大穴から生まれるアンデッドモンスターを彷彿とさせる不気味な見た目をしており、首のない人型の全体像に身体のあちこちに人の口のようなものが浮き上がり、それぞれ声にならない言葉を口にしている。
「これは一体、どういう事!?」
「わからん!先ずはあのモンスターを仕留める。いくぞ!ツクヨ」
集まり出す護衛の者達を次々に振り払うモンスターは、落ちていた大剣を拾い上げるとまるで片手剣のように軽々と振り回し、より手を付けられなくなってしまう。
危うく斬られそうになる、逃げ遅れた研究員の前に間一髪間に合ったツクヨ。だが、鍔迫り合いをする中で、そのモンスターの怪力に徐々に押され始めてしまう。
「くッ・・・!大穴のモンスターより、数段強いぞ・・・これ!」
苦戦するツクヨに、少し遅れて参戦したルーカスは大きく飛び上がり、上空からその大きな剣を豪快に振り下ろす。
ルーカスの攻撃は見事、モンスターの身体に命中する。しかし、モンスターを斬りつけたルーカスの剣からは、想像とはまるで違った音が周囲へ鳴り響く。
彼の剣が勢いよくモンスターの身体に命中すると、まるで金属を強く打ちつけたかのような鈍い金属音が響き渡ったのだ。
「うッ・・・!?」
肉を断つつもりで振り下ろした剣を握る手に、思わず握っていた手を離してしまいそうになる痺れが走る。
鍔迫り合いをしていたツクヨを弾き飛ばし、痺れに力の弱まるルーカスへ向けて、モンスターは強烈な回し蹴りを見舞う。
モンスターの攻撃を真面に喰らってしまったルーカスは、そのまま大きくツクヨと同じ方向へ吹き飛ばされてしまう。
「大丈夫ですかッ!?」
「あっ・・・あぁ。鎧がなければ危なかった・・・。しかし、なんだあれは?何故あのようなモンスターが突然・・・」
「分かりません。ただ、大穴にいたモンスター達よりも数倍強いですよ、アレ・・・」
想像以上に強力だったモンスターに、手も足も出ないまま押し返されてしまう二人。その間にも、何人もの護衛の者達が立ち向かっていたが、まるで歯が立たない。
そして、無類の強さを振るうモンスターに、とある変化が訪れる。
ただでさえ手のつけられなかったモンスターが、突然もがき苦しむような様子を見せる。その直後、身体にあった人の口の一つから、新たにもう一本の腕が出現した。
強靭な腕を三本携えたモンスターは更に勢いを増し、それぞれの腕に奪い取った剣を握り締め、一層手のつけられない状態へとなってしまう。
「戻って他の冒険者達に協力を仰ぎますか?」
「いや、恐らく向こうは向こうでそろそろモンスターの相手をする時間だ。ここは我々でなんとかするしかない・・・。彼らと協力し、何とかこの窮地を乗り越えるぞッ!」
ここに来たのはあくまで、ツクヨとルーカスの都合。それに彼らを巻き込む訳にもいかず、そんなことをすれば本来の目的である防衛のクエスト自体を疎かにしてしまう、
ルーカスの言う通り、ここは現場の護衛隊と協力し、この突然現れたモンスターを討伐する他ない。覚悟を決めた二人は、再び剣を握り締める。
0
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…


魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる