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神代 コウ

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雨の中の隠れんぼ

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 雨の降るオルレラの街。人が居なくなってしまう怪異に巻き込まれているツバキは、凍える程の寒気に苛まれながらも、漸くこの街で見つけた自分以外の存在を追いかけた。

 その末に辿り着いた建物で、黒いレインコートを渡される。それはツバキを襲っていた寒気を抑える効果があり、真面に動けなかった雨の街の中でも、自由に動ける不思議な代物だった。

 コートをツバキに渡したのは、同じく様々な色のレインコートに身を包んだ、言語に違和感を残す子供達だった。

 他に現状について手掛かりのなかったツバキは、コートをくれた子供達を探すべく、雨の降り頻る誰もいないオルレラの街を探して周り、一人目の子供をとある民家で追い詰める。

 言葉が伝わっているのかも分からぬ様子の子供に、街がどうなってしまったのかを尋ねようとしたところ、子供の被っていたフードが取れてしまう。

 すると、レインコートを着ていた子供の中身は半透明だったのだ。光に晒された子供の姿は、光の砂となって消えてしまい、ツバキの問いに対し新たな謎を残したまま居なくなってしまった。

 子供のいなくなったその場に、彼が着ていた赤いレインコートが虚しく残される。ツバキはそれを拾い上げ、他の子供達を探しに、再び雨の降るオルレラの街へと出て行った。

 「先生・・・?帰りたい場所を忘れるなって・・・。俺、どうなっちまったんだよ・・・」

 ツバキの前で消えた赤いレインコートを着ていた少年が残した言葉。今はそれだけが、ツバキに与えられた情報だけが現状を把握する為のヒントであり、ミア達の元へ戻る為の手掛かりだった。

 他のレインコートを着た子供達も、恐らく何かを知っているのだろう。だが、最初の少年のように、彼らはコートを脱ぐと消えてしまうのかも知れない。

 しかし、コートを脱ぐことでしか彼らと言葉を交わす術が、現状見当たらないのも事実。彼らは会話が出来ないものの、単語だけで何とか思いを伝えようと表現している。

 何とか彼らを消すことなく会話をする方法はないか。このままでは、次に子供を見つけてもまた同じ結果になり兼ねない。

 消えてしまった少年がどこへ行ってしまったのかは分からない。もしかしたら死んだのではなく、何処かへ戻っていった可能性だってある。その証拠に、少年は最初、“戻らないと“と言っていた。

 「消えたのは死んだんじゃなくて、何処かへ戻ったのか・・・?」

 少年が消えてしまった事に自責の念を抱いていたツバキは、落ち込んでいてもしょうがないと、必死に可能性という名の理由を探し、気持ちを保とうとしていた。

 目的もなく雨の降る街中を歩いていると、暫く姿を見なかった子供達の足跡らしきものが、土に残されているのに気がつく。

 「これは・・・」

 足跡を目線で追って顔を上げると、そこにはミア達とオルレラの街に来た時には目に付かなかった、大きな建物が建っていた。

 そこは他の建物と違い、民家や屋敷といった外観ではなく、何かの施設のようなものだった。これだけ大きな建物の中で子供達を探すのは骨が折れそうだと思いつつも、何かの施設であれば手掛かりとなる物が見つかるかもしれない。

 期待を持ちつつも、ツバキはフードを深く被り建物の中へと足を踏み入れていく。

 入り口は自動ドアだったのだろうが、動力が切れているようで今は動いていない。僅かな隙間に身体を通して入り込むと、中は真っ暗で外の雨の音も届かぬ程の静けさに覆われていた。

 「マジか・・・。こんな中探すのか?・・・こ、怖くねぇぞ・・・怖くねぇぞッ・・・!」

 施設内は、言うなれば真っ暗な廃墟の病院とも同じ雰囲気を醸し出している。ツバキの呼吸や足音だけが、異様なほど大きな音で内部に響いているように感じる。

 自分の居場所を知らせながら進むようで、もし何かが潜んでいたら一方的に感知される不利な状況。不気味な雰囲気が、ツバキの脳内で嫌な想像ばかりさせる。

 静まりかえる建物内を隈なく探す為、先ずは一階の部屋を一つ一つ巡って行く。最初に入ったのはカウンターの奥にある事務室だろうか。荒らされたように幾つかの書類やファイルが、床に散乱している。

 埃を被ったファイルを持ち上げ、表を手で払うとそこから見えてきた文字をツバキは口にした。

 「・・・オルレラ・・・研究所・・・?」

 この時のツバキはまだ知らないが、彼が辿り着いたこの施設こそ、ミアの探すジャンク屋で見た映像に映っていた研究施設だった。
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