895 / 1,646
街の外でのクエスト
しおりを挟む
先にエディ邸を出て行ったミアを追うように、ツクヨも先日お世話になっていたギルドへ向かおうとしていた。使用人の人の見送りを受け玄関へと向かうと、ふと壁に掛けられた写真に目がいった。
そこには大人の人が二人と、その間に挟まれるように小さな女の子が一人写っていた。恐らく記念日にでも撮った家族写真だろう。
だが、この屋敷を訪れて一日経つが、写真に映る女の子にツクヨ達は一度も会っていなかった事に気がつく。少し奇妙に思ったツクヨは、出掛ける前に使用人の男に、写真に映る少女について尋ねた。
「あの・・・この写真の女の子って?」
「こちらの方は、ローヴェン様のご息女で名を“アン“様と申します。今はパウラ様のご実家の方に預けられていらっしゃいます」
「なるほど、それで屋敷にいても見かけなかったんですね。ありがとうございます。では行ってきますね」
ツクヨの抱いた疑問はすぐに解消した。彼が心配するようなことではなく、如何やら事情があって今はいないだけだった様だ。
使用人に会釈をしてエディ邸を後にしたツクヨは、その足でオルレラのギルドへと向かう。朝食の時にエディが言っていた、ギルドマスターであるルーカスの力を借りたい事とは一体どんなことなのだろうか。
道のりはそれ程長くない。ギルドの建物はエディ邸からも見える位置にあり、街の中でも一際目立つ外装をしている。
その大きな建物の入り口からは、多くの人の出入りが確認できる。今日もまた、クエストを受けに来ている冒険者や街の人がいるのだろう。ツクヨもその流れに乗って、意気揚々とギルドへと赴く。
賑やかなロビーには、様々なクラスの冒険者がおり、ツクヨ達と同じくパーティを組んでいる人達が多くいる。
その幾つもあるパーティの中の一つに、ギルドマスターであるルーカスのいる大人数のパーティがあった。エディが言っていたこともあり、ツクヨは真っ直ぐ彼の元へと向かった。
「おはようございます、ルーカスさん」
「おぉ!ツクヨ君、来てくれたか」
「はい、エディさんから話は伺っています。何かあったんですか?」
如何やらギルド宛に、オルレラの街の近くに出来た大穴の整地依頼がきている様だった。近くにはモンスターもおり、作業を行おうにも邪魔が入って進まないのだという。
そこで多くの人が訪れるオルレラの街のギルドに依頼が来たのだ。作業自体は重機で行うようで、その間モンスターを近づけないようにして欲しいのだという。
「大穴?前からあったものなんですか?」
「いや、ここ最近出来たものらしい。それも、その穴の中にはすごい量の鉄骨や機材があったらしい」
「鉄骨・・・?昔そこに、何か建物があったと言うことですか?」
「いや・・・そんな記憶は無いが・・・。我々にも一体どういう事なのかまだ分からないのだ。これから調査を兼ねた作業の防衛を行う。広範囲での防衛になるだろう。一人で戦闘を行う場面も多くなることが予想される。準備はしっかり整えておいてくれ」
ツクヨはルーカスに言われた通り、ギルドのカウンターの一角にあるショップでアイテムや道具を買い足す。そしてルーカスのいるパーティの元へ戻ると、全員が揃い準備が整った後に、大所帯での移動が始まった。
気さくな性格をしていたツクヨは、目的地に着くまでの間に様々な冒険者達から話を聞いていた。何処から来たのか、何処を目指しているのか。それに、オルレラの街での事や、これから向かう突然出来たという大穴についても聞いてみた。
しかし、目新しい情報はなく、新しく聞けたことと言えばオルレラの街周辺の国や都市などの、名前や特徴の情報くらいなものだった。
再び妙に思ったのは、大穴について誰も知らなかったことや、穴にあると言う鉄骨や機材が何に使われていたのか、嘗てそこに何かあったかなど、その一切の情報がなかった事だった。
そうこうしている内に、一行は目的の場所へと到着する。現場は話に聞いていた以上に、広範囲にわたる大穴で多く古びた鉄骨などが散乱している、放っておくには危険な場所だった。
他の参加者達もツクヨと同じことを思っていたのだろう。現場に集まった冒険者達は、目の前に広がる光景にざわついていた。
「これは・・・ちょっと想像していた以上だな・・・」
一行がその光景に驚いていると、それを待っていたかのように、大穴の隙間や上空にモンスターがちらほらと集まり出して来る。
「さて、まずは露払いだ!みんな!力を貸してくれッ!」
ルーカスの号令で、ギルドに集まった冒険者達は一斉に攻撃を始める。空を飛んでいるモンスターには弓矢や銃、魔法といった遠距離攻撃を得意とするクラスの冒険者達が攻撃を開始し、地上では穴から現れたモンスター達を近距離クラスの冒険者達が相手にする。
空には羽を持つ小型のドラゴンや鳥類のモンスターがおり、穴から現れたのはアンデッド系のモンスター達だった。
「スケルトン!?何故穴から人型のモンスターが・・・?」
「考えるのは後にした方がいいぜ?兄ちゃん。俺達は討伐したモンスターの数で報酬が変わるんだ。うかうかしてっと、一体も倒せずに終わっちまうぞ?」
考え事をしていたツクヨに、近くにいた冒険者の男が発破をかける。男の言う通り、報酬が欲しいのなら誰よりも多くモンスターを倒す必要がある。それに、相手の様子を見る限り、上空も地上も苦戦している様子はない。
この分だと、思ってる以上に早く討伐が終わってしまいそうだった。
「まぁ、作業は暗くなるまでの間だ。時間はたっぷりある。増援も呼んであるから、無理に戦わずに後半へ温存っしておくのも有りだろう」
「ふふ、手ぶらで帰ったらエディさんに申し訳が立ちませんよ。折角来たんだし、稼がせて貰いますよ!」
ギルドマスターのルーカスにも煽られ、ツクヨも考えるのをやめて今は請け負った任務に集中することにした。
そこには大人の人が二人と、その間に挟まれるように小さな女の子が一人写っていた。恐らく記念日にでも撮った家族写真だろう。
だが、この屋敷を訪れて一日経つが、写真に映る女の子にツクヨ達は一度も会っていなかった事に気がつく。少し奇妙に思ったツクヨは、出掛ける前に使用人の男に、写真に映る少女について尋ねた。
「あの・・・この写真の女の子って?」
「こちらの方は、ローヴェン様のご息女で名を“アン“様と申します。今はパウラ様のご実家の方に預けられていらっしゃいます」
「なるほど、それで屋敷にいても見かけなかったんですね。ありがとうございます。では行ってきますね」
ツクヨの抱いた疑問はすぐに解消した。彼が心配するようなことではなく、如何やら事情があって今はいないだけだった様だ。
使用人に会釈をしてエディ邸を後にしたツクヨは、その足でオルレラのギルドへと向かう。朝食の時にエディが言っていた、ギルドマスターであるルーカスの力を借りたい事とは一体どんなことなのだろうか。
道のりはそれ程長くない。ギルドの建物はエディ邸からも見える位置にあり、街の中でも一際目立つ外装をしている。
その大きな建物の入り口からは、多くの人の出入りが確認できる。今日もまた、クエストを受けに来ている冒険者や街の人がいるのだろう。ツクヨもその流れに乗って、意気揚々とギルドへと赴く。
賑やかなロビーには、様々なクラスの冒険者がおり、ツクヨ達と同じくパーティを組んでいる人達が多くいる。
その幾つもあるパーティの中の一つに、ギルドマスターであるルーカスのいる大人数のパーティがあった。エディが言っていたこともあり、ツクヨは真っ直ぐ彼の元へと向かった。
「おはようございます、ルーカスさん」
「おぉ!ツクヨ君、来てくれたか」
「はい、エディさんから話は伺っています。何かあったんですか?」
如何やらギルド宛に、オルレラの街の近くに出来た大穴の整地依頼がきている様だった。近くにはモンスターもおり、作業を行おうにも邪魔が入って進まないのだという。
そこで多くの人が訪れるオルレラの街のギルドに依頼が来たのだ。作業自体は重機で行うようで、その間モンスターを近づけないようにして欲しいのだという。
「大穴?前からあったものなんですか?」
「いや、ここ最近出来たものらしい。それも、その穴の中にはすごい量の鉄骨や機材があったらしい」
「鉄骨・・・?昔そこに、何か建物があったと言うことですか?」
「いや・・・そんな記憶は無いが・・・。我々にも一体どういう事なのかまだ分からないのだ。これから調査を兼ねた作業の防衛を行う。広範囲での防衛になるだろう。一人で戦闘を行う場面も多くなることが予想される。準備はしっかり整えておいてくれ」
ツクヨはルーカスに言われた通り、ギルドのカウンターの一角にあるショップでアイテムや道具を買い足す。そしてルーカスのいるパーティの元へ戻ると、全員が揃い準備が整った後に、大所帯での移動が始まった。
気さくな性格をしていたツクヨは、目的地に着くまでの間に様々な冒険者達から話を聞いていた。何処から来たのか、何処を目指しているのか。それに、オルレラの街での事や、これから向かう突然出来たという大穴についても聞いてみた。
しかし、目新しい情報はなく、新しく聞けたことと言えばオルレラの街周辺の国や都市などの、名前や特徴の情報くらいなものだった。
再び妙に思ったのは、大穴について誰も知らなかったことや、穴にあると言う鉄骨や機材が何に使われていたのか、嘗てそこに何かあったかなど、その一切の情報がなかった事だった。
そうこうしている内に、一行は目的の場所へと到着する。現場は話に聞いていた以上に、広範囲にわたる大穴で多く古びた鉄骨などが散乱している、放っておくには危険な場所だった。
他の参加者達もツクヨと同じことを思っていたのだろう。現場に集まった冒険者達は、目の前に広がる光景にざわついていた。
「これは・・・ちょっと想像していた以上だな・・・」
一行がその光景に驚いていると、それを待っていたかのように、大穴の隙間や上空にモンスターがちらほらと集まり出して来る。
「さて、まずは露払いだ!みんな!力を貸してくれッ!」
ルーカスの号令で、ギルドに集まった冒険者達は一斉に攻撃を始める。空を飛んでいるモンスターには弓矢や銃、魔法といった遠距離攻撃を得意とするクラスの冒険者達が攻撃を開始し、地上では穴から現れたモンスター達を近距離クラスの冒険者達が相手にする。
空には羽を持つ小型のドラゴンや鳥類のモンスターがおり、穴から現れたのはアンデッド系のモンスター達だった。
「スケルトン!?何故穴から人型のモンスターが・・・?」
「考えるのは後にした方がいいぜ?兄ちゃん。俺達は討伐したモンスターの数で報酬が変わるんだ。うかうかしてっと、一体も倒せずに終わっちまうぞ?」
考え事をしていたツクヨに、近くにいた冒険者の男が発破をかける。男の言う通り、報酬が欲しいのなら誰よりも多くモンスターを倒す必要がある。それに、相手の様子を見る限り、上空も地上も苦戦している様子はない。
この分だと、思ってる以上に早く討伐が終わってしまいそうだった。
「まぁ、作業は暗くなるまでの間だ。時間はたっぷりある。増援も呼んであるから、無理に戦わずに後半へ温存っしておくのも有りだろう」
「ふふ、手ぶらで帰ったらエディさんに申し訳が立ちませんよ。折角来たんだし、稼がせて貰いますよ!」
ギルドマスターのルーカスにも煽られ、ツクヨも考えるのをやめて今は請け負った任務に集中することにした。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる