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先生と取引
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人形に記録されていた映像を見て、それが嘗ての研究施設にあった出来事に関連するものだと悟った二人は、他にも映像は残されていないかと、メモリーカードを調べる。
挿入口に合う一本目のメモリーカードのおかげで、同じサイズの物を探すのにそれ程時間は掛からなかった。
イクセンが持って来た数々のメモリーカードの中に見つかった同じサイズのものは、これ以外にあと二つだけ見つかった。
しかし、一体誰が何の目的でこんなものを人形に仕込み、録画していたのだろうか。それも、その人形を持っていたのは、カメラの視点と人形を持っていた人物の声から、小さな女の子であることが推測できる。
そして見つかったメモリーカードの内、一つを先程の人形に差し込み、再び映像を確認する。明らかに裏がありそうな記録に、二人の興味は一気に惹かれていった。それこそ、初めは別の作業をしていたイクセンが、すっかり自分の作業を忘れて夢中になる程だ。
彼もまた、自分が拠点としている廃墟の過去に興味があったのだろう。
数秒ほどの砂嵐がモニターに映し出された後、今度は何処かに人形が置かれているかのように視点が固定されている映像が映し出された。
一見そこには誰も映っておらず、一本目の映像にあった少女に“先生“と呼ばれていた人物とよく似た声と、それとはまた別の男の声が聞こえてきた。
「・・・約束の・・・は、渡しただろ。もう私に構わないでくれ!」
「そんなこと言うなよ、先生。それに今日は仕事で来たんじゃねぇ。俺としても、今後先生とは“取引“をしていきてぇと思ってるんだ」
「何をのうのうとッ・・・!こんな事になるなら、私は協力などしなかったッ・・・!」
何やら込み入った話をする、先生と呼ばれる男と謎の人物。この段階ではどんな話か想像もつかないが、謎の人物が言う“取引“とは、先生と呼ばれる人物にとって、想定していなかった結果をもたらした様だ。
すると、それまで視点が固定されていた映像が突然動き出し、何者かにカメラが内蔵された人形が持ち上げられたように、激しく視点が移動する。
その一瞬、人形を手にした人物と思われる男の顔が僅かに映り込んだ。黒装束に身を包んだその男の目の周りには、不気味なほどに濃く浮き出る隈が印象的だった。
長い前髪で片方の目を覆っていたその男は、人形にカメラが組み込まれているのを知ってか知らずか、話の合間に人形を調べているかのような素振りを見せる。
「これ・・・子供達のかい?」
「さっ触るな!」
「おいおい、そんなに怒るなよ。安心しな。俺が先生と取引してぇって事に、ガキは関係ねぇからよ」
そう言うと、男は人形を先生と呼ばれる人物の方へ投げたのか、宙を舞う視点を経た後に、カメラは大人の胸のあたりの高さで止まった。
「・・・それで私が協力するとでも・・・?」
暫くの沈黙の後、怪しげな男は突然落ち着いた真面目な声色で、先生t呼ばれる人物の問いに答える。
「・・・するさ。きっとな」
二つ目の映像と音声はそこで途絶えた。一本目の映像とは打って変わり、何やら穏やかではない会話を繰り広げる二人の人物が中心となっていた。
先生と呼ばれる人物は、会話の内容からも子供達を心配するような優しさのある人物のように思える。それは最初の映像にあった少女との会話からも伺える。
「この先生ってのは、何者なんだ?アンタは心当たりとかないのか?」
ミアは黙って映像の内容について考えている様子のイクセンに問いかける。
「いや・・・。聞いたこともない。俺がこの街に来てこの廃墟を利用させてもらい始めた頃から、この施設についての記録や書類は勿論、話すら誰も詳しくは知らないんだ・・・」
イクセンも元々は、別の街の移住者であり、ミア達と同様に快く受け入れてくれたオルレラの街の人々。自分から空き地や住めるスペースはないかと尋ねたところ、姥捨山だが誰も住んでいないというこの施設の跡地を紹介されたのだという。
初めは特に気になることもなかったが、ある日ここが何の目的で使われていた施設なのか、街の人々に聞いてみたことがあるのだそうだ。
しかし、街の人々も詳しくは知らないようで、ただ街の近代化を目的に作られた研究施設という情報しか入ってこなかった。何故研究は中断されたのか、何故施設がこんなにもボロボロなのか。
それについて知る人物は誰もいない。それ程昔に行われていた研究なのか、それなら何故、その研究資料が全くと言っていいほど残されていないのかも疑問になる。
残された最後のメモリーを調べようとしたところで、何者かがイクセンのジャンク屋を訪れる。
「イクセン!いるのか?ちょっと見てもらいたい物があるんだ」
二人は咄嗟に、人形とモニターを隠した。街の人々が本当に何も知らないのか、それとも知っていて隠しているのか分からない以上、あまりこの事を口外するのは良くないと思ってのことだった。
「なぁ、アンタ。これはここだけの秘密にしてくれないか?もう少し詳しい事が分かるまで調べてみたいんだ・・・」
「“ミア“だ・・・」
「え?」
「アタシの名前。どうやら客が来たみたいだから、修理はまた今度にするよ」
施設に起きた出来事について、二人はそこで知り得た情報を心の内に秘め、共に調べる事を約束する。どちらかが解明を進めてしまうよりも、足並みを揃え得た方がいいだろう。
それに、ミアには現状それ程重要視する様な内容とも思えなかった。だが、この街に来てから頭のどこかで引っかかる違和感を感じていたのも事実であり、より何かを知ることで解決の糸口になるのではないかと考えていた。
挿入口に合う一本目のメモリーカードのおかげで、同じサイズの物を探すのにそれ程時間は掛からなかった。
イクセンが持って来た数々のメモリーカードの中に見つかった同じサイズのものは、これ以外にあと二つだけ見つかった。
しかし、一体誰が何の目的でこんなものを人形に仕込み、録画していたのだろうか。それも、その人形を持っていたのは、カメラの視点と人形を持っていた人物の声から、小さな女の子であることが推測できる。
そして見つかったメモリーカードの内、一つを先程の人形に差し込み、再び映像を確認する。明らかに裏がありそうな記録に、二人の興味は一気に惹かれていった。それこそ、初めは別の作業をしていたイクセンが、すっかり自分の作業を忘れて夢中になる程だ。
彼もまた、自分が拠点としている廃墟の過去に興味があったのだろう。
数秒ほどの砂嵐がモニターに映し出された後、今度は何処かに人形が置かれているかのように視点が固定されている映像が映し出された。
一見そこには誰も映っておらず、一本目の映像にあった少女に“先生“と呼ばれていた人物とよく似た声と、それとはまた別の男の声が聞こえてきた。
「・・・約束の・・・は、渡しただろ。もう私に構わないでくれ!」
「そんなこと言うなよ、先生。それに今日は仕事で来たんじゃねぇ。俺としても、今後先生とは“取引“をしていきてぇと思ってるんだ」
「何をのうのうとッ・・・!こんな事になるなら、私は協力などしなかったッ・・・!」
何やら込み入った話をする、先生と呼ばれる男と謎の人物。この段階ではどんな話か想像もつかないが、謎の人物が言う“取引“とは、先生と呼ばれる人物にとって、想定していなかった結果をもたらした様だ。
すると、それまで視点が固定されていた映像が突然動き出し、何者かにカメラが内蔵された人形が持ち上げられたように、激しく視点が移動する。
その一瞬、人形を手にした人物と思われる男の顔が僅かに映り込んだ。黒装束に身を包んだその男の目の周りには、不気味なほどに濃く浮き出る隈が印象的だった。
長い前髪で片方の目を覆っていたその男は、人形にカメラが組み込まれているのを知ってか知らずか、話の合間に人形を調べているかのような素振りを見せる。
「これ・・・子供達のかい?」
「さっ触るな!」
「おいおい、そんなに怒るなよ。安心しな。俺が先生と取引してぇって事に、ガキは関係ねぇからよ」
そう言うと、男は人形を先生と呼ばれる人物の方へ投げたのか、宙を舞う視点を経た後に、カメラは大人の胸のあたりの高さで止まった。
「・・・それで私が協力するとでも・・・?」
暫くの沈黙の後、怪しげな男は突然落ち着いた真面目な声色で、先生t呼ばれる人物の問いに答える。
「・・・するさ。きっとな」
二つ目の映像と音声はそこで途絶えた。一本目の映像とは打って変わり、何やら穏やかではない会話を繰り広げる二人の人物が中心となっていた。
先生と呼ばれる人物は、会話の内容からも子供達を心配するような優しさのある人物のように思える。それは最初の映像にあった少女との会話からも伺える。
「この先生ってのは、何者なんだ?アンタは心当たりとかないのか?」
ミアは黙って映像の内容について考えている様子のイクセンに問いかける。
「いや・・・。聞いたこともない。俺がこの街に来てこの廃墟を利用させてもらい始めた頃から、この施設についての記録や書類は勿論、話すら誰も詳しくは知らないんだ・・・」
イクセンも元々は、別の街の移住者であり、ミア達と同様に快く受け入れてくれたオルレラの街の人々。自分から空き地や住めるスペースはないかと尋ねたところ、姥捨山だが誰も住んでいないというこの施設の跡地を紹介されたのだという。
初めは特に気になることもなかったが、ある日ここが何の目的で使われていた施設なのか、街の人々に聞いてみたことがあるのだそうだ。
しかし、街の人々も詳しくは知らないようで、ただ街の近代化を目的に作られた研究施設という情報しか入ってこなかった。何故研究は中断されたのか、何故施設がこんなにもボロボロなのか。
それについて知る人物は誰もいない。それ程昔に行われていた研究なのか、それなら何故、その研究資料が全くと言っていいほど残されていないのかも疑問になる。
残された最後のメモリーを調べようとしたところで、何者かがイクセンのジャンク屋を訪れる。
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二人は咄嗟に、人形とモニターを隠した。街の人々が本当に何も知らないのか、それとも知っていて隠しているのか分からない以上、あまりこの事を口外するのは良くないと思ってのことだった。
「なぁ、アンタ。これはここだけの秘密にしてくれないか?もう少し詳しい事が分かるまで調べてみたいんだ・・・」
「“ミア“だ・・・」
「え?」
「アタシの名前。どうやら客が来たみたいだから、修理はまた今度にするよ」
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それに、ミアには現状それ程重要視する様な内容とも思えなかった。だが、この街に来てから頭のどこかで引っかかる違和感を感じていたのも事実であり、より何かを知ることで解決の糸口になるのではないかと考えていた。
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