860 / 1,646
連携する獣達
しおりを挟む
彼らとの戦闘の影で成長を続けていた変異種が、自分の番が来たかと言わんばかりに峰闇らの前へと躍り出る。姿形こそ変わらぬものの、その身に纏う雰囲気はこれまでの個体とは違うということを彼らも僅かに感じていた。
「妙だな・・・」
「え?どうしたんですか?」
「アイツ、他のと違って妙に間合いを気にしているみたいな動きをしてる・・・」
変異体との戦闘経験のないマキナには、その違いが分からなかった。無理もない話だ。現実世界での戦闘に慣れている峰闇ですら、断言出来ないほどの僅かな空気感の違いでしかない。
嫌な予感を感じていた峰闇に変わり、マキナが別の間合いから銃による攻撃を仕掛けてみる。峰闇が向く先にいる個体へ、銃口を構える。
しかし、その様子を見ていた変異体は突如彼に向かって、左右に揺さぶりを掛けながら駆けていく。
「なッ!?コイツっ・・・!」
「おいッ!落ち着け!そいつはッ・・・!」
マキナはこれまでよりも早く、そして計画的に動くモンスターに惑わされ、何発も銃弾を撃ち込む。だがそれらが命中することはなく、そして遂には目の前まで接近を許してしまった。
向けられた血に飢える獣の眼に、血の気の引いた表情を浮かべるマキナ。すると、突然彼の身体が横へ押し出される。変異体の攻撃をくらいそうになっているところへ、側にいた峰闇が自らが変わり身にならんと体当たりをしていた。
押し出されたマキナは、そのまま床に倒れる。何が起きたのかと顔を上げる彼が見たのは、変異体の鋭い爪を剣で受け止める峰闇の後ろ姿。
彼の剣が変異体の攻撃を受け止めた衝撃で、辺りに残留していたイルの靄が吹き飛ばされていった。
「なっ何だよコイツ!他のと全然違うじゃないか!?」
二人の身に起きた異変に気がついたにぃなやケイルが、慌てて視線を向ける。影に隠れていた変異体達は、その一撃を皮切りに一斉に動き出す。
まだ残っている通常の個体らの間を縫うように駆け抜け、一箇所にまとまる彼らを四方八方から取り囲むようにして襲い掛かる。
包囲された彼らに逃げ道などなかった。だが、ここへ集まったのは彼らにとってそれが、生き残るための最善の行動だったからだ。その為ににぃなは、重傷の蒼空よりも先にケイルを回復させていた。
今こそその借りを返す時と、ケイルは変異体からの攻撃を防ぐ為の半球状のシールドを展開する。
突如現れた光の壁に、飛び掛かろうとしていた変異体達の攻撃が受け止められる。
しかし、峰闇が唯一攻撃を受け止めていた変異体だけは、ケイルの展開したシールドの内側に入り込んでいる。
連携を仕掛けてきた変異体だが、孤立してしまったモンスターに遅れをとる彼らではなかった。
一発の銃弾が、峰闇と競り合う変異体の身体を貫く。すると、身体に命中した箇所に何かの刻印のようなマークが付く。これはマキナのマーシナリーのクラススキルである、ウィークショットによるものだった。
弾自体には、銃弾としての威力しかないが、対象の命中した箇所に弱点部位を付与するスキルで、変異体に刻まれた刻印はそこが暫くの間、弱点部位に追加されたという可視化された目印となったのだ。
「さっきはビビっちまったがよぉ・・・。下手こいた分はきっちり自分の手で返すぜ!峰闇さん!」
「あぁ、分かってるッ!」
銃弾を受けて蹌踉めく変異体に、素早い踏み込みで急接近すると、紫黒のオーラを放つ剣でマキナの付与した弱点部位へ斬りかかる。
刃が触れる寸前、変異体の身体に異変が起きた。身体からパキパキと、湖に氷が張るような音が聞こえ出す。斬りつけようとしていた峰闇のみが、その変化に気がつく。
変異体は自らの身体を硬質化させようとしていたのだ。一体どこでそんなスキルを身につけたのかは分からないが、峰闇の自傷スキルによる火力と、マキナの弱点部位によるサポートにより、硬質化したところで防ぎ切れるものではなくなっていた。
通常の個体よりも大きなその身体は、剣の切り口から見事に裂け真っ二つになる。変異体の身体は血飛沫を上げながら、退治した通常個体と同じように消滅していった。
「今のは・・・」
峰闇がたった今見たことを他の者達に伝えようとしたところで、苦しそうな声色をしたケイルが口を開く。
「マズイッ・・・!抑えきれなッ・・・」
ケイルのその声と同時に、彼らを囲っていた半球状のシールドが、まるでガラスのように打ち砕かれてしまった。
病み上がりのケイルのスキルでは、パワーアップした変異体の複数による一斉攻撃を受け切れるだけの、耐久力のあるシールドを構成出来なかったようだ。
そして、シールドが破壊されたと同時に、まるでそれまで待機させられていたかのように、様子を見ていた通常個体のモンスター達が襲い掛かる。
それまでの野生生物のように、ただ向かってくるだけの通常個体とは違い、今回はまるで見計らっていたかのような動き。それを見たにぃなは、そこで初めて気がつくことになる。
これらが、シンと共にプレジャーフォレスで戦った時のモンスターと同じ、変異種である個体なのだということを。
「これ!変異種かもッ・・!」
「“変異種“!?何だ、そりゃぁ」
あくまで変異種という名称は、シン達がそう呼んでいるだけで、それを知らないケイルやマキナらには一体何の事を言っているのかが分からない。
しかし、変異体の一体を倒した峰闇には、うっすらと彼女の言う変異種が一体何を指す言葉なのか、気づき始めていた。
「妙だな・・・」
「え?どうしたんですか?」
「アイツ、他のと違って妙に間合いを気にしているみたいな動きをしてる・・・」
変異体との戦闘経験のないマキナには、その違いが分からなかった。無理もない話だ。現実世界での戦闘に慣れている峰闇ですら、断言出来ないほどの僅かな空気感の違いでしかない。
嫌な予感を感じていた峰闇に変わり、マキナが別の間合いから銃による攻撃を仕掛けてみる。峰闇が向く先にいる個体へ、銃口を構える。
しかし、その様子を見ていた変異体は突如彼に向かって、左右に揺さぶりを掛けながら駆けていく。
「なッ!?コイツっ・・・!」
「おいッ!落ち着け!そいつはッ・・・!」
マキナはこれまでよりも早く、そして計画的に動くモンスターに惑わされ、何発も銃弾を撃ち込む。だがそれらが命中することはなく、そして遂には目の前まで接近を許してしまった。
向けられた血に飢える獣の眼に、血の気の引いた表情を浮かべるマキナ。すると、突然彼の身体が横へ押し出される。変異体の攻撃をくらいそうになっているところへ、側にいた峰闇が自らが変わり身にならんと体当たりをしていた。
押し出されたマキナは、そのまま床に倒れる。何が起きたのかと顔を上げる彼が見たのは、変異体の鋭い爪を剣で受け止める峰闇の後ろ姿。
彼の剣が変異体の攻撃を受け止めた衝撃で、辺りに残留していたイルの靄が吹き飛ばされていった。
「なっ何だよコイツ!他のと全然違うじゃないか!?」
二人の身に起きた異変に気がついたにぃなやケイルが、慌てて視線を向ける。影に隠れていた変異体達は、その一撃を皮切りに一斉に動き出す。
まだ残っている通常の個体らの間を縫うように駆け抜け、一箇所にまとまる彼らを四方八方から取り囲むようにして襲い掛かる。
包囲された彼らに逃げ道などなかった。だが、ここへ集まったのは彼らにとってそれが、生き残るための最善の行動だったからだ。その為ににぃなは、重傷の蒼空よりも先にケイルを回復させていた。
今こそその借りを返す時と、ケイルは変異体からの攻撃を防ぐ為の半球状のシールドを展開する。
突如現れた光の壁に、飛び掛かろうとしていた変異体達の攻撃が受け止められる。
しかし、峰闇が唯一攻撃を受け止めていた変異体だけは、ケイルの展開したシールドの内側に入り込んでいる。
連携を仕掛けてきた変異体だが、孤立してしまったモンスターに遅れをとる彼らではなかった。
一発の銃弾が、峰闇と競り合う変異体の身体を貫く。すると、身体に命中した箇所に何かの刻印のようなマークが付く。これはマキナのマーシナリーのクラススキルである、ウィークショットによるものだった。
弾自体には、銃弾としての威力しかないが、対象の命中した箇所に弱点部位を付与するスキルで、変異体に刻まれた刻印はそこが暫くの間、弱点部位に追加されたという可視化された目印となったのだ。
「さっきはビビっちまったがよぉ・・・。下手こいた分はきっちり自分の手で返すぜ!峰闇さん!」
「あぁ、分かってるッ!」
銃弾を受けて蹌踉めく変異体に、素早い踏み込みで急接近すると、紫黒のオーラを放つ剣でマキナの付与した弱点部位へ斬りかかる。
刃が触れる寸前、変異体の身体に異変が起きた。身体からパキパキと、湖に氷が張るような音が聞こえ出す。斬りつけようとしていた峰闇のみが、その変化に気がつく。
変異体は自らの身体を硬質化させようとしていたのだ。一体どこでそんなスキルを身につけたのかは分からないが、峰闇の自傷スキルによる火力と、マキナの弱点部位によるサポートにより、硬質化したところで防ぎ切れるものではなくなっていた。
通常の個体よりも大きなその身体は、剣の切り口から見事に裂け真っ二つになる。変異体の身体は血飛沫を上げながら、退治した通常個体と同じように消滅していった。
「今のは・・・」
峰闇がたった今見たことを他の者達に伝えようとしたところで、苦しそうな声色をしたケイルが口を開く。
「マズイッ・・・!抑えきれなッ・・・」
ケイルのその声と同時に、彼らを囲っていた半球状のシールドが、まるでガラスのように打ち砕かれてしまった。
病み上がりのケイルのスキルでは、パワーアップした変異体の複数による一斉攻撃を受け切れるだけの、耐久力のあるシールドを構成出来なかったようだ。
そして、シールドが破壊されたと同時に、まるでそれまで待機させられていたかのように、様子を見ていた通常個体のモンスター達が襲い掛かる。
それまでの野生生物のように、ただ向かってくるだけの通常個体とは違い、今回はまるで見計らっていたかのような動き。それを見たにぃなは、そこで初めて気がつくことになる。
これらが、シンと共にプレジャーフォレスで戦った時のモンスターと同じ、変異種である個体なのだということを。
「これ!変異種かもッ・・!」
「“変異種“!?何だ、そりゃぁ」
あくまで変異種という名称は、シン達がそう呼んでいるだけで、それを知らないケイルやマキナらには一体何の事を言っているのかが分からない。
しかし、変異体の一体を倒した峰闇には、うっすらと彼女の言う変異種が一体何を指す言葉なのか、気づき始めていた。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる