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覚悟のバトン
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ケイルの導きより二人の元へ近づこうとするシンだったが、彼がステージに降り立つのを阻止するように、地上のモンスター達が飛び掛かろうとする。
やむを得ず上昇するシンは、何度か試みようとするも、まるでモンスター達で結託でもするかのように阻まれてしまう。
「クソッ・・・!駄目だ、近づけない・・・」
シンが中々降りて来られない様子を見ていたケイルが、何とかして天臣を彼の乗るMAROの式神に乗せてやれないものかと、思いを巡らせる。そこでふと、蒼空の戦っていた姿が思い浮かぶ。
彼があそこまでして戦って見せたその姿勢が、ケイルにある決断をさせた。彼は自身のスキルで纏える最大級の鎧を纏うと、モンスターにさえ押され始めてしまう程の弱った天臣を庇う。
「君は・・・。よさないか、私を庇っていてはッ・・・」
「庇ってるんじゃない!これは貴方への投資ですよ。今、彼の乗る仲間の式神に乗せますから、少し辛抱して下さい・・・!」
天臣に掛けていた防御力上昇のバフを解除するケイル。他人に魔力を割いているほど余裕のなかった彼は、暫くの間天臣には自分の身を守ることに集中してもらう。
その間にケイルは、自らのスキルで盾の足場をいくつか生成すると、天臣をその足場へと放り投げる。
「ッ・・・!?」
「急いで上がって下さいッ!下の方から解除していきます!これでモンスター共も上がれないでしょう」
「しかしこれではッ・・・!」
そう、天臣の言おうとしていた通り、これではケイルの元にほぼ全てのモンスターが群がることになる。
だが、これこそ彼の決断した覚悟だった。自分では、あの男を仕留めきる手立てがない。それに、イルとの因縁で言えば天臣の方が何として奴との決着を着けたいと思っている筈。
ケイルの言う投資とは、彼に全てを託し、彼らの敬愛するアイドル友紀を探し出し、救出してもらおうと考えたのだった。
「今はこうするしかねぇ・・・。頼みます、天臣さん!蒼空さんと俺達の代わりに、ユッキーを助けて下さいッ!」
彼は背を向けたまま、それ以上天臣の方を振り返ることはなかった。天臣は彼の覚悟に感謝しながら、彼の作り出した盾の足場を登っていく。登り終えた下の方の足場が、次第に消えていく。
最早後戻りは出来ない。そして、一番上の広く幅のとられた足場へ登ると、そこへMAROの式神に乗ったシンがやって来る。
「お待たせしました!・・・彼は?一緒には来ないんですか?」
「彼の殿無くして、ここまでは来れなかった・・・。行こう、奴の向かった先は私が覚えている。近くにまで行けば、気配も探れよう」
シンの手に引き上げられた天臣は、式神の背に跨るとケイルの作ってくれた架け橋となっていた足場の盾に目をやる。役目を終えた足場は、まるで砂漠の砂のようにサラサラと光の粒子となって消えていった。
ステージに残されたケイルの元に、周囲のモンスターが群がる。腕や足に噛みつかれながらも、蒼空の身体を庇うように自らが壁となって、全ての攻撃を一身に受け止め弾いていた。
「ケイルッ・・・!それに蒼空!?彼らも助けないとッ・・・!」
一人残ったように見えたケイルだったが、そのすぐ足元には彼に守られ倒れる蒼空の姿があった。すぐにでも彼らを助けようとするシンだったが、その腕を天臣がそっと掴んで止める。
「・・・行こう・・・。彼らの思いを無碍には出来ない・・・」
何も語ろうとしない天臣の様子から、シンは彼らの戦いから何かを引き継いできたであろうことを悟る。
シンも現実の世界やWoFの世界で、様々な者達との出会いと別れ、そして壮絶な戦いを乗り越えてきた。故に、天臣のその何処かやり切れない思いを押し殺しながらも、自分に課せられた使命を全うしようとする感情は理解できた。
それでも、全てを終わらせた後ですぐに二人の元へ戻ってくると誓いながら、二人は上昇し天臣の見たイルの逃げていった方角へ飛び去っていく。
やむを得ず上昇するシンは、何度か試みようとするも、まるでモンスター達で結託でもするかのように阻まれてしまう。
「クソッ・・・!駄目だ、近づけない・・・」
シンが中々降りて来られない様子を見ていたケイルが、何とかして天臣を彼の乗るMAROの式神に乗せてやれないものかと、思いを巡らせる。そこでふと、蒼空の戦っていた姿が思い浮かぶ。
彼があそこまでして戦って見せたその姿勢が、ケイルにある決断をさせた。彼は自身のスキルで纏える最大級の鎧を纏うと、モンスターにさえ押され始めてしまう程の弱った天臣を庇う。
「君は・・・。よさないか、私を庇っていてはッ・・・」
「庇ってるんじゃない!これは貴方への投資ですよ。今、彼の乗る仲間の式神に乗せますから、少し辛抱して下さい・・・!」
天臣に掛けていた防御力上昇のバフを解除するケイル。他人に魔力を割いているほど余裕のなかった彼は、暫くの間天臣には自分の身を守ることに集中してもらう。
その間にケイルは、自らのスキルで盾の足場をいくつか生成すると、天臣をその足場へと放り投げる。
「ッ・・・!?」
「急いで上がって下さいッ!下の方から解除していきます!これでモンスター共も上がれないでしょう」
「しかしこれではッ・・・!」
そう、天臣の言おうとしていた通り、これではケイルの元にほぼ全てのモンスターが群がることになる。
だが、これこそ彼の決断した覚悟だった。自分では、あの男を仕留めきる手立てがない。それに、イルとの因縁で言えば天臣の方が何として奴との決着を着けたいと思っている筈。
ケイルの言う投資とは、彼に全てを託し、彼らの敬愛するアイドル友紀を探し出し、救出してもらおうと考えたのだった。
「今はこうするしかねぇ・・・。頼みます、天臣さん!蒼空さんと俺達の代わりに、ユッキーを助けて下さいッ!」
彼は背を向けたまま、それ以上天臣の方を振り返ることはなかった。天臣は彼の覚悟に感謝しながら、彼の作り出した盾の足場を登っていく。登り終えた下の方の足場が、次第に消えていく。
最早後戻りは出来ない。そして、一番上の広く幅のとられた足場へ登ると、そこへMAROの式神に乗ったシンがやって来る。
「お待たせしました!・・・彼は?一緒には来ないんですか?」
「彼の殿無くして、ここまでは来れなかった・・・。行こう、奴の向かった先は私が覚えている。近くにまで行けば、気配も探れよう」
シンの手に引き上げられた天臣は、式神の背に跨るとケイルの作ってくれた架け橋となっていた足場の盾に目をやる。役目を終えた足場は、まるで砂漠の砂のようにサラサラと光の粒子となって消えていった。
ステージに残されたケイルの元に、周囲のモンスターが群がる。腕や足に噛みつかれながらも、蒼空の身体を庇うように自らが壁となって、全ての攻撃を一身に受け止め弾いていた。
「ケイルッ・・・!それに蒼空!?彼らも助けないとッ・・・!」
一人残ったように見えたケイルだったが、そのすぐ足元には彼に守られ倒れる蒼空の姿があった。すぐにでも彼らを助けようとするシンだったが、その腕を天臣がそっと掴んで止める。
「・・・行こう・・・。彼らの思いを無碍には出来ない・・・」
何も語ろうとしない天臣の様子から、シンは彼らの戦いから何かを引き継いできたであろうことを悟る。
シンも現実の世界やWoFの世界で、様々な者達との出会いと別れ、そして壮絶な戦いを乗り越えてきた。故に、天臣のその何処かやり切れない思いを押し殺しながらも、自分に課せられた使命を全うしようとする感情は理解できた。
それでも、全てを終わらせた後ですぐに二人の元へ戻ってくると誓いながら、二人は上昇し天臣の見たイルの逃げていった方角へ飛び去っていく。
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