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駆け巡る魔物
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イルの残した痕跡からデータを追い、異常を齎らすソフト、マルウェアの“フィダー“を送り込んだシン。これで目的を果たしたシンは、すぐに蒼空達の元に戻ろうと動き出す。
「待て!俺も行く」
「それは構わないが・・・抱えては行けないぞ?」
「おいおい、冗談はよせ。俺には式神がある。それに移動だけなら、アンタの足よりも速いのがある」
MAROは得意げな笑みを浮かべながら、シンに自分のスキルで生み出した式神を召喚し披露する。どんな紙でも、媒体となる紙であれば何でも姿を変えることが出来る。
そして彼が召喚したのは、彼の持ちうる式神で最速の飛行能力を持つ、鳥の形をした二羽の式神だった。
「これは・・・?」
「乗せてってやる。地上を行くより幾分か早く着くだろう」
シンは彼の厚意に甘えることにし、片方の式神の背中へ跨る。どの道、自分の足で戻ろうとすれば、壁や高低差を一気に抜ける為に、スキルを使うハメになる。
何があるか分からない以上、少しでも魔力は温存しておくに越したことはない。二人は峰闇に、にぃなとマキナの護衛を任せながら、友紀のいなくなったステージへと向かう。
「すいません、俺達のお守りまで買って出てもらっちゃって・・・」
「ちょっと!お守りはないでしょ!?お守りは!」
言葉の選択を誤ったマキナが、にぃなに怒鳴られる光景を見て、峰闇は彼らが明るいパーティであることを羨むような表情を見せる。
「気にしないでくれ。それに、助かっているのは俺の方なんだから」
暗黒騎士のクラスに就いている峰闇は、強力な力を得る代わりに自傷を伴うという特徴を持ったクラス。それ故に、にぃなのような支援系のクラスとは相性がいい。
それに、いざとなればマキナのマーシナリーのスキルによる援護も期待でき、強気に攻めることもできる。パーティバランス的には、この横浜に集まりそれぞれ分かれた部隊の中で、最も優れていると言えるだろう。
「それに、見栄を張って力を使い過ぎた俺が悪い。まさかここまでダメージが酷くなろうとは・・・」
「俺達も少しずつ、ステージの方へ向かいませんか?向こうでも何かあったみたいですし・・・」
マキナの提案に、峰闇とにぃなが互いの顔を見合わせる。全快ではないが、峰闇も何とか戦えるくらいには回復している。彼からすれば、もし移動しながらでも回復が可能であれば、という気持ちだったのだろう。
にぃなも峰闇の身を案じて、その場での治療と回復という手段を取ったに過ぎなかった。
それに二人とも、心のどこかでは友紀のライブを観たいという気持ちがあったに違いない。
シン達を見送ったばかりだったが、彼らもまた歩きながらステージを目指すことにした。
上空を進んでいたシン達は、まもなくステージへと到着しようとしていた。
アサシンギルドが作り出したというマルウェアのソフト、“フィダー“が一体イルの身体にどんな変化を与えているのか。蒼空達は無事だろうかと、馳せる気持ちを抑えつつ、無言のまま風を切って進む。
すると、ステージの方から何やら雄叫びのようなものと共に、何か黒い煙のようなものを纏ったものが、そこら中へ駆け抜けていくのが目に入る。
「なッ・・・何だ、あれは!?」
「・・・モンスターだ。でも様子がおかしい・・・。それにこの数・・・!?」
二人はハッとした様子で顔を見合わせる。モンスター達が駆け抜けていった方向には、置いてきた仲間達がいる。
最初に戦った巨大なモンスターほど危険ではないが、素早く小回りの効くタイプのモンスターが相手では、負傷している峰闇とマキナ達だけでは苦しい戦いを強いられるかもしれない。
彼らの身を案じたMAROは、そのまま式神を急旋回させて折り返す。
「アンタは先に行け!数が多いのであれば、俺の式神の出番だろう」
「分かった!俺は蒼空達と合流する。何かあればメッセージに!」
背を向けながらシンの言葉を受け取った彼は、腕を上げて返事をするとすぐに来た道を戻って行った。
「こんなにものモンスターを・・・。奴は何をしようとしている!?」
こうも都合よくモンスターが現れるのはおかしい。シンはイルがモンスターを召喚したに違いないと考えたが、どうやってモンスターをここへ召喚したのか。
そして、わざわざ野に放つように解放する理由が分からなかった。自分のピンチを救うためならば、共に戦うために側に呼び寄せるはず。それとも、そこまでモンスターをコントロール出来ていないのだろうか。
焦る気持ちに、高鳴る心臓を鎮めながら、嫌な予感のするステージへ突入するシン。
そこにあったのは、彼の予想してしまっていた通りの、良くない光景だった。
傷だらけの身体でモンスターの群れを相手にする、天臣とケイル。その間には、引きずったような血の痕が続いており、倒れたまま動かない蒼空の姿があった。
しかし、何処を見渡せどあの男の姿が見当たらない。ステージ上はそこら中モンスターだらけで、二人を襲う順番待ちをしているかのように群がっていた。
「蒼空ッ!?・・・これは一体?」
「あれは蒼空の・・・。おい!こっちだ!手を貸してくれ!!」
味方の登場に気が緩んでしまったのか、僅かな隙を突かれ天臣がモンスターに腕を噛まれ、刀を落としてしまう。拾っている余裕などなかった彼は、そのまま反対の手でモンスターを殴り、振り解くとその場に膝をついてしまう。
「天臣さん!?」
「ぐッ・・・。駄目だ・・・時間がない・・・。彼の乗っているもの。あれに乗れば・・・」
どうやらイルは既に、戦場を離れて行ってしまったらしい。イルは必ず友紀と一緒にいると言っていた何者かの元へ向かう筈。彼女を助けるには、今奴を追わなければ手遅れになる。そう考えた天臣には、もはや他のことを考えていられるほどの余裕などなかった。
「待て!俺も行く」
「それは構わないが・・・抱えては行けないぞ?」
「おいおい、冗談はよせ。俺には式神がある。それに移動だけなら、アンタの足よりも速いのがある」
MAROは得意げな笑みを浮かべながら、シンに自分のスキルで生み出した式神を召喚し披露する。どんな紙でも、媒体となる紙であれば何でも姿を変えることが出来る。
そして彼が召喚したのは、彼の持ちうる式神で最速の飛行能力を持つ、鳥の形をした二羽の式神だった。
「これは・・・?」
「乗せてってやる。地上を行くより幾分か早く着くだろう」
シンは彼の厚意に甘えることにし、片方の式神の背中へ跨る。どの道、自分の足で戻ろうとすれば、壁や高低差を一気に抜ける為に、スキルを使うハメになる。
何があるか分からない以上、少しでも魔力は温存しておくに越したことはない。二人は峰闇に、にぃなとマキナの護衛を任せながら、友紀のいなくなったステージへと向かう。
「すいません、俺達のお守りまで買って出てもらっちゃって・・・」
「ちょっと!お守りはないでしょ!?お守りは!」
言葉の選択を誤ったマキナが、にぃなに怒鳴られる光景を見て、峰闇は彼らが明るいパーティであることを羨むような表情を見せる。
「気にしないでくれ。それに、助かっているのは俺の方なんだから」
暗黒騎士のクラスに就いている峰闇は、強力な力を得る代わりに自傷を伴うという特徴を持ったクラス。それ故に、にぃなのような支援系のクラスとは相性がいい。
それに、いざとなればマキナのマーシナリーのスキルによる援護も期待でき、強気に攻めることもできる。パーティバランス的には、この横浜に集まりそれぞれ分かれた部隊の中で、最も優れていると言えるだろう。
「それに、見栄を張って力を使い過ぎた俺が悪い。まさかここまでダメージが酷くなろうとは・・・」
「俺達も少しずつ、ステージの方へ向かいませんか?向こうでも何かあったみたいですし・・・」
マキナの提案に、峰闇とにぃなが互いの顔を見合わせる。全快ではないが、峰闇も何とか戦えるくらいには回復している。彼からすれば、もし移動しながらでも回復が可能であれば、という気持ちだったのだろう。
にぃなも峰闇の身を案じて、その場での治療と回復という手段を取ったに過ぎなかった。
それに二人とも、心のどこかでは友紀のライブを観たいという気持ちがあったに違いない。
シン達を見送ったばかりだったが、彼らもまた歩きながらステージを目指すことにした。
上空を進んでいたシン達は、まもなくステージへと到着しようとしていた。
アサシンギルドが作り出したというマルウェアのソフト、“フィダー“が一体イルの身体にどんな変化を与えているのか。蒼空達は無事だろうかと、馳せる気持ちを抑えつつ、無言のまま風を切って進む。
すると、ステージの方から何やら雄叫びのようなものと共に、何か黒い煙のようなものを纏ったものが、そこら中へ駆け抜けていくのが目に入る。
「なッ・・・何だ、あれは!?」
「・・・モンスターだ。でも様子がおかしい・・・。それにこの数・・・!?」
二人はハッとした様子で顔を見合わせる。モンスター達が駆け抜けていった方向には、置いてきた仲間達がいる。
最初に戦った巨大なモンスターほど危険ではないが、素早く小回りの効くタイプのモンスターが相手では、負傷している峰闇とマキナ達だけでは苦しい戦いを強いられるかもしれない。
彼らの身を案じたMAROは、そのまま式神を急旋回させて折り返す。
「アンタは先に行け!数が多いのであれば、俺の式神の出番だろう」
「分かった!俺は蒼空達と合流する。何かあればメッセージに!」
背を向けながらシンの言葉を受け取った彼は、腕を上げて返事をするとすぐに来た道を戻って行った。
「こんなにものモンスターを・・・。奴は何をしようとしている!?」
こうも都合よくモンスターが現れるのはおかしい。シンはイルがモンスターを召喚したに違いないと考えたが、どうやってモンスターをここへ召喚したのか。
そして、わざわざ野に放つように解放する理由が分からなかった。自分のピンチを救うためならば、共に戦うために側に呼び寄せるはず。それとも、そこまでモンスターをコントロール出来ていないのだろうか。
焦る気持ちに、高鳴る心臓を鎮めながら、嫌な予感のするステージへ突入するシン。
そこにあったのは、彼の予想してしまっていた通りの、良くない光景だった。
傷だらけの身体でモンスターの群れを相手にする、天臣とケイル。その間には、引きずったような血の痕が続いており、倒れたまま動かない蒼空の姿があった。
しかし、何処を見渡せどあの男の姿が見当たらない。ステージ上はそこら中モンスターだらけで、二人を襲う順番待ちをしているかのように群がっていた。
「蒼空ッ!?・・・これは一体?」
「あれは蒼空の・・・。おい!こっちだ!手を貸してくれ!!」
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