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決死の一撃
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周囲の靄から突如として形成されていく、複数の黒刀。蒼空がイルの元へ到着するよりも先に形成された黒刀は、迫る彼の身体目掛けて撃ち放たれる。
音もなく差し向けられる剣先を、高跳びのように華麗な跳躍で避けると、そのまま二本目三本目と飛んで来る刀を空中でキャッチして見せる。
蒼空は自らの身体に掛かる重力を軽くし、浮遊出来るほどの重さへと変えていたのだ。対象だけでなく、自身の重さも自由自在に変えられる彼は、高速で空を飛ぶことは出来なくとも、浮遊することは出来る。
空中においても身動きの取れる蒼空に、イルの差し向けた黒刀は当たらなかった。そのまま彼は、手にした黒刀を男の頭上へ向けて軽く放り投げる。
「能力の有効範囲内に入った。覚悟は出来たかい?」
「・・・それは、俺に言ってるのかい?なら、心配はご無用だよ・・・」
男の言葉を聞き受け、蒼空はイルの周りに広がる重力フィールドの負荷を最大級にする。
ステージの床がメリメリとひび割れていき、地面ごと足場を押しつぶし大きな空洞を作り出した。
同時に、蒼空が放り投げた黒刀が重力の影響をいち早く受け、床に倒れるイル目掛けて降り注ぐ。
「靄ごと押し込んでやった・・・。これで・・・」
円形状のフィールド全体を、地面が押し潰れるほど強力な負荷を掛けた蒼空は、その威力の反動で魔力をほとんど使い果たし、腕が上がらない程の疲労状態となっていた。
だが彼のいう通り、これだけの範囲攻撃で一度に押し潰したのだ。例え靄へと姿を変えても、天臣との戦闘でダメージを負った身体では、到底逃げ切れる距離ではない。
「なるほど便利な技だ・・・。範囲攻撃で一気に押し込むとは・・・」
「流石だぜ・・・蒼空さん。けど、そんな芸当ができんなら、もっと早くにやって欲しかったぜ・・・」
その様子を見ていた天臣とケイルも、あまりにも衝撃的な一撃に唖然としていた。
しかし、実際始めからあの大技をイルに叩き込んでいたら、恐らく逃げ切られていた事だろう。あくまでこれは、あの男をここまで弱らせることが出来たからこそのトドメだったのだ。
肩の力が抜け、安堵した様子で二人の元へ戻る蒼空。致命的ではないものの、ギリギリの状態の天臣と、深傷を負ったケイルをすぐに回復してやらねば。
すぐに巨獣との戦闘で離脱していた、親衛隊の峰闇へ連絡を取る蒼空。そこにはシンと共に救援要請に応じてくれた、ヒーラーのにぃなが一緒にいる筈。
自力で天臣らを連れていくことが出来ない蒼空は、回復や治療が済んでいるであろう彼らに迎えに来て貰おうとしていた。
だがイルは、なぎさや友紀のいる建物の屋上へいち早く訪れている。
つまり、イルはここで死んではいなかった。
「驚いた・・・。まだこれ程の力を残していたのか・・・」
もう聞くことはないと思っていた男の声が聞こえ、目を丸くして振り返る蒼空。しかし、男の姿を見つけるよりも先に、彼の身体に異変が起きる方が先だった。
突然蒼空の身体から生えるように、黒い刀が突き出す。ケイルの受けた、靄から形成されて飛ばしたものとは別の物。疲弊しているとはいえ、同じ手を食らうほど気を抜いてはいない。
靄の晴れたステージ上で、無くなった筈の靄が集まりだせばすぐに分かる筈。
なら、この黒刀は一体何処から発生したものなのか。
「ぶふッ・・・・・!?」
「ぁあっ・・・やっぱり仕込まれてたか・・・。俺の身体に・・・ウイルスがぁ・・・。ここまでか・・・」
イルは、蒼空の重力フィールドから逃れる為に、情報を持ち出しハッキングをしようと仲間の元へ向かったシンを取り逃がしてから使うことを拒んでいた、自身のデータ化による瞬間移動を試みていた。
だが、イルの想像していた通り、既にシン達によって男の身体にはウイルスが送り込まれており、次にデータ化を用いた時にエラーが起きるように細工されていたのだ。
データ化による移動の速度が大幅に落とされ、その距離も縮められていた。無駄だと分かっていても、蒼空の攻撃から逃れる為に、その力に頼らざるを得なかった程追い詰められていた。
その結果、辛うじて重力フィールドの範囲から逃れるだけの移動が成されていた。
そして蒼空の身体を突き抜けた黒刀が一体何処からやって来た物なのか。それには彼しか体験していない、ある条件とイルの能力に隠された追加効果があったのだった。
音もなく差し向けられる剣先を、高跳びのように華麗な跳躍で避けると、そのまま二本目三本目と飛んで来る刀を空中でキャッチして見せる。
蒼空は自らの身体に掛かる重力を軽くし、浮遊出来るほどの重さへと変えていたのだ。対象だけでなく、自身の重さも自由自在に変えられる彼は、高速で空を飛ぶことは出来なくとも、浮遊することは出来る。
空中においても身動きの取れる蒼空に、イルの差し向けた黒刀は当たらなかった。そのまま彼は、手にした黒刀を男の頭上へ向けて軽く放り投げる。
「能力の有効範囲内に入った。覚悟は出来たかい?」
「・・・それは、俺に言ってるのかい?なら、心配はご無用だよ・・・」
男の言葉を聞き受け、蒼空はイルの周りに広がる重力フィールドの負荷を最大級にする。
ステージの床がメリメリとひび割れていき、地面ごと足場を押しつぶし大きな空洞を作り出した。
同時に、蒼空が放り投げた黒刀が重力の影響をいち早く受け、床に倒れるイル目掛けて降り注ぐ。
「靄ごと押し込んでやった・・・。これで・・・」
円形状のフィールド全体を、地面が押し潰れるほど強力な負荷を掛けた蒼空は、その威力の反動で魔力をほとんど使い果たし、腕が上がらない程の疲労状態となっていた。
だが彼のいう通り、これだけの範囲攻撃で一度に押し潰したのだ。例え靄へと姿を変えても、天臣との戦闘でダメージを負った身体では、到底逃げ切れる距離ではない。
「なるほど便利な技だ・・・。範囲攻撃で一気に押し込むとは・・・」
「流石だぜ・・・蒼空さん。けど、そんな芸当ができんなら、もっと早くにやって欲しかったぜ・・・」
その様子を見ていた天臣とケイルも、あまりにも衝撃的な一撃に唖然としていた。
しかし、実際始めからあの大技をイルに叩き込んでいたら、恐らく逃げ切られていた事だろう。あくまでこれは、あの男をここまで弱らせることが出来たからこそのトドメだったのだ。
肩の力が抜け、安堵した様子で二人の元へ戻る蒼空。致命的ではないものの、ギリギリの状態の天臣と、深傷を負ったケイルをすぐに回復してやらねば。
すぐに巨獣との戦闘で離脱していた、親衛隊の峰闇へ連絡を取る蒼空。そこにはシンと共に救援要請に応じてくれた、ヒーラーのにぃなが一緒にいる筈。
自力で天臣らを連れていくことが出来ない蒼空は、回復や治療が済んでいるであろう彼らに迎えに来て貰おうとしていた。
だがイルは、なぎさや友紀のいる建物の屋上へいち早く訪れている。
つまり、イルはここで死んではいなかった。
「驚いた・・・。まだこれ程の力を残していたのか・・・」
もう聞くことはないと思っていた男の声が聞こえ、目を丸くして振り返る蒼空。しかし、男の姿を見つけるよりも先に、彼の身体に異変が起きる方が先だった。
突然蒼空の身体から生えるように、黒い刀が突き出す。ケイルの受けた、靄から形成されて飛ばしたものとは別の物。疲弊しているとはいえ、同じ手を食らうほど気を抜いてはいない。
靄の晴れたステージ上で、無くなった筈の靄が集まりだせばすぐに分かる筈。
なら、この黒刀は一体何処から発生したものなのか。
「ぶふッ・・・・・!?」
「ぁあっ・・・やっぱり仕込まれてたか・・・。俺の身体に・・・ウイルスがぁ・・・。ここまでか・・・」
イルは、蒼空の重力フィールドから逃れる為に、情報を持ち出しハッキングをしようと仲間の元へ向かったシンを取り逃がしてから使うことを拒んでいた、自身のデータ化による瞬間移動を試みていた。
だが、イルの想像していた通り、既にシン達によって男の身体にはウイルスが送り込まれており、次にデータ化を用いた時にエラーが起きるように細工されていたのだ。
データ化による移動の速度が大幅に落とされ、その距離も縮められていた。無駄だと分かっていても、蒼空の攻撃から逃れる為に、その力に頼らざるを得なかった程追い詰められていた。
その結果、辛うじて重力フィールドの範囲から逃れるだけの移動が成されていた。
そして蒼空の身体を突き抜けた黒刀が一体何処からやって来た物なのか。それには彼しか体験していない、ある条件とイルの能力に隠された追加効果があったのだった。
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