World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
794 / 1,646

いざ、横浜へ

しおりを挟む
 神奈川県ノースシティ某所。

 プレジャーフォレストでも調査を終え、その地を後にしたシンとにぃなは、そこで拠点を築くコウやヴァンらに惜しまれながらも、別の調査地を目指して移動していた。

 にぃなの強い希望により、神奈川の中でも最も人が多く集まるであろうと予想した横浜を目指すことにした。

 「いいのか?俺達はノースシティ、つまり北部担当だろ?勝手に中心部なんかに行ったりしたら・・・」

 「いいの!どうせ上の連中は気にしてなんかないんだもん。どこ探しても一緒!それに、人が集まる場所の方が情報は得られやすいでしょ?私達に下されたのは“神奈川の調査“何だから、神奈川のエリアから出なければ問題ないでしょ?」

 「それはそうかもしれないけど・・・」

 神奈川の調査に送り込まれたのは複数人いる。現在の日本は、大まかに東西南北に分かれて“シティ“呼びされている。その中でも特に人が多く住むエリアを“セントラル“と呼んでいる。

 故に時代や人の流れによって、それらが変わることもある。彼らに言い渡されたノースシティの調査というのも、厳守すべきものではなく、あくまでも調査するにあたり、エリアを限定させて効率化を図るもの。

 遅かれ早かれ、調査が終わればフィアーズの上層部は細かいことなど気にはしていない。

 「前から行ってみたかったんだよねぇ~横浜!中華街にシーパラダイスに赤レンガ倉庫!ん~楽しみぃ~!」

 「はぁ~・・・。人が多いってことは、それだけ危険もありそうなもんだけどなぁ・・・」

 煌びやかなセントラルに期待に胸を躍らせるにぃなと、同じく楽しみな気持ちはあるものの、プレジャーフォレストの時のような襲撃や危険があるのではないかと、不安に駆られるシン。

 二人を乗せた無人タクシーは、順調に横浜へと向かう。その途中、二人に対しとある人物からメッセージが届く。

 「ん?何だ・・・?」

 「え、私もぉ~。誰だろ?」

 彼らにメッセージを送ったのは、同じく神奈川エリアの調査を言い渡されていた筈の、“蒼空“(ソラ)という人物から、神奈川調査チーム宛に全員へメッセージを送っていた。

 《このメッセージを見た人へ。すぐにセントラルの横浜、赤レンガ倉庫へ来て欲しい。人手が必要だ、頼む》

 「丁度行こうとしてたところじゃないか」

 しかし、彼のメッセージに対する神奈川調査チームの反応は冷たいものだった。元々チームワークのあるメンバーではなく、それどころかシンは面識すらない者が殆どだ。

 どうやらにぃなもそれに関しては同じらしく、殆どのメンバーを知らない。これもフィアーズが離反者を出さないようにしている対策なのだろう。同じメンバーで固めてしまうと友好関係が生まれやすく、不平や不満を共通認識として捉えやすくなり、組織から逃げ出そうとする者が多くなる。

 任務への期待はしていなくとも、反乱や離反への対策はしている。それは恐れからではなく、単純に実験に使うモルモットの数が減ることを危惧してのことだった。

 《私は行けない。ごめん》
 《俺もパス。やる事あるし》

 そこに記されていたのは、皆断りのメッセージしかなかった。

 「みんな行かないみたいだな・・・。何か冷たくない?」

 「そうでもないよ。だって、初めて会った時だって、みんな好き勝手に散らばって行ったでしょ?エリアが限られてるとはいえ、監視もない自由行動だもの。一人でゆっくり満喫したいと思うもんじゃない?」

 にぃなの言うことも最もだった。気の知れた者達とならまだしも、全く素性もしれない赤の他人と行動を共にしていては、フィアーズに監視されている時と何ら変わらない。

 限られた自由の中で、精神的にも拘束されていてはやっていけない。場合によっては衝突も生まれるだろう。

 「まぁ・・・それもそうか。で、どうする?俺達丁度横浜に向かっちゃってるけど?」

 「ん~・・・。まぁ丁度赤レンガ倉庫も行ってみたい候補に入ってるし。順番なんかどうでもいいもんね、行ければ」

 シン達は様子見がてら、蒼空のいると思われる赤レンガ倉庫へ向かうことにした。にぃなは蒼空に、シンと共に向かうというメッセージを全体メッセージではなく、個人のメッセージへ送る。

 変に他の者達に、頼めば手伝ってくれる都合のいい奴と思われたくないからなのだと彼女は話した。以前にそういった者を組織内でみたことがあるのだという。

 しかし、その者は会う度に疲労が目に見えて溜まっているのが分かるほど変化していき、その内姿すら見かけなくなったのだとか。

 初めの内は、ただ会うタイミングがなくなっただけだと思っていたが、以前に一緒にいるのを見かけたことのある者に、その人物がどうしているのか訪ねてみると、与えられた任務が疎かになっていったことを上層部に知られ、使い物にならなくなったと判断されたのか、実験に使われいなくなったのだと言われたそうだ。

 そういった者は少なくなく、自身のおかれている状況に対する不安や、先行きの見えない現状から人との接触を求める、謂わば仲間や友人といった関係を築こうとする者に多い傾向なのだそうだ。

 基本、一人行動が好きな者達が多い中で、そういった行為を求める者は疎ましく思われ、都合のいいように利用されるのがオチだと、にぃなは語る。

 不安を抱えているのは自分だけではない。そんな中で他人の面倒まで見てられない。個人だったらそう思うのも分からなくはない。

 だが、シンやにぃな、イヅツらのように大きな目的がある中で集まった者達であれば、そういった事態にはなりずらい。

 「それに、もしかしたらこの蒼空って人も、組織から抜けたいと思ってるかもしれないし・・・ね?」

 手を貸してくれる味方は一人でも多い方がいい。フィアーズからの離反を目論む彼らにとって、蒼空という人物に恩を売っておくのは悪い話ではない。だが、危険は冒せない。あくまで協力するのは、様子を見てからだ。

 そして二人を乗せた車は、神奈川でも多くの人が集まるセントラルの繁華街、横浜へと向かう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

転生貴族の異世界無双生活

guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。 彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。 その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか! ハーレム弱めです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと

Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】 山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。 好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。 やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。 転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。 そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。 更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。 これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。 もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。 いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。 理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか? ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 10時19時投稿、全話予約投稿済みです。 5話くらいから話が動き出します? ✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

処理中です...