World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
788 / 1,646

噂のハッカー一味

しおりを挟む
 中にはもう一人、仲間と思われる人物がおり、帰って来た男と会話を始める。

 「うぃ~、たっだいま~」

 「おぅ、おかえりぃ~。あれあった?新作のエナドリ!」

 「あったあった。めっちゃあったわぁ~。目立つとこにクソ程置いてあったわ。マジでうめぇの?コレ」

 「わっかんねぇ。でもぉ、これがねぇと始まんねぇってなってんのよ、俺の身体ぁ」

 「じゃぁいつものでよくね?チャレンジ精神旺盛かって」

 「味変だよ味変。おんなじモンばっかとってっと、インスピレーション沸かねぇだろぉ?」

 帰ってきた男は袋の中から一本の缶お取り出すと、待っていた男の机に置いた。外との気温差で缶は汗を掻いているかのように、水滴をつけていた。

 音のした方向と、視界の端に写った缶を手に取る待っていた男は、手に伝わる冷たさと水滴に思わず一度手を離す。湿った手をズボンで適当に拭うとプルタブを開け、これを待っていたのかと言わんばかりの飲みっぷりで一口頂く。

 「くあぁ~ッ!やっぱコレだわぁ~。期待通り、新作もうめぇじゃんよ」

 その間に帰って来た男は、自分の机に広げられたテリトリーに着くと、待っていた男とは別のエナジードリンクの缶を袋から取り出し、お洒落なタンブラーに移し替える。

 「何、そんなうめぇの?俺も一本くらい買っときゃよかったかなぁ・・・」

 「お前はいつも置きに行き過ぎなんよ。定番ばっかだと飽きんべ?」

 「俺、ペース崩したくない派だから。リスク冒すんは、こっちの時だけで十分なんだわぁ~」

 そう言って男が指さしたのは、ステッカーや独自のセンスで選んだパーツでデコレーションされたノートパソコンだった。そのついでに、男は買い物帰りに出会った謎の男のことについて、仲間に話した。

 「あ!んでよぉ、帰りにNAについて知ってっか?って聞いてきた奴がいてよぉ~」

 「は?そういう大事なこと、先に言えし!んで?何か言ったわけ?」

 二人の男の会話から、後をつけて来ていた男の口にしたNAと呼ばれるものについて、何か知っている様子が伺える。どうやら彼は、男の尋ねる事について知っていながら、知らないフリをしていたようだった。

 「言うわけねぇじゃん。言ったら俺らもヤベェことになんだろ」

 「ですよねぇ~。クビっつぅ~かぁ、リアルに首飛ばされそうだし」

 何気ないやりとりをする二人だったが、突然その空間に聞き慣れない声が飛び込んでくる。それが何処からやって来たのか、如何やって入って来たのか。インターホンは勿論、ここまで足音や気配すら感じさせることなく、それは二人の背後にまで近づいていた。

 「仲間がいたんだな・・・」

 不意を突かれたように驚く二人の男は、椅子から飛び上がりその何者かの方を向く。

 「なッ・・・!?」

 「お前つけられたのかよッ!」

 部屋に入ってきた男は、二人の男のように普通の人間ではなかったのだ。その姿は現代のファッションではなく、まるで某有名ゲームのキャラクターのような姿をしていた。

 そのビジョンが徐々に剥がれていき、現実世界でよくみるようなスタンダードな服装をした男が、二人の前に現れる。

 その有名なゲームこそ、WoF。男をつきて来ていたのは、ここ京都のセントラルシティに構成員がいるという情報を掴んだフィアーズの配下、イヅツだった。

 彼らがその存在に気づけなかったのは、イヅツがWoFのキャラクターデータを自身の身体に反映していたからだった。

 イヅツは現実世界の姿に戻ることを気にすることはなく、任務では度々その本来の姿を晒すこともしばしばあるようだ。

 外で話しかけた際にすぐに身を引いたのは、彼の作戦だった。もし仲間がいるのなら、そのNAと呼ばれるものについて尋ねられたことを仲間に報告する筈。その時を待っていたのだった。

 「お前らがハッカーチーム、“ナイトメア・アポストル“ことNAのメンバーって訳か」

 「だから知らねぇって!何こんなとこまでついて来てるわけぇ!?」

 「シラを切っても無駄だ。既にお前がNAに属している証拠はあるんだよ」

 だが、それまで動揺していたように見えた二人の男は、何故か突然落ち着きを取り戻したかのように大人しくなり、そっと側にあったゴーグルのようなものを手に取り、装着し始める。

 「だってよ、どうする?」

 「どうってそりゃぁ・・・逃げるしかないでしょ」

 一人の男が机に置かれたキーボードに指を乗せ、何かのキーを押す。すると、室内に強烈なフラッシュのような光が焚かれ、イヅツは視界を奪われる。どうやら男らの部屋には、あちこちに小型のカメラのようなものが仕掛けられており、そこから閃光弾のような光が放たれたのだった。

 「じゃぁ~ねぇ~、お兄さん。敵地に乗り込む時は、もっと警戒しなきゃダメっしょ!」

 二人組の男はノートパソコンを手に取り、そのまま部屋を後にすると裏口から抜け出し外に出る。

 彼らはノートパソコンの他にも、幾つかのデバイスを持ち出しており、二人でそれを確認していた。

 「どう?忘れモンない?」

 「オールおっけぇ~。こんなん初めてじゃないし、余裕っしょ!」

 「アイツどうする?一応追跡できるようにはして来たけどよぉ~?」

 「とりま報告っしょ。その後の事は流れに任せるっつぅことで」

 「りょ」

 室内に残されたイヅツは、不覚にも閃光をくらい視力を奪われていた。すぐに慣れた手付きで、自身のポケットからスマートフォンを取り出すと、自身にキャラクターのデータを反映させる。

 「チッ・・・!こっちでも状態異常になってやがる・・・」

 彼が陥っていたのは、暗闇の状態異常。視界が塞がれ、移動や攻撃に支障がでると言うものだったが、イヅツはすぐにアイテムによりこれを解除。二人の男がいた部屋を見渡すも、既にそこに姿はなく痕跡もない。

 しかし、室内には多くの機材が取り残されており、イヅツはそこから男達に関する情報や、ハッカー集団ナイトメア・アポストルの情報を得ようと、探りを入れる。

 その間にも、逃げた二人は何やら誰かに連絡を入れているようだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

処理中です...