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変異種にしたモノ
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変異種は人を食べて進化したもの。身体に取り込んだものの特性や性質の一部を吸収し、身につけることから、シン達の戦っていた“人語を発するモンスター“は、彼らと同じ“異変に目覚めた者“を食べたということ。
つまり、今彼らの目の前にいるウルフは、鎧の男が助ける筈だった女性を食い殺し、人語を獲得した。身体にもその女性の特徴が表れていることから、これはかなり信憑性のあることだと伺える。
アナベルと会う以前に戦ったリザード種のリーダーも、東京でシンが戦った地下駐車場の異形のモンスターも、そして朱影と共に下水道で戦った不気味な怪物も。
人語を発していたということは、少なからず何処かでWoFのユーザーを食べていたことになる。
違いがあるとすれば、言葉に意味がなかったり、脈絡のない言葉を連ねていたりと、シンが東京で遭遇した異形のモンスター達は、ここで会った変異種と比べ会話が出来ない、言葉の意味を理解していない可能性が高い。
これが個体による学習能力の違いによるものなのか、或いは食してきた人の数や質に関係しているのか。異形のモンスターと変異種が同じものであると括るには、まだ何かありそうな気がする。
シンはこの事を、他の者達に告げるべきか悩んでいた。彼らを信用していない訳ではない。そもそも悩んでいたのとも違っていた。少し頭の中の情報を整理する時間が欲しかったのだ。
その上で、彼が最も信頼できると思っている人物、白獅に連絡を取りたいと考えていた。何処かで会ったことも、ましてやWoFの中で会ったこともないアサシンギルドのメンバー達だが、ここまで彼を導いてきた実績がある。
慎重を期した考えに至ると、自然に判断を誰かに委ねたり共有したくなるのが、癖になってしまったのだ。だが、それは一概にも悪いことではないだろう。他者とのチームプレイにおける、自身の身勝手の抑制が本能的に身についているということなのだから。
一通りの話を終え、まるでお通夜のように暗い雰囲気になった室内で、アナベルが自らの失態を責める鎧の男に声をかける。
「ヴァン、君の責任ではないし、この子に悪意はない。だから自分を責めないことだ。実際、一人であの量を人を守りながらよく生き延びたものだよ」
「・・・・・」
不意に出た人名に、シンとにぃなが鎧の男の方へ視線を向ける。
鎧の男はヴァンと呼ばれ、そのクラスはナイトなのだとアナベルは語った。敵の攻撃を一手に引き受ける囮役である、所謂タンク役として優れたクラスであり、ウルフの群れによる襲撃の中、食われてしまった女性を守りながら相手の数を減らすアタッカーがいない中で、ここまで奮戦できたのは実際運が良かった。
前衛職である為、多少は相手を攻撃する手段はあるものの、高火力で殲滅できるスキルはなかったのだろう。
アナベルの寄越した援軍が到着する前に逃亡を図り、雑木林の中で力尽きたのだった。どうして彼だけ生き残り、その女性だけが食われてしまったのか、詳しい詳細は分からないが、単純に戦力として抵抗を受けづらい方から標的にされたのだろう。
「ワタシ・・・シタ?イケナイコト・・・シタ・・・?」
無垢な表情で問いかけてくるウルフに、アナベルやそっと頭を撫でながら首を横に振る。
「ううん、そんなことないよ。君にはどうしようもなかったんだから。何も心配することはないよ・・・」
このウルフの性格も、その食した人間の性格が反映されているのだろうか。こうもおとなしくなるものなのだろうかと、シンは今までのモンスターと比べてしまう。
「さて、それじゃぁ君にも名前をつけなくちゃねぇ~。いつまでも“君“呼びじゃぁ色々と不便だし・・・。そういえばさっき林の中で、何か言ってなかったかい?確か・・・“メル“だったかな?」
「・・・メル・・・?」
ヴァンが目を覚ました時、シンと共にいたウルフへ敵意を向けた。そのウルフは彼を落ち着かせようとしたのか、自分は敵ではないという証明をしようと、何かを口にしていたが上手く発音できていないようだった。
唯一聞き取れたのが、そのメとルの部分だけ。丁度名前っぽくもあったためか、アナベルは変異種のウルフにその名を授けた。
「ヴァン・・・と言うのか?一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」
「・・・何だ?」
「その・・・アンタが守ってた女性の名前は?」
突然異変に巻き込まれ、その直後にモンスターに襲われ命を落としたのだ。彼らのようにキャラクターを自身に反映させる方法すら知らぬまま絶命したのでは、あまりに理不尽で報われない。
せめて彼女のデータがどこかにあれば、何か報いることや、或いはメルからデータを抽出する方法があるかも知れない。その時の手掛かりとして、名前だけでも知って起きたかったのだ。
「“メンデル“と言っていた。彼女は戦闘ができるタイプのクラスではなかった・・・。どの道、キャラクターになりきれたとしても・・・」
「そうか・・・ありがとう」
恐らく雑木林の中で、メルがヴァンに訴えかけていたのは、メンデルから得た情報を彼に伝えたかったのかも知れない。
自分が“メンデル“であることを伝えれば、彼の意識に何か届くかもしれないと。
つまり、今彼らの目の前にいるウルフは、鎧の男が助ける筈だった女性を食い殺し、人語を獲得した。身体にもその女性の特徴が表れていることから、これはかなり信憑性のあることだと伺える。
アナベルと会う以前に戦ったリザード種のリーダーも、東京でシンが戦った地下駐車場の異形のモンスターも、そして朱影と共に下水道で戦った不気味な怪物も。
人語を発していたということは、少なからず何処かでWoFのユーザーを食べていたことになる。
違いがあるとすれば、言葉に意味がなかったり、脈絡のない言葉を連ねていたりと、シンが東京で遭遇した異形のモンスター達は、ここで会った変異種と比べ会話が出来ない、言葉の意味を理解していない可能性が高い。
これが個体による学習能力の違いによるものなのか、或いは食してきた人の数や質に関係しているのか。異形のモンスターと変異種が同じものであると括るには、まだ何かありそうな気がする。
シンはこの事を、他の者達に告げるべきか悩んでいた。彼らを信用していない訳ではない。そもそも悩んでいたのとも違っていた。少し頭の中の情報を整理する時間が欲しかったのだ。
その上で、彼が最も信頼できると思っている人物、白獅に連絡を取りたいと考えていた。何処かで会ったことも、ましてやWoFの中で会ったこともないアサシンギルドのメンバー達だが、ここまで彼を導いてきた実績がある。
慎重を期した考えに至ると、自然に判断を誰かに委ねたり共有したくなるのが、癖になってしまったのだ。だが、それは一概にも悪いことではないだろう。他者とのチームプレイにおける、自身の身勝手の抑制が本能的に身についているということなのだから。
一通りの話を終え、まるでお通夜のように暗い雰囲気になった室内で、アナベルが自らの失態を責める鎧の男に声をかける。
「ヴァン、君の責任ではないし、この子に悪意はない。だから自分を責めないことだ。実際、一人であの量を人を守りながらよく生き延びたものだよ」
「・・・・・」
不意に出た人名に、シンとにぃなが鎧の男の方へ視線を向ける。
鎧の男はヴァンと呼ばれ、そのクラスはナイトなのだとアナベルは語った。敵の攻撃を一手に引き受ける囮役である、所謂タンク役として優れたクラスであり、ウルフの群れによる襲撃の中、食われてしまった女性を守りながら相手の数を減らすアタッカーがいない中で、ここまで奮戦できたのは実際運が良かった。
前衛職である為、多少は相手を攻撃する手段はあるものの、高火力で殲滅できるスキルはなかったのだろう。
アナベルの寄越した援軍が到着する前に逃亡を図り、雑木林の中で力尽きたのだった。どうして彼だけ生き残り、その女性だけが食われてしまったのか、詳しい詳細は分からないが、単純に戦力として抵抗を受けづらい方から標的にされたのだろう。
「ワタシ・・・シタ?イケナイコト・・・シタ・・・?」
無垢な表情で問いかけてくるウルフに、アナベルやそっと頭を撫でながら首を横に振る。
「ううん、そんなことないよ。君にはどうしようもなかったんだから。何も心配することはないよ・・・」
このウルフの性格も、その食した人間の性格が反映されているのだろうか。こうもおとなしくなるものなのだろうかと、シンは今までのモンスターと比べてしまう。
「さて、それじゃぁ君にも名前をつけなくちゃねぇ~。いつまでも“君“呼びじゃぁ色々と不便だし・・・。そういえばさっき林の中で、何か言ってなかったかい?確か・・・“メル“だったかな?」
「・・・メル・・・?」
ヴァンが目を覚ました時、シンと共にいたウルフへ敵意を向けた。そのウルフは彼を落ち着かせようとしたのか、自分は敵ではないという証明をしようと、何かを口にしていたが上手く発音できていないようだった。
唯一聞き取れたのが、そのメとルの部分だけ。丁度名前っぽくもあったためか、アナベルは変異種のウルフにその名を授けた。
「ヴァン・・・と言うのか?一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」
「・・・何だ?」
「その・・・アンタが守ってた女性の名前は?」
突然異変に巻き込まれ、その直後にモンスターに襲われ命を落としたのだ。彼らのようにキャラクターを自身に反映させる方法すら知らぬまま絶命したのでは、あまりに理不尽で報われない。
せめて彼女のデータがどこかにあれば、何か報いることや、或いはメルからデータを抽出する方法があるかも知れない。その時の手掛かりとして、名前だけでも知って起きたかったのだ。
「“メンデル“と言っていた。彼女は戦闘ができるタイプのクラスではなかった・・・。どの道、キャラクターになりきれたとしても・・・」
「そうか・・・ありがとう」
恐らく雑木林の中で、メルがヴァンに訴えかけていたのは、メンデルから得た情報を彼に伝えたかったのかも知れない。
自分が“メンデル“であることを伝えれば、彼の意識に何か届くかもしれないと。
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