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受け入れ難い事
しおりを挟む 今にも襲いかかりそうな鎧の男の横に立っていたシンは、変異種のウルフを庇うように間に入る。
「じゃぁその“目覚めたユーザー“ってのは、何処にいるんだ!?この場にはアンタとこのウルフ種のモンスターしかいなかったんだぞ!」
シンの言葉を聞いて、鎧の男はハッと我に返ったかのような反応を示し、意識を失う前の記憶を必死に呼び起こそうとしていた。
「そうだ・・・!俺は確か、あの子を連れてこの林の中に・・・」
そして視線を変異種のウルフの方へ向けた鎧の男は、その姿を見た更に重要なことを思い出した。
それは、ウルフ種の見た目の違いだった。先ず彼らを襲ったのは、WoFでよく見る通常のウルフ。そして援軍として駆けつけた、アナベルのテイムした軽装を身に纏ったウルフ達。
鎧の男が目覚めたユーザーを連れて逃げる間、武装したアナベルのウルフ達は殿を務め、後を追わせぬよう必死に戦いを挑むも、そもそもの数に圧倒的な差があったのだ。
徒党を組んで現れたウルフ達はそれぞれ分担し、武装したウルフを相手にする小隊と、逃げた鎧の男を追う部隊に分かれて動き始めたのだ。
その時鎧の男が見たウルフ達の中には、一際目立つような個体は存在しておらず、リーダーシップを取るような動きを見せる個体も見つけることはできなかった。
そもそも、この異変に巻き込まれ目覚めたばかりのユーザーである女性を逃すのに必死で、それどころではなかったのだという。
だが、今彼が目にしている変異種のウルフは、よく見ると体格も他の個体より大きく、体毛も毛先の方がやや緑色に変色していたのだ。それはまるで、彼が助けた女性のキャラクターの髪色のように。
「・・・あんなモンスター、居なかった・・・」
「どういう事だ?」
「あんなに大きな個体なら絶対に覚えがある筈だッ!なのにあんなの・・・。それにあの体毛は・・・まるであの子みたいな・・・」
男に言われ変異種のウルフを確認してみると、確かに他の個体よりも大きいような気がする。しかし、違いはその程度。体毛に関して言えば、シンにとっては草木の中で薬草を探してくれていた中で、少し染まったくらいなのではと思うくらいのものだった。
呆然と見つめる二人を見て、変異種のウルフは少し萎縮しているかのように後退りし、言葉を話し始めた。
「ワタシ・・・テキ・・・チガウ。ワタシ・・・メ・・・ェル・・・」
「おい、何か言ってるぞ。聞き覚えのある言葉はないか?」
「待ってくれ、もう少し聞いてみたい。そこのウルフ!もう一度言ってみろ」
すると変異種のウルフは、何度も同じ単語のような言葉を繰り返し、呪文のように唱え始めた。言葉を発することに慣れていないのか、ウルフが本当に発したい言葉がうまく発音できていないように、シンには感じた。
眉を顰め、聞き耳を立てる鎧の男は、必死に言葉を絞り出すウルフの言葉を聞いて何か心当たりがあったのか、突然目を丸くし唖然とした様子で膝を折り、地面に崩れてしまったのだった。
「おっおい!どうしたんだ!?」
「そんな・・・まさか、あり得ない・・・」
ワナワナと焦点の合わない視線で、呆然と瞳に景色を映しているだけのようになってしまった男の肩を強く揺さぶり、その先の言葉を引き摺り出そうとするシン。
言葉を失ってしまい人形のようになってしまった男とシンが話している間に、変異種のウルフはその場に近づく気配を察知し、突如威嚇を始めた。それは鎧の男に近づいた時のシンと同じように。
雑木林の奥から草を踏み潰して歩いてくる足音と、見覚えのあるシルエットが彼らの元へとやって来た。
「喰われちゃったんじゃないかなぁ・・・その子に」
現れたのは、広場で襲撃を仕掛けてきた敵のウルフを一掃してやって来たアナベルの姿だった。
「じゃぁその“目覚めたユーザー“ってのは、何処にいるんだ!?この場にはアンタとこのウルフ種のモンスターしかいなかったんだぞ!」
シンの言葉を聞いて、鎧の男はハッと我に返ったかのような反応を示し、意識を失う前の記憶を必死に呼び起こそうとしていた。
「そうだ・・・!俺は確か、あの子を連れてこの林の中に・・・」
そして視線を変異種のウルフの方へ向けた鎧の男は、その姿を見た更に重要なことを思い出した。
それは、ウルフ種の見た目の違いだった。先ず彼らを襲ったのは、WoFでよく見る通常のウルフ。そして援軍として駆けつけた、アナベルのテイムした軽装を身に纏ったウルフ達。
鎧の男が目覚めたユーザーを連れて逃げる間、武装したアナベルのウルフ達は殿を務め、後を追わせぬよう必死に戦いを挑むも、そもそもの数に圧倒的な差があったのだ。
徒党を組んで現れたウルフ達はそれぞれ分担し、武装したウルフを相手にする小隊と、逃げた鎧の男を追う部隊に分かれて動き始めたのだ。
その時鎧の男が見たウルフ達の中には、一際目立つような個体は存在しておらず、リーダーシップを取るような動きを見せる個体も見つけることはできなかった。
そもそも、この異変に巻き込まれ目覚めたばかりのユーザーである女性を逃すのに必死で、それどころではなかったのだという。
だが、今彼が目にしている変異種のウルフは、よく見ると体格も他の個体より大きく、体毛も毛先の方がやや緑色に変色していたのだ。それはまるで、彼が助けた女性のキャラクターの髪色のように。
「・・・あんなモンスター、居なかった・・・」
「どういう事だ?」
「あんなに大きな個体なら絶対に覚えがある筈だッ!なのにあんなの・・・。それにあの体毛は・・・まるであの子みたいな・・・」
男に言われ変異種のウルフを確認してみると、確かに他の個体よりも大きいような気がする。しかし、違いはその程度。体毛に関して言えば、シンにとっては草木の中で薬草を探してくれていた中で、少し染まったくらいなのではと思うくらいのものだった。
呆然と見つめる二人を見て、変異種のウルフは少し萎縮しているかのように後退りし、言葉を話し始めた。
「ワタシ・・・テキ・・・チガウ。ワタシ・・・メ・・・ェル・・・」
「おい、何か言ってるぞ。聞き覚えのある言葉はないか?」
「待ってくれ、もう少し聞いてみたい。そこのウルフ!もう一度言ってみろ」
すると変異種のウルフは、何度も同じ単語のような言葉を繰り返し、呪文のように唱え始めた。言葉を発することに慣れていないのか、ウルフが本当に発したい言葉がうまく発音できていないように、シンには感じた。
眉を顰め、聞き耳を立てる鎧の男は、必死に言葉を絞り出すウルフの言葉を聞いて何か心当たりがあったのか、突然目を丸くし唖然とした様子で膝を折り、地面に崩れてしまったのだった。
「おっおい!どうしたんだ!?」
「そんな・・・まさか、あり得ない・・・」
ワナワナと焦点の合わない視線で、呆然と瞳に景色を映しているだけのようになってしまった男の肩を強く揺さぶり、その先の言葉を引き摺り出そうとするシン。
言葉を失ってしまい人形のようになってしまった男とシンが話している間に、変異種のウルフはその場に近づく気配を察知し、突如威嚇を始めた。それは鎧の男に近づいた時のシンと同じように。
雑木林の奥から草を踏み潰して歩いてくる足音と、見覚えのあるシルエットが彼らの元へとやって来た。
「喰われちゃったんじゃないかなぁ・・・その子に」
現れたのは、広場で襲撃を仕掛けてきた敵のウルフを一掃してやって来たアナベルの姿だった。
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