World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
771 / 1,646

散策再開

しおりを挟む
 一度自宅に帰ってから考えたいと言い出したRIZAのことを心配するにぃな。現実よりもゲームに費やす時間の方が多かったシンにはあまりよく分からない感情だったが、友人と他県にまで遊びに行くような、恵まれた環境で生きる彼女にとっては、日常に別れを告げる気持ちの整理も必要なのかもしれない。

 そう考えると、シンに彼女を引き止めることは出来なかった。友人だと思っていた人物に裏切られてからというものの、他人の顔色やどんなことを思っているのだろうと考えるようになってしまったシンは、あまり人に深く関わろうとしなくなってしまった。

 人に近づくことで、酷い目に遭ったり辛い気持ちになることを恐れてしま雨ようになり、人との距離を必要以上に取るようになった。

 だが、そんな彼の心もWoFの世界で経験してきた数々の出来事の中で、少しずつ変化が見えてきていた。

 本当は心の中で思っていても、実際には行動に移せなかったことも、キャラクターに成り切ることで気持ちが前向きになり、心のままに動けるような気がしていた。

 そこに口を挟んでくる者はなく、誰もそれを馬鹿にしたりしない。偽善だと笑うもの、無意味だと呆れる者も、誰も・・・。

 「本人の気持ちを優先しよう。彼女が何を選ぶのか、それくらいは自分で選ばせてあげなきゃ・・・。ただでさえ俺達は、急にこんなことに巻き込まれたんだから」

 「それはそうだけど・・・」

 「俺達の仲間ならここの人達がいる。友好関係を深める意味でも、コウ以外にも他の人達と会っておこう」

 そう言ってシンはにぃなを説得し、RIZAにWoFの機能でもあるフレンド登録を提案する。東京に帰って仕舞えば、シン達がすぐに駆けつけることは出来ないが、アドバイスや近くにいる謀反チームのメンバーに救援を頼めるかもしれない。

 彼女も、彼の申し出を断る理由はなく、これを承諾。シン達とRIZAはそこで別れ、彼女はキャラクターの投影を解くと、一般人達の見てる景色へと戻っていく。

 周りの光景に溶け込み、不自然な格好の二人の方を振り返り、少女は軽く会釈すると、そのまま友人達の居るであろうところへ戻っていった。

 「さて・・・。さっきのモンスターのこと、コウにもメッセージで伝えておこう」

 「そうだね。東京ではあんなモンスター見たことなかったけど、ここでは当たり前に居るのかもしれないし、その辺も聞いておこうよ」

 シン達にとって初めての経験である、こちらの手法を学び対策をしてくるモンスター。神奈川に来て初めてのモンスター戦だったが、彼らにとって初めてであっただけで、ここではこれが日常なのかもしれない。

 その真相を確かめる意味でも、二人は今の出来事をコウへ報告する。そこにはRIZAという少女と出会ったことと、もし助けを求めてくるようであれば、手を貸してやって欲しいという内容も添えられていた。

 「まぁ、RIZAとはフレンドになったんだ。ここに居る限りはすぐに合流できる。今はこのリゾートの探索をしよう」

 「うん・・・そうだね。今は楽しまないと・・・」

 にぃなの楽しむという言葉に首を傾げながらも、漸く普段の彼女に戻ったと安心するシンだった。

 探索といっても、まだ一割もプレジャーフォレスト内を巡れていない。しかし、フィアーズから下された任務に時間制限もない。故に急ぐ必要はなく、彼女のいう通りここ最近の気の張りようを考えると、休息も兼ねて楽しんだほうが得かもしれない。

 二人は次に、大きな建造物が目につく遊園地エリアを目指すことにした。楽しむのならやはり乗り物のアトラクションだろうと、意気投合したシン達はリゾートの案内図が立体のホログラムで表示されるパンフレットを手に、ゆっくりと歩き出す。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~

神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!! 皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました! ありがとうございます! VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。 山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・? それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい! 毎週土曜日更新(偶に休み)

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨
ファンタジー
クリアしなければ、死ぬこともできません。 妙な部屋で目が覚めた大量の人種を問わない人たちに、自称『運営』と名乗る何かは一方的にそう告げた。 難易度別に分けられたダンジョンと呼ぶ何かにランダムに配置されていて、クリア条件を達成しない限りリスポーンし続ける状態を強制されてしまった、らしい。 そんな理不尽に攫われて押し付けられた人たちの強制ダンジョン攻略生活。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

処理中です...