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首に刺された短剣を引き抜き、地面に捨てるリザード。そして片方の手で傷口を覆うように触れると、にぃなの回復魔法と同じ淡い緑色をした光が発生し始めた。
「・・・回復してるのか。ったく、次から次へと・・・。にぃなッ!」
シンは少女の手当てを頼もうとにぃなに呼びかける。しかし、彼女は既に先程まで居た場所からいなくなっており、リザードによって吹き飛ばされた少女の元へと走り出していた。
「分かってる!あの子の回復でしょ?」
流石はヒーラーをやっているだけの事はある。戦況を見てすぐ様優先順位を見極め、行動に移すことができるアクティブさに、シンは素直に感服した。
少女の事はにぃなに任せ、それまでリザードの注意を引きつけておくために、彼は苦手な近距離戦を仕掛けようと回復しているリザードの元へと駆け寄る。
向かいながらシンは、再び毒の塗られたナイフを投擲し相手の出方を伺う。リザードは傷口を抑える手と反対の腕で戟を拾い上げると、素早い振りで飛んで来るナイフを一蹴した。
「毒が回ってるのにこの動きか?種族としての耐性なのか・・・?」
向かってくるシンに向けて、リザードは何度か戟を振るうが素早い身のこなしのシンには当たらない。だが、シンもリザードによる攻撃を避けるので精一杯。隙をみて攻撃を挟むなどという余裕はなくなっていた。
「ッ・・・!おかしい、さっきまではここまで攻撃速度は速くなかった筈なのにッ・・・」
戦えば戦うほど、シンの疑問は増えていく一方だった。この時彼はまだ知らなかったのだ。この変異種のリザードが仲間のリザード兵を食らった事を。その事により、回復スキルを身につけ毒を除く魔法を得ている事も。
そして、仲間を食った事で得ていたのはスキルだけではなかった。レベルという要素があるゲームではお馴染みの、“経験値“を一緒に獲得していた。それにより変異種のリザードはレベルが上がり、ステータスが先程のものよりも向上していた。
故にシンの動きを捉えられる程ではないが、攻撃をさせる隙を作らぬ程度には攻撃速度が上がっていたのだった。
現実世界でのモンスターが、まさかユーザーと同じく成長しているなど思いもしなかったシンは、この事に気づくことなくただただ疑問に苛まれるだけだった。
意識が他へ向いてしまったシンに、リザードの攻撃が襲いかかる。短剣で戟を受け流し、上体を反らして何とか凌ぐシン。視線を前へ戻すと、そこには既にリザードの姿がなくなっていた。
「マズイッ・・・!」
一瞬視界から外しただけで見失ってしまうほど速度をつけたのかと、周囲に気を張り身構えるシンだったが、一向に攻撃を仕掛けてくる様子がない。
それもその筈。リザードは標的を変え、別の獲物の元へと向かっていたのだ。その獲物は彼らの生命線でもある、ヒーラーのにぃなだった。
優先して狙うべき相手を見定めることが出来るほどの知性を身につけた変異種のリザードには、最も優先して狙うべき相手が分かっていたのだろう。
何度吹き飛ばしても、傷を癒して前線へ戻ってくるシンと戦士の少女を見て、回復している役割を持ったクラスの者がいるのだと。そして、そこさえ潰して仕舞えば、後は回復手段を失い慎重になる脆い人間を八つ裂きにするだけという発想に至ったのだ。
「くそッ!またそっちを狙うのかッ・・・!」
出遅れてしまったシンに、リザードへ追いつく手段はない。咄嗟にスキルを放ち、リザードの影へ向けて周囲の影を鎖のように撃ち込むが、接続されたと同時に、シンの送り込んだ影は消滅していってしまった。
「カゲ・・・コウリャク・・・シタ・・・キカナイ・・・」
最初の手合わせでかなり警戒されてしまったのか、シンの十八番である影のスキルは見事に完封されてしまっていた。自身の利点を活かせなくなってしまったシンは、別の方法を試みる。
「お前にスキルが効かないってんなら、違う使い方をするまでだッ!」
シンは突然進路を変え、近場にある大きな影の元へと走り出す。そしてその影にスキルを放ち、彼はプールの中へ飛び込むかのように影の中へ入っていった。
移動する先は勿論、にぃなと少女の居る場所に最も近い影。の、つもりでいた。だが実際にシンが姿を現したのは、目的の場所からやや離れた位置にある影の中からだったのだ。
「・・・回復してるのか。ったく、次から次へと・・・。にぃなッ!」
シンは少女の手当てを頼もうとにぃなに呼びかける。しかし、彼女は既に先程まで居た場所からいなくなっており、リザードによって吹き飛ばされた少女の元へと走り出していた。
「分かってる!あの子の回復でしょ?」
流石はヒーラーをやっているだけの事はある。戦況を見てすぐ様優先順位を見極め、行動に移すことができるアクティブさに、シンは素直に感服した。
少女の事はにぃなに任せ、それまでリザードの注意を引きつけておくために、彼は苦手な近距離戦を仕掛けようと回復しているリザードの元へと駆け寄る。
向かいながらシンは、再び毒の塗られたナイフを投擲し相手の出方を伺う。リザードは傷口を抑える手と反対の腕で戟を拾い上げると、素早い振りで飛んで来るナイフを一蹴した。
「毒が回ってるのにこの動きか?種族としての耐性なのか・・・?」
向かってくるシンに向けて、リザードは何度か戟を振るうが素早い身のこなしのシンには当たらない。だが、シンもリザードによる攻撃を避けるので精一杯。隙をみて攻撃を挟むなどという余裕はなくなっていた。
「ッ・・・!おかしい、さっきまではここまで攻撃速度は速くなかった筈なのにッ・・・」
戦えば戦うほど、シンの疑問は増えていく一方だった。この時彼はまだ知らなかったのだ。この変異種のリザードが仲間のリザード兵を食らった事を。その事により、回復スキルを身につけ毒を除く魔法を得ている事も。
そして、仲間を食った事で得ていたのはスキルだけではなかった。レベルという要素があるゲームではお馴染みの、“経験値“を一緒に獲得していた。それにより変異種のリザードはレベルが上がり、ステータスが先程のものよりも向上していた。
故にシンの動きを捉えられる程ではないが、攻撃をさせる隙を作らぬ程度には攻撃速度が上がっていたのだった。
現実世界でのモンスターが、まさかユーザーと同じく成長しているなど思いもしなかったシンは、この事に気づくことなくただただ疑問に苛まれるだけだった。
意識が他へ向いてしまったシンに、リザードの攻撃が襲いかかる。短剣で戟を受け流し、上体を反らして何とか凌ぐシン。視線を前へ戻すと、そこには既にリザードの姿がなくなっていた。
「マズイッ・・・!」
一瞬視界から外しただけで見失ってしまうほど速度をつけたのかと、周囲に気を張り身構えるシンだったが、一向に攻撃を仕掛けてくる様子がない。
それもその筈。リザードは標的を変え、別の獲物の元へと向かっていたのだ。その獲物は彼らの生命線でもある、ヒーラーのにぃなだった。
優先して狙うべき相手を見定めることが出来るほどの知性を身につけた変異種のリザードには、最も優先して狙うべき相手が分かっていたのだろう。
何度吹き飛ばしても、傷を癒して前線へ戻ってくるシンと戦士の少女を見て、回復している役割を持ったクラスの者がいるのだと。そして、そこさえ潰して仕舞えば、後は回復手段を失い慎重になる脆い人間を八つ裂きにするだけという発想に至ったのだ。
「くそッ!またそっちを狙うのかッ・・・!」
出遅れてしまったシンに、リザードへ追いつく手段はない。咄嗟にスキルを放ち、リザードの影へ向けて周囲の影を鎖のように撃ち込むが、接続されたと同時に、シンの送り込んだ影は消滅していってしまった。
「カゲ・・・コウリャク・・・シタ・・・キカナイ・・・」
最初の手合わせでかなり警戒されてしまったのか、シンの十八番である影のスキルは見事に完封されてしまっていた。自身の利点を活かせなくなってしまったシンは、別の方法を試みる。
「お前にスキルが効かないってんなら、違う使い方をするまでだッ!」
シンは突然進路を変え、近場にある大きな影の元へと走り出す。そしてその影にスキルを放ち、彼はプールの中へ飛び込むかのように影の中へ入っていった。
移動する先は勿論、にぃなと少女の居る場所に最も近い影。の、つもりでいた。だが実際にシンが姿を現したのは、目的の場所からやや離れた位置にある影の中からだったのだ。
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