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特別な個体
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そこにいたのはリザード兵達のボスだった。なんと、後方で相手を待ち構え迎え撃つだけではなく、こちらの人員を一人でも減らせるチャンスがあれば、進んで自ら前線へと飛び出して来ていたのだ。
「なッ!?コイツ、自分からッ・・・!」
「マズハ・・・ヒトリ・・・」
リザードのボスは、シンのことなどまるで眼中に無いかのように、手にした戟を振りかぶり倒れこむにぃなへと振り下ろした。
シンはすぐに自身の影と周囲の影をを利用し、リザードのボスの動きを止めようとする。しかし、それだけではこの魔物の勢いは止まらず、僅かに動きが鈍った隙ににぃなとの間に割って入り、振り下ろされた戟を短剣で受け止める。
大分攻撃の速度と威力を抑えた筈だが、火花が散るほどの勢いで打ちつけ合う刃。強い衝撃が周囲へと広がり、シンの膝を折り地面へと押し付ける。
「何で・・・こんなに・・・。スキルで抑えてる筈なのにッ・・・!」
何とか直撃は免れたものの、このままではシン諸共倒れ込んだにぃなもボスの攻撃に押し潰されてしまう。怪我を負ったにぃなを心配し、シンが攻撃に耐えながら視線を彼女の方へと向ける。
「無事かッ・・・!?」
「大丈夫、この程度・・・。今、補助魔法かけてあげるからッ・・・!」
にぃなは既に、足を貫通していた槍を排除し、傷の手当を行っていた。身体の部位の損壊や消失を元通りに戻すには、傷を癒すのとは比べ物にならない時間が必要となるようで、足に空いた穴は表面上痛々しくも塞がってはいるが、まだ細胞や組織までは完治していないようだった。
だが、必要最低限の治癒を終わらせたにぃなは、額に汗を滲ませながらもシンに攻撃力上昇の補助魔法をかけようと、詠唱を開始した。
間も無く、シンの腕力が上がりリザード兵のボスにも劣らぬ力を得る。押し付けられた戟を凌ぐので精一杯だったシンだが、徐々に押し返し始める。
元々アサシンのクラスは、攻撃力に直結する腕力などのステータスが低く、相手の攻撃を受け止めるには力不足だった。
それも相まってか、力任せの攻撃をするパワータイプの種族ではないリザードにも押し負けてしまっていた。とりわけ力の強いこの個体は、シンの元のステータスで攻撃を受け止められるほどの攻撃ではなかったのだ。
にぃなの支援により辛うじて攻撃を弾くことに成功したシンは、すぐにその場を離れようとにぃなの影を別の場所と繋げ、彼女ごと影の中へと飛び込んでいった。
逃すまいと、体勢を整えたリザードのボスは再び戟を振り下ろし、シン達が消えていった影へその刃を振り下ろした。
しかし、僅かに刃先が影の中へめり込んだだけで、その攻撃が彼らを捉えることはなかった。
「カゲ・・・ケシサル。スキル・・・ヒツヨウ・・・」
急に冷静さを取り戻したかのように大人しくなったリザードのボスは、何を思ってか遅れてやって来た取り巻きの術師であろうリザード兵を戟で八つ裂きにして、次々にその肉を口の中へ放り込んでいった。
「マダ・・・タリナイ・・・モット・・・モット・・・」
突然仲間が殺されたことに、動揺する他のリザード兵達。明らかに様子のおかしくなったボスを恐れ、何体かのリザード兵がその場を退場するように逃げていく。
にぃなを避難させることに成功したシンは、物陰で彼女に自身の回復に専念させると、再び彼女の影に自分の影を忍ばせ、咄嗟の時にすぐに駆けつけられるよう罠を仕掛けておく。
「あのリザード・・・何か異常だ。WoF内のリザードとも行動パターンが違うし、他の個体とも何か様子が変だ・・・」
「・・・どういう事?何となく変なのは、遠くで見てて分かったけど・・・。直接対峙してどうだったの?」
「動きや思考が、まるでPvPのようだった・・・」
シンはリザード兵のボスに不意打ちを仕掛けて感じた事や、その後の戦闘で取り巻きを庇ったり利用したりしていた様子を、彼女に簡潔に説明した。
現実世界での戦闘においては、にぃなの方がシンよりも先輩であり、フィアーズの指令で任務をこなすことにより、普通の人間よりも多くの経験をしていることだろう。
その中で同じような経験はないか、以上の原因は何なのか、情報を少しでも得ようとしたのだが、彼女もシンの語るモンスターの特徴を備えた相手との面識は無いようで、困惑した様子を見せた。
「ごめん、分からない・・・。つまり、戦闘慣れしてるモンスターってこと?それもプレイヤーの傾向を身につけた・・・」
「あぁ・・・。WoFの世界では見られなかった個体、亜種や異常種って感じのものかもしれない。スペクターかフィアーズの者に報告を入れた方がいいかな?」
シンが懸念していたのは、フィアーズがこのリザードの亜種を利用して更なる力を付けないかということだった。無論、何かを得る保証は何処にもないが、もし組織としての力が増せば、謀反を起こすことも組織から抜け出すことも容易ではなくなってしまう。
「信用を得るという意味では報告した方がいいけど・・・。でもそれだと、ここの人達やあの子も組織に巻き込んじゃうよ・・・」
フィアーズは末端の兵である彼らに、有力な情報を掴んでくることなど期待していない。各地へ派遣した後に、そこで新たな情報を入手してくれば吉、その場で生き絶えるようなことがあれば、新たに補充するだけくらいにしか思っていない。
だが、逆にそれがイヅツやにぃな等にとっては好都合だった。そこで各地に潜むWoFユーザーや、シン達の出会した少女のように新たに異変に巻き込まれたユーザーを仲間に引き入れるチャンスなのだ。
「なッ!?コイツ、自分からッ・・・!」
「マズハ・・・ヒトリ・・・」
リザードのボスは、シンのことなどまるで眼中に無いかのように、手にした戟を振りかぶり倒れこむにぃなへと振り下ろした。
シンはすぐに自身の影と周囲の影をを利用し、リザードのボスの動きを止めようとする。しかし、それだけではこの魔物の勢いは止まらず、僅かに動きが鈍った隙ににぃなとの間に割って入り、振り下ろされた戟を短剣で受け止める。
大分攻撃の速度と威力を抑えた筈だが、火花が散るほどの勢いで打ちつけ合う刃。強い衝撃が周囲へと広がり、シンの膝を折り地面へと押し付ける。
「何で・・・こんなに・・・。スキルで抑えてる筈なのにッ・・・!」
何とか直撃は免れたものの、このままではシン諸共倒れ込んだにぃなもボスの攻撃に押し潰されてしまう。怪我を負ったにぃなを心配し、シンが攻撃に耐えながら視線を彼女の方へと向ける。
「無事かッ・・・!?」
「大丈夫、この程度・・・。今、補助魔法かけてあげるからッ・・・!」
にぃなは既に、足を貫通していた槍を排除し、傷の手当を行っていた。身体の部位の損壊や消失を元通りに戻すには、傷を癒すのとは比べ物にならない時間が必要となるようで、足に空いた穴は表面上痛々しくも塞がってはいるが、まだ細胞や組織までは完治していないようだった。
だが、必要最低限の治癒を終わらせたにぃなは、額に汗を滲ませながらもシンに攻撃力上昇の補助魔法をかけようと、詠唱を開始した。
間も無く、シンの腕力が上がりリザード兵のボスにも劣らぬ力を得る。押し付けられた戟を凌ぐので精一杯だったシンだが、徐々に押し返し始める。
元々アサシンのクラスは、攻撃力に直結する腕力などのステータスが低く、相手の攻撃を受け止めるには力不足だった。
それも相まってか、力任せの攻撃をするパワータイプの種族ではないリザードにも押し負けてしまっていた。とりわけ力の強いこの個体は、シンの元のステータスで攻撃を受け止められるほどの攻撃ではなかったのだ。
にぃなの支援により辛うじて攻撃を弾くことに成功したシンは、すぐにその場を離れようとにぃなの影を別の場所と繋げ、彼女ごと影の中へと飛び込んでいった。
逃すまいと、体勢を整えたリザードのボスは再び戟を振り下ろし、シン達が消えていった影へその刃を振り下ろした。
しかし、僅かに刃先が影の中へめり込んだだけで、その攻撃が彼らを捉えることはなかった。
「カゲ・・・ケシサル。スキル・・・ヒツヨウ・・・」
急に冷静さを取り戻したかのように大人しくなったリザードのボスは、何を思ってか遅れてやって来た取り巻きの術師であろうリザード兵を戟で八つ裂きにして、次々にその肉を口の中へ放り込んでいった。
「マダ・・・タリナイ・・・モット・・・モット・・・」
突然仲間が殺されたことに、動揺する他のリザード兵達。明らかに様子のおかしくなったボスを恐れ、何体かのリザード兵がその場を退場するように逃げていく。
にぃなを避難させることに成功したシンは、物陰で彼女に自身の回復に専念させると、再び彼女の影に自分の影を忍ばせ、咄嗟の時にすぐに駆けつけられるよう罠を仕掛けておく。
「あのリザード・・・何か異常だ。WoF内のリザードとも行動パターンが違うし、他の個体とも何か様子が変だ・・・」
「・・・どういう事?何となく変なのは、遠くで見てて分かったけど・・・。直接対峙してどうだったの?」
「動きや思考が、まるでPvPのようだった・・・」
シンはリザード兵のボスに不意打ちを仕掛けて感じた事や、その後の戦闘で取り巻きを庇ったり利用したりしていた様子を、彼女に簡潔に説明した。
現実世界での戦闘においては、にぃなの方がシンよりも先輩であり、フィアーズの指令で任務をこなすことにより、普通の人間よりも多くの経験をしていることだろう。
その中で同じような経験はないか、以上の原因は何なのか、情報を少しでも得ようとしたのだが、彼女もシンの語るモンスターの特徴を備えた相手との面識は無いようで、困惑した様子を見せた。
「ごめん、分からない・・・。つまり、戦闘慣れしてるモンスターってこと?それもプレイヤーの傾向を身につけた・・・」
「あぁ・・・。WoFの世界では見られなかった個体、亜種や異常種って感じのものかもしれない。スペクターかフィアーズの者に報告を入れた方がいいかな?」
シンが懸念していたのは、フィアーズがこのリザードの亜種を利用して更なる力を付けないかということだった。無論、何かを得る保証は何処にもないが、もし組織としての力が増せば、謀反を起こすことも組織から抜け出すことも容易ではなくなってしまう。
「信用を得るという意味では報告した方がいいけど・・・。でもそれだと、ここの人達やあの子も組織に巻き込んじゃうよ・・・」
フィアーズは末端の兵である彼らに、有力な情報を掴んでくることなど期待していない。各地へ派遣した後に、そこで新たな情報を入手してくれば吉、その場で生き絶えるようなことがあれば、新たに補充するだけくらいにしか思っていない。
だが、逆にそれがイヅツやにぃな等にとっては好都合だった。そこで各地に潜むWoFユーザーや、シン達の出会した少女のように新たに異変に巻き込まれたユーザーを仲間に引き入れるチャンスなのだ。
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