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小さな戦士の初陣
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先陣を切って飛び出したのは、前衛部隊の武器を手にしたリザード兵達だった。馬鹿正直に突っ込んでくる者や、人間の常識の範疇を超えた跳躍で、近くの木々に飛び移り回り込む者など、部隊を活かした攻めの布陣を展開する。
「キミは?ここの人?」
「どういう意味!?私、友達と遊びに来て・・・」
どうやら彼女は、プレジャーフォレストに拠点を構えるコウ達のようなユーザーではないようだった。偶然遊びに来た彼女は、突然幻聴のように聞こえた、ちょうどハマっていたゲームであるWoFのモンスターの声を聞き、その姿を目にした時自分の目を疑ったのだという。
人混みの中に現れたリザードの姿に、すぐに友人に確認を取ろうとするも、彼女の声は届かず風れることもできなくなってしまっていた。
迫り来るモンスターを前に、対応の仕方も分からぬ、所謂異変に対する初心者には逃げるしかなかったのだ。
「にぃな!その子にキャラクターの投影の仕方を教えてあげて!」
「こんな子に戦わせるの!?無理だよ、初めてで上手く戦える人の方が少ないんだよ!?」
にぃなの言う通り、この非現実的な状況とゲームの時とは違い、痛みや苦痛を伴うダメージを負うことで、戦闘に対する恐怖心が芽生えてしまう者も多い。
斯くいうシンも、初めて現実世界でモンスターに襲われた際は、普段WoF内で倒しているモンスターであっても無力な状態である生身で向き合うのに、恐怖心を抱いていた。
自室にまで追い詰められた彼を救ったのは、既に戦う術を習得していたミアだった。彼女がいなければ、今のシンはいないだろう。
それだけ、不足の事態で尚且つ心の準備も整っていない状況で、この異変に対応することは難しい。
「敵の数が多い・・・。俺一人で相手に出来ればいいんだけど、アサシンのクラスでは大勢の相手を一辺に相手にする事はできない・・・。それに奴らも、俺だけを狙うなんて事はないと思う」
「ッ・・・!コウさんに連絡しよう!誰かここに送ってくれるかもしれない!」
彼の話では、このプレジャーフォレスト内に何人かの仲間がいるという話だったが、現状その数は少なく全てのアミューズメントをカバーしきる戦力は無さそうだった。
それにもし彼らが協力してくれたところで、仲間が到着するまでの間にぃなと少女を無事に守り切れるとも限らない。
「彼らの助けが来るまで無事でいられればいいけど・・・。にぃなにも戦ってもらわないと人手が足りないッ・・・!」
後衛クラスで回復タイプである上に、魔法という詠唱を必要とするクラスのにぃなが戦闘で相手にできる数は、極めて少ない。詠唱が邪魔されて仕舞えば、何も出来ず一方的に攻撃される事態になるだろう。
そうなれば回復魔法すら唱えることも出来ず、死ぬまで嬲り殺しにされてしまう。
「迷ってる時間は無いッ!出来るだけ時間を稼ぐから、その子に戦い方を!」
そう言い残すと、シンは向かってくる多数のリザード兵を相手に単身向かっていく。
アサシンのパッシブスキル、暗殺者の目で相手の弱点部位を特定すると、幾つもの投擲用のナイフを取り出し、リザード兵へ投げ放つ。ナイフの影を用いて軌道を僅かに変化させると、ナイフは次々に正面から向かってくるリザード兵に命中する。
弱点部位に加え、アサシンの脅威のクリティカル率により通常では地味で弱い攻撃であっても、動きを止めるくらいの威力へとなっていた。
前衛のリザード兵は投擲と近接攻撃で処理できるものの、外側を回り込みシンの後方にいる彼女らを標的にするリザード兵達はそうはいかない。
「ねぇ!貴方はゲーム内で何のクラスだったの?」
怯える少女に優しく問いかけるにぃな。この状況を乗り越えるには、彼女の助けも必要となる。どんなクラスであれある程度時間を稼げれば、にぃなが回復に回ったり攻撃に回ったりなどの僅かな余裕が生まれる。
「せ・・・戦士だけど・・・。あんまりいろんなゲームやる方じゃなかったし、分かりやすい方が良いかなって・・・」
「やったッ!私達クラス相性的には最高よ」
基本的なクラスである戦士は、特にこのようなゲームに疎い者でもとっつきやすいクラスの一つだ。平均的な基本ステータスをしており、深く考えずとも相手を見つけては殴りに行ける、ゲームを理解する上では打って付けのクラスと言えるかもしれない。
そしてにぃなが言う相性がいいとは、つまり後方支援を得意とするにぃなと、前線で敵に囲まれてもある程度戦える謂わばタンクという、敵を惹きつけられるクラスという意味合いだ。
「スマホは持って来てる?」
「う、うん・・・ここに」
荷物から取り出した端末でWoFを起動させ、キャラクター選択画面へと誘導する。そしてそこに、今まで無かった新たに追加された項目を選択させると、少女の身体に彼女のキャラクターが投影されていった。
「キミは?ここの人?」
「どういう意味!?私、友達と遊びに来て・・・」
どうやら彼女は、プレジャーフォレストに拠点を構えるコウ達のようなユーザーではないようだった。偶然遊びに来た彼女は、突然幻聴のように聞こえた、ちょうどハマっていたゲームであるWoFのモンスターの声を聞き、その姿を目にした時自分の目を疑ったのだという。
人混みの中に現れたリザードの姿に、すぐに友人に確認を取ろうとするも、彼女の声は届かず風れることもできなくなってしまっていた。
迫り来るモンスターを前に、対応の仕方も分からぬ、所謂異変に対する初心者には逃げるしかなかったのだ。
「にぃな!その子にキャラクターの投影の仕方を教えてあげて!」
「こんな子に戦わせるの!?無理だよ、初めてで上手く戦える人の方が少ないんだよ!?」
にぃなの言う通り、この非現実的な状況とゲームの時とは違い、痛みや苦痛を伴うダメージを負うことで、戦闘に対する恐怖心が芽生えてしまう者も多い。
斯くいうシンも、初めて現実世界でモンスターに襲われた際は、普段WoF内で倒しているモンスターであっても無力な状態である生身で向き合うのに、恐怖心を抱いていた。
自室にまで追い詰められた彼を救ったのは、既に戦う術を習得していたミアだった。彼女がいなければ、今のシンはいないだろう。
それだけ、不足の事態で尚且つ心の準備も整っていない状況で、この異変に対応することは難しい。
「敵の数が多い・・・。俺一人で相手に出来ればいいんだけど、アサシンのクラスでは大勢の相手を一辺に相手にする事はできない・・・。それに奴らも、俺だけを狙うなんて事はないと思う」
「ッ・・・!コウさんに連絡しよう!誰かここに送ってくれるかもしれない!」
彼の話では、このプレジャーフォレスト内に何人かの仲間がいるという話だったが、現状その数は少なく全てのアミューズメントをカバーしきる戦力は無さそうだった。
それにもし彼らが協力してくれたところで、仲間が到着するまでの間にぃなと少女を無事に守り切れるとも限らない。
「彼らの助けが来るまで無事でいられればいいけど・・・。にぃなにも戦ってもらわないと人手が足りないッ・・・!」
後衛クラスで回復タイプである上に、魔法という詠唱を必要とするクラスのにぃなが戦闘で相手にできる数は、極めて少ない。詠唱が邪魔されて仕舞えば、何も出来ず一方的に攻撃される事態になるだろう。
そうなれば回復魔法すら唱えることも出来ず、死ぬまで嬲り殺しにされてしまう。
「迷ってる時間は無いッ!出来るだけ時間を稼ぐから、その子に戦い方を!」
そう言い残すと、シンは向かってくる多数のリザード兵を相手に単身向かっていく。
アサシンのパッシブスキル、暗殺者の目で相手の弱点部位を特定すると、幾つもの投擲用のナイフを取り出し、リザード兵へ投げ放つ。ナイフの影を用いて軌道を僅かに変化させると、ナイフは次々に正面から向かってくるリザード兵に命中する。
弱点部位に加え、アサシンの脅威のクリティカル率により通常では地味で弱い攻撃であっても、動きを止めるくらいの威力へとなっていた。
前衛のリザード兵は投擲と近接攻撃で処理できるものの、外側を回り込みシンの後方にいる彼女らを標的にするリザード兵達はそうはいかない。
「ねぇ!貴方はゲーム内で何のクラスだったの?」
怯える少女に優しく問いかけるにぃな。この状況を乗り越えるには、彼女の助けも必要となる。どんなクラスであれある程度時間を稼げれば、にぃなが回復に回ったり攻撃に回ったりなどの僅かな余裕が生まれる。
「せ・・・戦士だけど・・・。あんまりいろんなゲームやる方じゃなかったし、分かりやすい方が良いかなって・・・」
「やったッ!私達クラス相性的には最高よ」
基本的なクラスである戦士は、特にこのようなゲームに疎い者でもとっつきやすいクラスの一つだ。平均的な基本ステータスをしており、深く考えずとも相手を見つけては殴りに行ける、ゲームを理解する上では打って付けのクラスと言えるかもしれない。
そしてにぃなが言う相性がいいとは、つまり後方支援を得意とするにぃなと、前線で敵に囲まれてもある程度戦える謂わばタンクという、敵を惹きつけられるクラスという意味合いだ。
「スマホは持って来てる?」
「う、うん・・・ここに」
荷物から取り出した端末でWoFを起動させ、キャラクター選択画面へと誘導する。そしてそこに、今まで無かった新たに追加された項目を選択させると、少女の身体に彼女のキャラクターが投影されていった。
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