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捕らえた獲物
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スキルを撃ち続けていたにぃなは、魔力が切れたのか瓶の中に液体の入ったアイテムを取り出し、それを飲んでいた。彼女は命を狙われていることに気が付いていない。
しかし、この場でシンが声を上げる事はできない。影により声を届けることもできるが、そんなことをしている暇もない。それは想定されていたことであり、既にシンの中で対策は済んでいた。
撃ち放たれた何かは彼女の首目掛けて飛んでいき、命中するかと思われた刹那、シンがにぃなの影に忍ばせていた自身の影を彼女の首に集約し、命中すると同時に影の中へそれを飲み込んだのだ。
これにより、にぃなは全く気がつくことな危機をやり過ごす結果となった。
攻撃を放った相手は、何が起こったのか分からなかっただろう。飛ばした何かの行方を目で追っていた相手は、食い入るように彼女のことを眺め、自分の攻撃はどうなったのかと疑問を抱いていた。
誰でも初手であれば、そこまで深い考察をすることはない。自分のミスなのではないか、何かの影響によって軌道がズレたのかなど、第三者の存在を疑うよりも現象として起こり得る要因に目を向ける。
音もなく攻撃を消し去ったのは、シンが狙ってやったことだった。
にぃな自身を移動させて仕舞えば、相手はにぃなの能力によるものか、その仲間による援護を疑うだろう。それが、命中するはずの攻撃が突如として消えてしまったとあれば戸惑うはず。
幸いこの施設はアトラクションの設計上、真っ暗な中に照明によって意図的な明るさを生み出している。故に至近距離でも見逃しそうなほど暗い中で、遠距離攻撃の行方を追うなど暗視が出来たとしても難しい。
回収された物はシンのいる場所の側に飛び出し、勢いを失ったソレは彼の足元に転がる。そこにあったのは、ボウガンの矢だった。
相手はボウガンを使ったクラスに就く人物であることが分かった。
「ボウガン・・・レンジャーか?」
シンは足音を消し、すぐに相手との距離を詰める。もし彼の予想した通り、相手がレンジャーのクラスだとすれば、風矢環境の僅かな変化によって周囲の状況を察知する能力を持っている。
しかし、今彼らが居るのは外から隔離された建物の中。風は人工的に起こされるものだけであり、草木や埃といった動きを読み取る要因となるものはない。
加えて相手は、自分の攻撃が不発に終わったことに対し、少なからず動揺し次の攻撃の準備を始めている筈。
相手は自分のことに夢中で、シンの接近に気が付いていない。次の矢を装填している内に、後方のすぐ側の遮蔽物まで近づく。そして姿を晒すことなくスキルを放ち、影で相手の身体を拘束する。
声を上げられぬよう頭部を影で覆い尽くし、自身の居る遮蔽物のところまで相手を引き寄せた。
そのまま暫く、施設内の様子を伺っていたシン。この者が単独であるのか、或いは仲間が居るのかを判断する為の行動だった。
仲間が居れば、この者の攻撃の瞬間を共に確認していた事だろう。もしそれが失敗したとあれば、すぐに連絡が入るか別の動きを見せるはず。しかし、十分と思えるほど待っても、連絡が入ったりにぃなに新たな攻撃が仕掛けられるといった様子は伺えなかった。
どうにも腑に落ちなかったが、未だにスキルを撃ち続けるにぃなに現場の報告を入れるシン。彼女を狙っていた者を拘束したこと、そしてこの施設内に他の仲間がいるかどうかということ、その考察を話す。
「え!?そんなことがあったの?全然気が付かなかった・・・」
「本来囮になるべきクラスじゃないからな。気配の感知能力も無しじゃ、この暗さで気づける筈がないさ。・・・それで、どう見る?」
「仲間が居るかってこと?ん~・・・もしかしたら別行動してるんじゃないかな?例えばプレジャーフォレストの他のエリアにいるとか?」
仲間内でこのリゾート施設を縄張りとし、各エリアに分かれて見張りを担当しているというのは、可能性として大いにあり得る事だろう。
新たな魔の手が迫る心配は、今のところない。束の間の安全を手にした二人は、この者が何者であるのか、そして何故攻撃してきたのか。そして仲間はいるのかなど、尋問を行うことにした。
とは言ったものの、シンもにぃなも尋問の経験などなく、万が一相手が口を割らない強情な者であるならば、情報を聞き出すことができない。
「さて・・・素直に喋ってくれるかな?」
頭部を覆っていた影を上から徐々に解除していき、相手がシン達の姿を目にする。身動き一つ取れない状況で、武器を手にする二人の姿を見て、意外なことに相手は酷く動揺してみせた。
「まッ待って!殺さないでくれ!頼むよ」
苦戦を予想していた二人は、思わず顔を見合わせる。これならば無駄な争いをすることなく、事を納められるかもしれない。
シンは高圧的にではなく、なるべく事情を知らない二人組という設定で、男に幾つかの質問をした。ここで何をしていたのか、他に仲間はいるのか、ここ以外に連絡のつく仲間や組織がいるのかどうか。
そして、現在敵対している相手はいるのかどうかなど。自分達がこの異変に巻き込まれて何も知らないというフリをして、なるべく彼らの持っている情報を聞き出そうとし、敵ではないことを訴えかけながら。
しかし、この場でシンが声を上げる事はできない。影により声を届けることもできるが、そんなことをしている暇もない。それは想定されていたことであり、既にシンの中で対策は済んでいた。
撃ち放たれた何かは彼女の首目掛けて飛んでいき、命中するかと思われた刹那、シンがにぃなの影に忍ばせていた自身の影を彼女の首に集約し、命中すると同時に影の中へそれを飲み込んだのだ。
これにより、にぃなは全く気がつくことな危機をやり過ごす結果となった。
攻撃を放った相手は、何が起こったのか分からなかっただろう。飛ばした何かの行方を目で追っていた相手は、食い入るように彼女のことを眺め、自分の攻撃はどうなったのかと疑問を抱いていた。
誰でも初手であれば、そこまで深い考察をすることはない。自分のミスなのではないか、何かの影響によって軌道がズレたのかなど、第三者の存在を疑うよりも現象として起こり得る要因に目を向ける。
音もなく攻撃を消し去ったのは、シンが狙ってやったことだった。
にぃな自身を移動させて仕舞えば、相手はにぃなの能力によるものか、その仲間による援護を疑うだろう。それが、命中するはずの攻撃が突如として消えてしまったとあれば戸惑うはず。
幸いこの施設はアトラクションの設計上、真っ暗な中に照明によって意図的な明るさを生み出している。故に至近距離でも見逃しそうなほど暗い中で、遠距離攻撃の行方を追うなど暗視が出来たとしても難しい。
回収された物はシンのいる場所の側に飛び出し、勢いを失ったソレは彼の足元に転がる。そこにあったのは、ボウガンの矢だった。
相手はボウガンを使ったクラスに就く人物であることが分かった。
「ボウガン・・・レンジャーか?」
シンは足音を消し、すぐに相手との距離を詰める。もし彼の予想した通り、相手がレンジャーのクラスだとすれば、風矢環境の僅かな変化によって周囲の状況を察知する能力を持っている。
しかし、今彼らが居るのは外から隔離された建物の中。風は人工的に起こされるものだけであり、草木や埃といった動きを読み取る要因となるものはない。
加えて相手は、自分の攻撃が不発に終わったことに対し、少なからず動揺し次の攻撃の準備を始めている筈。
相手は自分のことに夢中で、シンの接近に気が付いていない。次の矢を装填している内に、後方のすぐ側の遮蔽物まで近づく。そして姿を晒すことなくスキルを放ち、影で相手の身体を拘束する。
声を上げられぬよう頭部を影で覆い尽くし、自身の居る遮蔽物のところまで相手を引き寄せた。
そのまま暫く、施設内の様子を伺っていたシン。この者が単独であるのか、或いは仲間が居るのかを判断する為の行動だった。
仲間が居れば、この者の攻撃の瞬間を共に確認していた事だろう。もしそれが失敗したとあれば、すぐに連絡が入るか別の動きを見せるはず。しかし、十分と思えるほど待っても、連絡が入ったりにぃなに新たな攻撃が仕掛けられるといった様子は伺えなかった。
どうにも腑に落ちなかったが、未だにスキルを撃ち続けるにぃなに現場の報告を入れるシン。彼女を狙っていた者を拘束したこと、そしてこの施設内に他の仲間がいるかどうかということ、その考察を話す。
「え!?そんなことがあったの?全然気が付かなかった・・・」
「本来囮になるべきクラスじゃないからな。気配の感知能力も無しじゃ、この暗さで気づける筈がないさ。・・・それで、どう見る?」
「仲間が居るかってこと?ん~・・・もしかしたら別行動してるんじゃないかな?例えばプレジャーフォレストの他のエリアにいるとか?」
仲間内でこのリゾート施設を縄張りとし、各エリアに分かれて見張りを担当しているというのは、可能性として大いにあり得る事だろう。
新たな魔の手が迫る心配は、今のところない。束の間の安全を手にした二人は、この者が何者であるのか、そして何故攻撃してきたのか。そして仲間はいるのかなど、尋問を行うことにした。
とは言ったものの、シンもにぃなも尋問の経験などなく、万が一相手が口を割らない強情な者であるならば、情報を聞き出すことができない。
「さて・・・素直に喋ってくれるかな?」
頭部を覆っていた影を上から徐々に解除していき、相手がシン達の姿を目にする。身動き一つ取れない状況で、武器を手にする二人の姿を見て、意外なことに相手は酷く動揺してみせた。
「まッ待って!殺さないでくれ!頼むよ」
苦戦を予想していた二人は、思わず顔を見合わせる。これならば無駄な争いをすることなく、事を納められるかもしれない。
シンは高圧的にではなく、なるべく事情を知らない二人組という設定で、男に幾つかの質問をした。ここで何をしていたのか、他に仲間はいるのか、ここ以外に連絡のつく仲間や組織がいるのかどうか。
そして、現在敵対している相手はいるのかどうかなど。自分達がこの異変に巻き込まれて何も知らないというフリをして、なるべく彼らの持っている情報を聞き出そうとし、敵ではないことを訴えかけながら。
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