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ようこそファンタジーの世界へ
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そのままの勢いで建物の中へ、壁を透過して入って行くにぃなの背中を追い、シンも中へと入る。すると、視界は外の明るさとの落差により突然真っ暗になる。
徐々に目が慣れ始め、建物の内部が全貌を表す。
中は広大なほど開けており、大きな無地のブロックのような物が、通路を作っているかのように床から生えている。そのブロックにはプロジェクションマッピングで映し出された、西洋の建物の様なものが映し出されている。
「すごい・・・。テレビやネットで見たのと全然違うッ・・・!」
「やっぱり実際に来てみないとねぇ!しかもそれだけじゃないんだから。見てて!」
まるで自分の作品を披露しているかのように、得意げに自慢するにぃな。彼女のその発言の後、建物の間からオークの様なモンスターが姿を現し、客を驚かせる。
大きな咆哮を上げながら棍棒を掲げたオークは、楽しげに悲鳴をあげる客の方へと一心不乱に駆け出した。
そこへ、待ち構えていたかのように、建物の間や窓から複数の魔法がオーク目掛けて放たれる。
炎の魔法が放たれた付近は熱が、水の魔法が放たれた付近からは水蒸気が吹き出し、あたかも自分達の前で実際に戦闘が行われているかのような体験が出来ると言う訳だ。
「さぁ、ここは危ない!すぐに避難するんだ!」
客の前に現れたホログラムのキャラクターが、指定された順路へと客を導く。オークが魔法をくらい、よろめきながら棍棒を振るうと、プロジェクションマッピングされた建物が崩れ、大きな煙が発生する。
視界が遮られた隙に、ブロックが床へと収納されていき、別の場所別の形でブロックが再び現れる。客が通路から出てくると、さっきまでの光景はまるで別の景色へと姿を変える仕組みになっていた。
「お客はこうやって道を進んでいって、一つのテーマの世界観を体験することが出来るの!自分が主人公になったつもりで、魔法を撃つ体験をテーマにしたものもあるから、いつ来ても飽きない作りになってるの」
「そんなに豊富な内容で展開されるのか・・・。驚いた、これはまるで俺達が体験してることとそっくりだ」
勿論のことだが、痛みや不快感といったものは感じない。あくまでちょっとした熱を感じたり、冷気や電流、揺れや匂いなどで情景をよりリアルに再現するだけだ。
「でも私達は今、この建物を透過して進むことが出来る。そして私達が起こしたアクションが、蒸気や煙になったりして再現されるってわけ!こんな風にね?」
すると彼女は、客がやって来たところに聖属性の魔法スキルを放った。何が起きるのか興味津々に視線を向けると、カメラのシャッターを切ったかのようなフラッシュがたかれた。
「うわっ!」
「な、何だぁ?」
何の前触れもなく、一瞬の光が客の前に差し込む。これもアトラクションの一つかと、客は然程疑う様子もなく、そのまま案内をするキャラクターについて行った。
「おい、あんまりやると流石に気づかれないか?」
不自然な反応や特殊効果が起これば、流石に故障やエラーを疑われ、客が運営側に報告してしまうのではないかと心配するシン。にぃなはほんの冗談だと笑い、すぐにスキルを使うのを止めた。
「でも、誘い出すにはこっちからアクションを起こさないと。誰かいるのなら、向こうは多分まだこっちに気づいてないんじゃない?」
彼女の言うことも最もだ。ただこのアトラクションを、第三者目線で楽しんでいるだけでは、彼らの本来の目的である世界の異物や、その他の“異変“に纏わる調査が行えない。
「やるなら、客のいないところでやろう。全く関係のないところでエラーを吐いていれば、見えている奴を釣れるかもしれない」
「何か地味な作業になりそぉ~・・・」
文句を垂れながらも、にぃなはシンの提案に乗り、二人は客のいないエリアへ移動する。まだ出番のないブロックの壁は、客の現在地をデータとして読み取り、遠くの背景に見えるよう微調整しながら動いている。
「この辺りでなら大丈夫だろう。さっきの客を見た場所から、だいぶ離れたし・・・」
「どうする?あんまり派手なのはマズイよね」
「さっきのスキルでいいんじゃないか?俺のスキルは・・・」
そう言うとシンは、試しにアサシンの影を用いたスキルを使用してみる。だが目の前で起きた現象といえば、二人の足元の影少し動いた程度。これではWoFのユーザーや異世界からの来訪者はおろか、アトラクションへ来た一般の客ですら気づかない程だ。
「アサシンのクラスだからね、仕方ないよ。ここは私に任せて、後方支援はお願いします!」
「あっ・・・あぁ、お願いします・・・」
神奈川のノースシティに訪れてからと言うものの、にぃなに頼りっぱなしの自分が少し情けなくなるシン。だが、彼の真価が発揮される環境は、これ以上ないほど整っているのも事実。
もしも戦闘になれば、それこそ彼の出番となる。
徐々に目が慣れ始め、建物の内部が全貌を表す。
中は広大なほど開けており、大きな無地のブロックのような物が、通路を作っているかのように床から生えている。そのブロックにはプロジェクションマッピングで映し出された、西洋の建物の様なものが映し出されている。
「すごい・・・。テレビやネットで見たのと全然違うッ・・・!」
「やっぱり実際に来てみないとねぇ!しかもそれだけじゃないんだから。見てて!」
まるで自分の作品を披露しているかのように、得意げに自慢するにぃな。彼女のその発言の後、建物の間からオークの様なモンスターが姿を現し、客を驚かせる。
大きな咆哮を上げながら棍棒を掲げたオークは、楽しげに悲鳴をあげる客の方へと一心不乱に駆け出した。
そこへ、待ち構えていたかのように、建物の間や窓から複数の魔法がオーク目掛けて放たれる。
炎の魔法が放たれた付近は熱が、水の魔法が放たれた付近からは水蒸気が吹き出し、あたかも自分達の前で実際に戦闘が行われているかのような体験が出来ると言う訳だ。
「さぁ、ここは危ない!すぐに避難するんだ!」
客の前に現れたホログラムのキャラクターが、指定された順路へと客を導く。オークが魔法をくらい、よろめきながら棍棒を振るうと、プロジェクションマッピングされた建物が崩れ、大きな煙が発生する。
視界が遮られた隙に、ブロックが床へと収納されていき、別の場所別の形でブロックが再び現れる。客が通路から出てくると、さっきまでの光景はまるで別の景色へと姿を変える仕組みになっていた。
「お客はこうやって道を進んでいって、一つのテーマの世界観を体験することが出来るの!自分が主人公になったつもりで、魔法を撃つ体験をテーマにしたものもあるから、いつ来ても飽きない作りになってるの」
「そんなに豊富な内容で展開されるのか・・・。驚いた、これはまるで俺達が体験してることとそっくりだ」
勿論のことだが、痛みや不快感といったものは感じない。あくまでちょっとした熱を感じたり、冷気や電流、揺れや匂いなどで情景をよりリアルに再現するだけだ。
「でも私達は今、この建物を透過して進むことが出来る。そして私達が起こしたアクションが、蒸気や煙になったりして再現されるってわけ!こんな風にね?」
すると彼女は、客がやって来たところに聖属性の魔法スキルを放った。何が起きるのか興味津々に視線を向けると、カメラのシャッターを切ったかのようなフラッシュがたかれた。
「うわっ!」
「な、何だぁ?」
何の前触れもなく、一瞬の光が客の前に差し込む。これもアトラクションの一つかと、客は然程疑う様子もなく、そのまま案内をするキャラクターについて行った。
「おい、あんまりやると流石に気づかれないか?」
不自然な反応や特殊効果が起これば、流石に故障やエラーを疑われ、客が運営側に報告してしまうのではないかと心配するシン。にぃなはほんの冗談だと笑い、すぐにスキルを使うのを止めた。
「でも、誘い出すにはこっちからアクションを起こさないと。誰かいるのなら、向こうは多分まだこっちに気づいてないんじゃない?」
彼女の言うことも最もだ。ただこのアトラクションを、第三者目線で楽しんでいるだけでは、彼らの本来の目的である世界の異物や、その他の“異変“に纏わる調査が行えない。
「やるなら、客のいないところでやろう。全く関係のないところでエラーを吐いていれば、見えている奴を釣れるかもしれない」
「何か地味な作業になりそぉ~・・・」
文句を垂れながらも、にぃなはシンの提案に乗り、二人は客のいないエリアへ移動する。まだ出番のないブロックの壁は、客の現在地をデータとして読み取り、遠くの背景に見えるよう微調整しながら動いている。
「この辺りでなら大丈夫だろう。さっきの客を見た場所から、だいぶ離れたし・・・」
「どうする?あんまり派手なのはマズイよね」
「さっきのスキルでいいんじゃないか?俺のスキルは・・・」
そう言うとシンは、試しにアサシンの影を用いたスキルを使用してみる。だが目の前で起きた現象といえば、二人の足元の影少し動いた程度。これではWoFのユーザーや異世界からの来訪者はおろか、アトラクションへ来た一般の客ですら気づかない程だ。
「アサシンのクラスだからね、仕方ないよ。ここは私に任せて、後方支援はお願いします!」
「あっ・・・あぁ、お願いします・・・」
神奈川のノースシティに訪れてからと言うものの、にぃなに頼りっぱなしの自分が少し情けなくなるシン。だが、彼の真価が発揮される環境は、これ以上ないほど整っているのも事実。
もしも戦闘になれば、それこそ彼の出番となる。
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